防音工事で吸音材を貼ったのに、音が聴き取りにくい理由
防音工事をした。
吸音材も貼ってある。
それでも、部屋の中で声が聴き取りにくい。
ピアノやギターの高い音が耳に刺さる。
スピーカーの音が近くで跳ね返る。
長くいると、耳が疲れる。
こういう部屋を見るとき、僕は最初に「吸音材が足りない」とは見ません。
まず、その音がどこに当たって、どこから耳に戻っているかを見ます。
防音工事は、外へ音を漏らしにくくするために必要です。
でも、防音した部屋の中で音が聴き取りやすいかどうかは、また別の話です。
吸音材を貼っても、刺さっている音の反射先に届いていなければ、耳への痛さは残ります。
声を邪魔している返りが、別の面から来ていれば、聴き取りにくさも残ります。
音は、貼った場所で都合よく消えるわけではありません。
どこから出て、どこに当たり、どの角度で耳へ戻っているか。
そこを見ないまま吸音材を足しても、遠回りになることがあります。
防音工事をしたのに、部屋の中の音が聴き取りやすくならないことがあります
防音室にすると、外への音漏れは減らしやすくなります。
近隣へ音を出しにくくする。
夜でも練習しやすくする。
収録や配信で外の音を入りにくくする。
そこは、防音工事の大きな役割です。
ただ、防音した部屋の中で、音が自然に聴き取りやすくなるとは限りません。
むしろ、防音によって壁、天井、床がつくられ、部屋の内側が小さくなることで、音が近い面に当たりやすくなることがあります。
声を出す。
楽器を鳴らす。
スピーカーから音を出す。
その音が広がる前に、すぐ横の壁、前の壁、天井、床、机に当たる。
そして、短い時間で耳へ戻ってくる。
この返りが強いと、音は近くで跳ね返っているように感じます。
反響が多いというより、音が硬い。
響いているというより、耳に近い。
部屋全体が鳴っているというより、どこかの面から押し返されている。
そういう聴こえ方になります。
防音と、部屋の中の聴こえ方は別の話です
防音は、外へ漏れる音を見る仕事です。
壁をどうつくるか。
床へどう振動を伝えにくくするか。
天井や開口部をどう扱うか。
隣室や上下階へどれくらい音を出さないか。
これは、とても大事です。
でも、室内で聴く音は、別の見方が必要です。
部屋の中では、音源と耳のあいだに、壁、床、天井、机、窓、扉、収納、楽器、スピーカー、椅子があります。
音はそれらに当たって、何度も返ってきます。
防音工事ができていても、室内でその返り方を見ていなければ、声は聴き取りにくいまま残ることがあります。
楽器のアタックだけがきつく感じることもあります。
スピーカーの音が壁に張りついたように感じることもあります。
防音と室内音響は、同じ部屋の話ですが、見ている場所が違います。
防音は、外へ逃げる音を見る。
室内音響は、中で戻ってくる音を見る。
ここを分けて見ないと、「防音したのに、なぜ部屋の中の音がつらいのか」が見えにくくなります。
吸音材を貼っても、音が当たる場所を外していると変わりません
吸音材を貼ると、何かしら音は変わります。
でも、その変化が、いま困っている音に届いているとは限りません。
たとえば、耳に刺さっている音が天井から返っているのに、横壁だけに吸音材を貼っている。
声を邪魔している返りが机から来ているのに、背面の壁だけを処理している。
ピアノの高い音が前の壁から強く戻っているのに、部屋の隅だけを吸っている。
この場合、吸音材は貼ってあります。
でも、刺さっている音の反射先には届いていません。
だから、体感としてはこうなります。
「吸音したのに、まだ痛い」
「響きは少し減った気がするけれど、聴き取りやすくはない」
「部屋っぽさは減ったのに、音のきつさは残っている」
吸音材の量だけを見ていると、ここを外します。
見るべきなのは、枚数ではありません。
その音が、どの面に当たっているかです。
耳に刺さる音は、近い壁や硬い面からすぐ返っていることがあります
耳に刺さる音は、単に高い音が多いから起きるわけではありません。
高い音が、近い硬い面からすぐ返ってくる。
このとき、耳にはかなりきつく感じます。
ピアノの高い音が痛い。
ギターのアタックが前に飛びすぎる。
声のサ行がきつい。
スピーカーの中高域が壁から跳ね返る。
配信中、自分の声だけが部屋の中で近く暴れる。
こういうとき、壁だけを見ると足りないことがあります。
天井から返っているかもしれない。
床で跳ねているかもしれない。
机や譜面台が返しているかもしれない。
窓やドアの硬い面が、ちょうど耳の方向へ返しているかもしれない。
小さな防音室では、音源と面の距離が近くなります。
