音が耳に刺さらない、という感覚がある。
これが少し説明しづらい。
ただ高音が強いとか、音量が大きいとか、そういう単純な話ではない。
一度、部屋でスピーカーの音量を上げられるだけ上げてみると分かる。
あるところから、音が耳に痛くなる。
特に高音域や倍音が、耳の奥に突き刺さるように感じる。
シンバル、声のサ行、ギターの倍音、電子音の輪郭。
そういう成分が、急に攻撃的に感じられる。
最初は、音圧のせいだと思う。
音が大きすぎるから痛い。
高音が出すぎているから刺さる。
スピーカーがきつい音を出している。
もちろん、それもゼロではないと思う。
でも、小さな部屋で聴いていると、原因はそれだけじゃない気がしてくる。
スピーカーから耳に届く直接音がある。
それとは別に、壁や天井や床に当たって返ってくる反射音がある。
その反射音が、短い時間の中で束になって戻ってくる。
直接音と、早い反射音が、耳の近くで重なる。
しかもそれが一回ではなく、いくつもの反射としてほとんど同時に届く。
すると、音量以上に耳がきつく感じる。
音が大きいというより、音が固まってぶつかってくる。
高音や倍音が、一点に集まって耳へ押し込まれるような感じになる。
たぶんこれが、僕の言う「耳に刺さる」に近い。
だから、ただ音量を下げればいい、という話でもない。
音量を下げれば痛さは減る。
でも同時に、音圧も、広がりも、身体に来る感じも減ってしまう。
本当は、音圧は欲しい。
響きも欲しい。
広がりも欲しい。
ただ、刺さってほしくない。
このわがままが、部屋で音を鳴らす面白さでもあり、難しさでもある。
KAIROSを使っていると、この刺さり方が和らぐ瞬間がある。
音が消えるわけではない。
高音が丸くなって、ぼやけるわけでもない。
むしろ、音はちゃんとある。
でも、耳に一点でぶつかってこない。
音が壁に張り付かず、空間の中にほどける。
反射が束で返ってくる感じが弱くなる。
そうなると、音量を上げられてしまう。
これは本当に危ない。笑
「まだいける」と思ってしまう。
もう少し上げても痛くない。
もう少し上げると、身体に来る。
もう少し上げると、部屋が鳴る。
もう少し上げると、壁が震える。
そして気づいたら、かなり大きな音で聴いている。
たぶん普通に考えたら、調子に乗っている。
でも、耳に刺さらない状態で音圧を上げると、部屋で聴く音の快感が一気に出てくる。
音がただ大きいのではなく、空間ごと押してくる。
身体に来る。
壁や床や空気が反応する。
音楽が、部屋の中で起きている現象になる。
その感じがたまらない。
音が耳に刺さらないというのは、単に聴きやすいということではない。
音圧を我慢せずに受け取れるということだと思う。
音量を下げて安全にするのではなく、
音が刺さらない状態をつくることで、音圧の気持ちよさをちゃんと味わえる。
僕はたぶん、それがやりたい。
部屋で音を鳴らすなら、音圧を怖がりたくない。
でも、耳が痛い音にもしたくない。
音が広がって、身体に来て、でも刺さらない。
その状態を探している。
KAIROSは、そのための装置でもあると思っている。
反射を消すのではなく、束になって返ってくる感じをほどく。
音を弱くするのではなく、音圧を受け止められる状態に近づける。
だから、つい音量を上げてしまう。
壁が震えるくらいまで。
これは良いことなのか、悪いことなのか、少し分からない。
でも、部屋で音を鳴らすことの快感は、たぶんこのあたりにある。
耳に刺さらない。
音が張り付かない。
なのに、音圧はある。
そうなると、人は調子に乗る。笑
少なくとも僕は、かなり調子に乗る。
僕はたぶん、その可能性を聴いている。
KAIROSの音の変化を確かめてください
KAIROSの変化は、単純に音が小さくなることではありません。
聴いてほしいのは、耳への刺さり、音の張り付き、響きの広がり方です。
KAIROSなしでは、音が前へ張りつき、硬く、耳に近く感じられることがあります。
KAIROSありでは、刺さりがやわらぎ、響きが少し奥へ広がるように感じられます。
音のエネルギーを吸って減らすのではなく、近すぎる反射の当たり方が変わる。
その違いを、比較音源で確認してください。
聴くポイント
- 耳への刺さりが減るか
- 音が壁やスピーカー周辺に張りつく感じが変わるか
- 響きが奥へ広がるか
- 音量が下がったのではなく、圧迫感が減っているように感じるか
- 吸音したような痩せ方ではなく、響きのまとまり方が変わっているか
※ スマートフォンのスピーカーでは違いが分かりにくいため、できればイヤフォン、ヘッドフォン、またはオーディオ環境でお聴きください。
Before
No KAIROS
音が耳に近く、硬く、前へ張りつくように感じられる状態。
近い反射が直接音に重なり、響きが広がる前に耳へ届いているように聴こえる場合があります。
After
With KAIROS
耳への刺さりがやわらぎ、響きが少し奥へ広がるように感じられる状態。
音のエネルギーを吸って減らすのではなく、近すぎる反射の当たり方が変わることで、音楽の見通しや空間感に変化が現れます。
