なぜKAIROSは木製なのか|小さなオーディオルームで木材を使う理由

なぜKAIROSは木製なのか|小さなオーディオルームで木材を使う理由

KAIROSは、なぜ木製なのか。
これは見た目の話ではありません。
高級感の演出でもありません。
加工しやすいから、というだけの理由でもありません。

僕たちが木を選んだのは、
小さなオーディオルームで欲しい音が、ただ整った音ではなかったから です。

もし求めているのが、
ひたすら鋭く、ひたすら均質で、ひたすら制御された音なら、考え方は違ったかもしれません。
でも僕たちが欲しかったのは、そういう音ではありませんでした。

欲しかったのは、

  • 切れすぎない
  • 硬くなりすぎない
  • 洗練されすぎて痩せない
  • それでいて濁らない
  • 音楽を支える余白がある

そういう加減です。

小さなオーディオルームでは、
すべてをきれいに揃え、すべてを均質に制御し、すべてを切り分ければ、
それで音楽が良くなるわけではありません。
むしろ、その方向に寄りすぎるほど、音楽が細くなったり、硬くなったり、呼吸を失ったりすることがあります。

僕たちは、その“整いすぎること”への違和感から、木を選びました。


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KAIROSが求めているのは、切れ味そのものではなく、音楽が成立する加減です

KAIROSは、小さなオーディオルームにおける初期反射の時間構造へ働きかけるために生まれました。
ただし、そこで目指しているのは、何もかもを鋭く切り分けることではありません。

もちろん、濁りは減らしたい。
前側で固まりやすい音はほどきたい。
音像を押しつぶすような戻り方は変えたい。
そこははっきりしています。

でも同時に、僕たちは、

  • 音楽の後ろにある空気
  • 響きの支え
  • 音の厚み
  • 身体に入ってくる感じ
  • 少しの呼吸

も失いたくありませんでした。

この感覚は、小さなオーディオルームで、僕たちはどんな響きを求めているのか で書いたこととつながっています。
僕たちが欲しいのは、ただ静かでクリアな音ではなく、
音楽を壊さずに整えること です。

そのとき、素材はただの器ではありません。
何を作りたいかによって、素材の選び方も変わります。


木を選んだのは、均質すぎる制御に少し違和感があったからです

ここはかなり大事なところです。

工業製品として考えるなら、
均質で、再現性が高く、誤差の少ないものは正しい。
それはその通りです。
精度は必要です。
設計が曖昧でいいとはまったく思っていません。

ただ、僕たちが小さなオーディオルームでずっと感じていたのは、
均質さだけでは音楽になりきらないことがある
という違和感です。

全部が揃いすぎる。
全部が切れすぎる。
全部が制御されすぎる。
その結果、たしかに整う。
でも、どこかで音楽が痩せる。
どこかで音が呼吸しなくなる。
どこかで、鳴っているのに“起きていない”感じになる。

僕たちは、この感覚をかなり重く見ています。

木には、完全な均質ではない部分があります。
一枚ごとに表情が違う。
密度も、目も、響き方も、わずかに違う。
そして、人が切り出し、人が扱うことで、セルにも一つとして完全に同じものはありません。

