工場の排水配管で勾配が取れないときは?土間改修とポンプ圧送の判断方法

工場に新しい生産設備を設置することになった。機械の配置も決まり、給水や電源の準備は進んでいる。しかし、排水配管の接続を検討すると、既設の排水ますまで必要な勾配が取れない。

床をはつって配管を埋め直すべきなのか。それとも、排水ポンプを設置して圧送する方法がよいのか。

工場の設備担当者にとって、この判断は単なる配管方法の違いではありません。

床を改修するなら、土間コンクリートの開口・埋設配管・復旧工事が必要になります。ポンプを設置するなら、機器の設置場所に加え、電源や故障時の対応、将来のメンテナンスまで考える必要があります。

しかも、既設排水管の接続位置を見直すだけで自然流下できるなら、大掛かりな床工事やポンプ設備を追加せずに済む可能性もあります。

重要なのは、先に工法を決めるのではなく、新設設備の排水口と既設排水管の高さを把握し、どの方法なら必要な排水条件を満たせるか比較することです。

今回は、工場の設備増設に伴う一般排水・冷却水などの排水配管を想定し、自然流下が難しい場合の工事方法と、その判断に必要な条件を整理します。

contents list

排水先が近くても、接続できるとは限らない

新しい設備の近くに排水ますや排水管があれば、そこへ接続することを考えるでしょう。

しかし、接続先との距離が短いことと、自然流下で排水できることは別です。

自然流下の排水配管では、水が流れる方向へ必要な勾配を確保する必要があります。排水口の位置が低く、接続先の管底が十分に低くない場合は、間に配管を通す空間があっても、適切な排水経路をつくれないことがあります。

特に工場では、生産設備の排水口が床面に近い位置に設けられている場合があります。

その排水口から離れた既設排水ますへ接続しようとすると、配管の延長に応じて必要な高低差が大きくなります。

そのため、工事方法を決める前に、次の高さを把握します。

新設設備の排水口の管底高さと、接続候補となる既設排水管の管底高さです。

床面からの高さだけでなく、実際に水が流れる配管の内側の底の位置で比較することが重要です。

高低差を数字で比較すると、問題が見える

例えば、次のような条件を考えます。

  • 新設設備から既設排水管までの水平配管延長は12m。
  • 排水口と接続先の間に確保できる落差は80mm。
  • 仮に設計上必要な勾配を1/100とする。

この条件では、12mの配管に必要な落差は次のようになります。

12,000mm × 1/100 = 120mm

確保できる落差が80mmなら、仮の計画条件に対して40mm不足しています。

このままでは、想定した勾配を確保できません。

ただし、ここで示した1/100は計算方法を説明するための仮定です。実際に必要な勾配は管径、排水の性状、適用基準などによって異なります。また、配管の取付け高さや接続部の納まりなども確認する必要があります。

大切なのは、「勾配が足りない」という感覚的な判断を、現地で測定した高さと必要な勾配に基づく具体的な条件へ置き換えることです。

この結果があれば、施工会社は接続先やルートを変える方法、床を改修する方法などを比較できます。

工事方法を選ぶ前に、排水の種類を確認する

工場の排水では、勾配や配管ルートより先に確認しなければならないことがあります。

それは、新しい設備から何が排出されるのかという点です。

例えば、手洗いシンクから出る排水と、生産工程で使用した洗浄液を含む排水では、配管材質や接続先、排水処理の条件が異なる可能性があります。

高温排水、油分を含む排水、薬品を含む排水、固形物が混じる排水についても、一般的な排水設備と同じ条件で扱えるとは限りません。

また、既設配管が近くにあっても、その配管が今回の排水を受け入れられる系統でなければ接続できません。

例えば、雨水系統に事業系の汚水を接続してよいとは限りませんし、既設の排水処理設備を通す必要がある排水なら、その系統との整合も確認する必要があります。

この点については、設備メーカーから排水の種類、温度、排出量、排出パターンなどの情報を入手し、工場側で既設の排水・処理系統を確認します。

排水の性状や水量、処理方法の変更によっては、下水道法や自治体の条例に基づく届出・協議が必要となる場合があります。

京都市上下水道局も、特定施設の構造や排水の量・水質、排水系統などを変更する場合の届出について案内しています。

つまり、勾配の取れる配管ルートが見つかっても、その接続先に排水してよいかは別に確認しなければなりません。

ここを整理したうえで、具体的な配管工事を検討します。

方法①:接続先や配管ルートを変え、自然流下を成立させる

最初に検討する価値があるのは、別の既設排水管や排水ますへ接続する方法です。

例えば、最初に予定した排水ますでは高さが不足していても、少し離れた別の排水系統なら、より低い位置で接続できる場合があります。

また、配管ルートを変更することで水平延長を短くできれば、必要な落差も小さくなります。

この場合、新たな排水ポンプを設置せずに対応できる可能性があります。

ただし、別の接続先を選ぶ場合、その配管が今回の排水を受け入れられるか、必要な排水能力を持つかを確認する必要があります。

また、短いルートでも、既設設備や構造体と干渉し、施工できない場合があります。

したがって、施工会社には単に「一番近い排水管へつないでほしい」と依頼するのではなく、適切な排水先の中で、必要な勾配と施工スペースを確保できるルートを比較してほしいと伝えることが重要です。

