生産ラインのエアー圧力が低下し、設備が一時停止する。コンプレッサーの能力不足を疑っても、ほかのラインは正常に動いている。
このような場合、コンプレッサーを増設すれば問題は解決するのでしょうか。
実際には、供給設備に十分な能力があっても、既設配管の口径やルート、途中に設置された機器の抵抗によって、末端設備まで必要な圧力が届かないことがあります。
原因が配管側にあるなら、コンプレッサーを増設するより、圧力が低下している区間の改修が有効な場合もあります。しかし、配管をすべて太くすればよいわけでもありません。
重要なのは、圧力がどこで低下しているかを特定し、その区間に対して適切な改善方法を選ぶことです。
工場のエアー設備を安定させるために、どこを測定し、配管径の変更・分岐位置の変更・ループ化などをどう比較するのか。工事を計画する設備担当者の立場から考えていきます。
エアー圧力が低下する場所を特定する

エアー圧力が不足している場合、最初に確認したいのは、コンプレッサー側の圧力と、問題が発生している生産設備の圧力が、同じタイミングでどう変化しているかです。
コンプレッサーの吐出圧力が正常でも、配管途中で大きな圧力損失が発生していれば、機械入口の圧力は低下します。
反対に、コンプレッサー出口の圧力自体が大きく変動しているなら、配管の口径変更だけでは解決できない可能性があります。
どの位置の圧力を確認するのか
例えば、次の4か所の圧力を比較すると、問題のある区間を絞り込みやすくなります。
| 測定位置 | 確認したいこと |
|---|---|
| 供給設備側の出口 | コンプレッサー・空気処理設備側から安定して供給されているか |
| 問題ラインの分岐元 | 主管を通過する段階で圧力が低下していないか |
| 枝管の末端 | 問題ラインへ向かう配管区間で損失が大きくないか |
| 機械入口 | ホース・フィルタ・減圧弁などを通過した後、必要圧力を確保できているか |
特に大切なのは、測定を行う時間帯です。
設備が停止している状態では正常な圧力を示していても、複数の機械が同時に動くと大きく低下することがあります。
そのため、問題が再現する運転条件で、各測定位置の圧力変化をできるだけ同時刻に記録します。瞬間的な圧力低下がある場合には、ピーク変動を記録できる計測方法が必要です。
安全に使用できる既設の測定箇所がない場合は、無理に圧力配管へ計器を接続せず、設備管理者と施工担当者で測定方法を検討します。
圧力の測定結果で、工事の必要性は変わる

例えば、ある工場で次の測定結果が得られたとします。
| 測定位置 | 同時運転時の圧力 |
|---|---|
| 供給設備側の出口 | 0.64 MPa |
| 問題ラインの分岐元 | 0.62 MPa |
| 枝管の末端 | 0.53 MPa |
| 機械入口 | 0.47 MPa |
数値は判断方法を説明するための仮の測定例です。実際の施工事例ではありません。
ここで、機械メーカーが要求する最低供給圧力を仮に0.50MPaとします。
機械入口では0.03MPa不足していますが、分岐元には0.62MPaあります。
この状態でコンプレッサーを増設する前に、確認すべき区間があります。
一つは、分岐元から枝管末端までの区間です。この区間では0.09MPaの圧力差が見られます。
もう一つは、枝管末端から機械入口までの区間です。こちらにも0.06MPaの差があります。
後者には、ホース、継手、フィルタ、減圧弁などが含まれているかもしれません。
もし大きな圧力損失の原因が機械直前のフィルタや配管部材にあるなら、主管を更新しても問題が十分に改善しない可能性があります。
逆に、枝管の長さや口径が主要な制約になっているなら、その区間の改修を検討する理由があります。
同じ「エアー圧力不足」でも、圧力が低下する位置によって、施工すべき場所は変わるのです。
なお、圧力測定だけで原因が確定するわけではありません。計器の精度、運転条件、流量、機器仕様も確認し、改修前には計算や必要な追加調査を行います。
配管径を大きくするべきなのは、どんな場合か
