工場の蒸気配管を覆う保温板金に、錆びのような変色や継ぎ目の傷みが見つかった。
配管自体は保温材に覆われているため、外から腐食の状態は確認できない。外装板金を補修するだけでよいのか、それとも保温材を撤去して配管本体を調査するべきなのか。
工場の設備担当者にとって難しいのは、見えない配管の状態に対して、どこまで調査し、どの範囲を更新対象にするかという判断です。
保温材の下で発生する腐食は、外装材の傷みが小さくても局部的に進行している場合があります。一方、外装材が傷んでいても、配管本体に大きな減肉が生じていない場合もあります。
したがって、外装板金の状態だけで配管更新を決めることも、見た目に問題が少ないから調査を省くことも適切ではありません。
ここでは、蒸気配管の保温下腐食について、重点的に確認する箇所、保温材を撤去する範囲の考え方、配管の部分更新と区間更新を判断する方法を整理します。
蒸気配管でも、保温材の下で腐食は進むのか

蒸気配管は、高温の蒸気を効率よく供給するため、一般的に保温材と外装板金で覆われています。
しかし、保温施工されていること自体が腐食の原因になるわけではありません。
問題になるのは、保温材内部に水分が入り、配管外面が湿潤状態になることです。
例えば、屋外配管の外装板金の継ぎ目や支持部などから雨水が侵入し、保温材内部に水分が滞留すると、炭素鋼配管の外面で腐食が進行する場合があります。
これを保温材下腐食(CUI:Corrosion Under Insulation)と呼びます。
消防庁の「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた事故防止の手引き」でも、保温外装材の劣化やシール材の傷み、支持部などからの浸水によって配管外面の腐食が進行し、漏えいにつながる事例が紹介されています。
ただし、蒸気配管では運転温度を考慮する必要があります。
高温で連続運転している配管と、停止を繰り返す配管は条件が違う
一般に、炭素鋼配管が高温で連続運転し、外面が乾燥した状態に保たれていれば、水分が長時間残る配管に比べて湿食による保温下腐食のリスクは低くなる傾向があります。
一方、運転と停止を繰り返す配管では、停止中に配管温度が低下し、保温材内部に侵入した水分が残りやすくなることがあります。
また、高温の蒸気主管であっても、分岐先の滞留部や支持部などでは、主管と異なる温度条件になっている可能性があります。
そのため、通常運転時の蒸気温度だけで、保温下腐食が発生しないと判断することはできません。
腐食の可能性は、配管材質、運転温度、停止頻度、外装材の状態、浸水の可能性を組み合わせて判断します。
なお、ステンレス鋼配管では塩化物による応力腐食割れなど、炭素鋼とは異なる損傷も考慮する必要があります。以下では主に炭素鋼の蒸気配管を想定します。
保温材をすべて撤去する前に、調査対象を絞る
保温下腐食が疑われるからといって、工場内の保温配管をすべて撤去して調査するのは、現実的とは限りません。
配管の長さが長く、高所や設備の上部に設置されている場合、保温材の撤去・復旧には相応の工事費と作業時間がかかります。
したがって、まずは腐食が発生しやすい条件を整理し、優先して調査する区間を選定します。
外装板金の継ぎ目・端部
屋外配管では、保温板金の継ぎ目や端部のシールが劣化し、雨水が侵入することがあります。
外装板金が変形している場所、継ぎ目が開いている場所、シール材が剥離している場所などは、重点的に確認したい部分です。
ただし、外から見える浸水箇所と、実際に腐食が進行している場所が一致するとは限りません。
保温材の内部を水分が移動し、離れた場所で滞留する場合もあります。
そのため、外装材が傷んでいる場所だけを局所的に補修すれば問題が解決するとは限りません。
配管支持部・貫通部
配管を支えるサポートや、保温材を貫通する金物の周辺も、確認対象になります。
こうした場所では、外装材を切り欠いた部分やシールの取り合いから水分が侵入する可能性があります。
また、配管支持部では周囲と異なる温度条件になることもあります。
配管ラック上で直接見えない支持部については、外装材の状態だけでなく、保温材の施工状況や過去の点検履歴も確認する必要があります。
停止頻度の高い枝管・滞留部