自然流下で成立するルートがあるなら、ポンプ設備の追加による維持管理の負担を避けられます。

方法②:土間を改修して、必要な高さに配管を設置する

既設排水管の接続位置が決まっており、床下へ配管を通すことで必要な勾配を確保できる場合には、土間コンクリートを改修する方法があります。

例えば、床面に近い位置で配管を横引きするには高さが不足していても、既設排水管の深さや床下の空間を確認した結果、埋設配管を設けられる可能性があります。

この場合、排水配管工事だけでなく、土間の開口、掘削、埋戻し、コンクリート復旧などの建築付帯工事を検討することになります。

ただし、床をはつれば必ず配管を通せるわけではありません。

工場の土間には、既設の埋設配管や電気設備の配管、機械基礎、鉄筋などが存在する場合があります。床スラブの構造や荷重条件によっては、予定した範囲を開口できないこともあります。

また、フォークリフトなどが通行する場所では、工事中の動線確保と、復旧後に必要な床の性能も考えなければなりません。

土間改修を採用するかどうかは、排水勾配を確保できるかに加え、床を安全に改修できるか、復旧後も工場の使用条件を満たせるかで判断します。

土間改修の見積では、配管工事だけを比較しない

例えば、排水管を10m新設する工事でも、露出配管で施工する場合と、土間を開口して埋設する場合では、工事内容が大きく異なります。

土間改修を伴う場合は、配管材料・施工費に加え、床の開口・撤去、既設埋設物の確認、埋戻し、床仕上げの復旧などが必要になる可能性があります。

施工条件によっては、設備を移動して作業スペースを確保する必要もあります。

こうした付帯工事を含めた見積で比較しなければ、自然流下方式が本当に合理的なのかを判断できません。

方法③:排水ポンプを使い、既設排水系統まで圧送する

自然流下に必要な高さが取れず、床の大規模な改修も避けたい場合には、排水ポンプを使う方法があります。

一般的には、排水をいったん槽やポンプユニットで受け、ポンプによって既設の適切な排水系統まで送る方式です。

実際に、工場のシンク増設で自然流下の勾配が確保できず、既設排水管まで圧送する方式を採用した事例が公開されています。

ただし、ポンプを設置すれば、どのような工場排水でも処理できるわけではありません。

ポンプの選定では、排水の温度・性状、瞬間的な排出量、圧送先までの高さや配管抵抗などを確認する必要があります。

特に生産設備からの排水では、設備が一度に大量の水を排出する場合があります。

平均の排水量だけでポンプを選ぶと、排出のピーク時に処理が追いつかず、槽の水位上昇や設備側への影響が生じる可能性があります。

そのため、設備メーカーから最大排水量や排水の発生パターンを確認したうえで、ポンプの能力と必要な貯留量を検討します。

ポンプ停止時に、何が起こるかまで考える

圧送方式を採用する場合、設備担当者が特に確認したいのは、ポンプが停止したときの影響です。

例えば、排水ポンプが故障したり、停電によって運転できなくなったりすれば、排水を送り出せなくなる場合があります。

そのとき、生産設備が排水を続ければ、排水槽からのあふれや機械側の運転停止につながるおそれがあります。

したがって、生産設備の重要度によっては、水位異常の警報、運転停止の連動、予備機の必要性などを検討することになります。

また、ポンプや逆止弁を点検・交換できるスペース、清掃方法、維持管理体制も必要です。

圧送方式は床工事を抑えられる可能性がある一方で、排水するために動力機器を継続して管理する必要がある方式です。

採用に当たっては、初期工事費だけでなく、設備停止時の影響や保守費用も含めて判断することが重要です。

三つの方法を比較すると、何を基準に選ぶべきか

ここまでの工事方法を整理すると、次のようになります。

工事方法採用を検討する条件見積・計画で確認すること
自然流下ルートの変更適切な排水先があり、必要な勾配を確保できる接続先の能力、配管高さ、延長、支持・干渉
土間を改修して埋設配管床下に適切な配管経路を設けられる既設埋設物、床構造、開口・復旧範囲、施工期間
排水ポンプで圧送自然流下が難しく、適合する排水ポンプ設備を設置できる排水の性状・ピーク流量、揚程、故障時の対応、保守費用

