工場の排水勾配が取れない!土間を壊す前に比較したい3つの施工方法

新しい生産設備の設置場所は決まった。しかし、排水管を接続しようとすると、既設の排水管まで必要な勾配が取れない。

設備メーカーからは排水口の位置と必要な排水量が示されているものの、接続予定の既設管は距離があり、床下に配管を通すにも十分な深さがない。

土間コンクリートを開口して配管を埋設するべきなのか。それとも、排水ポンプを設置する必要があるのか。

どちらを選ぶかによって、工事費も施工期間も変わります。土間を開口するなら生産エリアの使用制限が必要になり、ポンプを設置するなら将来の保守費用や故障時の対策も考えなければなりません。

結論として、排水勾配が取れない場合でも、直ちに土間の開口やポンプの設置を決める必要はありません。

最初に確認するべきなのは、機械の排水口と既設排水管の接続高さです。そのうえで、必要な勾配を確保できる別ルートがないかを検討します。

自然流下が成立しなければ、土間を開口して排水管を埋設する方法や、排水槽とポンプを設けて圧送する方法を比較します。

ただし、排水の水質や接続先の条件によっては、排水処理や申請が必要になる場合もあります。

この記事では、工場の設備増設に伴う排水工事について、3つの施工方法を予算・使用材料・生産への影響・安全性・工期・改修後の維持管理から比較します。

この記事は、排水口・接続先の高さと排水条件を把握した後に、ルート変更・土間開口・ポンプ圧送の3工法を、工事費・工期・稼働への影響から比較するためのものです。まだ勾配不足の原因や接続可能な高さが確定していない場合は、先に管底高さの実測と接続可否の確認方法をご覧ください。

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まず確認するのは、排水口と接続先の高さ

排水管の勾配を検討するとき、単に配管の長さを測るだけでは判断できません。

例えば、機械の排水口から既設排水管の接続位置まで12mあるとします。

仮に、設計上必要な勾配を1/100とした場合、12mの配管で必要な高低差は120mmです。

もし排水口と接続先の有効な高低差が80mmしかなければ、40mm不足する計算になります。

これは勾配の計算例であり、すべての工場排水に1/100が適用できるという意味ではありません。必要な勾配や管径は、排水の種類・流量・配管条件・適用基準から決定します。

さらに実際の施工では、トラップ、継手、管の外径、支持、既設設備との干渉なども関係します。

したがって、単純な高低差だけでなく、排水管を施工できる空間まで含めて確認する必要があります。

ここで別ルートを選べば必要な勾配を確保できる場合もあります。場合によっては機械の据付高さの変更が候補になることもありますが、設備メーカーの承認や機械の性能・据付条件の確認が必要です。

最初からポンプを選定するのではなく、自然流下が本当に成立しないかを判断することが、施工方法を決める第一段階です。

3つの施工方法は、何を基準に選ぶのか

排水勾配不足に対する配管ルート変更・土間開口埋設・ポンプ圧送の3工法を比較する図

排水勾配を確保できない場合、主な選択肢は次の3つです。

施工方法向いている条件主な負担
A. 配管ルート変更別ルートで必要な高低差・勾配を確保できる配管延長、支持、建築貫通部
B. 土間開口・埋設配管床下に必要な深さと勾配を確保できる土間開口、掘削、埋戻し、床復旧
C. 排水槽+ポンプ圧送自然流下が成立せず、圧送設備を設置できるポンプ・槽・制御設備と継続的な保守

