新しい生産設備の導入に合わせて、大型の排気ダクトを設置することになった。
設備メーカーとの打ち合わせも終わり、ダクトの製作図もまとまりつつある。しかし、工場の天井を確認すると、ダクトを設置する予定の場所にスプリンクラー設備がある。
そこで消防設備の点検業者に確認したところ、ダクトが散水を妨げる可能性があり、ヘッドの移設や増設が必要になるかもしれないと言われた。
設備の搬入日は決まっている。ダクトの工事も発注間近です。
今からスプリンクラー設備の改修が必要になれば、どこまで工事が増えるのか。設備の据付や試運転に影響しないのか。
工場の設備担当者にとって問題なのは、スプリンクラーヘッドの位置だけではありません。すでに進んでいる設備増設計画に、消防設備の改修工事をどう組み込むかということです。
ここで注意したいのは、既設スプリンクラーの近くに障害物ができたからといって、ヘッドを少し横へ移動させれば解決するとは限らない点です。
障害物の幅や高さ、既設ヘッドの種類、配管系統によっては、障害物の下面に新しいヘッドを設ける必要がある場合もあります。
設備の設置後に消防設備の問題を発見するのではなく、配置計画の段階で散水への影響を確認すること。
それが設備増設に伴う手戻りを防ぐための重要なポイントです。
今回は、既設スプリンクラー設備が設置されている工場を対象に、大型ダクトや棚、生産設備の増設時に確認する事項と、ヘッドの移設・増設工事をどう具体化するかを解説します。
設備増設で問題になるのは、ヘッドとの接触だけではない
例えば、工場の天井に既設のスプリンクラーヘッドが設置されているとします。
その下へ大型の排気ダクトを新設する場合、ヘッドとダクトが直接接触しなければ問題ないのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
スプリンクラーヘッドは、火災時に必要な範囲へ散水できるように配置されています。
しかし、新しく設置したダクトや棚が水の広がる経路を遮れば、既設ヘッドの配置が変わらなくても、必要な範囲へ散水できなくなる可能性があります。
また、障害物の位置によっては、散水だけでなくヘッド周囲への熱の伝わり方にも影響する場合があります。
つまり、既設ヘッドが新設設備に接触しないことだけでは、消防設備として適切な状態か判断できません。
大型ダクトの下面にもヘッドが必要になる場合がある
消防法施行規則第13条の2第4項第1号では、標準型の閉鎖型スプリンクラーヘッドについて、障害物との位置関係に関する基準が定められています。
例えば、幅または奥行きが1.2mを超える給排気用ダクトや棚などがある場合、その下面にもヘッドを設けることが求められます。
京都市消防局の「スプリンクラー設備標準仕様書」にも、この条件が明記されています。
また、同資料では、標準型ヘッドのデフレクターから下方0.45m以内、かつ水平方向0.3m以内に障害物を設けないことなどが確認項目として示されています。
ただし、これらの数値だけで、すべての設備の適否を判断できるわけではありません。
既設ヘッドの種類、設備方式、障害物の形状、建物用途などによって適用される条件が異なります。幅が1.2m以下でも、散水を妨げる配置であれば問題になる可能性があります。
特に、高積みの物品を扱うラックや、特殊な防護方式を採用している設備では、一般的なダクトの障害物判定だけでは不十分です。
設備担当者が最初に確認したいのは、新設設備の寸法だけではなく、既設スプリンクラーの設置条件と照合した結果です。
この判断は、消防設備士などの専門家が現地条件と適用基準に基づいて行います。
設備の製作図が確定する前に、消防設備図面と重ねて確認する
工場の設備増設では、生産設備、空調・換気、電気、配管などがそれぞれ検討されます。
その中で消防設備の確認が遅れると、設備の製作や現場施工が進んでから、スプリンクラーとの干渉が見つかることがあります。
例えば、排気ダクトのルートが確定して製作を開始した後に、消防設備の改修が必要だと判明した場合です。
ダクトの位置を変更できればよいのですが、既設設備との取り合いや排気性能などの条件によっては、変更が難しいこともあります。
そうなると、スプリンクラーヘッドの移設・増設に加えて、既設消火配管からの分岐や配管ルートの変更まで必要になる可能性があります。
これを防ぐためには、設備増設の計画段階で、既設スプリンクラーヘッドの配置と新設設備の外形を照合する必要があります。
確認したいのは、平面上の位置だけではありません。
新設ダクトや棚の幅・奥行き、天井からの下がり寸法、既設ヘッドとの水平・垂直方向の位置関係まで把握することが重要です。
例えば、ダクトの平面図では既設ヘッドから十分に離れているように見えても、断面方向で散水に影響する場合があります。
また、既存図面が古い場合は、現在設置されているヘッドの位置を現地で確認する必要があります。
