外壁に木を使うという選択|美と耐久を両立する設計哲学

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「木って、外壁には向いてないですよね?」

これまで数え切れないほど、そう聞かれてきました。
確かに、“木の外壁”にはネガティブなイメージがつきまといます。

– 「すぐに腐るんじゃないか」
– 「メンテナンスが面倒そう」
– 「変色して汚くなるのがイヤ」

でも、僕は思うんです。
それって、“間違った木の使い方”が広まってしまっただけじゃないか?と。

この記事では、「外壁に木を使う」という選択が
どれほど魅力的で、実は論理的で、そして“呼吸する家”の本質に近いかを、
素材・仕上げ・樹種・哲学の視点から語っていきます。


木は外壁に不向き、は本当か?|誤解と真実

結論から言えば、「適切に使えば、木は外壁にも十分に耐える素材」です。

誤解されがちなのは、以下のようなケース:

  • 針葉樹の白太(辺材)部分を外壁に使ってしまう
  • 塗装を過信して、下地処理や水切り設計が甘い
  • 通気層がないまま直張りしてしまう
  • メンテナンス前提の設計がされていない

これらは「木が悪い」のではなく、使い方の問題です。

たとえば、社寺仏閣は何百年と風雨にさらされながらも、
その外壁や構造に木材を用いています。
北欧やオーストリアでも、木製外壁はポピュラーです。

つまり、木が外壁に使えないのではなく、“正しい知識が共有されていない”だけなのです。

木の仕上げで印象も耐久性も変わる|ラフソーン仕上げの魅力

同じ木材でも、「仕上げ」によって見た目も耐久性も変わります。
僕が特におすすめしているのが、ラフソーン仕上げ(粗木仕上げ)です。

▶ ラフソーンとは?

製材したまま、プレーナーをかけずにざらついた状態の木材。
表面には鋸目が残り、触ると毛羽立ちやテクスチャーが感じられる仕上げです。

▶ なぜ外壁に向いているのか?

  • 表面積が増え、水はけが良くなる
  • 塗料の吸い込みが深くなり、長持ちする
  • 風化が均一に進むため、汚れが目立たない
  • 光の陰影が出やすく、美観がある

つまり、見た目の“味”と、メンテナンス性の両立が可能なんです。

ラフソーンは“粗い”のではなく、“自然に対して順応できる質感”。
経年変化が美しく進む設計に欠かせない選択肢です。


外壁に使うなら、杉の“赤身”|150年材の力とは?

ここで最も重要な話をします。
外壁に使う木材として、僕が推すのは「樹齢150年程度の杉材の赤身部分」です。

▶ なぜ赤身なのか?

杉材は、中心に近い「赤身(芯材)」と外周の「白太(辺材)」に分かれます。
この赤身部分こそが、油脂分が多く、耐水性・耐虫性・耐腐朽性に優れるのです。

特に、樹齢150年以上の高樹齢杉赤身材には、以下の特徴があります:

  • 年輪が緻密で密度が高い
  • 含水率が安定しており、反りや割れが起きにくい
  • 樹脂・フェノール系抗菌成分が豊富に含まれる
    (→ 材そのものが“自衛力”を持つ)

【根拠】
社寺建築で使われる木材もこの“赤身”であり、
高樹齢であればあるほど、材そのものが“屋外に晒されても耐えうる密度と油分”を持っていることが実証されています。


塗装する?しない?|外壁木材の保護と哲学

木の外壁には、
「塗装する派」と「無塗装派」が存在します。

▶ 塗装する場合のメリット

  • 紫外線や雨風からの保護
  • 色を整え、統一感ある外観にできる
  • 木材の乾燥を抑え、反りを防止

代表的な自然系塗料には、
オスモカラー、プラネットカラー、リボスなどがあります。

▶ 無塗装の魅力と“灰化”という美学

一方で、無塗装の杉は自然に色が落ち、灰色や銀色に変化していく
これを「灰化(グレイイング)」と呼びます。

特に、ウッドロングエコなどの天然防腐剤を使えば、
初めから“グレイッシュ”な色に仕上げることも可能で、
経年変化が目立ちにくく、美しさが長続きします。

塗装するかどうかは、
“素材を守るか”“素材を活かすか”という思想の違いとも言えるのです。


“外壁は経年劣化ではなく、経年美化”という考え方

木の外壁は、時間とともに変化します。

– 色が抜けていく
– 表面がささくれ立つ
– 雨だれ跡が残る
– 柄や濃淡にムラが出る

これらはすべて、“劣化”として捉えられがちです。

でも僕は違うと思っています。
それは“暮らしの記憶が刻まれていく過程”だと。

風雨に耐え、日差しを浴び、家族の時間を守ってきた証。
年を重ねるほどに深みを増し、“風景の一部”になっていく。

それが、木という素材の特権だと思うのです。


僕が届けたいのは、“呼吸する外観”という美学

木の外壁には、数字では語れない魅力があります。

– 温かみ
– 手触り
– 自然との調和
– 季節の色との連動
– 時間を重ねる美しさ

ラフソーンの杉板に雨が当たったとき、
表面にできる“しっとりとした陰影”を見て、
僕はこう思います。

「ああ、この家は、呼吸してるな」と。


📘 『深呼吸したくなる家』では書ききれなかった話

僕のKindle書籍では、
断熱・気密・自然素材・空気設計・空き家再生について書きました。

でも“外壁”の話だけは書ききれなかった。

この「外観に木を使うという選択」は、
暮らしの外側に“深呼吸の質”を広げる設計でもあると思っています。

木と空気と時間。
それらを含んだ家こそが、“暮らしの器”だと信じています。

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