記憶に残るイベントをつくる、音と空間のブランド体験設計


イベントの印象は、ステージや装飾の華やかさだけでは決まりません。

会場に入った瞬間に聞こえる音。
展示へ向かうまでの動線。
商品説明を聞く場所。
来場者同士が会話する距離。
イベントを出るときに残る余韻。

来場者は、目にしたものだけでなく、会場で聞いた音や歩いた順序、その場所で感じた空気を含めて、イベント全体を記憶します。

だからこそ、イベントでブランドの世界観を伝えるためには、装飾、映像、音響、照明を個別に配置するのではなく、来場者がどのような順序でブランドを体験するかから設計することが重要です。

音と空間を一体で考えることで、イベントは情報を伝えるだけの会場から、ブランドの価値を体感してもらう場所へ変わります。

contents list

イベントのブランド体験は会場装飾だけでは完成しない

ブランドイベントでは、ロゴ、グラフィック、什器、映像、照明など、視覚的な演出が重視されます。

しかし、見た目が印象的な会場でも、音環境や空間構成に問題があると、来場者の体験は大きく損なわれます。

たとえば、次のような状態です。

  • 会場内で声が反響し、説明が聞き取りにくい
  • BGMと映像の音声が重なり、どちらにも集中できない
  • スピーカーの近くと遠くで音量差が大きい
  • 周囲の会話が耳に入り、商談や商品説明に集中できない
  • 入口から展示への流れが分かりにくい
  • 立ち止まる場所がなく、展示を十分に見てもらえない
  • 会場全体が騒がしく、ブランドが意図する上質感が伝わらない

このような問題は、音響機器の性能や装飾の完成度だけでは解決できません。

イベントの目的、来場者の人数、会場の形状、展示の位置、説明する場所、滞在時間を踏まえ、音と空間の関係を設計する必要があります。

音と空間からイベントのブランド体験を設計する

イベントにおけるブランド体験設計では、最初に「何を設置するか」を決めるのではありません。

まず考えるべきなのは、来場者に何を感じてもらい、どのような印象を持ち帰ってもらうかです。

たとえば、同じ商品発表会でも、目指す体験によって設計は異なります。

先進性を伝えたいのか。
信頼感を伝えたいのか。
親しみやすさを感じてもらいたいのか。
静かに商品と向き合ってもらいたいのか。
人が集まり、会話が生まれる場にしたいのか。

目指す体験が決まることで、必要な音、映像、照明、展示方法、動線、滞在場所が見えてきます。

音と空間の設計では、次のような来場者の行動を一つの流れとして考えます。

  • 会場の存在に気づく
  • 入口でイベントへの期待を持つ
  • 会場に入り、ブランドの第一印象を受け取る
  • 展示や商品へ自然に導かれる
  • 説明を聞き、映像を見る
  • スタッフや他の来場者と会話する
  • ブランドの印象を持って退出する

イベント全体を時間軸で設計することで、演出が単発で終わらず、一つのブランド体験としてつながります。

入場から退出まで、来場者の体験を設計する

会場に入る前の期待感をつくる

ブランド体験は、来場者が会場に入る前から始まっています。

入口の見え方、サインの位置、照明の明るさ、会場内から聞こえてくる音によって、来場者が抱く期待は変わります。

会場の外まで大きな音が漏れていれば、活気のあるイベントとして伝わる場合もあります。一方で、落ち着きや高級感を伝えたいイベントでは、音漏れが世界観を崩す原因になることがあります。

