「空気って、設計できるんですか?」
これは、僕が設計相談のときに最も多く受ける質問のひとつです。
“空気”は目に見えない。
風のように勝手に流れるものだと思っている人も多い。
でも、それは違います。
空気は設計できます。
しかもそれは、ただの快適性や性能の話ではなく──
暮らしの質そのものを左右する話なんです。
この記事では、「空気をどう整えるか?」というテーマを、
僕自身の経験と実践を交えてお話しします。
僕も昔は“空気は設計対象じゃない”と思っていた
正直、昔の僕はこう思っていました。
空気のことは、換気扇がやってくれるだろう。
断熱と気密が良ければ、それでいいんじゃないか。
でも、実際に自分の家を建てて暮らしてみて、気づきました。
- 朝起きると、喉がカラカラ
- 冬は暖房を入れても足元が冷たい
- 部屋ごとに空気の“質”が違うような気がする
そんな違和感の正体が、
「空気の流れを設計していないこと」だったんです。
空気の質は、暮らしの質を決める
空気の“質”が悪いと──
- 呼吸が浅くなり
- 集中力が下がり
- 肌が乾燥し
- 子どもが咳き込み
- 家のにおいが気になり
- 結露やカビが発生する
でも逆に、空気が整うとどうなるか?
- 深く呼吸できて
- 部屋にいても疲れず
- 朝の目覚めが変わり
- 料理や香りを楽しめて
- 家族が自然にリビングに集まり
- 「帰りたい家」になる
これは実際に、空気を設計した家に住んだお客様からの声です。
空気は“4つの視点”で設計できる
① 給気と排気のバランスを整える
換気システムがついていても、空気は勝手には流れません。
- どこから新鮮な空気が入り
- どの部屋を通り
- どこから出ていくか
この“空気の旅路”を描くのが、設計士の仕事です。
僕は毎回、
- 吸気口の位置
- 排気ファンの強さ
- ドアのスリットの有無
- 風の通り道の設計
を細かく見て、「見えない動線」を整えています。
② 空気が“巡るルート”を家の中につくる
空気は、動ける道がないと澱みます。
- 廊下や階段を空気の動脈に
- 寝室にも必ず“通り道”を
- 家全体を“ぐるっと回れる構造”に
こうすることで、“どこにいても呼吸が深くなる”家ができるんです。
③ 素材と空気の“相性”を見極める
- 無垢の杉は調湿性が高い
- 漆喰はにおいを和らげる
- 合板やビニールクロスはVOCを出すこともある
素材選びを間違えると、空気が重たくなる。
だから僕は、“呼吸の邪魔をしない素材”しか使いません。
④ 暮らしの習慣と空気の流れをリンクさせる
- 朝、窓を開けたくなる場所に通風ラインを
- サーキュレーターを置く前提で配線計画を
- 湿気の溜まりやすい場所は“動線”と“換気”をセットに
設計は、ただの図面じゃない。
暮らしのリズムと空気のリズムを合わせる設計です。
空気を整えると、家が“呼吸を始める”
設計段階では見えなかった空気が、
住み始めてから「あ、違う」と気づく。
- 冬の朝、起きるのが苦じゃない
- 帰宅した瞬間、“ふわっ”と安心できる
- 湿気やにおいがこもらない
- 子どもが咳をしなくなった
こういう感想をもらうたびに、
僕は思います。
空気を設計するって、
性能の話じゃなくて“身体の話”なんだなと。
空気は、性能ではなく“感覚”で測るもの
温度計やCO2センサーで数字を出すことはできます。
でも、それだけじゃわからない。
- 「なんかここにいたくなる」
- 「呼吸がしやすい」
- 「香りがわかる」
- 「静かで落ち着く」
そういう“感覚”が整っているかどうか。
それを設計で支えるのが、僕の仕事です。
本でもこの“空気設計”の本質を書きました
📘 『深呼吸したくなる家』では、
この空気の話を、性能・素材・暮らしの実感すべて含めて書いています。
- 換気が効いてない家の実態
- 自然素材で空気が悪くなる理由
- 断熱と気密が空気にどう関わるか
- “空気を感じる設計”とは何か
もし、「空気って設計できるんだ」と思ったら、
この本を読んでみてほしいです。