冷却水の流量が不足し、生産設備の温度が上がる。ポンプは運転しているものの、以前のように水が流れない。
こうした状況で、ポンプの老朽化を疑い、更新を検討することがあります。
しかし、流量が減った原因がポンプ本体にあるとは限りません。吸込側のストレーナが詰まっていたり、吐出側のバルブや配管で抵抗が増えていたりすれば、ポンプが正常でも必要な水量を確保できなくなる場合があります。
反対に、配管系統に大きな変化がないのにポンプの性能が低下しているなら、羽根車の摩耗や内部の不具合など、機器側の調査が必要です。
問題は、流量が不足していることではなく、その原因を確認しないまま更新する設備を決めてしまうことです。
工場の設備担当者にとって重要なのは、原因を切り分け、どの設備を修理・更新すれば必要な流量を回復できるのかを判断することです。
ここでは、一般的な工場の冷却水・循環水系統に用いられる遠心ポンプを想定し、調査の進め方から工事範囲の決め方まで説明します。
ポンプの吐出圧力だけでは、流量不足の原因は分からない
まず理解しておきたいのは、ポンプの吐出圧力が高いからといって、十分な水量が流れているとは限らないことです。
例えば、吐出配管の途中にあるバルブや熱交換器の抵抗が大きくなれば、ポンプが送り出せる流量は低下することがあります。その際、ポンプの吐出圧力が高くなる場合もあります。
一方、吸込側の水位が低下したり、ストレーナの閉塞によって吸込条件が悪化したりすると、ポンプが正常な運転状態を維持できなくなる可能性があります。
どちらも流量不足につながり得ますが、必要な対応は異なります。
そのため、吐出側の圧力計を一つ見るだけでは不十分です。
必要なのは、ポンプの吸込側と吐出側の状態、実際の流量、運転条件を一緒に確認することです。
正常だったときと、何が変わったのか
現在の測定値だけでなく、設備が正常に運転していたときの記録が重要になります。
同じような生産負荷で、以前はどの程度の流量があり、吸込圧力と吐出圧力はどうだったのか。インバータの運転周波数や使用しているポンプの台数に変化はないか。
例えば、以前とほぼ同じ回転速度で運転しているのに、流量だけが明らかに低下しているなら、ポンプの性能か、配管系統の抵抗に何らかの変化が起きている可能性があります。
逆に、制御設定や使用設備の条件が変わっているのであれば、その影響を先に確認する必要があります。
これらの情報を整理することで、調査対象を絞り込みやすくなります。
最初に確認したい四つの場所

流量不足を調べるときは、設備全体を一度に疑うのではなく、水が流れる経路に沿って状態を確認します。
1. 吸込側の水位・供給条件
水槽から吸い込む設備では、吸込水位の低下や吸込配管への空気混入が問題になることがあります。
運転中の水位、吸込配管の状態、異音や振動の発生状況を確認します。
ただし、異音や振動があるからといって、必ずキャビテーションとは限りません。原因はポンプの運転点や機器の状態と合わせて評価する必要があります。
2. ストレーナや吸込配管
ストレーナが詰まると、ポンプへ水を供給する際の抵抗が増加します。
前後に圧力の測定点がある場合は、同程度の流量条件で差圧が以前より大きくなっていないか確認します。
差圧が増えているなら、ストレーナの汚れや閉塞を疑う根拠になります。
ただし、差圧は流量によっても変わるため、数値だけで閉塞の程度を断定することはできません。
3. ポンプの吸込圧力と吐出圧力
ポンプの発生揚程を評価するためには、吸込側と吐出側の圧力を確認します。
実際の全揚程を求める際には、両測定点の圧力差だけでなく、測定位置の高低差や流速の違いも必要に応じて考慮します。
さらに流量と回転速度を把握し、メーカーのポンプ性能曲線と比較することで、正常な性能を発揮しているかを検討できます。
4. 吐出配管・バルブ・熱交換器
ポンプが正常でも、吐出側の抵抗が増加していれば、必要な流量を確保できない場合があります。
特に冷却水系統では、熱交換器の汚れや配管内の付着物、ストレーナ・バルブの状態などが関係することがあります。
例えば、熱交換器の入口と出口で圧力損失が以前より大きくなっているなら、その部分の流路抵抗が増加している可能性があります。
この場合、ポンプ本体を交換しても、抵抗が増えた原因は残ります。
したがって、ポンプが悪いのか、ポンプ以外の系統に問題があるのかを分けて考えることが、合理的な修繕につながります。
調査結果から、修繕の方向性をどう決めるか

ここまでの情報がそろったら、修繕方法を検討します。
大切なのは、流量が減ったという結果に対して、最初から一つの対策だけを選ばないことです。
| 調査で確認した状況 | 主に検討する対応 |
|---|---|
| ストレーナなど吸込側の抵抗が増えている | 保守・清掃、吸込配管の状態確認、必要な改修 |
| 同じ運転条件で、ポンプの性能がメーカー曲線から大きく外れている | 機器メーカーによる内部状態の調査、整備・更新 |
| 吐出側の配管・機器で抵抗が増加している | バルブ・配管・熱交換器などの調査、部分修繕・更新 |
| 増設・運転変更によって必要流量が増えている | 設備条件の再計算、配管系統・ポンプ能力の見直し |