ここで、単純に最も工事費が安い案を選ぶべきではありません。

例えば、排水ポンプを使えば土間工事を減らせるとしても、設備の重要度によっては、ポンプの故障時に生産ラインが停止することが大きな問題になるかもしれません。

一方、自然流下の配管を設けるために広い範囲の土間を開口しなければならない場合は、工事による生産への影響が大きくなる可能性があります。

どの方式が適切かは、工事費、施工期間、設備の運転条件、更新後の維持管理まで含めて比較する必要があります。

また、三つの方法のどれか一つだけを選ぶとは限りません。自然流下で集水した後、一部をポンプで圧送するなど、系統構成によって組み合わせる場合もあります。

工場排水の改修では、法令・届出の確認も工事計画に含める

工場の排水は、一般的な衛生設備の排水と同じ条件で扱えない場合があります。

生産設備からの排水については、水質や排水量、接続する処理設備によって、適用される規制や必要な手続きが変わることがあります。

例えば京都市では、特定施設の設置や、排水量・水質・排水系統などの変更について、条件に応じた届出が案内されています。

また、京都市の公共下水道に接続する排水設備工事は、指定下水道工事業者による設計・施工と、工事前の所定の手続きが必要です。

そのため、工場内の配管改修と、公共下水道に関係する排水設備工事では、必要な施工体制や手続きが異なる場合があります。

設備担当者としては、排水の種類と接続先を把握したうえで、施工会社と関係する工事範囲・手続きを確認することが重要です。

特に、設備導入に伴って排水処理の方式や排水系統を変更する計画では、必要な協議を機器据付の直前まで後回しにしないことが大切です。

施工会社への見積依頼は、三つの高さと排水条件から始める

設備担当者が施工会社へ相談するとき、最初から土間工事かポンプ圧送かを決める必要はありません。

まず、新設する設備の排水口の位置と、既設排水管・排水ますの接続候補を示します。

施工会社は、現地で必要な高さを測定し、自然流下で成立するルートがあるかを検討します。

自然流下が難しい場合には、床下に配管を設置できるか、ポンプ圧送で対応する場合にどのような設備が必要かを比較します。

この検討を進めるために、設備担当者が事前に用意しておきたい情報があります。

設備メーカーから入手したい情報は、排水口の位置・接続寸法、排水の種類・温度、通常時と最大時の排水量、排出のタイミングです。

工場側で把握したい情報は、既設排水管の接続先、排水処理の系統、床の構造や埋設物に関する図面、施工可能な時期です。

施工会社に検討してもらう内容は、管底高さの実測、必要な勾配、配管ルート、接続方法、土間改修の要否、圧送方式を採用する場合の設備条件です。

すべての資料がそろっていなくても、設備の設置予定場所と排水条件が分かれば、現地調査で何を確認する必要があるか整理できます。

そのうえで、各工事案について、必要な配管工事、土間工事、機器・電源関係、試験・復旧の範囲を明確にして見積を比較します。

工事完了時には、排水先まで正常に流れることを確認する

排水配管の施工が終わったら、単に配管を接続できたことだけでなく、設備として必要な排水能力を確保できているか確認します。

自然流下の配管であれば、施工した勾配や接続状態、必要な漏れ確認などを行います。

ポンプ圧送方式であれば、実際の排水量に対してポンプが適切に運転できるか、水位や警報、逆流防止などの必要な機能を確認します。

また、生産設備の排水条件によっては、メーカーと連携した試運転が必要です。

ここでは、配管工事としての品質確認と、工場側が設備の運転を開始してよいと判断する条件を分けておくことが重要になります。

排水できるルートをつくることではなく、新しい生産設備が必要な条件で排水でき、安定して使用できる状態にすること。

これが、今回の排水配管工事の目的です。

工場の排水配管増設・ルート変更をご相談ください

設備増設の計画で、既設排水管まで勾配が取れないことが分かった場合、直ちに大掛かりな土間工事や排水ポンプの新設を決める必要はありません。

まず現地の高さと排水条件を確認し、自然流下の接続先を変更できるか、土間改修が必要か、圧送方式を検討するべきかを整理します。

HAGANEでは、工場・プラントの給排水配管について、新設・改修・配管ルート変更、関連する建築付帯工事などのご相談に対応しています。

公共下水道に係る排水設備工事や、特別な排水処理設備が必要となる場合には、必要な資格・指定業者・関係機関との調整を含めて施工区分を確認する必要があります。

「新しい設備を設置したいが排水先まで勾配が取れない」「床をはつるべきか、排水ポンプを設けるべきか判断できない」

そのような場合は、設備の設置位置、排水条件、既設排水管の情報など、分かる範囲からご相談ください。

工場の排水配管、接続方法からご相談ください

新しい設備の排水先が決まらない場合も、既設排水管の高さ・接続条件・現場の制約を確認し、対応可能な配管工事を検討します。

HAGANEのCONTACTページへ直接移動します

contents list