既設配管の流量に対して口径が小さく、配管区間で大きな圧力損失が発生している場合、配管径の変更は有効な選択肢になります。
例えば、以前は少数の設備しか使用していなかった枝管に、生産設備を順次増設してきた工場を考えてみます。
機械は増えているのに、配管は当初のまま。この場合、既設配管に流れる空気量が増加し、圧力損失が大きくなっている可能性があります。
ただし、配管を太くする場合も、どこまでの区間を更新するかが重要です。
枝管だけが制約になっているなら、その区間の更新で改善する可能性があります。一方、上流の主管からすでに圧力が低下しているなら、枝管だけを大きくしても十分な効果は得られません。
配管径を変更する工事では、増設後の最大想定流量と運転圧力を条件に、既設管径・改修後の管径それぞれの圧力損失を比較します。
また、配管更新に伴う支持金物の変更、既存設備との干渉、停止可能時間なども工事範囲に影響します。
管径変更が有効と判断できた段階で、どの区間を、どの仕様で更新するかを具体化します。
分岐位置を変えた方が合理的な場合もある
既設配管の末端にある生産ラインで圧力不足が発生している場合、現在の分岐位置そのものが適切でないこともあります。
例えば、複数の設備へ供給した後の枝管末端から、さらに新しい配管を延長している場合です。
このような系統では、既設の枝管を太くする方法だけでなく、供給能力に余裕のある上流側から新たな配管を設ける方法も比較する価値があります。
ただし、上流側から分岐すれば必ず改善するわけではありません。
新たな配管ルートが長くなれば圧力損失が増えることもありますし、接続先の主管に余力がなければ、ほかの設備へ影響する可能性もあります。
判断には、新旧の配管ルート、管径、流量分布を比較し、増設後の運転状態を評価する必要があります。
つまり、既設配管を更新する案と、別の接続点から新しい配管を設ける案を、同じ条件で比較することが大切です。
これによって、交換する配管の長さだけでなく、工事中に停止する範囲も変わります。
ループ配管やバイパス配管は、どんな場合に検討するのか
工場のエアー配管が一本の主管から各ラインへ枝分かれする構成になっている場合、遠方の末端ほど供給条件が厳しくなることがあります。
その改善方法の一つが、配管のループ化です。
離れた位置の配管を接続して環状の供給ルートを設けることで、条件によっては複数方向から空気を供給でき、特定区間への流量集中を抑えられます。
また、圧力損失の大きい区間に対して、別ルートのバイパス配管を追加する方法もあります。
ただし、既設配管をつなぎさえすればよいわけではありません。
接続する系統の供給圧力や空気品質が異なる場合、設備の運転に影響するおそれがあります。既設バルブの配置、隔離方法、保守時の停止範囲も検討する必要があります。
ループ化やバイパス配管の効果については、配管網全体の条件を整理し、流量分布と圧力損失を計算して比較します。
SMCの空気圧管路網プログラムでも、既設配管の圧力降下、設備増設時の影響、バイパス配管や管径変更による改善効果を検討できます。
ここで比較したいのは、単に工事費の安さだけではありません。
現在の生産設備に必要な供給条件を確保しながら、将来の設備変更にも対応できる配管構成になっているかという点です。
配管を改修する前に、フィルタ・ドレン・供給設備も確認する
エアー圧力の低下が発生していても、配管そのものが主な原因とは限りません。
例えば、ラインフィルタの目詰まりが進行していれば、その前後で圧力差が大きくなることがあります。
また、配管内にドレンが滞留している場合も、流れの抵抗を増やす原因になります。
IHI回転機械エンジニアリングも、配管内のドレンや空気処理設備の条件が圧力損失に影響することを説明しています。
このような状態で配管工事を先に計画すると、原因が残ったまま設備投資を行うことになりかねません。
まず、既設フィルタなどの状態とメーカーの管理基準を確認し、必要に応じて保守・交換によって改善する可能性を評価します。
一方、工場全体で同時に圧力が低下する場合には、コンプレッサーの能力や台数制御、需要の集中、漏気量など、供給側の問題を検討する必要があります。
