
工場に新しい生産設備を入れることになった。
設備メーカーも決まり、見積も通った。設置予定の場所もおおよそ決まっている。
ここまで来ると、担当者の意識は「いつ搬入するか」「いつ据え付けるか」に向きがちです。
しかし、実際に設備を立ち上げるには、機械本体を据え付けるだけでは足りません。
その設備が必要とするエアー、蒸気、給水、排水などのユーティリティを、工場側で準備する必要があります。
そして設備増設で問題になりやすいのは、
設備そのものではなく、設備を動かすための工場側の準備が後から出てくることです。
「エアーは近くの配管から取れると思っていた」
「設備を置いたあとで、排水勾配が取れないことが分かった」
「機械メーカーの見積に一次側配管が入っていなかった」
「試運転の日になってもユーティリティ工事が終わっていない」
「既設配管へ接続するために生産設備を止める必要が出た」
こうした問題は、設備を据え付ける直前にユーティリティを考え始めると起こりやすくなります。
設備増設時のユーティリティ配管で重要なのは、
配管をどうつなぐかを考えることではありません。
その前に、
設備を予定日に立ち上げるために、工場側で何を準備しなければならないか
を整理することです。
この記事では、工場の生産技術・設備技術・工務担当者が、設備増設を進めるときにユーティリティ配管についてどのタイミングで何を確認すればよいのかを、設備発注から立上げまでの流れに沿って整理します。
ユーティリティ配管は、設備を据え付けてから考えるものではない
設備増設の打合せでは、まず機械本体の仕様や能力が中心になります。
生産能力はどの程度か。
設備寸法はいくつか。
どこに置くか。
搬入できるか。
こうした話が進んでいきます。
しかし、その機械を実際に動かすためには、工場側から必要なユーティリティを供給しなければなりません。
例えば、
- 圧縮空気
- 蒸気
- 給水
- 排水
などです。
設備によって必要なものは異なりますが、重要なのは機械を発注したあとに初めて確認するのではなく、設備仕様と同時に確認しておくことです。
なぜなら、ユーティリティの条件によっては設備の設置場所そのものを見直す必要が出るからです。
例えば、給水やエアーであれば比較的ルート変更しやすい場合でも、排水は勾配や接続高さの影響を受けます。
設備を置く場所を完全に決めたあとで排水条件を確認すると、
「既設排水まで勾配が取れない」
ということも考えられます。
つまり、
機械を置ける場所と、設備を稼働させられる場所は必ずしも同じではありません。
設備レイアウトを決める段階から、ユーティリティ条件も一緒に確認する必要があります。
最初に設備メーカーから何を確認すればいいのか
設備増設が決まったら、まず設備メーカーからユーティリティ条件を確認します。
ここで重要なのは、
「エアーが必要」
「給水が必要」
という情報だけではありません。
実際に工場側で配管計画を立てるためには、もう少し具体的な情報が必要です。
例えば圧縮空気なら、
必要圧力、必要流量、接続位置、接続口径。
蒸気なら、
必要圧力、必要蒸気量、接続位置。
給水なら、
必要水量、必要圧力、接続位置。
排水なら、
排水量、接続位置、排水条件。
などです。
さらに、設備図面や外形図も確認します。
ここで見たいのは、単なる機械寸法ではありません。
ユーティリティの接続位置がどこにあるか。
設備背面なのか。
側面なのか。
床下なのか。
メンテナンス時に配管を外す必要があるのか。
こうした条件が分からなければ、工場側の配管ルートも決められません。
そのため、設備メーカーとの打合せでは、
「この設備を工場側で動かすために必要な一次側条件をすべて出してください」
という視点で情報を集めることが重要です。
機械メーカーの工事範囲も、この段階で確認する
設備増設では、もう一つ早い段階で確認しておきたいことがあります。
それが、
誰がどこまで施工するのか
です。
設備メーカーの見積に機械本体と据付は含まれていても、工場側の一次配管までは含まれていない場合があります。
例えば、
機械側のエアー接続口までは設備メーカー。
既設主管からその接続口までの配管は工場側。
