ビルの排水管を高圧洗浄したのに、数週間後にはまた水の流れが悪くなる。清掃会社に再度依頼すれば、その場では排水が改善するものの、しばらくすると同じ場所で詰まりが発生する。
このような場合、清掃回数を増やすだけでよいのでしょうか。
結論からいえば、排水管の詰まりが繰り返される場合は、清掃で除去できる付着物が再び蓄積しているのか、配管自体に閉塞・変形・腐食・勾配不良などの原因が残っているのかを切り分ける必要があります。
高圧洗浄は、管内の付着物や堆積物を除去する方法です。一方で、傷んだ配管や不適切な配管経路そのものを修復する工事ではありません。
ビル管理会社の設備担当者にとって重要なのは、詰まりを一時的に解消することだけでなく、次の清掃まで正常な排水機能を維持できるか、同じ不具合によるテナントへの影響を繰り返さないかという点です。
この記事では、清掃を継続する場合と管内調査・配管改修へ進む場合の判断を、工事発注の視点から整理します。
高圧洗浄で水が流れるようになっても、問題が解決したとは限らない
排水管の中には、使用状況に応じて油脂、汚泥、スケール、その他の異物が付着・堆積します。
特に厨房や給湯室の排水では、油脂類が管内に付着して有効な流路を狭めることがあります。全国管洗浄協会も、排水の性状や設備の劣化、清掃状態によって、排水不良や管閉塞が生じることを説明しています。
高圧洗浄によってこうした付着物が除去されれば、排水機能が回復する場合があります。しかし、清掃で水が流れるようになったという事実だけでは、繰り返し詰まる原因が取り除かれたかまでは分かりません。
例えば、配管の一部に変形や段差があり、そこに固形物が引っかかりやすい状態になっていたとします。洗浄によって一時的に詰まりを解消できても、配管の変形や段差が残っていれば、同じ場所で再び閉塞する可能性があります。
反対に、配管自体に大きな問題がなくても、特定の排水設備から油脂や異物が継続的に流入していれば、清掃後に再び堆積することがあります。
この二つでは、必要な対策が異なります。
清掃が不十分なのか、使用条件に問題があるのか、それとも配管そのものを改修すべきなのか。
再発した時点で、この判断を行うための情報を集める必要があります。
まず確認するのは、どこで、どのくらいの頻度で詰まるのか
排水管の詰まりが繰り返される場合、すぐに管内カメラや配管更新を発注するのではなく、不具合の発生状況を整理します。
特に確認したいのは、同じ排水口だけで問題が起きているのか、それとも複数の設備で同時に排水不良が発生しているのかという違いです。
| 不具合の発生状況 | 調査で重視する場所 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 特定の洗面器や流しだけが詰まる | 排水トラップ、器具排水管、枝管 | 個別設備に問題が限定されているか |
| 同じ階の複数設備で排水が悪くなる | 共通の排水横枝管、下流の合流部 | 共通管で閉塞していないか |
| 複数階で排水不良や逆流が発生する | 排水立て管、下部の横主管、下流系統 | 広い範囲の排水機能に影響していないか |
| 毎回ほぼ同じ位置で詰まる | 曲がり、継手、管内腐食、滞留しやすい箇所 | 清掃後も原因が残っていないか |
| 排水槽の水位上昇も発生している | 排水槽、ポンプ、吐出配管、下流側 | 管の詰まりだけでなく排水設備側に問題がないか |
この表は調査箇所を絞るためのものであり、症状だけから原因を確定するものではありません。
ビル管理会社としては、過去の清掃報告書、詰まりが発生した位置、清掃後から再発するまでの期間を照合することが重要です。
例えば、毎回同じ枝管で詰まる場合と、建物全体の排水が同時に悪くなる場合では、必要な調査範囲も設備停止の影響も変わります。
清掃の回数を増やす前に、前回の作業範囲を確認する
高圧洗浄を実施したにもかかわらず詰まりが再発した場合、設備担当者が最初に確認したいのは、前回の清掃で実際にどこまで作業したかです。
清掃の見積書に「排水管高圧洗浄」と記載されていても、対象が器具排水管だけなのか、共用の横枝管や立て管、屋外排水管まで含まれているのかによって、清掃結果の意味が異なります。
清掃会社の作業報告書では、少なくとも次の内容を確認したいところです。
- 清掃した配管の系統と範囲
- 使用した清掃方法
- 詰まりや付着物が確認された位置
- 清掃前後の排水状況
- 清掃できなかった箇所や作業上の制約
- 管内カメラ等で確認した異常の有無
重要なのは、作業を実施した事実と、問題のあった配管区間が適切に清掃・確認された事実を区別することです。
これまでの清掃範囲が明確でなければ、次の作業も同じ範囲を繰り返すだけになりかねません。
高圧洗浄を繰り返すか、管内カメラで調査するか
