新しい生産設備を導入してから、既存ラインの動作が不安定になった。
新設した機械がエアーを大量に使用するタイミングで、離れた場所にある設備のシリンダーが遅くなり、ときには圧力低下の警報で停止する。
コンプレッサーの圧力計を見ると、設定した圧力は出ている。それでも現場の機械ではエアーが足りない。
設備メーカーからは供給圧力の不足を指摘され、コンプレッサーの増設も検討し始めている。
しかし、ここで設備担当者が確認したいのは、本当にコンプレッサーの能力が足りないのか、それとも既設配管が必要な空気量を末端まで送れていないのかということです。
コンプレッサーに十分な供給能力があっても、配管の口径やルート、途中の機器による圧力損失が大きければ、末端設備の圧力が不足する場合があります。
反対に、工場全体の空気使用量が供給能力を上回っているなら、配管だけを更新しても問題は解決しません。
不要なコンプレッサー増設や、効果のない配管工事を避けるには、エアーを使用しているときの圧力を、供給源から機械入口まで比較する必要があります。
この記事では、工場の設備担当者が圧力低下の原因を切り分け、どのような結果が出たら配管改修を検討するべきか、具体的に解説します。
圧力計が正常なのに、機械が止まるのはなぜか

エアー圧力の問題で見落とされやすいのが、機械が停止しているときと、実際にエアーを消費しているときでは、配管の状態が違うという点です。
例えば、生産設備が待機しているときには、末端の圧力計が正常値を示していることがあります。
しかし、複数のシリンダーが同時に作動したり、大量のエアーブローが始まったりすると、配管内を流れる空気量が増加します。
このとき、配管や継手などの抵抗によって圧力が低下する場合があります。
つまり、設備の停止中に圧力計を確認して「正常だった」と判断しても、運転中の問題を把握できないことがあります。
特に、特定の設備が作動した瞬間だけ圧力が下がる場合には、その使用タイミングで圧力がどう変化しているかを確認する必要があります。
調べるべきなのは、圧力が何MPaあるかだけではなく、いつ、どこで、どれだけ低下しているかです。
コンプレッサー不足と配管の圧力損失は、どう切り分けるのか
原因を調べる際には、供給源と末端の圧力を別々に測定するのではなく、同じ運転条件で比較します。
例えば、次の四つの位置です。
| 測定位置 | 確認する内容 |
|---|---|
| ① コンプレッサー供給側 | 空気を大量に使用するときも供給圧力を維持できているか |
| ② 工場の主管 | ドライヤー・フィルターなどを経由した後、主管へ必要な圧力が供給されているか |
| ③ 問題がある設備の枝管入口 | 主管から対象設備の枝管までに大きな圧力低下がないか |
| ④ 機械の供給接続口 | 枝管から機械入口までに大きな圧力低下がないか |
④については、機械側のレギュレータで意図的に減圧している場合があります。そのため、配管の損失を評価する際には、必要に応じて減圧機器の上流・下流を区別します。
また、測定は圧縮空気の取扱いに必要な知識を持つ担当者が、既設の適切な測定箇所などを利用して行います。運転中の配管を安易に開放したり、測定のために穴を開けたりしてはいけません。
測定結果によって、検討する対策は変わる
例えば、次のような違いがあります。
供給源側から圧力が大きく低下している場合
工場全体の空気使用量、コンプレッサーの供給能力や制御、空気処理設備などを含めた確認が必要です。
この場合、配管口径の変更だけで改善するとは限りません。
主管では圧力が維持され、特定の枝管で大きく低下する場合
その枝管の口径、延長、分岐位置、バルブ、継手などによる圧力損失が検討対象になります。
ここは配管改修によって改善できる可能性がある部分です。
枝管入口までは正常で、機械の直前で圧力が低下する場合
接続ホース、継手、局所フィルター、レギュレータなどを含む機械接続部の確認が必要です。
この場合、工場の主管を更新しても問題が改善しない可能性があります。
圧力低下の原因は一つとは限りません。供給能力の不足と配管抵抗の増大が同時に発生している場合もあります。
重要なのは、圧力低下が起きている区間を明らかにしてから、対策を選ぶことです。
