オフィス改修事例音|からブランド体験をつくる。制作と打ち合わせがつながる空間設計


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制作と打ち合わせが重なるオフィスを、どう使いやすくするか

このオフィスで考えたのは、単に作業スペースをきれいにすることではありません。

制作作業をする。
資料を広げる。
サンプルを確認する。
スタッフ同士で打ち合わせをする。
来客に説明する。
打ち合わせ後に、また制作へ戻る。

そうした行動が、同じ空間の中で起こります。

問題は、そこです。

会話が必要な場所がある。
一方で、集中したい場所もある。
資料やサンプルはすぐ使いたい。
けれど、来客から見たときに雑然とは見せたくない。
仕事の気配は伝えたい。
でも、作業場のような緊張感だけが前に出ると、相談しにくい。

そこで、この事例では、オフィスを次のように捉えました。

制作する場所であり、打ち合わせする場所であり、来客に会社の姿勢を伝える場所。

この三つを分けるのではなく、ひとつの空間の中でつながるようにデザインしています。


この事例で改善したこと

課題提案改善した体験
制作、資料確認、打ち合わせが分断されやすい中央作業台を空間の中心に置く資料を広げながら、そのまま確認・相談・説明ができる
資料やサンプルが雑然と見えやすい壁面収納で見せるものと隠すものを分ける仕事の気配は残しつつ、来客には落ち着いた印象を与える
会話が作業席まで入り込みやすい会話ゾーンと集中ゾーンの音の距離感をつくる来客は話しやすく、働く人は集中に戻りやすい
静かすぎると話し出しにくいBGMや背景音の考え方を取り入れる相談しやすい空気をつくる
声や物音が硬く響く吸音・反射・残響時間を確認する会話や物音の疲れを抑え、落ち着いた印象にする
ただの作業場に見えやすい植物、余白、照明、収納の見せ方を調整する仕事の姿勢が伝わるブランド体験に変える

中央作業台を、仕事の流れを見せる場所にする

このオフィスの中心には、大きな作業台を置いています。

ここで大事なのは、作業台を「大きなテーブル」として見ないことです。

この作業台は、制作と打ち合わせをつなぐ場所です。

資料を広げる。
サンプルを並べる。
スタッフ同士で確認する。
来客に説明する。
その場で意見を交わす。
話し終えたら、また制作へ戻る。

この流れが一箇所で起こるようにしています。

作業スペースと打ち合わせスペースを完全に分ければ、空間は整理しやすくなります。
しかし、制作の現場では、資料を見ながら話す、手を動かしながら確認する、すぐに道具を取り出すという動きが頻繁にあります。

だから、この事例では、作業と会話を切り離しませんでした。

中央作業台を、仕事のプロセスが見える場所として設計しています。

来客にとっては、単に椅子に座って話を聞くだけの場所ではありません。
その会社がどのように考え、どのように確認し、どのように仕事を進めているのかを感じる場所になります。

ここで、オフィスは作業場からブランド接点に変わります。


壁面収納で、仕事の気配を見せながら雑然と見せない

制作オフィスでは、資料やサンプル、道具をすべて隠すことはできません。

むしろ、必要なものにすぐ手が届くことが重要です。

ただし、出しっぱなしのものが多すぎると、来客からは雑然と見えます。
相談する場所としての落ち着きも弱くなります。

そこで、壁面収納は「片付けるための収納」ではなく、仕事の背景をつくるデザインとして考えています。

見せるものは見せる。
隠すものは隠す。
資料やサンプルの気配は残す。
でも、来客の視界に入る範囲では、情報量が多くなりすぎないようにする。

収納の目的は、物をしまうことだけではありません。

仕事の姿勢をどう見せるか。
来客が相談しやすい背景をどうつくるか。
働く人が迷わず動ける状態をどうつくるか。

そこまで含めて、収納をデザインしています。


会話を消すのではなく、聞こえ方をデザインする

このオフィスでは、中央作業台で会話が生まれます。

資料を見ながら話す。
来客に説明する。
スタッフ同士で確認する。

これは必要な音です。
消すべき音ではありません。

一方で、同じ空間には集中して制作する場所があります。

ここで問題になるのは、声が聞こえること自体ではありません。
問題は、離れた場所でも会話の内容が分かってしまうことです。

人は、意味のある言葉に注意を引かれます。
聞くつもりがなくても、会話の内容が分かると、思考がそちらへ持っていかれます。
その状態では、打ち合わせ後に集中へ戻りにくくなります。

