なぜDermot Kennedy「Outnumbered」の声は胸に響くのか

なぜDermot Kennedy「Outnumbered」の声は胸に響くのか

Dermot Kennedyの「Outnumbered」を聴くと、最初に来るのは、あの冒頭の声です。
あのシャウトは、ただ強いだけじゃない。
胸に響く。
でも同時に、どこか切ない。
その感じがなんとも言えません。

力強いのに、押しつけがましくない。
前に来るのに、ただ大きいだけではない。
まっすぐ届くのに、どこか影がある。
この曲の魅力は、たぶんそこにあります。

男性ヴォーカルの強さというと、太さとか、押し出しとか、声量とか、そういう言葉で語られやすい。
でも「Outnumbered」の声の良さは、そういう単純な強さだけでは説明しきれません。
むしろ、この曲で胸に来るのは、強さの中に切なさが残っていること だと思います。

だから、この曲は派手に鳴らせばいいわけではない。
ただ力強く出ればいいわけでもない。
その加減を間違えると、一番大事なものが抜けてしまう気がします。


あの冒頭の声を聴くと、ただ歌が始まったというより、もうその時点で感情が入っているのが分かります。
勢いがある。
でも、その勢いは明るく開くだけのものではなくて、少し痛みを含んでいる。
だから胸に残る。

この“胸に来る”感じは、単純に中低域が出ていればいいという話ではないと思います。
むしろ、声の芯がちゃんと立っていて、その上で余計な重さに埋もれないことの方が大事です。
重くしすぎると、この曲の切なさは鈍る。
強くはなっても、届き方が少し変わってしまう。

そのあとに続く語り口にも、すごく惹かれます。
ただメロディをなぞっているのではなく、何かストーリーを思い浮かばせる。
言葉の向こうに情景がある。
この感じがあるから、ただ“上手い声”では終わらないんだと思います。

声に表情がある。
しかも、その表情が派手すぎない。
少し抑えたところにある感情が、じわっと来る。
そこがこの曲の良さです。


この曲を聴くとき、音量についても少し独特だなと思います。
大きくすれば気持ちいい、というタイプの曲ではない。
たぶん、この曲には最適解の音量があります。

もちろん、そのポイントは人によって違うと思います。
でも少なくとも僕は、少し音量を抑え気味で聴く方が好きです。
その方が、この曲の切なさがちゃんと伝わる気がする。

音量を上げると、力強さは出やすいです。
でもこの曲は、力強さだけを前に出しすぎると、少し大事なものを失う。
胸に響くことと、切なさが残ること。
その両方があって初めて、この曲らしくなる。
だから少し抑えた音量の方が、声の感情が見えやすいと感じます。

これは好みもあると思います。
でも、ただ音圧で押し切るのではなく、
どの音量ならこの声の感情がいちばん自然に届くか
を探したくなる曲です。


低音もかなり大事です。
ただし、この曲では低音が多ければいいわけではない。
ベース音がこもってしまうと、少し残念な感じになります。

なぜかというと、この曲で欲しいのは、重さそのものより、
前へ進む感じを支える低音 だからです。
低音が遅いと、声の切なさや進み方を支えるのではなく、少し足を引っ張ってしまう。
そうなると、せっかくの胸に響く感じが鈍ってしまう。

だから、できれば早い低音が欲しい。
締まりすぎて硬くなるのも違うけれど、少なくとも、ぼんやり膨らむ低音ではもったいない。
この曲では、声の感情を邪魔しないスピード感が必要だと思います。

つまりこの曲で大事なのは、

  • 声が胸に響くこと
  • その切なさが残ること
  • 低音がそれを支えること
  • でも支えが重すぎて濁らないこと

です。

このバランスが崩れると、「Outnumbered」の良さは少し遠くなる気がします。


この曲を聴いていると、男性ヴォーカルの強さって、ただ太いとか、ただ前に出るとか、そういうことではないんだなと思います。
本当に欲しいのは、強さと切なさが同時に届くこと なんだと思います。

胸に響く。
でも、痛いほど強すぎない。
前に来る。
でも、ただ近いだけじゃない。
感情がある。
でも、押しつけがましくない。

この絶妙な加減があるから、「Outnumbered」は何度も聴きたくなる。
そして、この曲をちゃんと鳴らしたいと思う。

僕はこういう曲を聴くと、
ただ声が出ているだけでは足りないんだとあらためて思います。
声の後ろにある空気や、切なさの残り方や、低音の支え方まで含めて初めて、胸に来る。
そこまで鳴ってはじめて、この曲の良さが出る。


こういう“ただ上手く鳴る”では足りない曲に惹かれる方は、問い合わせ からご連絡ください。
DIVERは、そういう感情の届き方まで含めて、部屋と音を考えています。


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