工場のエアー配管増設|既設配管から分岐できるか、何を確認して判断する?

「コンプレッサには余力があるから、新しい設備のエアーは既設配管から取れる」

設備増設の計画で、そう判断していないでしょうか。

コンプレッサの能力に余裕があっても、増設予定の設備まで必要な圧力と空気量を届けられるとは限りません。既設配管の口径や長さ、途中のバルブ・フィルタ、接続されている設備の稼働状況によって、機械入口の供給条件は変わるためです。

特に注意したいのは、新しい設備と既存の生産設備が同時にエアーを消費する場面です。増設設備だけが正常に動いても、既存ラインの圧力が低下して動作不良が発生するようでは、増設工事は成功したとはいえません。

では、既設配管を利用してよいのか、主管の変更が必要なのか、それとも供給設備そのものを見直すべきなのか。

その判断をするためには、コンプレッサの仕様だけでなく、設備が実際にエアーを使っているときの圧力と流量、配管系統の状態を把握する必要があります。

ここでは、工場の設備担当者が増設工事の方針を決めるために、何を確認し、どの結果から工事範囲を判断するかを具体的に整理します。

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既設エアー配管を利用できるかは、三つの条件で判断する

まず結論から整理します。

既設エアー配管から新設備へ供給できるかどうかは、主に次の三つを確認して判断します。

  1. 供給能力 — 増設後の需要に対し、コンプレッサなどの供給設備が必要な空気量を確保できるか。
  2. 配管の供給能力 — 増設後の流量が既設配管を通過したとき、機械入口まで必要な圧力を維持できるか。
  3. 同時運転時の安定性 — 新旧設備のエアー消費が重なっても、既存設備を含めた供給状態が安定するか。

さらに、設備が要求する空気品質も満たす必要があります。

このうち一つでも確認できていなければ、既設配管からの分岐を前提に工事内容を確定するのは早いと考えます。

コンプレッサの余力と、配管の余力は違う

例えば、コンプレッサに十分な吐出能力があったとしても、既設主管から設備までの配管が細く、流量増加による圧力損失が大きくなれば、機械入口では必要な圧力を維持できない場合があります。

逆に、配管径が十分でも、供給設備側の能力が不足していれば、配管を変更するだけでは問題を解決できません。

この二つを区別しないまま配管工事を発注すると、工事後に別の設備改修が必要になる可能性があります。

そのため最初に行うのは、配管径の選定ではなく、供給設備と既設配管のどちらに制約があるのかを把握することです。

設備メーカーの仕様書で確認すべきなのは「平均使用量」だけではない

新設備のエアー条件を確認する際、必要圧力と空気消費量は基本情報になります。

ただし、機械が実際にどのようなタイミングで空気を消費するのかまで把握しないと、既設系統への影響を判断できません。

例えば、一定量のエアーを連続使用する設備と、短時間に大きな空気量を消費する設備では、配管に求められる条件が異なります。

後者では、機械の作動時だけ圧力が低下し、通常運転時の圧力計では問題が見えない場合があります。

設備メーカーには、通常使用量に加え、最大消費流量、ピークが続く時間、繰り返し頻度、機械入口で必要な最低圧力を確認します。

また、流量の単位と基準状態もそろえる必要があります。仕様書に記載された L/min や m³/min がどの基準状態の値なのかを確認せず、コンプレッサの吐出空気量と単純比較することはできません。

設備側の条件が分かったら、次に必要なのは工場の既設系統の実態です。

圧力はどこで、いつ測るべきか

コンプレッサの圧力計が正常値を示していることだけでは、新設備への供給条件を確認したことにはなりません。

重要なのは、エアーが実際に消費されている状態で、供給元から末端までの圧力がどう変化しているかです。

確認したい測定位置は、主に次の三か所です。

確認する位置確認したい内容
供給設備の出口・主管上流側需要が増えたとき、供給元の圧力がどの程度変動するか
新設備の分岐候補地点その場所までの配管で、どの程度の圧力が確保されているか
既存設備のうち供給条件が厳しい地点新設備を追加した場合に影響を受ける可能性がある場所の現状

ここで、もう一つ重要なのが測定する時間帯です。

工場が比較的空いている時間の圧力だけを測っても、実際の最大負荷時の状態は分かりません。

複数の設備が同時に稼働する時間帯や、空気消費量の大きい動作が重なる時間帯に、圧力がどこまで低下するかを確認します。

短時間の変動が問題になる設備では、一度だけ圧力計を読む方法では不十分なため、必要な応答速度を持つ計測器で記録することも検討します。

測定は既設の安全な測定箇所を利用し、圧力下の配管への測定口追加などは、設備管理者と適切な施工担当者が安全を確認して実施します。

数値が分かっても、すぐに分岐可能とは判断できない

仮に、新設備が機械入口で最低0.50MPaを必要とし、既設配管の分岐候補地点で0.55MPaが測定されたとします。

一見すると、0.05MPaの差があるため供給できそうに見えます。

しかし、この数値だけでは判断できません。

新しい配管と継手、バルブ、フィルタなどを通過する際にも圧力損失が発生します。さらに、設備増設によって既設系統の流量が増えれば、現在測定している0.55MPaそのものが低下する可能性があります。

