
飲食店は、店の見た目ではなく選ばれる理由から設計する
飲食店の設計は、壁や床の素材を選び、雰囲気のよい内装をつくることだけではありません。
どのような料理を、誰に、どのくらいの価格で、どの時間帯に提供するのか。
一人で訪れる店なのか。
二人で料理と酒を楽しむ店なのか。
料理人の所作を間近で感じる店なのか。
会話を中心に長く過ごす店なのか。
こうした店のあり方によって、必要な席数、厨房の広さ、カウンターの位置、照明の明るさ、ファサードの見せ方、店内に必要な音は変わります。
HAGANEでは、店の事業条件と、来店した人が受け取るブランド体験をつなぎながら、飲食店の設計を考えています。
特に、8坪から18坪前後の小規模飲食店では、限られた面積の中で、何を優先するのかが店の印象と営業のしやすさを大きく左右します。
席数を増やすことだけを目的にせず、料理の提供方法、客席と厨房の距離、滞在時間、追加注文、再来店までを考え、ファサード、客席、厨房、照明、素材、音を一つの設計として組み立てます。
飲食店の設計は、内装のテイストを決める前から始まっている
出店計画をするとき、最初に「和風」「モダン」「ナチュラル」といった内装のイメージから考え始めることがあります。
ですが、店の印象だけを先に決めても、営業条件と噛み合わなければ、使いにくい店舗になります。
設計を始める前に確認するのは、次のような条件です。
- どのような料理を提供するのか
- 昼と夜のどちらを売上の中心にするのか
- 想定する客単価はいくらか
- 一人客、二人客、グループ客のどこを中心にするのか
- 料理をどのような順番で提供するのか
- カウンターとテーブルのどちらを中心にするのか
- 料理人の所作をどこまで見せるのか
- ドリンクや追加注文が生まれる店にするのか
- 通りから店内をどこまで見せるのか
- どのような理由で再来店してもらいたいのか
ここで経営計画そのものを代行するわけではありません。
店主が考えている業態、価格帯、料理、接客、営業時間などの事業条件を確認し、それを空間へ反映するのが設計の役割です。
同じ10坪の物件でも、昼の回転率を重視する店と、夜に料理と酒をゆっくり楽しむ店では、必要な席構成も照明も異なります。
設計は、店の見た目をつくる前に、営業の前提を理解するところから始まります。
小さな飲食店では、席数だけで店の価値を判断しない
面積の小さな飲食店では、できる限り多くの席を確保したくなります。
席数は売上に関係する重要な条件です。
ただし、客席を増やすために厨房や通路を狭くしすぎると、料理の提供が遅くなり、スタッフ同士の動きが重なります。
テーブル間隔を詰めすぎれば、隣の会話が気になり、店が想定している客単価と空間の印象が合わなくなることもあります。
考えるべきなのは、何席入るかだけではありません。
- 料理を何人で提供するのか
- 一度に何組へ対応できるのか
- どのくらいの滞在時間を想定するのか
- 追加注文が生まれる席なのか
- 一人客と二人客をどのように受け入れるのか
- 厨房から各席まで無理なく料理を運べるのか
席数、客単価、回転率、提供速度、滞在体験は、それぞれ独立した条件ではありません。
一つの条件を変えると、ほかの条件にも影響します。
小さな飲食店では、限られた面積を広く見せることより、店に必要な価値へ面積を配分することが重要です。
カウンターは、席ではなく店の体験をつくる場所
10坪前後の飲食店では、カウンターを中心とした構成を採用することがあります。
カウンターには、少ない面積でも席数を確保しやすいという利点があります。
しかし、カウンターを選ぶ理由はそれだけではありません。
料理人の手元が見える。
料理が完成する瞬間が見える。
提供までの時間を短くできる。
店主と客の間に自然な会話が生まれる。
ドリンクや追加料理を勧めやすくなる。
カウンターは、厨房と客席を分ける家具ではなく、料理、接客、音、会話をつなぐ場所です。
焼き鳥店であれば、焼き場の火や音が店のライブ感になります。
寿司店であれば、握る所作と店主との会話が滞在体験になります。
蕎麦と小皿の店であれば、一品料理と酒が追加されていく時間を支えます。
一方で、会話を重視する二人客が中心の店では、テーブル席を主役にした方がよい場合もあります。
