「家を持つならやっぱり新築がいいよね」
長く日本ではそんな価値観が支配的でした。
でも今、確実に流れが変わってきています。
僕の元にはここ数年、
「中古住宅を買ってリノベーションしたい」
という相談が急増しています。
その理由は単純な“価格の安さ”ではありません。
本当に大事なのは、「暮らしを自分でつくる」という選択肢が、いま中古住宅リノベにこそあるということ。
この記事では、新築との比較から見えてくる中古リノベの本質、
そして建築士の立場から見た「価値の転換」について、掘り下げてお話しします。
なぜ今、中古住宅リノベが注目されているのか?
その理由は複合的ですが、主な背景として以下が挙げられます:
1. 新築価格の高騰と、満足度のギャップ
- 建築コスト、資材、人件費の上昇
- 土地探しの難航と郊外への移住圧力
- 建売の“量産化”による画一的な間取り
結果、「せっかく新築にしたのに、暮らしてみたらしっくりこない」という声も少なくありません。
2. 社会的な価値観の変化
- “所有”よりも“納得”を重視するミレニアル世代
- リノベ文化の浸透と、住まいに対するDIY志向の広がり
- ZEHや断熱性能向上による“再生”の価値向上
もはや“新築=正解”の時代ではない。
本当に求められているのは「暮らしの質を自分の感覚でつくれること」なのです。
中古住宅は“劣化資産”ではなく、“素材”である
日本ではこれまで、「築年数=価値が下がるもの」とされてきました。
でも、これは住宅がスクラップ&ビルドだった時代の考え方です。
実際には──
- 築30年でも構造体がしっかりした家は多く存在する
- メンテナンスされていれば、再生可能な住宅は山ほどある
- フルリノベーションすれば、新築以上の快適性に生まれ変わる
つまり、中古住宅は“完成品”ではなく“設計素材”としての価値があるということ。
僕が出会った「人生を変えた中古リノベ」
築34年の木造住宅を購入されたご夫婦。
駅から徒歩圏で、子育てにも最適な立地。
でも、内装も設備も「昭和感」が残る空間でした。
僕たちは、床・壁・天井すべてを見直し、
断熱・気密をしっかり整え、自然素材を使ってリノベーション。
古さは残したまま、空気が巡り、深呼吸できる空間に生まれ変わりました。
完成後、ご主人が言った一言が忘れられません。
「この家が“僕たちらしい暮らし”の原点になった気がするんです」
それは、モノを買うのではなく、“暮らしを設計する”感覚でした。
新築と中古リノベを比較する5つの視点
比較軸 | 新築 | 中古+リノベ |
---|---|---|
初期コスト | 高め | 抑えやすい(設計により調整可) |
間取りの自由度 | 規格・制約あり | スケルトンで自在に変更可能 |
性能の確実性 | ハウスメーカー次第 | 断熱・気密などを再構築できる |
資産価値 | 建てた時点がピーク | 立地+性能再評価で安定化 |
愛着・個性 | 提供されたもの | 自分でつくった実感が強い |
資産価値は「年数」ではなく「設計と性能」で決まる
僕がいつもお伝えするのは、
「中古だから価値が下がる」のではなく、「設計されていないから価値がつかない」ということ。
断熱性能を上げて気密を整えれば、
- ヒートショックのない室内環境
- 光熱費が抑えられる省エネ性能
- 空気が循環する快適性
が備わる。
そこに自然素材や空気設計が加われば、
数字には見えない“暮らしの質”が、資産価値に転化していくのです。
中古リノベの“現実的な選択肢”としての強さ
- 好立地の物件を選べる
- 自分たちのペースでリノベ設計できる
- 補助金(長期優良・省エネ)も使える
- 子育て・在宅ワーク・将来の住み替えにも柔軟
中古リノベとは、“今この暮らし”に合わせるだけでなく、
“10年後の暮らし”にもフィットする可能性を持った選択肢なんです。
僕が考える「中古リノベという哲学」
中古リノベとは、単なる工事の話じゃない。
それは、“暮らしの見直し”を前提とした再設計のプロセスです。
- 何を残すか
- 何を削るか
- どんな空気で、どんな質感で暮らしたいか
僕は、中古リノベというプロセスを通じて、
お客様の人生に“深呼吸する余白”をつくりたいといつも思っています。
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