数字で見ると、どこを改修するべきかが分かりやすくなる
ここでは、判断方法を説明するための仮の測定例を考えます。実際の工場の測定結果ではありません。
ある生産機械では、メーカーの仕様上、供給接続口で0.50MPa以上が必要だとします。
機械が待機しているときと、大量のエアーを使用しているときの圧力を比較すると、次の結果でした。
| 測定位置 | 待機時 | エアー大量使用時 |
|---|---|---|
| ① 供給源側 | 0.65MPa | 0.64MPa |
| ② 工場主管 | 0.64MPa | 0.63MPa |
| ③ 対象枝管入口 | 0.64MPa | 0.62MPa |
| ④ 機械入口(局所減圧前) | 0.63MPa | 0.48MPa |
この条件なら、供給源から枝管入口までは比較的安定しています。
一方、枝管入口の0.62MPaに対し、機械入口では0.48MPaまで低下しています。
つまり、大量使用時の圧力低下が、枝管入口から機械接続口までの間に集中している可能性があるということです。
この結果であれば、まず対象区間の配管や機械接続部を調べる理由があります。
ただし、これだけで配管径の不足と断定することはできません。途中のフィルターやレギュレータ、ホースなどに大きな損失が発生している可能性もあります。
必要に応じて対象区間内の圧力差や流量を追加確認し、どの部分が制約になっているかを絞ります。
このように測定位置を分ければ、「エアーが足りないからコンプレッサーを増やす」という判断から、具体的な改修対象の検討へ進めます。
配管側に原因がある場合、どのような工事が考えられるか
配管の圧力損失が大きいと確認できた場合、主に検討するのは、口径の変更、供給ルートの変更、配管系統の見直しです。
ただし、どの方法を採用するかは、実際の流量や配管の構成によって変わります。
一部の細い配管を更新する
例えば、工場の主管は十分な口径でも、途中の枝管だけ口径が小さくなっている場合があります。
その区間に多くの空気を流すと、圧力損失が大きくなる可能性があります。
調査の結果、特定の枝管が供給上の制約になっていると確認できれば、その区間の口径を見直す方法があります。
ただし、単に太い配管へ取り替えれば改善するとは限りません。
必要な空気流量、配管延長、接続部の仕様を考慮したうえで、適切な口径を決める必要があります。
供給ルートを変更する
例えば、工場の増設を繰り返した結果、遠い位置にある設備へ長い配管でエアーを供給している場合です。
既設系統を確認すると、別の主管から分岐した方が、必要な供給条件を確保しやすい場合もあります。
このような現場では、接続する主管の供給能力を確認したうえで、配管ルートの変更を検討します。
ただし、近くにエアー配管があるからといって、どこへでも接続できるわけではありません。
分岐元の系統で使用している空気量や、ほかの設備への影響も確認する必要があります。
ループ配管やバイパス配管を検討する
一方向から供給している長い配管系統では、別ルートからの供給を加えることで、圧力損失を低減できる場合があります。
こうした方法はループ配管やバイパス配管として検討できます。
ただし、細い配管を単につなげば問題が解決するわけではありません。
流量がどのルートへ分配されるか、配管径や接続位置が適切かを計算・確認する必要があります。
SMCの空気圧管路網計算ソフトでも、配管の口径変更やバイパス配管による圧力降下の改善効果を予測することができます。
工事方法を決める前に、どの区間でどれだけ圧力を失っているかを把握することが重要です。
すぐに配管工事を発注できない場合もある
例えば、圧力不足が発生していることは分かっていても、工場全体の空気使用量や対象設備の必要流量が不明な場合です。
この状態で施工会社へ「エアー配管を太くしてほしい」と依頼しても、どの口径が適切か判断できない場合があります。
また、工場の空気使用量がコンプレッサーの供給能力を超えているなら、配管を更新しただけでは必要な圧力を維持できない可能性があります。
そこで工場側では、対象設備の仕様書から必要圧力・必要流量を確認し、実際に圧力低下が発生する運転条件を整理します。
