「ずっと家にいると、頭が重い感じがする」
「冬になると喉が乾燥して痛い。でもエアコンはそんなに強くしていないのに…」
これらは、実際に僕が受けたご相談の声です。
そして共通していたのは──
「24時間換気はちゃんとついているはずなんですけど…」
という言葉。
じつは、24時間換気が“ある”だけでは、健康的な空気は生まれません。
今日は、家の空気がなぜ機能不全に陥るのか、その構造と本質をお話しします。
そもそも「空気の質」を意識したことはありますか?
“空気の話”というと、多くの人が
- 花粉
- ウイルス
- 加湿・除湿
あたりをイメージします。
でも、もっと根本的に──
「家の中の空気が入れ替わっていない」
「息を吸うたびに、よどんだ空気を吸っている」
という状態が続いているとしたら、どう感じますか?
換気は“設置”ではなく“流れ”がすべて
24時間換気といえば、「給気口」と「排気ファン」がセットでついているもの。
でもここに落とし穴があります。
実際に現場で見てきた中で、こんな例が多くありました:
- フィルターがホコリで完全に詰まっていて、給気できていない
- 廊下のドア下にスリットがないため、空気が部屋を通過しない
- 換気の出口が湿気のこもるクローゼットやトイレに偏っている
つまり、換気システムが“空気の通り道として設計されていない”家が多すぎるのです。
「24時間換気=健康住宅」とは限らない
国の基準では、建築基準法で24時間換気の設置が義務化されています。
しかし、それは「換気装置があること」が義務なだけ。
ちゃんと空気が動いているか?までは問われていません。
僕は、こうした換気の“空洞化”こそ、
現代の不調の温床だと感じています。
- 朝起きても頭がスッキリしない
- 喉が乾燥しやすく、子どもが咳をする
- 帰宅したときの家の“におい”が取れない
これらの多くは、“換気があるはずの家”で起きているのです。
僕が実際に経験した「換気の罠」
以前、築10年の住宅リノベーションを担当したとき、住まい手の奥さまがこう言いました。
「2年前からずっと、頭がボーッとする日が多くて、在宅ワークも集中できないんです」
調べてみると──
- 給気口が外部の防虫フィルターで完全に目詰まり
- 換気扇が常時運転ではなく、トイレ使用時のみ稼働設定
- ドアの下にスリットがないため、各部屋が密閉状態
結果、“空気が流れていない家”になっていたんです。
換気経路を整えてあげただけで、
「なんだか呼吸がラクになった気がします」
という言葉をいただきました。
空気の質を整えるための3つの視点
① 給気・排気の“道筋”を確認する
単に「換気扇がある」ではなく、
- どこから空気が入り
- どの部屋を通り
- どこへ抜けていくのか?
この空気の旅路を意識することが、設計・施工・メンテナンスのすべてに必要です。
② フィルターとスリットを“掃除できる状態”に
換気が機能しなくなる原因の7割は、ホコリ詰まりです。
外部給気口、室内の吸気グリル、ドアのスリットなど、
住まい手が自分で掃除できる設計になっているか?が大切です。
③ 換気は「性能」ではなく「暮らし方」とセットで考える
たとえば、キッチンの換気扇を常時微風で回すだけでも空気が流れる家があります。
また、風が抜けない季節はサーキュレーターや小型ファンを活用するのも手。
性能に頼るだけでなく、住まい手が空気を意識できる暮らし方が最終的に健康をつくります。
僕が大切にしているのは「空気を感じる家」
空気は目に見えません。
でも、感じられます。
朝起きたときに「スッ」と深呼吸できるか。
子どもが咳き込まずに夜ぐっすり眠れるか。
帰宅した瞬間に、家の空気が“軽い”と感じるか。
僕はそれを、“空気の設計”と呼んでいます。
そしてそれは、住まいの性能を超えた“人のための設計”だと思っています。
▶ 深呼吸したくなる空気を整えたいあなたへ
📘 『深呼吸したくなる家のつくり方』
空気・換気・健康をつなぐ家づくりの考え方を、PDFにまとめました。
▶ PDFを受け取る