これらは原因を断定するための表ではなく、調査結果を受けて検討する方向性です。複数の原因が重なっている可能性もあります。
ポンプの性能が落ちているなら、機器側の調査へ
ポンプの流量・揚程・回転速度を把握し、メーカーの性能曲線と照合した結果、ポンプが本来の性能を発揮していないと考えられる場合は、機器側の調査が必要です。
羽根車の摩耗、内部の詰まり、回転条件の異常など、確認すべき内容は機種によって異なります。
修理やオーバーホールが可能なのか、更新が合理的なのかについては、機器メーカーや保守担当者と検討します。
その結果、ポンプの更新が必要になった場合には、前回の記事で扱ったように、既設配管との接続条件や周辺設備の更新範囲を確認します。
配管側に問題があるなら、更新範囲を絞る
一方、ポンプ本体が必要な性能を発揮していても、配管系統の抵抗が増えているなら、系統側の改善を検討します。
ここで必要なのは、必ずしも配管全体の更新ではありません。
例えば、あるバルブや配管区間に問題が集中しているなら、その部分の修繕・更新によって流量を改善できる可能性があります。
逆に、長期間使用している配管の広い範囲に腐食や堆積物が見られる場合は、部分修繕よりも計画的な更新が適切なこともあります。
その判断には、配管材質、使用年数、流体の性状、既設ルート、設備停止の条件などを確認する必要があります。
必要な流量を回復するために、どの範囲を改修すればよいのか。
ここまで検討できて初めて、工場側は具体的な工事計画と見積に進めます。
ポンプの更新見積が出ていても、工事範囲は再確認した方がよい
すでに機器メーカーや保守会社からポンプ更新の提案を受けている場合もあるでしょう。
その提案自体が間違っているとは限りません。
しかし、更新理由が単に「流量が低下しているから」というもので、配管側の状態が確認されていないなら、更新後に必要流量を確保できる根拠が十分かどうかを確認する価値があります。
例えば、熱交換器やバルブの抵抗が増えたことが主な原因であれば、ポンプを更新しても、必要な流量を確保できない可能性があります。
また、従来より能力の大きなポンプを選べば解決するように見えても、既設配管の耐圧や運転条件、制御、消費動力などに影響するため、単純な能力増強は適切ではありません。
更新を決める際には、新しいポンプを設置することで、どの運転条件がどの程度改善すると見込まれているのかを確認する必要があります。
これは見積金額を比較する前に整理しておきたいことです。
生産を止める前に、確認できる情報を整理する
流量不足が発生したとき、すぐに配管を分解して調査できるとは限りません。
冷却水系統や循環水系統では、設備の停止が生産に影響する場合があります。
そのため、まずは既設の計器や運転記録から確認できる情報を整理し、追加調査が必要な場所を絞っていく方法が考えられます。
流量計が設置されていない設備では、適用条件を満たす場合に仮設流量計などによる計測を検討することもできます。
また、過去の設備増設や配管変更、バルブ交換、熱交換器の保守履歴などが分かれば、流量不足が発生し始めた時期との関連を調べる手掛かりになります。
ただし、これらは安全に取得できる情報を優先するという意味です。運転中の配管開放、圧力下での作業、無断のバルブ操作などは行わず、設備管理者と適切な保守・施工担当者の判断に従います。
異音・異常振動、漏水、空運転のおそれなどがある場合は、工事計画の検討よりも、設備の安全確保とメーカーの取扱説明書に基づく対応を優先してください。
配管改修を相談するとき、何が分かっていればよいか
ポンプや配管の状態について、最初からすべてを把握しておく必要はありません。
ただし、現場で発生している問題と、どこまで調査が進んでいるのかが分かると、工事の検討を進めやすくなります。
例えば、現在の流量と以前の流量、ポンプの吸込・吐出圧力、発生している警報、問題のある生産ラインなどです。
これらに加えて、配管系統図やポンプ仕様書、設備停止の可能な時期が分かれば、改修対象となる設備と施工条件を具体的に確認できます。
まだ原因が分からない段階であれば、まず機器メーカー・既存保守会社とポンプ側の調査を進め、必要に応じて配管系統の調査・改修を検討します。
そして、配管側の改修が必要と分かった場合には、施工範囲を整理して見積へ進みます。
工場のポンプ周辺配管・バルブ・老朽配管の改修について
ポンプの流量不足は、ポンプ本体だけでなく、吸込配管、吐出配管、バルブ、熱交換器などの設備条件が関係していることがあります。
HAGANEでは、工場の給排水・循環水などの配管について、老朽配管の更新、既設配管の変更、バルブ周辺の改修、ポンプ更新に伴う配管工事などのご相談に対応しています。
ポンプ本体の更新が必要な場合でも、既設配管の接続位置や周辺設備の状態によっては、配管改修を含めて工事範囲を検討する必要があります。
ポンプ更新の予定があるものの、既設配管の状態が分からない。あるいは、流量不足の原因が配管側にあると考えられ、改修範囲を決めたい。
そのような場合は、既設設備の情報と現在の運転状況をもとに、必要な配管工事についてご相談ください。