ここで注意したいのは、初期費用が最も安い方法と、長期的な維持費が最も低い方法は一致しないことがあるという点です。

例えば、自然流下で排水できるルートを確保できれば、排水のためのポンプを新設する必要はありません。

一方、排水ポンプを設置することで、大規模な床開口を回避できる場合もあります。ただし、その設備には電源・制御・定期点検・故障対応が必要になります。

どの工法が適切かは、初期工事だけでなく、稼働条件と今後の維持管理まで含めて比較する必要があります。

1. 予算・工事費|土間開口とポンプ圧送、どちらが高くなるのか

工事費を比較する際には、配管材料の価格だけで判断しないことが重要です。

A. 配管ルート変更

既設排水管まで別ルートで自然流下させられる場合、管材・継手・支持金物・必要な建築貫通部などが主な工事費になります。

配管距離が長くなれば材料費や施工費は増えますが、排水用ポンプを新たに設置せずに済む可能性があります。

B. 土間開口・埋設配管

配管材料のほか、コンクリートの切断・斫り、掘削、必要な埋設配管の施工、埋戻し、床復旧が必要になります。

既設の配筋、埋設配管、電線管、基礎などとの干渉があれば、工法を変更しなければならない場合があります。

また、フォークリフトが走行する床や生産設備を設置する床では、復旧後に必要な床性能まで考慮する必要があります。

C. 排水槽+ポンプ圧送

排水槽、ポンプ、吐出配管、逆止弁、水位制御、警報設備などが検討対象になります。

既存の床を大きく開口せずに施工できる構成もありますが、排水槽を設ける場合には槽の設置・点検スペースが必要です。

また、電源・制御工事は必要な資格・施工区分に応じた別途工事として整理します。

費用の比較A:ルート変更B:土間開口C:ポンプ圧送
配管材料・施工必要必要必要
建築開口・復旧貫通等に応じる大きくなりやすい据付方法による
ポンプ・制御設備原則不要原則不要必要
施工中の区画制限ルートによる床施工区域に発生設置区域による
継続的な機器保守増えにくい増えにくい増える

工事費を比較する際には、3案とも排水先、要求流量、排水の性状などの前提条件をそろえる必要があります。

また、排水槽やポンプを設置する場合は、初期費用だけでなく、その後の保守・点検・部品交換費用も検討します。

2. 使用材料|排水の種類で管材もポンプも変わる

工場の排水は、すべて同じ条件ではありません。

例えば、一般的な設備からの排水、洗浄水、冷却設備の排水では、水温や固形物の混入、薬品の有無などが異なります。

そのため、材料選定では次の条件を確認します。

対象選定に必要な条件
自然流下配管排水の温度・性状、管径、勾配、清掃方法
埋設配管管材、土圧・床荷重、施工深さ、接合・防護方法
ポンプ圧送配管設計圧力、流体の性状、継手・弁類、逆流防止
排水ポンプ最大排水量、全揚程、異物通過性能、耐食性、運転方式

例えば、一般排水で使用される硬質塩化ビニル管も、使用温度や排水の性状、施工条件によって適用可否が変わります。

また、ポンプ圧送では、ポンプの能力だけでなく、吐出配管の圧力条件や逆止弁、保守方法を考慮する必要があります。

特に、薬液や特殊な工程排水が含まれる場合は、一般排水と同じ材料・ポンプで扱えるとは限りません。排水の処理方法や法令上の条件を含め、別途仕様を確定する必要があります。

3. 工場の稼働|生産を止めずに施工できるのか

3つの工法では、工場の稼働への影響も異なります。

ルート変更の場合は、既設の生産設備を使用しながら新しい配管を先行施工できる場合があります。ただし、既設排水管との接続や切替時には、対象設備の停止が必要になる可能性があります。

土間開口の場合は、施工する場所の使用を制限しなければなりません。特に、フォークリフトの動線や生産ラインの近くに施工範囲がある場合、資材搬入や周辺設備の稼働への影響も検討します。

ポンプ圧送の場合は、ポンプ設備を先に設置し、排水配管を切り替える方法が成立することもあります。しかし、既設排水系統への接続や設備試験には、停止や運転調整が必要になる場合があります。

重要なのは、工法の選択時に「何日工事するか」だけを比較しないことです。

生産設備を停止する時間、通行・作業を制限する区域、試験が終わるまで使用できない設備を分けて整理する必要があります。

4. 安全性|排水先・逆流・法令上の条件まで確認する

排水配管工事では、施工中の安全に加え、排水を適切な場所へ流せることが前提になります。

例えば、既設配管に接続する場合、その配管が何を排水しており、どの排水処理設備や公共下水道等につながっているかを確認しなければなりません。

工場排水では、水質によって排水先や処理方法、届出の要否が変わる場合があります。

京都市上下水道局も、工場・事業場排水について水質規制を設けています。

また、京都市では排水設備工事について指定下水道工事業者による施工・確認申請を求めています。排水目的のポンプを常設する場合にも、排水槽の手続きに関する規定があります。