清掃後に短い周期で同じ症状が再発する場合、管内カメラによる調査が有効な選択肢になることがあります。
管内カメラでは、排水管の内部を確認し、堆積物、錆こぶ、異物、管の変形、継手の段差などの状態を映像で把握できる場合があります。
ただし、カメラを入れればすべての異常が判明するわけではありません。管内が完全に閉塞している場合には、カメラが奥まで進めないことがあります。また、映像だけでは配管の正確な高さや勾配を判定できない場合もあります。
配管の変形や勾配不良が疑われる場合は、管底高さや配管経路の実測を組み合わせて判断します。
三つの対応方法の比較
| 方法 | 適している状況 | 解決できない可能性がある問題 |
|---|---|---|
| 高圧洗浄・機械的清掃 | 付着物や堆積物による閉塞が疑われる | 管の破損、変形、勾配不良、継手のずれ |
| 管内カメラ・現況調査 | 再発位置や原因が不明、配管自体の劣化が疑われる | 調査だけでは配管の損傷や閉塞は修復できない |
| 配管の部分補修・更新 | 調査によって施工すべき区間を特定できた | 更新範囲外に原因が残っていれば再発する可能性がある |
高圧洗浄と管内カメラ調査は、必ずどちらか一方を選ぶものではありません。
まず適切な清掃方法で流路を確保し、その後に管内の状態を確認する場合もあります。逆に、既設管の腐食や破損が強く疑われる場合には、強い洗浄を繰り返す前に管の状態を確認した方がよい場合もあります。
ここで避けたいのは、原因が分からないまま、清掃回数を増やすことだけを対策としてしまうことです。
法律上の排水設備清掃と、詰まりの再発防止は分けて考える
ビル管理業務では、定期清掃の実施が法令上の維持管理と関係する場合があります。
建築物衛生法の対象となる特定建築物では、法施行規則第4条の3により、排水に関する設備の清掃を6か月以内ごとに1回、定期的に実施することが定められています。
また、厚生労働省の「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」では、排水管・通気管・阻集器内部の異物除去や、排水管の損傷、腐食、詰まり、漏れの点検、必要に応じた補修などが示されています。
ここで注意すべきなのは、この基準をすべての建物やすべての排水管に一律に適用することはできないという点です。建物が特定建築物に該当するか、対象となる設備や維持管理範囲は何かを確認する必要があります。
さらに、定期清掃を実施していることと、繰り返す詰まりの原因を解決できていることは別です。
清掃周期を守っていても、同じ配管で閉塞が再発するなら、管内の状態や排水設備の使用条件を追加で確認する必要があります。
参考:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」/同省告示第119号
配管更新が必要になるのは、どのような場合か
管内調査の結果、腐食による断面の縮小、継手の段差、配管の損傷などが確認されたとします。
この場合でも、必ず配管全体を更新する必要があるとは限りません。
重要なのは、正常な排水機能を確保するために、どこからどこまでを改修するべきかという判断です。
例えば、特定の横枝管だけで腐食が進行しており、上流と下流の配管が健全であることを確認できれば、その区間の更新を比較できます。
一方、複数の配管区間で同様の腐食や閉塞が見つかり、同じ系統で頻繁に清掃・補修を繰り返しているなら、より広い範囲の更新を検討する価値があります。
ここでビル管理会社が確認したいのは、交換する配管の数量だけではありません。
更新する範囲が適切なのか、既存配管との接続部は健全なのか、排水系統全体として問題が解決するのか。
この三つが整理されていなければ、更新後に別の場所で排水不良が発生する可能性もあります。
配管更新工事の見積は、清掃費と同じ考え方で比較しない
排水管清掃と配管更新は、作業内容も費用構成も異なります。
清掃であれば、作業範囲、清掃方法、作業時間、使用機材、清掃後の確認などが主な比較項目になります。
一方、配管更新では、管径・材質・延長、既設管の撤去、接続部、支持金物、天井・壁の開口や復旧などを確認する必要があります。
| 見積項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 現況調査 | 管内カメラ、配管経路の確認、必要な開口調査、調査記録 |
| 既設配管の撤去 | 管径別撤去長、切断箇所、搬出、処分 |
| 新設配管 | 管径・材質別延長、継手・接合方法、支持金物 |
| 建築付帯工事 | 天井・壁・床の開口、下地、仕上げ復旧、養生 |
| 稼働への対応 | 断水・排水停止の範囲、夜間・休日作業、仮設対応 |