入口でどの程度まで会場内を見せるのか。
音を外まで届けるのか。
入場した瞬間に初めて世界観を見せるのか。

ブランドの性格に合わせて、期待感のつくり方を選ぶ必要があります。

入場した瞬間の第一印象を設計する

会場に入った瞬間、来場者は短い時間でイベント全体の印象を判断します。

このとき重要になるのが、最初に目に入るものと、最初に聞こえる音の関係です。

映像では静かな世界観を見せているのに、近くで大きなBGMが鳴っている。
落ち着いた商品展示なのに、遠くのステージ音が強く届いている。

このように、視覚と聴覚の印象が一致していないと、ブランドのメッセージが伝わりにくくなります。

入口付近では、象徴となる展示、照明、映像、音を組み合わせ、説明を読まなくてもブランドの方向性が伝わる状態を目指します。

会場を巡る順序を空間でつくる

展示会やポップアップでは、来場者がどこから見始め、どの順序で会場を巡るかによって、理解の深さが変わります。

すべてを一度に見せるのではなく、ブランドストーリーに沿って体験を分ける方法もあります。

たとえば、

  • 入口でブランドの背景を伝える
  • 中央で主力商品を体験してもらう
  • 奥で詳しい説明や映像を見てもらう
  • 最後にスタッフと会話する場所をつくる

という流れです。

床材、天井、壁面、照明、什器の向き、音の聞こえる方向によって、来場者を自然に次の場所へ導くことができます。

サインだけに頼らず、空間そのものが行動を案内する設計が必要です。

説明を聞く場所と会話する場所を分ける

イベントでは、プレゼンテーション、商品説明、商談、来場者同士の会話など、複数の音が同時に発生します。

これらを同じ場所で成立させようとすると、音量を上げる競争が起こります。

ステージの音量を上げる。
周囲が聞き取りにくくなり、会話の声が大きくなる。
会場全体がさらに騒がしくなる。

この状態では、音響設備を追加しても根本的な改善にはなりません。

プレゼンテーションを聞く場所、展示を見る場所、スタッフと会話する場所を空間的に分け、それぞれに必要な音の大きさと距離を設定することが重要です。

イベントを出た後に残る余韻を設計する

イベントの最後にどのような体験を残すかも、ブランドの記憶に影響します。

出口付近に商品情報やメッセージを配置する。
入場時とは異なる音を使う。
次の行動につながる展示や案内を見せる。

退出時の体験を設計することで、イベントで感じた印象を、来場後の行動につなげやすくなります。

来場者に何を覚えて帰ってもらいたいのか。
イベント後に何をしてもらいたいのか。

そこから逆算して、出口までの体験を設計します。

イベントの印象を左右する音の設計

BGMは雰囲気ではなく、体験の背景として考える

イベントのBGMは、選曲だけで決まるものではありません。

重要なのは、

  • どこから聞こえるか
  • どの程度の音量で再生するか
  • 会場内で音量差が生まれていないか
  • 映像音声やナレーションと干渉していないか
  • 来場者の会話を妨げていないか
  • 時間帯や場面に合わせて変化しているか

という点です。

BGMが前に出すぎると、商品説明や会話を邪魔します。反対に、音量が小さすぎても、会場のざわつきや空調音だけが目立つ場合があります。

BGMは、ブランドの世界観を伝えながら、来場者の行動や感情を支える背景として設計します。

声を聞き取りやすくするために反射音を確認する

イベント会場では、床、壁、天井の仕上げによって声の聞こえ方が変わります。

コンクリート、ガラス、金属、硬い床材が多い空間では、声や音楽が繰り返し反射しやすくなります。

音量そのものは十分でも、反射音が重なることで言葉の輪郭がぼやけ、説明が聞き取りにくくなることがあります。

そのため、スピーカーの音量を上げる前に、

  • 声がどの方向へ届くか
  • どの面で強く反射しているか
  • 会場のどこで聞き取りにくくなるか
  • 来場者が増えたときに音環境がどう変わるか

を確認する必要があります。

残響時間は、会場の音の残り方を確認するための判断材料です。

数値を小さくすること自体が目的ではありません。説明の聞き取りやすさ、BGMの濁り、物音の硬さ、会場の活気を含めて、イベントに適した音の残り方を考えます。

周囲の会話が注意を奪わないようにする

人は、意味の分かる言葉が聞こえると、意識していなくても内容を追いやすくなります。

近くの商談やスタッフの説明がはっきり聞こえる環境では、目の前の商品や会話への集中が途切れます。

特に、企業イベント、新商品発表会、展示会では、説明の内容や商談のプライバシーにも配慮が必要です。

会話する場所の距離を確保する。
展示や壁面を使って音の伝わり方を変える。
背景音を利用して、離れた会話の内容を追いにくくする。

単純に静かにするのではなく、聞かせたい声と、明瞭に伝えすぎない声を分けて考えます。

音を吸収しすぎず、イベントの活気を残す

吸音は、反響や聞き取りにくさを改善する有効な方法です。

しかし、吸音量を増やしすぎると、人の気配や会場の高揚感まで弱くなることがあります。

イベントでは、すべての音を抑えるのではなく、

  • プレゼンテーションの声は明瞭に届ける
  • 展示エリアではBGMの濁りを抑える
  • 商談エリアでは周囲の会話を目立ちにくくする
  • 交流エリアでは適度な活気を残す