だから、この事例では、会話を完全に消すのではなく、会話の明瞭度をコントロールすることを考えます。

中央作業台の近くでは、自然に話せる。
来客との打ち合わせでは、声が聞き取りやすい。
しかし、離れた作業席では、声の気配はあっても内容までは追いにくい。

この聞こえ方をつくることが、会話と集中が同じ空間で起こるオフィスには必要です。


声の返り方を見て、吸音の目的を決める

会話の聞こえ方は、声の大きさだけでは決まりません。

壁、床、天井、家具、収納面。
どの面で声が返るかによって、会話の広がり方は変わります。

硬い面が多いと、声は遠くまで届きやすくなります。
反射が強いと、実際の声量以上に空間全体がざわついて感じられます。
声が空間に残りすぎると、会話も疲れやすくなります。

そこで、吸音は「静かにするため」だけに使いません。

この事例で吸音を考える目的は、次のようなものです。

  • 中央作業台まわりの声が硬く返りすぎないようにする
  • 離れた作業席まで会話の内容が届きすぎないようにする
  • 資料を置く音や椅子を動かす音の角をやわらげる
  • BGMが濁らず、背景としてなじむようにする
  • 来客が長く話しても疲れにくい空気をつくる

つまり、吸音は音を消すためではなく、会話と物音の印象を変えるためのデザインです。

どこに吸音を入れるか。
どの音に効かせるか。
どれくらい反射を残すか。

これを決めずに吸音材だけを貼っても、体験はよくなりません。

必要なのは、音の対策ではなく、音の設計です。


BGMは、静かすぎる緊張感を減らすために使う

来客対応のあるオフィスでは、静かすぎることが必ずしも良いとは限りません。

無音に近い空間では、少しの物音が目立ちます。
会話の切れ間も気になります。
来客も、最初の一言を出しにくくなります。

そこで、BGMは雰囲気づくりだけではなく、話し出しやすさを支える背景音として考えます。

ただし、BGMが前に出すぎると逆効果です。

音楽の主張が強いと、打ち合わせの邪魔になります。
制作作業にも干渉します。
空間の印象も、音楽の雰囲気に引っ張られます。

このオフィスで必要なのは、主役になる音楽ではありません。

静かすぎる緊張感をやわらげる。
会話の始まりを支える。
でも、集中の邪魔はしない。

その位置にBGMを置くことです。

BGMは流すものではなく、会話と集中の背景をつくるデザイン要素として扱います。


必要に応じて、マスキングの考え方を組み込む

会話と集中が同じ空間で起こる場合、サウンドマスキングの考え方も重要になります。

マスキングは、大きな音で会話を隠すことではありません。
背景音によって、離れた会話の内容を追いにくくする考え方です。

近くでは会話が成立する。
少し離れると、声の気配はある。
でも、言葉の内容までは追いにくい。

この状態をつくることで、集中しやすさやスピーチプライバシーを支えます。

ただし、マスキングは単純に入れればよいものではありません。

背景音が強すぎると、それ自体がストレスになります。
BGMと重なると、音の印象が濁る場合もあります。
来客対応のある場所では、音が人工的に感じられると、空間の印象を壊すこともあります。

だから、マスキングを考える場合は、必ず空間の使われ方と合わせて判断します。

  • どこで会話が生まれるのか
  • どこで集中したいのか
  • どの会話は聞こえてよいのか
  • どの会話は内容まで届かない方がよいのか
  • BGMと共存できるのか
  • 来客に違和感を与えないか