図面上で干渉がないことと、実際の散水条件に問題がないことは別です。
設備担当者は、新しい設備の配置を確定する前に、消防設備の専門業者へ現況確認を依頼することが重要です。
散水障害がある場合、どの工事方法を検討するのか

散水への影響が確認された場合、対応方法は一つではありません。
大きく分けると、設備側の配置を見直す方法、既設ヘッドを移設する方法、新しいヘッドを増設する方法が考えられます。
ただし、これらはすべての現場で選択できるわけではありません。
| 検討する方法 | 成立させるために確認すること |
|---|---|
| 新設設備・ダクトの位置変更 | 設備機能を維持しながら散水障害を避けられるか |
| 既設ヘッドの移設 | 必要な防護範囲、感熱・散水条件を満たせるか |
| ヘッドの増設・消火配管改修 | 障害物下面の防護、既設系統との接続、必要な放水性能を確保できるか |
設備やダクトの位置を変更できる場合
新しい設備の配置がまだ確定していなければ、ダクトなどの位置を変更することで散水障害を回避できる場合があります。
ただし、設備の移設によって換気性能や生産設備の機能が損なわれてはいけません。
設備側の配置変更が可能かどうかは、工場の設備担当者と設備メーカーなどが判断します。
消防設備の施工会社は、変更後の配置で必要な防護条件を満たせるかを確認します。
設備側の変更が合理的であれば、消防設備の改修工事を減らせる可能性があります。
既設ヘッドを移設する場合
既設ヘッドの位置を変更することで、必要な防護範囲と散水条件を満たせる場合には、移設工事を検討します。
ただし、単に障害物からヘッドを離せばよいわけではありません。
移設後も、対象区域に必要な防護範囲を確保できることが前提です。
また、既設ヘッドへ接続している配管の位置によっては、配管の一部を変更する必要があります。
ヘッドの種類や接続方式、配管支持なども確認し、消防設備として成立する施工方法を選定します。
障害物の下面へヘッドを増設する場合
大型ダクトなどによって上部のヘッドからの散水が遮られる場合は、障害物の下面側に新しいヘッドを設けることを検討します。
この場合、ヘッドを追加するだけでなく、既設消火配管から新たな配管を分岐させる工事が必要になる可能性があります。
また、増設後のヘッド配置や必要な放水性能、配管径、支持方法などについて、適用基準に基づいた確認が必要です。
ヘッドを増やせば必ず適切な設備になるわけではなく、既設設備全体の条件に適合した増設でなければなりません。
増設するヘッドの数だけで工事を判断するのではなく、どの系統から接続し、どの範囲を防護するかを明確にします。
既設消火配管から分岐できるかで、工事範囲は変わる
ヘッドの移設や増設が必要になった場合、施工会社が次に確認するのは既設消火配管の構成です。
例えば、新しく設置するダクトの下面へヘッドを増設する計画でも、近くに接続可能な消火配管があるとは限りません。
また、近くに配管があっても、その配管へ接続してよいかは別の確認が必要です。
既設系統の方式、管径、使用するヘッド、必要な放水性能などを確認し、配管改修方法を検討します。
さらに、配管ルートを変更する際には、既設ダクトや電気設備との干渉、必要な配管支持、安全に施工できる作業スペースなども確認します。
工場の天井が高い場合には、高所作業に必要な設備や施工方法も工事費・工程に影響します。
ここで重要なのは、ヘッドの移設・増設に必要な消火配管工事を、設備増設工事とは別に後から考えないことです。
新設設備の製作・据付工程と合わせて検討すれば、配管ルートや作業順序を調整しやすくなります。
なお、ヘッドの追加や配管構成の変更によって設備の水力条件に影響が及ぶ場合は、必要な性能を満たすか技術的な確認が必要です。ヘッドを増設するからといって、必ず消火ポンプの更新が必要になるわけではありません。
工場の設備担当者は、どこまで決めて施工会社へ相談すればよいか
設備担当者が、スプリンクラーヘッドの新しい位置や配管ルートまで指定する必要はありません。
工場側で決めたいのは、新設設備の用途、配置上の制約、工事可能な時期などです。
その情報をもとに、消防設備の施工会社が必要な現地調査と改修方法を検討します。
例えば、次のような情報があると、工事内容を具体化しやすくなります。
| 工場側が用意する情報 | 消防設備の改修検討で必要な理由 |
|---|---|
| 新設する設備・ダクトの配置図 | 既設ヘッドとの位置関係を確認する |
| 新設設備の外形寸法と設置高さ | 散水障害の有無を検討する |
| 既設スプリンクラーの図面・設備情報 | ヘッド配置と配管系統を確認する |
| 設備の搬入・据付予定日 | 消防設備改修を実施できる時期を検討する |
| 工場の稼働・工事条件 | 必要な設備停止や高所作業の条件を整理する |