したがって、確認すべき条件は次の関係です。

増設後の最大想定負荷時における機械入口の最低圧力が、機械メーカーの要求する最低圧力を満たすこと。

これは新設備だけでなく、同じ系統につながる既存設備についても確認が必要です。

上記の数値は判断の考え方を示す仮の例であり、特定の設備に適用できる設計値ではありません。

配管を太くすれば解決するとは限らない

既設配管の圧力損失が大きい場合、配管径を見直すことは有力な選択肢です。

ただし、どの区間を変更するかによって工事の効果は変わります。

例えば、新設備へ向かう枝管だけを太くしても、その上流の主管が流量の制約になっていれば、期待した改善が得られない場合があります。

反対に、上流の主管に十分な能力があり、末端の枝管だけに問題があるなら、対象区間の更新で対応できる可能性があります。

また、配管系統によっては、分岐位置の変更や別ルートからの供給、ループ配管の検討が選択肢になることもあります。

そのため、対策は「配管を太くする」から始めるのではなく、どの区間で圧力が失われているのかを確認することから始めます。

配管の圧力損失を推定する際には、流量、配管内径、長さ、供給圧力に加え、継手やバルブなどの抵抗も考慮します。既設系統が複雑な場合には、配管網としての計算が必要です。

SMCは工場内主配管の圧力降下や、設備増設による流量変化を検討するための計算ツールを公開しています。ただし、計算結果だけで施工可否を確定せず、既設条件と実測結果を照合する必要があります。

原因によって、必要な工事は四つの方向に分かれる

ここまでの確認結果によって、増設工事の方向性が変わります。

確認された状況検討する対応
供給設備・既設配管ともに必要条件を満たす既設配管からの分岐・新設配管工事を具体化する
供給設備に余力はあるが、配管の圧力損失が大きい分岐位置の変更、配管径の見直し、系統変更を比較する
供給設備の能力が不足しているコンプレッサの運転・制御や供給能力を機器メーカー等と検討する
短時間の大量消費が原因で圧力が変動する需要の発生条件、配管能力、レシーバタンク等の対策を総合的に検討する

さらに、フィルタの目詰まりやドライヤなどの圧力損失が大きい場合は、配管更新とは別の対策が合理的なこともあります。

大切なのは、配管工事が必要なのか、供給設備の改善が必要なのか、あるいは両方なのかを切り分けることです。

新設備のためにコンプレッサの設定圧力を上げる方法もありますが、必要以上の高圧運転はエネルギー消費を増やす可能性があるため、安易に選ぶべきではありません。

工事を発注する前に、何を決めればよいのか

既設系統の調査によって供給条件が把握できれば、配管工事の具体化に進めます。

ここで工場の設備担当者が整理しておきたいのは、次の三点です。

1. どこから接続し、どの範囲を改修するのか

既設主管から分岐できるのか。枝管の更新が必要なのか。別系統を新設するのか。

この方針によって工事数量も、施工に必要な時間も変わります。

現地では配管径やルートだけでなく、支持方法、作業空間、既存設備との干渉、今後の保守性も確認します。

2. 既存設備をいつ、どこまで停止するのか

分岐工事の方法が決まっても、既設配管との接続条件が未確定では施工日を決められません。

どの区間を隔離できるのか。その区間につながる設備は何か。停止と復旧にどれだけの時間を確保できるのか。

工場の生産計画と照らし合わせ、接続工事の実施時期を判断します。

停止時間に制約がある場合には、可能な配管を事前製作するなど、現場での切替作業を減らす施工計画を検討します。

3. 増設後に、何を確認して工事完了とするのか

配管工事が終わり、漏れがないことだけでは、設備増設が問題なく完了したとは判断できません。

新しい設備が実際に稼働する状態で必要な圧力を確保できているか。既存設備の供給圧力に問題が生じていないか。

こうした確認について、設備メーカー、工場側、配管施工会社の確認範囲を事前に整理します。

機械性能そのものの確認は設備メーカー、工場全体の運転条件は設備管理者、配管施工部分の品質確認は施工会社というように、必要な確認を漏らさないことが重要です。

増設工事が決まっているなら、次に取るべき行動は何か

新設備の導入が決まり、エアー配管の接続方法が未確定なら、いきなり「近くの配管から何メートル延長するか」で見積を依頼するのではなく、まず既設系統を利用できる条件を明らかにします。

設備メーカーから必要圧力・空気量・消費パターンを入手する。工場側ではコンプレッサの運転状況と既設配管の構成を把握する。不足する情報があれば、必要な測定や配管系統の調査を行う。

その結果を基に、分岐位置、配管ルート、更新が必要な範囲、接続時の停止条件を決めていきます。

この順序で進めれば、配管工事の見積条件が明確になり、設備据付後の手戻りを減らしやすくなります。

工場のエアー配管増設・既設配管改修について

HAGANEでは、工場・プラントのエアー配管について、新設、増設、既設配管からの分岐、配管ルート変更、更新工事などのご相談に対応しています。

設備増設に伴って接続先が決まっていない場合や、既設配管の変更が必要な場合には、設備仕様、現場の配管状況、施工可能な時間帯などを確認しながら工事範囲を検討します。

コンプレッサなど供給機器の能力に関する詳細な判定が必要な場合は、設備管理者や機器メーカーとの情報確認も必要です。

既設配管からの分岐や配管系統の変更を検討している場合は、HAGANEの工場・プラント配管工事をご覧ください。

HAGANEの工場・プラント配管について


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参考資料

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