ただし、工場内のすべての機械付帯配管に同一の手続きが適用されるわけではありません。対象となる排水設備と工事範囲を確認し、必要な申請や協議を整理します。

施工時には既設埋設物の確認、コンクリート開口時の安全対策、排水槽内作業の酸素欠乏等の危険、汚水の逆流や漏えいなども考慮する必要があります。

ポンプ圧送を採用する場合は、故障や停電によって排水できなくなったときの対策も必要です。

5. 工事期間|設備の据付前に、どこまで施工できるか

工事工程は、配管ルートの確定と必要な材料の手配から始まります。

施工方法によって、設備の据付前に進められる工事が変わります。

工程工事内容主な注意点
事前調査排水口・接続先の高さ、流量、排水先の確認既設図面と現況の不一致
施工方法の確定自然流下・埋設・ポンプ圧送の比較工事費、停止範囲、必要な手続き
先行施工配管・支持、土間開口、ポンプ据付など機械搬入・設置工程との干渉
切替・接続新設配管と既設系統・機械の接続対象設備の停止条件
試験・復旧通水、漏れ、逆流、必要なポンプ制御・警報確認設備再稼働の条件

土間開口を伴う場合は、床復旧に必要な材料の施工・養生条件も工程へ反映する必要があります。

また、ポンプ設備では、機器の調達や制御・電源工事、必要な試運転なども関係します。

したがって、配管工事の作業日数だけでなく、設備の据付日までにどこまで完成させ、試運転までに何を確認する必要があるかから工程を組み立てます。

6. 工事後の効果|自然流下とポンプ圧送では維持管理が違う

工事の目的は、排水管を既設配管につなぐことだけではありません。

設備から発生する排水を、必要な流量で安全かつ継続的に排出できる状態にすることです。

自然流下を採用できれば、排水のための新しい動力設備を増やさずに済む可能性があります。ただし、勾配や清掃性が不適切であれば、詰まりや滞留の原因になります。

一方、ポンプ圧送では、自然流下が成立しない位置から排水を送ることが可能になりますが、ポンプや制御機器の点検・交換が必要です。

工事後には、次の状態を確認します。

工法工事後に確認すること
ルート変更必要な勾配、通水状態、清掃性、漏れ
土間開口・埋設配管通水・漏れ、埋設記録、床復旧・点検性
ポンプ圧送必要流量、起動停止、逆止弁、警報・異常時対応

特に、ポンプを採用する場合には、設置した機器の点検方法や交換時に必要な作業スペースなども確認しておきます。

今回の設備増設だけを成立させるのではなく、今後の設備保全でも無理のない排水設備にすることが重要です。

工場の排水勾配が取れない場合は、土間開口を決める前に施工方法を比較する

排水勾配が不足しているからといって、最初から土間を開口する必要があるとは限りません。

接続先や配管ルートを見直すことで自然流下が成立する場合もあれば、土間開口やポンプ圧送が必要になる場合もあります。

その判断では、排水口の高さ、既設排水管の接続位置、必要な排水量・水質、施工スペース、生産停止の条件を確認する必要があります。

HAGANEでは、工場の給排水配管について、設備の接続条件と既設設備の状況を確認し、必要な配管新設・改修の施工方法を検討します。

配管ルートの変更に伴う建築貫通や土間開口・復旧など、関連する建築工事についても、現場全体の施工範囲を整理します。

排水槽・ポンプ設備や排水設備の申請など、専門の資格・指定業者・協議が必要な部分については、該当する工事区分を確認する必要があります。

設備の位置を変える前に、そして土間を壊す前に、工事費・工期・稼働への影響・将来の保守負担を比較する。

それが、無理のない排水設備新設工事を進めるための判断になります。

設備増設に伴う排水配管の新設・ルート変更など、HAGANEの施工対象は工場・プラント配管工事でもご案内しています。


工場の排水勾配不足・排水配管の新設工事をご相談ください

工場の設備増設に伴い排水勾配が取れない、既設排水管まで自然流下できない、土間開口とポンプ圧送のどちらを選ぶべきか判断できない場合に、排水口と既設管の接続条件から施工方法をご相談いただけます。

配管ルート変更、土間開口・埋設配管、関連する建築復旧などについて、必要な工事範囲、施工期間、工場の稼働への影響を踏まえて検討します。

ご相談時に分かる範囲でお伝えいただきたいこと:機械の排水口の位置・高さ、接続予定の排水ますの位置、排水量・水質、設備の搬入予定日が分かればお知らせください。管底高さや既設図面が不明な場合も、その旨を伝えていただければ調査範囲から整理できます。

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