図面がすべてそろっていなければ、現況調査によって不足する情報を確認することになります。
重要なのは、最初から設備担当者が工法を決めることではありません。
新設設備の条件を伝え、既設スプリンクラーにどのような影響があるかを、設置前に確認することです。
この段階で工事の必要性が明らかになれば、設備増設計画に消防設備工事を組み込めます。
見積は「ヘッド何個」だけでは比較できない
スプリンクラーの改修工事を見積依頼するとき、増設・移設するヘッドの数は重要な情報です。
しかし、ヘッドの数量だけで工事費が決まるわけではありません。
例えば、同じヘッド2個の増設でも、既設配管から短い距離で分岐できる場合と、離れた位置から新たな配管ルートを設ける場合では、施工内容が異なります。
さらに、高所作業や天井内での配管改修が必要になる場合、足場・作業車・支持金物などの条件も変わります。
そこで見積を比較する際には、少なくとも次の範囲を整理します。
- ヘッドの移設・増設と使用する機器の仕様
- 既設消火配管の撤去・分岐・新設範囲
- 配管支持・必要な高所作業・付帯工事
- 工事中の設備停止、排水・復旧の条件
- 必要な試験、消防関係手続き、完成図書の範囲
例えば、一方の見積にはヘッドの交換・増設だけが含まれ、別の見積には配管改修や高所作業まで含まれていれば、金額だけでは比較できません。
何を移設・増設するのかに加え、既設設備へどのように接続し、どこまで施工・確認するのか。
これを同じ条件で比較する必要があります。
消防設備の工事を、設備の据付工程へどう組み込むか
工場の設備増設で、最も避けたいのは、新しい設備を取り付けた後になって消防設備の改修工事が必要だと分かることです。
その時点では、新設ダクトや生産設備が施工の障害になり、消防設備の配管工事を行いにくくなる場合があります。
例えば、大型ダクトの下面にヘッドを増設するなら、ダクトの設置前後のどちらで消火配管を施工するかによって、作業条件が変わります。
また、既設スプリンクラー設備を停止する必要がある場合は、工場の防火安全体制を踏まえた調整が必要になります。
そのため、設備増設工事の工程表には、必要な消防設備改修の施工時期だけでなく、機能停止の影響範囲、復旧、必要な試験・確認の時間も含めておきます。
着工届や設置届などの消防関係手続きについても、改修内容に応じて確認する必要があります。
小規模なヘッドの移設・増設であっても、必ず届出が不要になるという意味ではありません。軽微な工事の取扱いには条件があり、必要な手続きは消防設備士と所轄消防機関で確認します。
京都市では、消防指導センターが消防用設備等の着工届・設置届などを受け付けています。
設備増設が完成した日と、消防設備の必要な機能が確認され、工場として使用できる状態になる日は、工程上分けて考える必要があります。
この違いを事前に把握することで、試運転や生産開始までの計画を整えやすくなります。
工事後は、変更した消防設備を記録しておく
スプリンクラーヘッドを移設・増設した場合は、変更したヘッドの位置、接続した配管系統、必要な試験・確認結果などを記録します。
工場では、将来さらに設備増設やレイアウト変更を行う可能性があります。
その際、過去にどのヘッドを移設し、どの配管を変更したかが分かれば、次の改修工事に必要な確認を進めやすくなります。
また、既存の消防設備点検業者が今後の点検で変更内容を把握できるよう、必要な完成図面や改修記録を共有しておくことも重要です。
工事は、ヘッドを取り付けた時点で完了するわけではありません。
必要な消防設備の機能を確保し、変更内容を今後の維持管理へ引き継ぐところまで考える必要があります。
工場の設備増設に伴うスプリンクラー改修をご相談ください
生産設備の増設に合わせて排気ダクトを新設する。工場内に新しい棚やラックを設ける。既設設備の配置変更によって、スプリンクラーヘッドとの位置関係が変わる。
このような場合、設備の設置後ではなく、計画段階で既設消防設備への影響を確認することが重要です。
HAGANEでは、工場・事業所のスプリンクラー設備について、既設ヘッドの移設・増設、消火配管の改修、関連する建築付帯工事などのご相談に対応しています。
設備メーカーや工場側で新設設備の配置を検討している段階でも、既設消防設備の状況を確認し、必要な改修工事の範囲を検討します。
ダクトや設備の位置は決まっているが、スプリンクラーの散水障害がないか確認したい。必要なら、ヘッドの移設・増設と消火配管工事を合わせて相談したい。
そのような場合は、新設設備の配置図や外形寸法、既設スプリンクラーの図面、希望する施工時期など、分かる範囲の情報からご相談ください。
工場の設備増設に伴うスプリンクラー改修をご相談ください
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