距離が近いと、返りも早く耳に来ます。
音が部屋に広がってから返るのではなく、出た直後に近くで跳ねる。
だから、音量以上に痛く感じることがあります。
聴き取りにくいのは、吸音不足だけとは限りません
聴き取りにくいとき、多くの場合「もっと吸音した方がいいのか」と考えます。
でも、いつもそうとは限りません。
返りが強すぎて、声の輪郭を邪魔している場合があります。
高い音だけが硬く返って、耳が疲れている場合があります。
逆に、必要な返りまで消えていて、声や楽器の芯が細くなっている場合もあります。
ローやローミッドだけが残って、言葉や音程が見えにくくなっている場合もあります。
同じ「聴き取りにくい」でも、部屋の中で起きていることは違います。
声がこもる。
でも、サ行は痛い。
ピアノの低い音は残る。
でも、高い音は耳に刺さる。
スピーカーの音量を下げると物足りない。
上げると部屋が苦しい。
こういう状態で吸音材をさらに足すと、痛い音は少し減っても、音の芯まで細くなることがあります。
逆に、吸いやすい高さの音だけが先に減って、低い音の濁りは残ることもあります。
だから、吸音不足かどうかをいきなり決めない方がいいです。
まず、どの音が残りすぎているのか。
どの音が消えすぎているのか。
どの面から耳に戻っているのか。
そこを見たいです。
見るべきなのは、音を出す位置と耳の位置です
防音工事後の部屋で音がつらいとき、僕がまず見たいのは、音を出す位置と耳の位置です。
どこで声を出すのか。
どこに楽器を置くのか。
スピーカーはどこを向いているのか。
椅子はどこにあるのか。
普段、耳はどの高さにあるのか。
そのうえで、周りの面を見ます。
正面の壁まで近いのか。
横壁が近いのか。
天井が低いのか。
床が硬いのか。
机が大きいのか。
窓やドアが耳の方向にあるのか。
背面に強く返る面があるのか。
吸音材が貼ってあるかどうかは、その後です。
すでに貼ってある吸音材が、音の返っている場所にあるのか。
それとも、あまり関係ない場所に貼られているのか。
貼ったことで、必要な返りまで消していないか。
そこを分けて見ます。
音の悩みは、材料だけでは読めません。
位置関係でかなり変わります。
同じ吸音材でも、音が当たる場所にあるかどうかで、体感は変わります。
同じ部屋でも、楽器の向き、スピーカーの角度、椅子の位置、机の有無で、耳に戻る音は変わります。
だから、音が刺さる部屋では、まず位置を見ます。
図面を見ると、反射しやすい場所が見えてきます
音の違和感は、言葉だけだと共有しにくいです。
「耳に刺さる」
「声が聴き取りにくい」
「部屋の中で音がきつい」
「吸音したのに変わらない」
こう言っても、その音がどこから返っているのかは、すぐには見えません。
でも、図面にすると見えてくることがあります。
音を出す位置。
耳の位置。
壁までの距離。
天井の高さ。
床の硬さ。
窓やドアの位置。
机や楽器の位置。
既に貼ってある吸音材の位置。
これを一枚の図面で見ると、どこが近すぎるのか、どの面から返りやすいのか、どこに吸音材を貼っても届きにくいのかが見えやすくなります。
図面は、答えを決めつけるものではありません。
でも、考える順番を間違えにくくしてくれます。
いきなり追加で吸音材を買う前に。
もう一度工事を考える前に。
スピーカーや楽器を変える前に。
まず、その部屋で音がどう進んで、どこで返って、どこで耳に近くなりすぎているかを見る。
そこから始めた方がいいです。
吸音材を足す前に、SOUND FLOWで図面確認しませんか

防音工事後に吸音材を貼っても、音が聴き取りやすくならない。
耳への刺さりが残っている。
部屋の中で声や楽器が扱いにくい。
その場合、次に見るべきなのは、吸音材の枚数だけではありません。
その音がどこに当たっているのか。
どこから耳に戻っているのか。
今貼ってある吸音材は、その反射先に届いているのか。
それとも、別の場所から返っている音を見落としているのか。
ここを見たいです。
SOUND FLOWでは、図面と使い方をもとに、音を出す位置、聴く位置、壁・天井・床・机からの返りを確認します。
音響性能を証明する解析図ではありません。
施工図でもありません。
でも、今の部屋で何が起きていそうかを、図面として外に出すことはできます。
防音工事をしたのに、部屋の中の音がまだつらい。
吸音材を貼ったのに、聴き取りやすさや耳への刺さりが直らない。
そう感じているなら、追加で貼る前に、一度SOUND FLOWで図面確認しませんか。
その吸音材が足りないのか。
場所が違うのか。
そもそも見ている反射先が違うのか。
まず、そこから見ます。