
防音室を作りたい、という相談では、僕は最初にD値だけでは見ないです。
声を録りたいのか。
ベースを鳴らしたいのか。
ギターアンプを使いたいのか。
モニターでキックやベースを判断したいのか。
配信で声を聞き取りやすくしたいのか。
夜にも作業したいのか。
日中だけ、少し音を出せればいいのか。
鳴らしたい音が違えば、見る場所が変わります。
防音室という言葉だけで考えると、どうしても「どれくらい音が外に漏れないか」に寄ります。
もちろん、それは見ます。
家族、隣室、上下階、近隣に音がどう伝わるかは、防音室では避けて通れません。
ただ、防音室は音を閉じ込める箱ではありません。
その部屋で、声を録る。
ベースを弾く。
キックの下を判断する。
ボーカルの芯を聴く。
リバーブの余韻を見る。
スネアの胴とアタックを確認する。
自分の音が、外の環境でどう崩れるかを想像する。
そのための部屋です。
だから、防音室を作る前に、まず鳴らしたい音から見ます。
防音室を作る前に、まず「何の音を扱う部屋か」を見る
同じ防音室でも、声を録る部屋と、ベースを鳴らす部屋では見方が変わります。
声を録るなら、最初に気になるのは声の近さです。
壁や天井からすぐ返ってくる音が声の芯に重なると、録った声が狭く、硬く、詰まって聞こえることがあります。
口元ではちゃんと歌えている。
でも録った声を聴くと、部屋の近い返りが乗っている。
息や子音は出ているのに、声の胴が薄い。
少し大きく歌うと、部屋が先に鳴る。
こういう部屋では、防音できていても、録る場所としては扱いにくいです。
ベースを鳴らすなら、見る場所は変わります。
ベースのローが床へどう入るか。
ローミッドが部屋のどこで膨らむか。
音程が追えるか。
低い弦だけが大きく感じないか。
アンプの近くでは良くても、部屋の隅でボンと残っていないか。
ここを見ます。
モニターで制作するなら、また違います。
キックが前に出るか。
ベースの重心が見えるか。
ボーカルの芯が真ん中に立つか。
リバーブが奥へ逃げるか。
左右の音がスピーカーの間に張りつくだけになっていないか。
この部屋で音を判断できるのかを見ます。
防音室を作るとき、最初に必要なのは「どの防音性能にするか」だけではありません。
その部屋で、何の音を扱うのか。
まずここを決めないと、防音の目標も、部屋の中の響きも、機材の置き方も決まりません。
防音性能だけを先に決めると、部屋の音が置き去りになる
防音室を考えるとき、先に性能値を決めたくなることがあります。
D-50。
D-55。
D-60。
もっと高い防音性能。
厚い壁。
重いドア。
強い仕様。
数字があると、安心しやすいです。
でも、そこだけで決めると、部屋の中の音が置き去りになることがあります。
外に漏れにくい。
でも、中で声が詰まる。
ベースのローが膨らむ。
モニターを置いても、キックとベースの関係が見えない。
リバーブの余韻が部屋の返りに潰される。
スネアの胴が曇る。
ボーカルが前に来ない。
これは、防音性能が悪いという話ではありません。
防音性能と、部屋の中で音を扱うことを、別々に見てしまった結果です。
防音室は、壁を強くすれば終わりではありません。
壁が内側へ出る。
床が上がる。
天井が下がる。
ドアの位置が変わる。
換気や空調の経路が必要になる。
部屋の容積が変わる。
機材と耳の距離が変わる。
その変化は、部屋の中の聴こえ方にも入ってきます。
元の部屋では置けていたモニターが、完成後の内寸では壁に近すぎる。
ベースアンプを置く場所が、部屋の角に寄りすぎる。
ボーカルを録る位置が、壁や天井に近くなりすぎる。
机を入れたら、声やモニターの音に近い返りが重なる。
こうなると、防音室はできているのに、音を扱う部屋としては苦しくなります。
だから、性能値を先に固定しすぎない方がいいです。
鳴らしたい音。
使う音量。
使う時間帯。
聴く位置。
録る位置。
機材の置き方。
床や壁へ入る低い音。
外へ出したくない音。
これらを一緒に見て、防音の目標を決めます。
