
ホールを縮小しても、オーディオルームは作れない。
多くの人が犯す間違いがあります。
「コンサートホールの設計理論を、そのまま自分の部屋に持ち込めば良い音が鳴る」という誤解です。
断言します。
それは物理的に不可能です。
容積が数万㎥あるコンサートホールと、わずか30〜50㎥しかないあなたの部屋(6畳〜20畳)では、音の振る舞い(物理現象)が根本的に異なるからです。
大空間の理論を、小規模空間に適用しようとするのは、F1マシンの空力設計を軽自動車に適用しようとするのと同じ。 前提条件が違うのです。
DIVERはこの「小規模空間(Small Room Acoustics)」という、特殊かつ過酷な領域のみを専門とする建築音響エンジニア集団です。
「光」の理論と、「水」の理論。 あなたの部屋は、水槽の中にいるのと同じです。

大空間は「光」の世界(幾何音響)
コンサートホールや体育館のような巨大な空間では、音は**「光線(レーザービーム)」**のように振る舞います。 壁に当たれば鏡のように角度をつけて反射し、真っ直ぐ飛びます。 これを計算するのが「幾何音響学」です。 広い場所では、光の反射だけを考えれば、概ね良い音響が作れます。
小規模空間は「水」の世界(波動音響)
しかし、6畳〜20畳程度のあなたの部屋では、話が全く変わります。 ここでは、音は光ではなく、**「水面の波紋(波)」**として振る舞います。
小さなお風呂で水をかき混ぜるとどうなるでしょうか? 波がすぐに壁にぶつかり、跳ね返ってきた波と、新しい波がぶつかり合って、水面が激しく暴れますよね?
これと同じことが、あなたの部屋の「空気」で起きています。 特に、波長の長い「低音(ベースやドラム)」は、狭い部屋の中では逃げ場を失い、お風呂の波のように渦を巻いて滞留します。

多くの失敗した防音室は、この狭い「水槽」のような部屋に、間違って「光(ホール)」の理論を使って設計されています。
だから、低音が暴れて止まらなかったり、逆に音が死んでしまったりするのです。
DIVERは、この「水(波動)」の動きを専門に扱う建築音響エンジニア集団です。
部屋の中で「波」がどう暴れるかを予測し、それを沈静化させる。
それが、小規模空間における音響設計の正体です。
この物理現象を無視して、いくら高価なスピーカーやアンプを導入しても、音の出口である「空間」が歪んでいては、永遠に正解には辿り着けません。
見えない魔物、「定在波」を視る。
小規模空間には、必ず**「定在波(Room Mode)」**という魔物が潜んでいます。 特定の周波数の音が、部屋の寸法と共鳴し、その場所だけ音圧が異常に高くなったり(ブーミング)、逆に音が消えてしまったり(ディップ)する現象です。
- ブーミング: ベースの音が膨らみ、他の楽器をマスクしてしまう。
- ディップ: キックのアタック感や、ボーカルの芯がスカスカに抜けてしまう。

DIVERは、設計段階でこの「魔物の居場所」を特定します。
部屋の寸法比(L:W:H)を、ボルト・エリア(Bolt-area)等の理論に基づいて計算し、定在波の影響が最小限になるプロポーションを導き出します。
「作ってみないと分からない」という言葉は、私たちの辞書にはありません。
空間の「カタチ」が、音の品格を決める。
良いスピーカーを置く前に、やらなければならないことがあります。 それは、**「部屋のプロポーション(縦・横・高さの比率)」**を整えることです。
もし、あなたの部屋が「正方形」や「立方体(1:1:1)」に近い場合、それは音響的に最悪の空間です。 同じ周波数の定在波が重なり合い、特定の音が異常に膨れ上がる「共振の地獄」となるからです。
DIVERは、設計の初期段階で**「ボルト・エリア(Bolt-area)」などの音響理論に基づき、定在波が分散する理想的な寸法比を導き出します。 既存の部屋であっても、あえて壁をふかして寸法を変え、「黄金比」**を作り出す。
空間の形状そのものを、最初のイコライザーとして機能させるのです。

「残響」をデザインする。 数秒の狂いが、感動を奪う。
「響き」とは、音の余韻のことです。 専門的には**残響時間(RT60)**と呼ばれ、音が60dB減衰するまでの時間を指します。
多くの失敗例が、ここでも起きています。 「吸音材を貼れば音が良くなる」と信じ込み、高音域ばかりを吸ってしまうケースです。 その結果、シンバルやハイハットの煌めきは死に絶え、低音だけがドロドロと残る、バランスの崩壊した部屋が生まれます。

DIVERは、周波数ごとの残響時間をコントロールします。
- 低音域: こもりを消すために短く。
- 高音域: 艶を残すために適度な長さを維持する。
あなたが求めるのは、映画館のようなデッドな空間か、コンサートホールのようなライブな空間か? 用途(Use Case)に合わせて、1/100秒単位で響きの長さを設計します。
音を殺さず、「整列」させる。
定在波や反響を恐れるあまり、多くの防音業者が行うのが「過剰な吸音」です。
壁一面にグラスウールやスポンジを貼り付け、音を殺してしまう。
その結果どうなるか? 高音域だけが死に、低音のブーミングは残ったまま。
そして何より、音楽の躍動感や、演奏者の息遣いといった「倍音成分」まで根こそぎ奪われます。
それはもはや音響空間ではありません。
。DIVERのアプローチは「吸音」ではなく、「制御」です。
- Low Frequency Control
吸音材をベタ貼りするのではなく、壁の内部構造(空気層深度・剛性)によって、狙った低音域だけをピンポイントで制振します。 - Diffusion (拡散)
中高音域は、オリジナルのアピトン製ハイブリッドディフューザーで拡散させます。
音のエネルギーを減衰させることなく、部屋中に均一に散りばめることで、狭い部屋とは思えない「広がり」と「音の密度」を両立させます。
私たちが作るのは、ホールのような長い残響ではありません。
コックピットのような、濃密で、情報量の多い、超高解像度な音響空間です。
物理法則に、エンジニアリングで抗う。
小規模空間で最高の音を作ることは、ある意味でホールを作るよりも難しい挑戦です。 しかし、物理法則に基づいた正しい計算と施工があれば、あなたの部屋は世界で最も美しい「再生装置」に生まれ変わります。
DIVERは、その答えを持っています。