という分担です。
しかし、実際には案件ごとに範囲が異なります。
そのため、
- 一次側配管は誰が施工するのか
- 設備側付属配管はどこまでか
- バルブは誰が用意するのか
- 減圧機器等はどちらの範囲か
- 保温は含まれるのか
- 配管支持は誰が施工するのか
- 排水接続はどこまでか
- 試運転時の接続確認は誰が行うのか
といった区分を早めに確認します。
ここが曖昧なまま設備発注だけ進めると、着工前になって、
「そこは機械メーカーの範囲ではありません」
という工事が出てくることがあります。
設備増設では、機械本体の金額だけを見るのではなく、
設備を実際に稼働させるまでに必要な工事全体
を見る必要があります。
次に確認するのは、今の工場設備で本当に足りるのか
設備側の必要条件が分かったら、ここで初めて工場側を確認します。
例えばエアーを使う設備を追加する場合、
新しい設備の近くに既設エアー配管が通っているからといって、その配管からそのまま分岐できるとは限りません。
確認したいのは、
新しい設備を追加しても、既存設備を含めて必要な条件を確保できるか
です。
既設配管には、すでに複数の設備が接続されています。
そこへ新しい設備を追加すると、その系統を流れる空気量も増えます。
すると、これまで問題なく使えていた系統でも、条件によっては圧力が下がる可能性があります。
このとき見るのは、新しい設備だけではありません。
現在その系統に何台の設備がつながっているのか。
どの設備が同時に動くのか。
供給元に余力があるか。
既設主管はどの程度の能力を持っているか。
そうした条件をまとめて確認します。
つまり、
「配管があるか」ではなく、「その系統に増設できる余力があるか」
を見るということです。
一番近い配管から分岐すればよいとは限らない
設備増設の現場を見ると、新しい設備の近くに既設配管が通っていることがあります。
すると、
「ここから分岐すれば早い」
と考えたくなります。
しかし、その配管がどの系統なのかを確認しないまま分岐位置を決めることはできません。
近くにある配管が主管ではなく、その先に複数設備を抱えている枝管かもしれません。
そこへさらに負荷を追加すると、その枝管だけ条件が厳しくなる可能性があります。
一方で、少し離れた上流側の主管から分岐した方が、設備増設後も安定した条件を確保しやすい場合があります。
したがって分岐位置は、
近さだけではなく、既設系統と使用状況を見て決める
必要があります。
この段階で初めて、
「どこから取るか」
を考えます。
ユーティリティごとに確認する条件は違う
設備増設時の基本的な考え方は共通ですが、エアー、蒸気、給水、排水では確認する内容が異なります。
圧縮空気なら、必要圧力と流量だけでなく、既設配管の能力や同時使用する設備の影響を確認します。
蒸気であれば、必要圧力や蒸気量に加え、配管距離、ドレン、保温、熱伸縮、支持なども施工条件に関係します。
給水では、必要水量・圧力、既設系統の使用状況、接続位置などを確認します。
排水ではさらに、排水量だけでなく、接続高さや勾配、排水先を見なければなりません。
ここで担当者がすべての計算を行う必要はありません。
重要なのは、
どのユーティリティでも「近くにつなげられる配管があるか」だけでは判断できない
ということです。
既設能力に問題がないことを確認してから、配管ルートを決める
設備側の条件が分かり、既設設備から供給できることも確認できた。
ここまで来て初めて、実際の配管ルートを検討します。
ルートを考えるときは、単純に最短距離だけを見るわけではありません。
工場内には、
既設配管。
ケーブルラック。
空調ダクト。
梁。
生産設備。
搬送設備。
作業通路。
さまざまなものがあります。
その中で、
他設備と干渉しないか。
配管を支持できる場所があるか。
施工するための作業スペースがあるか。
バルブを操作できるか。
設備のメンテナンスを邪魔しないか。
将来、設備を交換するときに配管が邪魔にならないか。
まで確認します。
つまり配管ルートは、
施工できるだけでは不十分です。
その後も工場が使い続けられるルートにする必要があります。