カウンターかテーブルかを形式だけで決めず、どのような時間を過ごしてもらいたいのかから判断します。
飲食店では、料理が生まれる場所をどこまで見せるか
厨房は、料理をつくるための作業場所です。
同時に、飲食店の価値が生まれる場所でもあります。
料理人の所作や火の動き、焼く音、盛り付ける姿を見せることで、料理が提供されるまでの時間そのものを体験に変えられます。
ただし、すべての厨房を開放すればよいわけではありません。
下処理や洗浄まで見せる必要はありませんし、油煙や熱、厨房機器の音をそのまま客席へ出せば、居心地を損ないます。
見せる場所と隠す場所を分けます。
- 焼き場だけを正面に見せる
- 盛り付ける手元をカウンター越しに見せる
- 厨房全体ではなく、料理が完成する場所だけを見せる
- 客席から視線が入りすぎない高さに腰壁や垂れ壁を設ける
- 排気、熱、においが客席へ流れないように計画する
厨房を舞台にすることが目的ではありません。
その店の料理を魅力的に感じてもらうために、どこを見せ、どこを見せないのかを決めます。
飲食店のファサードは、店内へ入る前のブランド体験

飲食店の体験は、席に座ってから始まるわけではありません。
通りから店を見つけ、入口へ近づき、扉を開けるまでの時間も、店の印象をつくっています。
店内を大きなガラス面で見せた方が入りやすい店もあります。
反対に、内部を見せすぎず、格子や壁、照明の陰影から店の気配だけを伝えた方が、その店らしさを表現できる場合もあります。
SNSや予約サイトから店を知り、目的を持って来店する人が増えた現在では、すべての店が通行人へ業態を大きく説明する必要はありません。
重要なのは、外から見たときに、店が提供する体験とファサードの印象が一致していることです。
- 気軽に入りやすい店なのか
- 予約して訪れる店なのか
- 活気を外へ伝える店なのか
- 静かに料理と向き合う店なのか
- 店内を見せるのか
- 入口までの期待感をつくるのか
看板、扉、窓、格子、外壁、植栽、照明を個別に選ぶのではなく、通りから入店までの流れとして設計します。
照明と素材で、料理の価値をどう見せるか
高級感のある飲食店にするために、店内を暗くすればよいわけではありません。
照明には、料理を見せる光、客の表情を見せる光、店内を移動するための光、空間の奥行きをつくる光があります。
厨房には作業に必要な明るさが必要です。
客席では、料理の色や質感が正しく見えながら、落ち着いて過ごせる明るさが必要です。
カウンターでは、料理人の手元と料理へ自然に視線が集まるようにします。
素材も、見た目だけで決めるものではありません。
木、左官、タイル、金属、ガラスでは、光の反射や陰影、触れたときの印象が異なります。
同じ料理でも、どのような器で、どのようなカウンターの上に置かれ、どの方向から光が当たるかによって、受け取られる価値は変わります。
料理、器、家具、素材、照明を別々に考えず、一つの場面として設計します。
音は、空間と料理の印象をつなぐ

飲食店の音は、BGMだけではありません。
料理を焼く音。
食器やグラスが触れる音。
厨房機器の音。
客同士の会話。
スタッフの声。
扉の開閉音。
店内に流れる音楽。
これらが重なり、店の雰囲気をつくっています。
すべての音を消し、静かな店にすることが正解ではありません。
焼き鳥店では、焼き場の音が料理への期待を高めることがあります。
カウンター中心の店では、店主との会話が店を選ぶ理由になることがあります。
一方で、天井や壁の反射が強すぎると、複数の会話と食器音が重なり、声が聞き取りにくくなります。
BGMの音量を上げても、店内の騒がしさが増えるだけです。
音の設計では、
- 残したい音
- 抑えたい音
- 客席へ届けたい音
- 厨房内に留めたい音
- 隣の席へ届きすぎないようにしたい会話
を分けて考えます。
スピーカーの位置、音量、客席との距離、天井や壁の仕上げ、厨房との境界を、空間設計と同時に検討します。
音だけを主役にするのではなく、料理、照明、素材、動線とつなぎ、店のブランド体験をつくります。
飲食店設計で対応する範囲

飲食店づくりに必要な要素を、部分ごとに切り離さず、一つの店舗として設計します。