配管改修を検討する前に、配管工事で解決できる問題なのかを切り分ける。
この判断は、不要な工事を避けるためにも重要です。
改修方法は、工事費だけで比較しない
圧力低下を改善する方法が複数ある場合、設備担当者は工事費だけでなく、停止時間や将来の設備増設も含めて比較する必要があります。
例えば、既設主管を更新する案と、新しい配管ルートを追加する案では、材料費や施工費だけでなく、現在稼働している設備への影響が異なります。
主管更新では広い範囲の停止が必要になる可能性があります。一方、配管の新設部分を先行施工し、既設系統との接続作業を限られた停止期間に行える構成なら、工程面で有利になる場合があります。
ただし、どちらの方法でも、既設配管への接続や圧力下の作業に関する安全管理は必要です。無停止施工が可能だと安易に判断してはいけません。
改修案を比較する際は、次のように整理すると判断しやすくなります。
| 改修案 | 効果を確認する項目 | 工事計画で確認すること |
|---|---|---|
| 枝管の口径変更 | 末端圧力の改善量 | 更新範囲、作業スペース、停止条件 |
| 分岐位置の変更 | 新ルートの圧力損失 | 主管への影響、ルート、既存設備との干渉 |
| バイパス・ループ化 | 系統全体の圧力分布 | 接続点、流量分布、バルブ構成、保守性 |
| 主管の更新 | 複数ラインの供給改善 | 工場全体への停止影響、将来の需要 |
| 供給設備の見直し | 供給圧力・能力の安定性 | コンプレッサーメーカーとの仕様・運転条件確認 |
工事前の計算や実測を基に、どの程度の改善が期待できるのかを確認し、その効果に対して工事範囲が合理的かを考えます。
また、設備の圧力不足を補うためにコンプレッサーの設定圧力を上げる方法は、必要以上のエネルギー消費につながる可能性があります。
配管の抵抗を減らす改修で供給条件を改善できるなら、運転コストの面でも検討する価値があります。
工事を具体化するために、設備担当者は何を準備すればよいか
エアー配管の圧力低下が続いている場合、工事の見積を依頼する前に、すべての原因を解明しておく必要はありません。
ただし、どんな状況で問題が発生しているのかが分かると、施工会社が現地で確認すべき範囲を絞り込みやすくなります。
例えば、次の情報です。
- 圧力低下が発生する生産ライン、機械、時間帯
- 現在の圧力記録と、機械メーカーが要求する供給圧力
- コンプレッサーの仕様、運転状況、保守履歴
- 既設配管の系統図、管径、ルート、バルブの位置
- 問題発生前後の設備増設・配管変更の履歴
- 改修工事のために停止できる範囲と時間帯
図面が古い場合や、配管の接続先が分からない場合もあります。そのときは、分からない部分を現況調査で確認する必要があります。
この情報をもとに、原因の調査、改修案の比較、施工範囲の決定へ進みます。
そして工事後は、配管の気密・耐圧など仕様に応じた必要な確認だけでなく、問題が発生していた運転条件で末端圧力が改善したかどうかを確認することが重要です。
配管を交換しただけで完了とせず、生産設備に必要な供給条件を回復できたかまで評価することで、改修の目的が明確になります。
工場のエアー配管改修・配管ルート変更について
工場のエアー圧力が不足している場合、コンプレッサーの能力だけでなく、既設配管の口径、配管ルート、分岐位置、接続されている設備の運転条件を合わせて考える必要があります。
HAGANEでは、工場・プラントのエアー配管について、既設配管の改修、管径変更、配管ルートの変更、増設・更新工事などのご相談に対応しています。
圧力低下が発生しているラインや、検討している改修範囲が分かる場合は、現場条件を確認し、対応できる配管工事の範囲と施工方法を検討します。
供給設備の能力判定や制御変更が必要な場合には、設備管理者やコンプレッサーメーカー等による確認も必要です。
既設エアー配管の改修・ルート変更・更新工事を検討している方は、HAGANEの工場・プラント配管工事ページからご相談ください。
