「自然素材の家にしたら、子どものアレルギーがよくなると思ったのに…」
「漆喰や杉を使っているのに、なんとなく空気がこもっている気がする」
「床や壁は自然素材。でも、空気が重たい感じがして朝起きてもスッキリしない」
こうした声を、僕はこれまでに何度も耳にしてきました。
自然素材=健康、というイメージは今や定着しています。
でも、その“イメージ”に頼りきることが、かえって本質を見落とす原因になることもあるのです。
この記事では、「自然素材は完璧じゃない」という現実と、
アレルギーを本質的に緩和するための“空気の設計”について、
僕自身の経験を交えてお話しします。
自然素材神話の落とし穴
杉、桧、漆喰、珪藻土、無垢の床──。
自然素材の魅力は、肌ざわりや香りだけではなく、「身体にやさしい」という印象にあります。
でも、現場でリノベーションや診断をしていると、“自然素材”がトラブルの原因になっているケースもあるのです。
たとえば──
- 無垢材が乾燥不足でヤニを出し、室内空気を汚染
- 自然塗料が植物性由来で、むしろアレルゲンになる人も
- 珪藻土や漆喰が湿気を吸いすぎてカビを呼ぶ構造になっている
自然素材は、化学物質を避けられるというメリットがあります。
でもそれは、空気環境を“完全に安全にする”保証ではないということ。
アレルギーを緩和するのは、素材ではなく「空気の設計」
僕が伝えたいのはここです。
素材は“きっかけ”にはなっても、“答え”にはなりません。
本当にアレルギーを緩和するのは、
- 計画的に換気ができること
- ホコリやダニを蓄積させない動線と収納
- 湿度が安定し、カビが発生しにくい構造
- 空気の“停滞”を生まない間取りと家電設計
- そして、住まい手自身の理解と手入れの習慣
これらの“空気設計+暮らしの運用”が、健康な環境をつくるのです。
僕が出会った「自然素材だけでは救えなかった家」
築9年、自然素材の注文住宅。
床は杉、壁は漆喰、天井は構造表し。
いわゆる“ナチュラル住宅”の理想形でした。
でも、そこに住むご家族はこう悩んでいました。
「長男のアレルギーが悪化して、夜中に咳き込むようになってしまって…」
原因を探ると──
- 給気口のフィルターが完全に詰まっていた
- 換気扇はトイレと浴室のみ、24時間換気は非稼働
- 無垢の床下にホコリが入り込み、掃除しづらく蓄積
家の素材は確かに上質でした。
でも、空気はよどみ、湿度は溜まり、アレルゲンが循環していたのです。
素材は「箱」。
空気は「中身」。
そして暮らしは「流れ」。
この三つがそろって初めて、本当にアレルギーに配慮した住まいになると、僕は確信しています。
自然素材に頼る前に考えたい3つの視点
① そもそもアレルゲンの種類を知っているか?
- ダニ、ホコリ、カビ、化学物質、ペット、花粉…
- それぞれの対策が異なるため、原因を明確にせず「自然素材にすれば安心」というのは短絡的
② 換気は“設置”ではなく“設計と習慣”
- 「24時間換気がついてるから大丈夫」は誤解
- フィルター掃除、ドアスリット、風の通り道、微風ファンなど、“空気が巡る仕組み”が必須
③ 「自然素材×暮らしの運用」の両輪があるか?
- オイル塗装の床は掃除しやすい?
- 換気扇の位置は空気が回る?
- アレルゲンを溜めにくい収納設計になっている?
素材を生かすのは、日々の暮らしと設計の知恵です。
素材選びは「空気の器をつくる」という視点で
無垢材が好きです。
木の香りが漂う玄関が好きです。
でも、僕はこうも思っています。
木を使った家づくりの真価は、空気の“器”としての完成度にある。
素材そのものの力だけでは、不十分。
大切なのは、素材・設計・空気・暮らし方のすべてが「調和」しているかどうか。
僕が目指すのは「空気で守る家」
「自然素材の家にしたのに、なんだか息苦しい」
「デザインはいいけど、子どもが風邪をひきやすい」
そう感じている人に届けたいのは、
「自然素材の使い方」ではなく「空気と素材の関係性」なんです。
僕は、家づくりのすべての中心に「空気」を置いています。
そこには数値も、換気設備も必要ですが、
同時に、“人の感性”と“住まい方の選択”があるべきだと考えています。
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