防音室で、David Guetta『Titanium』を”飼いならす”。6畳間でEDMの爆音と煌めきを両立させる

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その防音室で、”Titanium”は泣いているか

再生ボタンを押した瞬間、訪れる静寂。 その闇の中から、Sia(シーア)のあのか細くも強靭なウィスパーボイスが立ち上がる。

“You shout it out, but I can’t hear a word you say…”

透明度が高く、どこまでも突き抜けていくような高音域(High Frequency)。
そこからビルドアップしていくシンセサイザーの粒立ち。
そして、David Guetta(デイビッド・ゲッタ)が解き放つ、全てを薙ぎ払うようなエレクトリックな重低音(Heavy Bass)のドロップ。

『Titanium』 この楽曲は、現代のオーディオシステム、そしてそれを鳴らす「部屋」にとって、最も美しく、最も過酷な試金石だ。※あくまでも僕の意見なのですが。

もしあなたが、一般的な防音室や、吸音材を貼り付けただけの自室でこの曲を聴いているなら、残念ながらその感動の半分も受け取れていない可能性がある。
Siaの声は伸びを失って窒息し、ゲッタのベースラインは輪郭を失い、ただ不快に唸るだけの「騒音」に変わっていないだろうか?

僕たちは、防音と小規模空間音響のスペシャリストです。
断言しますが、EDM、特に『Titanium』のようなダイナミックレンジの広い楽曲を6畳〜10畳程度の小規模空間で鳴らすのは、オーケストラを録音するよりも難しい。

なぜ、あなたの部屋では音が死ぬのか。

意図された音を正しく鳴らす」という目的において、やるべきことは変わらない。

エレクトリックな音を、ただの騒音にしてはいけない。
そして、過度な吸音でその鋭さを殺してもいけない。

どうすれば、6畳という限られた空間で、この破壊的なエネルギーを制御し、最高のパフォーマンスを引き出せるのか? 答えは、「音を殺す」のではなく「音を整列させる」という建築音響学的アプローチにあります。

40Hzの定在波との戦い、そして高音域の拡散。
David Guetta(デイビッド・ゲッタ)の『Titanium』をベースの最高の音を獲得するためにすべきことは?

考察します。


1. 「6畳間」という物理的な牢獄

まず、残酷な現実から話を始めなければいけません。 日本の住宅事情においてスタンダードな「6畳(約10平米)」という空間は、音響工学的に見ると「低音にとっての牢獄」なのです。

音の「渋滞」が感動を濁らせる

音とは空気の波です。
高音は波が細かく、低音は波が長い。

『Titanium』のドロップで鳴り響く強烈なキックドラムやサブベース。
この帯域(40Hz〜60Hz)の波の長さ(波長)が何メートルあるかご存知ですか?

答えは、約8.5メートルです。

想像してみてください。
長さ3.6メートル(仮定)しかない6畳間に、長さ8.5メートルの巨大な「音の波」を押し込もうとしている状況を。 入りきらない波は、壁にぶつかって折り返し、新しくスピーカーから出た波と正面衝突する。

これが「定在波(ていざいは)」、いわゆる「ブーミング」の正体なのです。

※ 定在波 (Standing Wave): 閉空間(部屋)において、特定の周波数の音が壁面反射によって重なり合い、空間的にエネルギー分布が固定化される「物理現象」です。

ブーミング (Booming): 定在波の影響により、特定の低音が過剰に響いたり、いつまでも音が消えずに他の音をかき消したりする「音響障害(聴感上の不快感)」のことです。

部屋の特定の場所で低音が異常に膨らんだり、逆にかき消し合ってスカスカになったりする。 この状態では、ゲッタが意図した「心臓を叩くようなタイトなキック」は聴こえないのです。
聴こえるのは、部屋全体が共振して「ボーーー」と唸る、不快な振動音だけ。

多くの人はこれを「スピーカーのパワー不足」だと勘違いをしてしまうのです。
違うのです。

部屋が音を歪めているんです。


2. 防音室の罠:「吸音過多」がSiaを殺す

「音が悪いなら、吸音材を貼ればいい」 これは、ネット上のDIY記事でよく見る、最も危険なアドバイスです。

特に防音室を作ろうとする人は、「音を漏らしてはいけない」という恐怖心から、壁一面にグラスウールやスポンジ系の吸音材を貼ってしまいがちです。
確かに、吸音材を貼れば音は静かになります

。定在波も多少は収まるかもしれない。

ですが、その代償はあまりに大きい。 「高音域のデッド」をめねいてしまいます。

エレクトリックな輝きは「反射」に宿る

Siaの突き抜けるようなボーカルや、EDM特有のジャリッとしたシンセサイザーの質感(倍音成分)。
これらは「高音域」に属し、非常にエネルギーが弱い。
壁一面の柔らかい吸音材は、低音という猛獣を捕まえる前に、このか弱い高音たちを根こそぎ吸い取ってしまう。