それを“精度不足”とだけ見ることもできます。
でも僕たちは、そこに
音楽を壊しきらないための揺らぎ
があるのではないかと感じています。


KAIROSは、制御を捨てているのではなく、制御し切らないことを選んでいます

ここは誤解されたくないところです。

木を選ぶということは、
精度を諦めることではありません。
感覚だけに頼ることでもありません。
まして「自然素材だからなんとなく良い」という話でもありません。

KAIROSは、設計されています。
配列も、深さも、構造も、意図があります。
時間方向にどう戻りを変えたいのかという思想もあります。

ただし、そのうえでなお、
すべてを工業製品的な均質さへ閉じ切らない ことを選んでいます。

なぜなら、小さなオーディオルームで必要なのは、
ただ鋭い制御ではなく、
音楽を壊しすぎない制御 だと思っているからです。

ここは、かなりDIVERらしいところです。


木には、音を整えながらも、切れすぎない余白があります

僕たちが木に感じている価値は、見た目だけではありません。
音の加減です。

木は、金属のような硬い緊張感ではありません。
樹脂のような均一な反復でもありません。
もちろん、木だから何でも良いという話でもない。

でも少なくとも、僕たちが求める

  • キレすぎない
  • 硬すぎない
  • 痩せすぎない
  • でも濁らない
  • でも甘くなりすぎない

という領域には、木という素材がかなり合っていました。

これは数値だけで片づけるのが難しい部分でもあります。
でも、小さなオーディオルームで音を見続けていると、
この“良い具合の加減”がいかに大事かを感じます。

全部を強く切り分けるのではなく、
でも曖昧にもしない。
このあいだにある微妙なところ。
KAIROSはそこを狙っています。


人の手によるわずかな個体差も、僕たちは完全には否定していません

ここは少し狂気じみて聞こえるかもしれません。
でも、僕たちは本気でそう思っています。

KAIROSのセルは、一つとして完全に同じではありません。
人間が切断し、扱う以上、わずかな差は生まれます。
寸分違わず、工業的に同一なものが無限に並ぶわけではありません。

もちろん、無秩序でいいとは思っていません。
設計が崩れるほどの雑さを肯定するつもりもありません。
でも、少しの差異、少しの揺らぎ、少しの個性 を、僕たちは必ずしも悪だとは思っていません。

なぜなら、音楽そのものがそうだからです。

演奏も、空間も、人の聴覚も、全部が完全な均質ではありません。
それでも、いや、だからこそ、心が動く。
その現実を見ていると、小さなオーディオルームの音響部材だけが,
完全に無機質で均質であることを、無条件に正解だとは思えないのです。

この感覚は、かなりDIVERの奥にあります。


小さなオーディオルームでは、整いすぎることが音楽を遠ざけることがあります

ここが、木製である理由の核心に近いです。

小さなオーディオルームでは、
もともと壁が近い。
反射も早い。
前側で音が固まりやすい。
だから、多くの人はもっと整えたくなります。

もちろん、その方向は必要です。
でも、整えれば整えるほど、音楽が遠くなることがあります。

  • 前よりクリア
  • 前より静か
  • 前より見える
  • でも前より楽しくない
  • 前より正しい
  • でも前より身体に入ってこない

この停滞を、僕たちは何度も見てきました。

だからKAIROSでは、
ただ整えるだけではなく、整えながら、音楽が死なないこと を大事にしています。

木という素材は、この矛盾した要求に対して、かなり良い位置にあります。


KAIROSは、素材の段階から「どんな音を残したいか」で作られています

KAIROSは、形だけが思想を持っているわけではありません。
素材の選び方にも、かなりはっきりした意図があります。

もし僕たちが求めていたのが、
ただ鋭く整理された、ただ制御された、ただ均質な音なら、
素材の選び方も違っていたかもしれません。

でも、僕たちが残したかったのは、そういう音ではありません。

残したかったのは、

  • 音楽の後ろに立ち上がる空気
  • 切れすぎない余韻
  • かすかな揺らぎ
  • 硬く閉じない音像
  • 痩せない響き

です。

その意味で、KAIROSが木製であることは偶然ではありません。
素材の段階から、どんな音を残したいかで作られている のです。


だからKAIROSは木製です

なぜKAIROSは木製なのか。
それは、木が高級に見えるからではありません。
ナチュラルだからでもありません。
加工しやすいからだけでもありません。

小さなオーディオルームで、
音を整えながら、切れすぎず、痩せすぎず、音楽を壊さない加減を作りたかった。
均質さだけでは届かない、少しの揺らぎや呼吸を残したかった。
すべてを制御し切るのではなく、音楽に必要な余白を残したかった。

その考え方に、木という素材が必要でした。

だからKAIROSは木製です。


まとめ

なぜKAIROSは木製なのか。
それは、見た目や加工性だけの問題ではありません。

KAIROSが目指しているのは、
小さなオーディオルームで音をただ整えることではなく、
音楽を壊さない加減をつくること です。

そのためには、

  • キレすぎないこと
  • 硬くなりすぎないこと
  • 痩せすぎないこと
  • でも濁らないこと
  • そして少しの揺らぎや呼吸を残すこと

が大切でした。

木には、均質すぎない個性があります。
人の手で扱われることで生まれる、わずかな差異もあります。
僕たちは、その“制御し切らなさ”を、
小さな部屋で音楽を殺さないための一部として見ています。

つまりKAIROSが木製であること自体が、
DIVERの音の思想の一部です。


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KAIROSが、なぜ素材の段階からここまで考えられているのか。
その背景や、DIVERが小さなオーディオルームで何を残したいのかに興味があれば、問い合わせ からご連絡ください。
DIVERでは、素材、構造、配置を分けずに、小さな部屋で音楽がどう成立するかを考えています。

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