この確認をしたうえで、BGM、吸音、反射、距離感と組み合わせます。

音を足すことも、音を抑えることも、目的は同じです。
会話しやすく、集中に戻りやすいオフィスにすることです。


残響時間は、会話とBGMの判断材料にする

残響時間は、音が空間の中にどれくらい残るかを見るための指標です。

ただし、数値を整えること自体が目的ではありません。

この事例で見たいのは、次のような体験です。

  • 中央作業台で会話がしやすいか
  • 離れた作業席で会話の内容を追いすぎないか
  • BGMが背景としてなじんでいるか
  • 物音が硬く目立ちすぎていないか
  • 来客が話し出しやすい空気になっているか

残響が長すぎると、声やBGMが空間に残りやすくなります。
会話が疲れやすくなり、BGMも濁りやすくなります。
物音も目立ちやすくなります。

反対に、音を抑えすぎると、仕事の気配や人の動きまで消えてしまいます。
来客対応のあるオフィスとしては、静かすぎて話しにくい場所になることもあります。

だから、残響時間は「短ければよい」とは考えません。

このオフィスの使われ方に合わせて、会話、BGM、物音の残り方を判断します。

音響の数値は、体験をデザインするための材料です。


植物と余白で、相談しやすい空気をつくる

制作オフィスは、機能だけで構成すると硬い印象になりやすくなります。

作業台。
収納。
資料。
機器。
照明。
道具。

必要なものだけで空間をつくると、合理的ではあります。
しかし、来客にとっては少し緊張する場所になることがあります。

そこで、植物と余白を入れています。

植物は、視線の逃げ場になります。
余白は、人が立ち止まれる余裕になります。
通路のゆとりは、移動のしやすさだけでなく、会話の始まりやすさにもつながります。

相談しやすい空間には、視覚的な逃げ場が必要です。

相手の顔だけを見るのではなく、資料を見る。
作業台を見る。
植物を見る。
収納の背景を見る。

視線の置き場があることで、会話の緊張が下がります。

音も同じです。
静かすぎる空間や、声が硬く返る空間では、会話が疲れやすくなります。

だから、植物、余白、BGM、吸音、照明は別々の要素ではありません。
来客が相談しやすい体験をつくるために、同じ方向でデザインします。


この事例でデザインしたブランド体験

この改修で目指したのは、きれいなオフィスをつくることではありません。

制作の現場らしさがある。
資料を広げて話せる。
来客に仕事の進め方が伝わる。
でも、雑然とは見えない。
会話はしやすい。
けれど、集中は壊れにくい。
打ち合わせ後に、また制作へ戻りやすい。

この状態をつくることです。

そのために、中央作業台、壁面収納、植物、余白、BGM、吸音、残響時間、マスキングの考え方を、それぞれ別々ではなく、ひとつの体験として組み合わせています。

見た目で仕事の姿勢を伝える。
音で会話と集中の距離感をつくる。
使い方で、制作と来客対応をつなげる。

それが、このオフィスでデザインしたブランド体験です。


来客対応のあるオフィスを、音から見直す

来客対応のあるオフィスでは、見た目のデザインが第一印象をつくります。

しかし、その場所で過ごす時間の印象は、会話のしやすさ、BGMの聞こえ方、物音の響き方、声の届き方によって変わります。

会話が生まれる場所。
集中したい場所。
資料を広げる場所。
来客が相談する場所。
働く人が制作に戻る場所。

それぞれの行動に合わせて、空間と音を設計することが重要です。

HAGANEでは、内装、家具、照明、収納、動線に加えて、音の返り方、残響時間、吸音、BGM、必要に応じたマスキングの考え方まで含めて、オフィスの体験をデザインします。

制作と打ち合わせが重なるオフィス、来客対応のあるワークスペース、相談しやすく集中しやすい空間づくりを検討している方はご相談ください。

この記事を書いた人

建築士として、空間デザイン、音響映像デザイナーとして。
音と空間が、店の印象や人の行動をどう変えるのか。
マーケティング、ブランディングの視点も加えながら、
HAGANEの設計思想を、青川の言葉で発信しています。

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