工場内のすべての蒸気配管が、同じ時間だけ運転しているとは限りません。
蒸気主管は連続運転していても、製造設備につながる枝管は、生産計画に応じて停止している場合があります。
このような配管では、主管よりも冷却と再加熱を繰り返すことがあります。
特に、外装材の傷みや浸水の可能性がある区間では、運転履歴も含めて調査の優先度を判断します。
どの配管から優先的に調査すべきか
例えば、同じ工場に次のような蒸気配管があるとします。
| 配管の状況 | 優先して確認したい理由 |
|---|---|
| 屋外で外装板金の継ぎ目が傷んでいる配管 | 雨水が保温材内部へ侵入する可能性がある |
| 運転・停止を頻繁に繰り返す枝管 | 湿潤状態が生じる運転条件になっている可能性がある |
| 支持部周辺に変色や外装の傷みがある配管 | 局所的な浸水・腐食が発生する条件がある |
| 過去に同じ系統で保温下腐食が見つかった配管 | 類似する施工条件の区間にも損傷が存在する可能性がある |
これは一律の危険度ランキングではありません。
実際には、外装材の状態や温度条件だけでなく、万一漏えいした場合に、人員や生産設備へ与える影響も考慮して調査の順番を決めます。
例えば、高温蒸気が漏えいすれば作業者の安全に重大な影響が及ぶ場所では、設備の重要度を高く評価する必要があります。
腐食が起きやすいかという可能性と、漏えいした場合の影響を合わせて考えることが、調査計画の基本になります。
保温材をどこまで撤去して調査すればよいのか
腐食が疑われる場所を特定したら、次に検討するのが調査方法です。
保温材を一部撤去して鋼管外面を目視確認する方法は、腐食や塗膜の状態を直接調べる手段になります。
ただし、最初に開口した場所で腐食が見つかった場合、その部分の状態だけで、周辺配管の健全性まで判断することはできません。
例えば、支持部の周辺で腐食が見つかった場合です。
腐食が支持部だけに集中しているのか。隣接する配管にも広がっているのか。同じ条件の支持部でも発生しているのか。
これらを確認しなければ、補修範囲も更新範囲も決められません。
そのため、初回の確認結果に応じて、調査箇所を隣接区間や類似条件の場所へ広げることを検討します。
最初から何メートル保温材を撤去すると決めるのではなく、腐食の分布を把握するために、どこまで調査を広げる必要があるかを判断することが重要です。
肉厚測定で何を確認するのか
鋼管の外面に腐食が確認された場合、必要に応じて超音波厚さ測定などを行い、残存肉厚を評価します。
ここで注意したいのは、測定した一か所の肉厚だけで、配管区間全体を健全と判断しないことです。
保温下腐食は局部的に進む場合があり、測定位置によって減肉の程度が異なることがあります。
したがって、腐食の形状や広がりに応じて測定位置を設定し、局所的に肉厚が小さくなっている部分を把握する必要があります。
継続使用が可能かどうかは、残存肉厚に加え、配管の設計条件、使用圧力・温度、材質、適用される基準などを踏まえて評価します。
単に「肉厚がまだ残っているから大丈夫」とは判断できません。
保温材を撤去しない調査方法もある
配管の状態や調査目的によっては、保温材を全面撤去する前に、放射線検査やパルス渦流探傷などの非破壊検査をスクリーニングとして活用する方法もあります。
消防庁の事故防止資料でも、こうした検査によって疑わしい箇所を抽出し、必要な場所で保温材を撤去して詳細調査する考え方が紹介されています。
ただし、検査方法にはそれぞれ適用できる配管径、保温構造、検出能力などの制約があります。
検査方法は専門の検査会社と協議し、必要な精度を満たせるか確認する必要があります。
腐食が見つかったとき、部分補修か区間更新かをどう決めるか
調査によって腐食の状態が明らかになったら、補修・更新の方針を検討します。
ここでも、錆びが見つかったから直ちに配管を交換するとは限りません。
一方、目立つ腐食が一か所だけだからといって、その部分だけを補修すればよいとも限りません。
重要なのは、減肉の程度と広がり、継続使用の適否、今後の運転条件を合わせて評価することです。
配管本体の健全性が確認できた場合
外装材の劣化が見つかったものの、詳細調査によって配管本体の健全性が確認できた場合は、必ずしも配管更新が必要になるわけではありません。