声を録る部屋と、ベースを鳴らす部屋では見る場所が違う
声を録る部屋では、まず声の芯を見ます。
ボーカルが近く詰まっていないか。
壁からすぐ返ってくる音が、口元の音に重なっていないか。
余韻が残りすぎて、言葉がにじんでいないか。
逆に、吸われすぎて声が薄くなっていないか。
声は、部屋の近い返りがすぐ分かります。
録った瞬間はきれいに感じても、ミックスで前に出そうとしたときに、部屋の硬い返りが気になることがあります。
コンプをかけると、壁の近さが一緒に持ち上がる。
リバーブを足しても、元の声がすでに部屋に張りついていて奥へ逃げない。
ボーカルの芯が前に来ない。
この場合、防音できているかだけでは足りません。
声がどこに当たり、どこから返って、マイクにどう入るかを見ます。
ベースを鳴らす部屋では、低い音の入り方を見ます。
ベースの音は、空気中で聴こえるだけではありません。
床や壁へ入ります。
部屋の角で膨らみます。
下階や隣室で、低い唸りとして残ることがあります。
自分の位置では気持ちよく聴こえている。
でも、部屋の外ではローだけが残る。
ベースラインの音程が、自分の席では見えにくい。
低い弦だけが大きく感じる。
アンプの音というより、部屋の鳴りを聴いている。
こういうことが起きます。
この部屋では、ベースをどれくらい鳴らすのか。
アンプで鳴らすのか。
DIとヘッドホンを併用するのか。
モニターで小さく確認するのか。
日中だけ鳴らすのか。
夜にも使うのか。
そこまで使い方を分けて見ます。
声の部屋と、ベースの部屋は同じではありません。
鳴らしたい音が違えば、防音室の設計条件も変わります。
モニターで判断するなら、外に漏れないことだけでは足りない
自宅スタジオでモニターを使うなら、防音室の中で音を判断できるかを見ます。
外に漏れないことは大事です。
でも、それだけでは制作の部屋にはなりません。
キックの下が見えるか。
ベースの重心が分かるか。
スネアの胴が見えるか。
ボーカルの芯が前に来るか。
リバーブが奥へ逃げるか。
左右の音が、スピーカーの位置から離れて聴こえるか。
ここを見ます。
防音室は、完成後に部屋が少し小さくなることがあります。
壁が近くなる。
天井が近くなる。
床が上がる。
机と壁の距離が詰まる。
モニターと耳の距離が変わる。
この状態で何も考えずにモニターを置くと、近い返りが音に重なります。
ボーカルが真ん中にいるようで、前に来ない。
キックのアタックは見えるのに、下が曖昧。
ベースラインの一部だけ大きい。
リバーブを足しても、奥ではなく手前で曇る。
音がスピーカーの間に張りつく。
こういう違和感は、機材だけで起きているわけではありません。
モニターの位置。
耳の高さ。
机の面。
壁との距離。
床と天井の近さ。
防音後の内寸。
低い音の溜まり方。
ここが重なっています。
防音室を作るなら、完成してからモニターを置くのではなく、モニターで何を判断したいかを先に見たいです。
低い音は、空気だけでなく床や建物にも入る
防音室で特に見落としやすいのが、低い音です。
ベース。
キック。
ウーファー。
小型アンプのロー。
練習音源の低い成分。
モニターから出る下の支え。
低い音は、壁やドアから外へ抜ける音としても見ます。
同時に、床や建物へ入る動きとしても見ます。
部屋の中では小さく感じる。
でも下階でドンと聞こえる。
隣室では高い音は聞こえないのに、低い唸りだけが残る。
音量を下げても、床や壁に低い動きが残る。
こういう場合、音量だけを見ても分かりにくいです。
その低い音が、空気中を伝わっているのか。
床へ入っているのか。
壁や天井に回っているのか。
建物の中を通って別の場所で聞こえているのか。
ここを分けます。
防音室を作るとき、低い音をどう扱うかを後回しにすると、あとで苦しくなります。
壁は強い。
ドアも重い。
でも、床から低い動きが抜ける。
部屋の中でローだけが膨らむ。
外ではドンという感じだけが残る。
中ではベースの音程が見えない。
これは、防音と室内の低音を別々に見たときに起きやすいです。