| 施工後の確認 | 漏れの確認、排水機能の確認、施工記録、図面更新 |
ビルの排水管更新で特に見落とせないのが、排水設備を使用できない時間帯と、テナントへの影響です。
配管工事そのものが短時間で終わっても、天井の開口や既設管の撤去、試験、仕上げ復旧まで含めれば、施設側の調整が必要になる場合があります。
同じ金額の見積でも、テナントへの通知や作業時間の調整、内装復旧が含まれているかによって、発注後の負担は大きく変わります。
ビルの営業を続けながら、排水管を更新できるのか
工事する配管の位置と系統によっては、利用中のビルでも排水設備を部分的に停止しながら更新できる場合があります。
ただし、「排水管を交換するだけだから、施設を止める必要はない」とは判断できません。
例えば、複数階のトイレ排水が一つの立て管へ集まっている場合、下階の横主管を交換する際には、上階の排水使用にも制限が必要になることがあります。
その場合、施工会社は配管の切断や接続に必要な時間を明示し、施設管理者は対象となるトイレや設備を使用停止する時間帯を決めます。
また、厨房や機械室からの排水であれば、使用している設備の稼働条件も確認する必要があります。
新しい配管の支持金物や接続材料を事前に準備し、既設配管への切替作業だけを停止時間内に行えるかどうかも、工期を左右します。
ただし、仮設排水や段階施工が可能かどうかは、排水量、管径、系統構成、排水の性状、安全条件によります。
根拠のない無停止施工を前提に見積を比較するのではなく、どの設備を、いつ、何時間使用できなくなるかを明確にすることが重要です。
工事完了の判断は「水が流れた」だけでよいのか
配管更新後に一度水を流し、問題なく排水されたとしても、それだけで再発防止が確認できたとは限りません。
工事前に何が原因だったのかによって、完成時の確認内容を変える必要があります。
例えば、配管内部の腐食や閉塞が原因だった場合は、更新した区間と既設配管との接続状態、必要な漏れ確認、排水状況を確認します。
配管経路や勾配を変更した場合には、施工後の実際の配管高さや排水の流れを確認する必要があります。
また、建物の通常使用条件に近い状態で複数の排水設備を使った際に、異常な逆流や滞留がないかという点も重要です。
施工会社から受け取る記録としては、変更した配管経路、管径・材質、接続箇所、施工前後の写真、試験・確認結果などが考えられます。
改修した箇所を天井や壁で隠蔽する場合は、復旧前の施工状況を記録しておくことも必要です。
清掃や改修が終わったことと、排水設備が必要な機能を回復したことを区別して確認する。
これは、同じ不具合を繰り返さないために重要な発注条件です。
ビル管理会社は、どの段階で配管改修を相談すればよいのか
高圧洗浄を行っても詰まりが繰り返される場合、設備担当者が最初から更新する配管の長さを決める必要はありません。
まず、過去の清掃履歴と不具合が発生する場所を整理します。
そのうえで、清掃会社や調査会社による確認が必要なのか、配管の損傷・腐食・勾配などの問題が疑われ、改修工事の検討へ進むべきなのかを判断します。
特に、管内カメラ調査で配管の破損や腐食が確認された場合、あるいは同一箇所で短期間に何度も詰まりが発生している場合は、清掃だけで対処し続けることの妥当性を見直す必要があります。
この段階で、配管改修を担当する施工会社へ次のような内容を伝えると、現地調査や見積範囲の整理を進めやすくなります。
ビルの排水管で詰まりが繰り返されています。高圧洗浄で一時的に改善しますが、同じ系統で再発しています。配管の調査結果を踏まえ、清掃を継続するべきか、部分的な更新工事が必要かを検討したいと考えています。テナントの営業に影響するため、工事範囲と排水停止時間も含めて確認したいです。
排水管清掃で解決しない問題を、配管改修工事として考える
HAGANEでは、ビル・事業所・工場などの給排水設備について、既設配管の修繕・更新、配管ルートの変更、接続部の改修、関連する建築付帯工事などをご相談いただけます。
定期的な排水管清掃や管内調査と、実際に配管を交換・改修する工事は役割が異なります。
そのため、清掃結果や調査記録をもとに、工事が必要な箇所を明確にし、既設配管の状態と施設の利用条件を踏まえて施工範囲を検討します。
高圧洗浄を繰り返すだけでは解決しない排水不良がある場合、配管そのものに改修が必要なのか、どの区間を更新すべきなのか、テナントの利用をどこまで制限する必要があるのかを整理することが大切です。
HAGANEの設備工事・更新の対応範囲については、設備メンテナンス・設備更新工事をご覧ください。
排水管の詰まりや逆流が繰り返され、清掃から配管改修へ切り替えるべきか判断に迷っている場合は、清掃報告書、管内写真、既存配管図、再発した時期など、分かる範囲の資料からご相談ください。