必要な防食処理を行い、保温材や外装板金の防水・復旧を適切に実施する方法が考えられます。
ただし、単に外装板金を新しくするだけでは、浸水原因が残る場合があります。
継ぎ目の構造、シール材、支持部の納まりなども合わせて確認する必要があります。
局所的に腐食が見つかった場合
腐食が限定された場所で見つかった場合は、その部分の残存肉厚と、周辺への広がりを調べます。
その結果によって、継続使用の可否や補修方法を判断します。
ただし、局所的な減肉が深い場合は、外観上の腐食範囲が狭くても安全上の問題となることがあります。
腐食範囲が小さいという理由だけで簡易補修を選ぶのではなく、必要な強度・健全性を確保できる方法を検討します。
複数箇所で腐食や減肉が確認された場合
同じ配管区間の複数箇所で腐食が進行している場合や、同じ条件の支持部で繰り返し発生している場合には、区間更新を検討する理由になります。
例えば、特定の屋外配管区間で保温材への浸水が広い範囲に及んでいれば、一か所だけ補修しても、別の場所で腐食が進行している可能性があります。
この場合には、調査結果と施工条件を照合し、健全な既設配管との接続位置を含めて更新範囲を決めていきます。
その際には、配管の材質・口径・使用温度・圧力、支持方法、熱伸縮なども確認する必要があります。
定修期間に更新するなら、保温撤去・復旧まで含めて工事を考える
配管更新の必要性が明らかになった場合、次に問題となるのは工事期間です。
蒸気配管では、既設配管の安全な停止・隔離、冷却、残圧や残留流体の確認などを行ったうえで作業する必要があります。
高温の運転中配管を安易に開放して調査することはできません。古い保温材の材質が不明な場合は、アスベスト含有の有無など、撤去前に必要な確認もあります。
さらに、配管の撤去・更新が終わったあとには、仕様に応じた必要な試験を行い、保温材と外装板金を復旧しなければなりません。
保温外装の復旧では、今回の腐食につながった浸水経路を繰り返さないよう、継ぎ目や支持部の納まりなどを確認することが重要です。
工場の定修期間に実施する場合は、調査と更新を同じ停止期間にまとめるのか、事前に調査して更新範囲を確定させておくのかによって工程が変わります。
調査前の段階で更新範囲を決めきれないなら、定修期間中に追加調査と追加工事が必要になる可能性まで考えて計画する必要があります。
可能であれば、事前のスクリーニングや適切な時期の詳細調査によって、不確定な部分を減らしておくことが合理的です。
設備担当者が、まず何を進めるべきか
蒸気配管の外装材に傷みが見つかり、保温下腐食が疑われる場合は、次の順番で進めます。
最初に、外装材の状態と運転条件を整理します。
傷みがある場所、屋内・屋外の別、配管支持部との位置関係、運転温度、連続運転か間欠運転かを把握します。
次に、調査の優先順位を決めます。
浸水の可能性が高い箇所や、漏えいした場合の影響が大きい配管を優先して確認します。
そのうえで、必要な詳細調査を行います。
外装材の確認だけで終わらせず、必要に応じて保温材の部分撤去や専門的な非破壊検査を実施し、鋼管外面と残存肉厚の状態を評価します。
最後に、補修か区間更新かを判断します。
腐食の程度と分布、配管の継続使用の可否、停止期間などを踏まえ、必要な工事範囲を決めます。
この段階で初めて、更新する配管の長さや、支持金物・保温外装を含む工事内容を具体化できます。
蒸気配管の腐食調査後の更新・改修工事について
蒸気配管の保温下腐食は、外装板金の状態だけでは配管本体の損傷範囲を判断できません。
一方、疑わしい箇所があるからといって、直ちに配管全体を更新する必要があるとも限りません。
重要なのは、必要な調査を行って配管の健全性を確認し、その結果に応じて合理的な更新範囲を決めることです。
HAGANEでは、工場・プラントの蒸気配管について、老朽配管の更新、既設配管の部分改修、配管ルートの変更などのご相談に対応しています。
保温下腐食の調査結果を受けて配管更新が必要になった場合や、定修期間に合わせて更新範囲を検討したい場合は、既設配管の状況と施工条件を確認しながら、対応できる工事範囲を整理します。
外装材の劣化箇所が分かる写真、配管系統図、過去の調査結果、更新を予定している時期などがあれば、まずは分かる範囲でお知らせください。