結果、どうなるか。
まるで布団の中で聴いているような、モゴモゴとした、覇気のない音になる。
これを専門用語で「デッド(Dead)な空間」と呼びます。

『Titanium』の魅力である、あのクリスタルのような透明感や、空間を切り裂くようなスピード感は、適度な「反射音」がないと成立しないのです。

低音は暴れます。

高音はすぐ消えてしまします。


狭い防音室でEDMを鳴らすということは、この矛盾する二つの要素を同時に解決しなければならない、極めて難易度の高いパズルなのです。


3. 解決策A:低音を「止める」のではなく「制動する」

では、DIVERはどう設計するのか。
まずは低音の処理です。

ここには「振動の絶縁」「選択的吸音」という二つのアプローチがあります。

床を浮かせる(フローティング構造)

EDMの重低音は、空気だけでなく「床や壁」を直接揺らす。 これを隣の部屋に伝えないために、僕たちは部屋の中にもう一つの部屋を作る「浮き床構造」を採用する必要があります。
特殊な防振ゴムの上に床を構築し、物理的に建物の躯体と縁を切る。
これにより、どれだけサブウーファーを鳴らしても、その振動エネルギーはゴムが熱に変えて吸収し、階下には伝わらない構造にします。

狙った周波数だけを吸う「罠」を仕掛ける

次に、部屋の中で暴れる定在波です。厄介です。

先ほど「吸音材の貼りすぎはダメだ」と言いましたが、吸音自体は必要です。

重要なのは「低音だけを吸う」こと。

通常のスポンジではなく、DIVERオリジナルの吸音板やハイブリッドデュフューザーを配置します。

これは特定の周波数(例えばTitaniumのキックの帯域である50Hz付近)にだけを吸音し、そのエネルギーだけをピンポイントで吸い取る装置です。
これにより、高音は殺さずに、低音の「膨らみ」だけを綺麗に刈り取ります。

結果、驚くほどタイトで、速い低音が手に入いります。


4. 解決策B:高音を「散らす」 —— アピトン合板の魔術

低音を抑え込んだら、次はSiaの声を救出する。 ここで僕たちが最もこだわるのが、「拡散(Diffusion)」という技術だ。

音を宝石のように散りばめる

狭い部屋で、広いホールのような広がりを感じさせるには、壁に当たった音を「吸う」のではなく、四方八方に細かく「散らす」必要がある。 これにより、耳に届く反射音が複雑になり、脳は「ここは広い空間だ」と錯覚します。

このためにDIVERが採用しているのが、「アピトン合板」を用いた独自のハイブリッドディフューザー(拡散体)です。
アピトンは、トラックの荷台や枕木にも使われるほど、極めて硬く、重い木材です。
この圧倒的な硬度が、EDMの鋭い電子音を受け止め、減衰させることなく、美しい火花のように空間全体へ撒き散らします。

天井という「空」を作る

さらに重要なのが天井です。
僕たちなら天井に、あえて「アルミパンチング(有孔金属板)」を採用します。
金属の硬質な反射音は、EDMのメカニカルな音色と相性が抜群です。

パンチングの穴が適度に音を逃がしつつ、表面のアルミがSiaの声をキラキラと反射させる。
見上げれば、インダストリアルな金属の天井。そこから降り注ぐ音のシャワーは、まさに『Titanium』のMVの世界観そのものなのです。


結論:防音室は「我慢する場所」ではない

音が漏れなければ、それでいいのか? 近所に怒られなければ、それで満足か?

違います。
僕たちが提案するのは、「解放」です。

40Hzの重低音を完全に制動し、隣室への振動を遮断する。 同時に、計算された拡散体によって、6畳間を無限のサウンドステージに変える。

そこで鳴らされる『Titanium』は、あなたが今まで聴いてきたものとは別物になるはずです。
Siaのブレスが耳元で鳴り、次の瞬間、物理的な風圧を伴ったビートが体を貫く。

だが、その爆音は、部屋の外には一切漏れていない。

「静寂の中に、熱狂を作る」

もしあなたが、ただの防音室ではなく、音楽の魂を100%引き出すための「コックピット」を求めているなら。 一度、Diverの扉を叩いてみてほしい。 あなたの好きなあの曲の、本当の音を聴かせます。


【お問い合わせ・音響設計のご相談はこちら】
あなたの部屋のサイズと、最も聴きたい「一曲」を教えてください。その曲を最高に鳴らすための設計図を、僕たちが描きます。

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この記事を書いた人

DIVER 開発責任者 / 建築士 重度のオーディオファイル兼シネマフリーク。「なぜ、いい機材を買っても映画館の感動が得られないのか?」という疑問から、日本の住宅の音響的欠陥に絶望。「欲しい部屋がないなら、発明するしかない」という狂気的な動機でDIVERプロジェクトを始動。現在も自身の「究極の視聴環境」を求めてアップデートを繰り返している。好きな言葉は「S/N比」と「没入」。

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