コンプレッサーの供給能力や運転状況については、既存の保守業者やメーカーと確認する必要があります。
そして、配管側の圧力損失が問題になっている場合に、HAGANEのような配管施工会社へ、対象区間と改修方法の検討を依頼する流れになります。
配管施工会社が、コンプレッサーの能力診断をすべて引き受ける必要はありません。
一方、工場側で確認した使用条件をもとに、配管径・ルート・分岐方法を検討し、具体的な改修工事へつなげることは、配管施工会社が提供できる仕事です。
工事見積を依頼するとき、何を明確にしておくか
例えば、圧力測定によって、特定の枝管で大きな圧力降下が発生していることが分かったとします。
この場合、施工会社へ依頼したいのは、単なる配管交換の見積ではありません。
対象設備へ必要な空気量を供給するために、どの配管区間を、どのような仕様で改修する必要があるかという提案です。
相談に必要な情報は、次のように整理できます。
| 工場側から伝える情報 | 施工会社が検討すること |
|---|---|
| 圧力不足が起きる設備・症状 | 対象となる配管系統の特定 |
| 機械メーカーの必要圧力・流量 | 更新後に満たすべき供給条件 |
| 供給源・主管・枝管・末端の圧力記録 | 圧力損失が大きい区間の確認 |
| 既設配管の口径・ルート・図面 | 口径変更やルート変更の検討 |
| 工事可能な停止日時 | 既設配管との接続・切替工程の検討 |
現地調査の結果、配管の更新が必要になった場合は、対象区間の撤去、新設配管、支持金物、既設系統との接続、必要な試験・復旧まで含めて工事範囲を決めます。
また、改修によって圧力損失をどこまで低減できる見込みかについても、必要な流量と配管条件に基づいて検討します。
ここで重要なのは、根拠なく「配管を更新すれば圧力が上がる」と約束しないことです。
必要な供給条件と現状の圧力損失を把握し、その差を改善するための工事範囲を具体化することが、見積の前提になります。
コンプレッサーの設定圧力を上げる前に確認したいこと
末端の圧力が不足すると、コンプレッサーの設定圧力を上げて対応したくなる場合があります。
しかし、配管や機器による圧力損失が大きい状態を、供給圧力の引上げだけで補うことには注意が必要です。
一般に、供給圧力を引き上げると圧縮機の動力負担が増える場合があります。
また、エアー使用量が少ない時間帯には、末端圧力が必要以上に高くなる可能性もあります。
そのため、コンプレッサーの設定変更についてはメーカーや保守業者と協議し、工場全体の供給条件を確認する必要があります。
配管側の圧力損失が大きい場合には、その部分を改善できないか検討することにも意味があります。
配管の改修によって必要な末端圧力を確保できるなら、設備増設に伴う追加投資を抑えられる可能性があります。
ただし、実際の省エネルギー効果や電力費削減額は、圧縮機の運転条件や改修後の測定結果に基づいて評価する必要があります。
エアー配管の圧力不足で困っている場合、まず何を相談すればよいか
コンプレッサーの圧力計は正常なのに、工場の一部の生産設備で圧力が低下する。
新しい設備を増設してから既存ラインの動作が不安定になった。
このような場合、最初からコンプレッサーの増設や配管の全面更新を決める必要はありません。
まず、問題が発生する運転条件と、供給源から対象設備までの圧力差を確認します。
その結果、配管の口径・ルート・分岐位置などに改善すべき問題が見つかれば、必要な区間の改修を検討します。
HAGANEでは、工場・プラントの圧縮空気配管について、既設配管の更新、口径変更、分岐・増設、ルート変更などの工事相談に対応しています。
「工場の末端だけエアー圧力が低下する」「コンプレッサーを増設する前に、配管側の改修方法を検討したい」
そのような場合は、対象設備の位置、既設配管の状況、圧力低下が発生するタイミングなど、分かる範囲の情報からご相談ください。
工場のエアー配管、口径・ルートの見直しをご相談ください
末端での圧力不足や設備増設に伴う供給不足について、既設配管の状況を確認し、対応可能な配管改修の範囲を検討します。
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