DIVERでは、低い音を「漏れる音」と「部屋の中で判断する音」の両方から見ます。
外へ出したくない。
でも、中ではキックやベースを判断したい。
ローをただ消すのではなく、扱える状態にしたい。
この見方が必要です。
音量、時間帯、使い方まで設計条件にする
防音室は、音だけでなく使い方も見ます。
いつ使うのか。
どれくらいの音量で使うのか。
何時間使うのか。
毎日使うのか。
週末だけ使うのか。
夜にも使うのか。
家族がいる時間に使うのか。
隣室や上下階に人がいるのか。
これで、防音室の考え方は変わります。
同じベースでも、常にアンプで鳴らすのか、短時間だけアンプで確認するのか、普段はDIとヘッドホンで弾くのかで違います。
ボーカルでも、本歌を大きく録るのか、仮歌やナレーション中心なのかで違います。
モニターでも、大きく鳴らしてミックスするのか、小音量でバランスを見るのか、ウーファーまで使うのかで違います。
防音室の設計は、単に「最大音量に耐える箱」を作る話ではありません。
現実にどう使うのか。
その使い方で、どの音が外へ出るのか。
どの音が床へ入るのか。
どの音を室内で判断したいのか。
どの時間帯に、どこまで許容できるのか。
ここを見ます。
使い方を曖昧にしたまま防音室を作ると、過剰になることもあります。
逆に、足りなくなることもあります。
そして一番困るのは、防音としては成立しているのに、音を扱う部屋として使いにくくなることです。
だから、鳴らしたい音と使い方を最初に分けます。
防音室は、音を閉じ込める箱ではなく、音を扱う部屋として見る
防音室を作る目的は、ただ外に漏れないようにすることではありません。
声を録るなら、声が前に来る部屋にしたい。
ベースを鳴らすなら、音程と重心が見える部屋にしたい。
モニターで制作するなら、キック、ベース、ボーカル、リバーブを判断できる部屋にしたい。
リスニングするなら、音がスピーカーに張りつかず、奥行きや余韻が見える部屋にしたい。
そのために防音室を作るはずです。
外に漏れない。
でも中で音が詰まる。
外には静か。
でも中ではローが回る。
音は止まっている。
でも音楽の判断ができない。
それでは、音を扱う人の部屋としては足りません。
防音と室内の響きは、別々に考えない方がいいです。
外へ出る音。
床や建物へ入る振動。
部屋の中で返ってくる音。
録る位置。
聴く位置。
機材の位置。
使う音量。
使う時間帯。
これらが同じ部屋の中で重なります。
防音室は、性能の箱ではなく、音を扱う場所です。
だから、最初に鳴らしたい音から設計します。
DIVERでは、鳴らしたい音から防音・響き・振動を一体で見る

防音室を作りたいと思ったら、最初にD値や工法だけで決めない方がいいです。
声を録りたいのか。
ベースを鳴らしたいのか。
モニターでキックやベースを判断したいのか。
リバーブの余韻まで見たいのか。
夜にも使いたいのか。
日中だけ音を出せればいいのか。
鳴らしたい音によって、見る場所は変わります。
DIVERでは、防音室を性能値だけでは見ません。
その音が、どこから出るのか。
どこに当たるのか。
どこで返るのか。
床へ入るのか。
壁や建物へ回るのか。
どこで聴かれるのか。
部屋の中で、判断できる音になっているのか。
ここを見ます。
防音室は、外へ音を出さないためだけの箱ではありません。
自分の音を扱うための部屋です。
声の芯を録りたい。
ベースの重心を見たい。
キックの下を判断したい。
ボーカルを前に出したい。
リバーブの奥行きを聴きたい。
モニターで迷わず判断したい。
そのためには、鳴らしたい音から防音、響き、振動を一体で見る必要があります。
僕たちは、そこから設計します。
防音室を作る前に、まずその部屋で何を鳴らしたいのか。
その音をどこで聴き、どこで録り、どこまで外へ出したくないのか。
その音が床や壁や建物にどう伝わるのか。
DIVERでは、鳴らしたい音から防音室を見ます。
音を閉じ込めるためではなく、自宅スタジオで音を扱える状態にするために、部屋の中と外を一体で設計します。