設備据付と配管工事を別々に考えない
配管ルートが決まれば、次は工程です。
設備増設では、
機械搬入。
据付。
電気工事。
配管工事。
必要に応じた建築工事。
試運転。
これらが同じプロジェクトの中で動きます。
ここを別々に考えると、現場で問題が起きます。
例えば、配管を先に施工したため機械の搬入ルートを塞いでしまう。
機械を先に据え付けたため、その裏側へ配管できなくなる。
電気のケーブルラックと配管ルートが重なる。
設備メーカーの試運転日に、ユーティリティ接続が終わっていない。
こうした問題は、工事技術よりも工程の組み方によって起こります。
そのため、設備増設では、
「配管工事を何日にするか」
ではなく、
設備をいつ立ち上げるかを基準に、そこから逆算して工程を組む
ことが重要です。
設備搬入前に施工した方がよい配管。
設備据付後でなければ決められない配管。
事前製作できる配管。
他工種と同時施工できない部分。
こうした条件を整理してから工程を決めます。
既設配管へ接続するとき、工場をどこまで止めるのか
設備増設で最後に大きな問題になるのが、既設ユーティリティへの接続です。
新しい配管を施工しても、既設主管へ接続しなければ設備は使えません。
しかし、既設主管を切って分岐を設ける場合、その系統を止める必要が出ることがあります。
そこで、
どの範囲が止まるのか。
その配管につながっている設備は何台あるのか。
何時間止められるのか。
平日にできるのか。
休日工事にするのか。
を事前に確認します。
工場によっては、設備停止そのものよりも、
止められる時間が短いこと
の方が施工上の大きな条件になります。
その場合は、現場で一から配管を製作するのではなく、あらかじめ採寸し、可能な部分を事前製作しておき、停止後は接続作業だけにするという施工方法も考えられます。
つまり、停止時間を短くするためには、
施工当日に頑張るのではなく、施工前にどこまで決めておけるか
が重要です。
試運転の日にユーティリティが来ていなければ、設備は立ち上がらない
ユーティリティ配管の工事が終わったら、配管がつながったことだけを確認して終わりではありません。
新しい設備を実際に運転し、
必要な圧力が確保できているか。
必要な流量が来ているか。
漏れがないか。
設備が正常に動くか。
既存設備へ影響が出ていないか。
を確認します。
生産技術・設備技術担当者にとってのゴールは、
配管工事が完成することではありません。
新しい設備が予定どおり立ち上がり、生産に使える状態になることです。
そのためユーティリティ配管も、
試運転・設備立上げまで含めて工程を考える
必要があります。
設備増設で最初に決めるのは、配管ルートではない
設備増設時のユーティリティ配管を一つの流れにすると、次のようになります。
まず設備メーカーから、
設備仕様と必要なユーティリティ条件を確認する。
次に、
機械メーカーと工場側の工事範囲を整理する。
そのうえで、
既設設備に増設分の余力があるか確認する。
問題がなければ、
分岐位置と配管ルートを決める。
そして、
機械据付、電気工事、配管工事の工程を調整する。
最後に、
既設設備を停止して接続し、試運転・立上げを行う。
つまり、
設備仕様
→ ユーティリティ条件
→ 工事区分
→ 既設能力
→ 分岐位置
→ 配管ルート
→ 工程
→ 停止・切替
→ 試運転
→ 設備立上げ
です。
設備増設で後から問題が出るのは、この途中の確認を飛ばして、
「機械を置く場所」と「配管をつなぐ場所」だけを先に決めてしまう場合
です。
設備を発注する段階から工場側のユーティリティを確認しておけば、追加工事や工程変更を減らしやすくなります。
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新しい設備の接続口だけを見るのではなく、
設備仕様
既設ユーティリティ
分岐位置
配管ルート
他設備との取り合い
機械据付との工程
既設配管への接続・切替
試運転
まで確認し、設備を立ち上げるまでの施工方法を検討します。
設備図面、ユーティリティ仕様、設置予定位置が分かる資料があれば、現地調査時の判断材料になります。