というように、場所ごとに残したい音と抑えたい音を分けることが重要です。

イベントのブランド体験をつくる空間設計

ブランドを感じる入口をつくる

入口は、イベントの内容を説明する場所ではなく、ブランドの世界観へ切り替わる境界です。

ロゴや看板を置くだけではなく、視線の抜け方、照明の明暗、素材、音の変化によって、外部空間とは異なる体験をつくります。

来場者が自然に動ける動線をつくる

来場者が迷う会場では、展示を見る前に行動への負担が生まれます。

一方で、誘導サインを増やしすぎると、会場全体が説明的に見えることがあります。

展示の向き、通路幅、視線の先、音の聞こえる位置を使い、来場者が自然に次の体験へ進める構成をつくります。

展示と来場者の距離を設計する

商品を近くで見てもらうのか。
一定の距離を保って全体を見てもらうのか。
実際に触れて体験してもらうのか。

展示するものによって、適切な距離は異なります。

展示物の大きさだけでなく、人が立ち止まったときに通路を塞がないか、説明を聞く人が集まったときに混雑しないかまで検討します。

滞在と会話が生まれる場所をつくる

イベントの成果は、来場者数だけでは判断できません。

商品を十分に見てもらえたか。
説明を聞いてもらえたか。
担当者との会話が生まれたか。
ブランドへの理解が深まったか。

そのためには、立ち止まる場所、座る場所、会話する場所を意図的につくる必要があります。

人が滞在しやすい場所を設けることで、イベントでの接触時間を増やし、ブランドとの関係を深めやすくなります。

音・映像・照明が競合しない配置にする

イベントでは、映像、スピーカー、照明、展示物が同じ場所に集まりやすくなります。

しかし、それぞれを個別に配置すると、映像を見たい場所でスピーカーが視界を遮る、照明の位置と展示が合わない、複数の映像音声が重なるといった問題が起こります。

機材の配置から考えるのではなく、来場者がどこに立ち、どこを見て、何を聞くかを基準に、音・映像・照明を配置します。

イベントの種類によって設計する体験は異なる

新商品発表会

新商品の特徴を理解してもらうだけでなく、その商品がどのような価値観から生まれたのかを体験として伝えます。

プレゼンテーション、商品展示、体験スペース、商談場所を分け、情報量と音量を管理する必要があります。

展示会・見本市

周囲のブースから音や視線が入る環境では、自社の展示エリアに意識を向けてもらう設計が必要です。

大音量で注目を集めるのではなく、入口の見せ方、展示の高さ、音の方向、スタッフとの接点を組み合わせます。

ポップアップイベント

限られた期間と空間の中で、ブランドの世界観を短時間で伝える必要があります。

内装を大きく変更できない会場でも、仮設壁、展示什器、照明、映像、音を組み合わせることで、既存空間とは異なる体験をつくれます。

店舗イベント

既存店舗の営業環境を活かしながら、通常とは異なる体験を加えます。

通常営業との音量差、周辺への音漏れ、商品陳列とイベント動線の関係を考える必要があります。

企業イベント・周年イベント

企業の歴史、価値観、これからの方向性を、社員や取引先に共有する場です。

映像やスピーチだけに頼らず、会場全体で企業らしさを感じられる体験を設計します。

映画・音楽・アート関連イベント

作品そのものが持つ音や映像を損なわない環境が必要です。

再生設備の性能だけではなく、周囲の騒音、反射音、鑑賞位置、展示順序を含めて設計します。

イベント会場を確認するときの設計項目

イベント計画では、会場の広さや収容人数だけでなく、次の項目を確認します。

  • 会場の形状と天井高
  • 床、壁、天井の仕上げ
  • 残響時間と反射音
  • 空調音や外部騒音
  • 会場外への音漏れ
  • 電源容量と機材設置位置
  • スピーカーと来場者の距離
  • 映像を見る位置と視線
  • 展示物と通路の関係
  • 入口から退出までの動線
  • 説明、商談、交流が行われる場所
  • 来場者数が増えたときの混雑
  • 搬入、設営、撤去の条件

会場の条件を早い段階で確認することで、企画が進んだ後の大きな変更や、当日の音響トラブルを減らせます。

音と空間を一体で考えることでイベントの印象は変わる

イベントでは、音響、映像、装飾、照明、展示施工がそれぞれ別の担当者に分かれることがあります。

専門分野ごとに分けること自体は問題ではありません。

ただし、来場者が体験するイベントは一つです。

映像は映像、音響は音響、装飾は装飾として計画すると、個々の完成度は高くても、全体の印象が分断されることがあります。

必要なのは、最初に体験の中心を決めることです。

誰に来てもらうのか。
何を感じてもらうのか。
どこで立ち止まってもらうのか。
何を聞いてもらうのか。
どのような記憶を持ち帰ってもらうのか。

その答えをもとに、音、映像、照明、展示、動線を一つの体験として設計します。

音と空間から、イベントのブランド体験を設計します

HAGANEでは、新商品発表会、展示会、ポップアップイベント、企業イベント、店舗イベントなどを対象に、音と空間からブランド体験を設計します。

会場装飾だけではなく、

  • イベントコンセプト
  • 会場レイアウト
  • 来場者動線
  • 展示計画
  • 音響計画
  • BGM計画
  • 映像設備
  • 照明計画
  • 会話環境
  • 会場施工

まで、来場者の体験を基準に検討します。

会場が決まる前の企画段階から、既存会場の音環境確認、レイアウト変更、音響・映像設備の計画までご相談いただけます。

ブランドとしてイベントで伝えたい印象や、現在感じている課題をお聞かせください。

イベント設計、ブランドデザインの対応エリア

イベントにおける音響・映像・空間デザインから、会場施工まで対応しています。

関西エリア

大阪府・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県

東海エリア

三重県・岐阜県・愛知県・静岡県

新商品発表会、展示会、ポップアップイベント、企業イベント、店舗イベントなど、企画段階からご相談いただけます。

会場の条件や開催規模に応じて、音・映像・展示・動線・空間を一体で設計します。

対応エリア外についても、イベントの内容や施工条件により対応できる場合があります。

音と空間から、来場者の記憶に残るブランド体験をつくります。

この記事を書いた人

建築士として、空間デザイン、音響映像デザイナーとして。
音と空間が、店の印象や人の行動をどう変えるのか。
マーケティング、ブランディングの視点も加えながら、
HAGANEの設計思想を、青川の言葉で発信しています。

contents list