店舗コンセプトと設計条件の整理
業態、客層、客単価、営業時間、料理の提供方法、席数など、店主が考えている事業条件を確認し、設計の前提を明確にします。
物件確認
面積や形状だけではなく、給排水、電気容量、ガス、換気、排気経路、厨房設備、用途、防火条件などを確認します。
平面計画
客席、厨房、収納、トイレ、バックヤード、配膳動線を検討します。
ファサードデザイン
外壁、入口、建具、窓、看板、照明、外からの見え方を設計します。
客席と家具
カウンター、テーブル、椅子、ベンチ、荷物置きなど、営業方法に合わせて計画します。
厨房と客席の関係
厨房機器の配置だけでなく、料理人の動き、配膳、下膳、料理を見せる位置まで検討します。
照明設計
料理、客席、厨房、ファサード、それぞれに必要な光を計画します。
素材と仕上げ
床、壁、天井、カウンター、家具、建具の素材を選定します。
サイン計画
店名、ロゴ、メニュー、入口表示など、必要な情報を必要な位置へ配置します。
音響・BGM計画
スピーカーの配置、BGMの聞こえ方、厨房音や会話の広がりを検討します。
防音・静音設計
周辺環境や営業内容に応じて、外部への音、設備音、厨房音への対策を考えます。
映像・設備計画
店舗に映像演出やモニターが必要な場合は、空間と一体で計画します。
設計・施工
設計のみのご相談と、設計から施工までのご相談に対応しています。
飲食店の設計事例
坪数、席数、業態、客単価、料理の提供方法から考えた設計事例を公開しています。
設計事例では、完成イメージだけではなく、
- なぜこの席構成にしたのか
- なぜカウンターを中心にしたのか
- なぜ店内を外から見せなかったのか
- なぜ厨房をこの位置にしたのか
- 料理と酒の注文をどう空間へつなげたのか
といった設計判断を紹介しています。
自分が計画している業態や店舗規模に近い提案からご覧ください。
開業前に確認しておきたい5つのこと
1.希望する料理に対して、厨房面積は足りているか
客席数を優先しすぎると、必要な厨房機器や作業スペースが確保できない場合があります。
提供する料理と調理工程から、必要な厨房を考える必要があります。
2.席数と提供能力が合っているか
席を増やしても、厨房とスタッフが対応できなければ、提供時間が長くなります。
何席つくれるかだけでなく、何席まで無理なく料理を提供できるかを確認します。
3.昼と夜で、店の使われ方は変わるか
昼に短時間で利用される店と、夜に料理と酒を楽しむ店では、求められる席や照明が異なります。
昼夜の営業を行う場合は、両方の時間帯で無理のない構成を考えます。
4.外から店内を見せる必要があるか
通行人に入りやすさを伝えるのか、目的を持って訪れる店として見せるのかによって、ファサードは変わります。
業態、立地、客単価、来店方法から判断します。
5.物件を契約する前に、設備条件を確認したか
飲食店では、給排水、排気、電気、ガス、防火条件が工事費と計画に大きく影響します。
家賃や広さだけで物件を判断せず、契約前に設備条件を確認することが重要です。
飲食店設計の進め方

01|ご相談
業態、出店予定地域、店舗面積、物件の有無、開業予定時期、予算など、現在決まっている内容を伺います。
02|物件・条件確認
現地や図面を確認し、飲食店として必要な設備や法的条件を確認します。
03|設計方針の検討
客席、厨房、動線、ファサード、照明、素材、音など、店舗全体の方向性を検討します。
04|基本設計・概算見積り
平面計画や空間イメージを作成し、工事内容と概算費用を確認します。
05|実施設計
工事に必要な図面、仕様、設備内容を決定します。
06|施工
設計内容を共有しながら工事を進めます。
07|完成・引き渡し
各部を確認し、店舗を引き渡します。
よくあるご質問
物件が決まる前でも相談できますか
はい。物件を契約する前に、希望する業態に必要な厨房や席数が確保できるかを確認することが重要です。
候補物件がある段階からご相談いただけます。
小さな店舗でも相談できますか
はい。8坪から18坪前後の小規模飲食店を中心に設計提案を行っています。
面積が限られているからこそ、厨房、客席、動線の優先順位を明確にする必要があります。
設計だけでも依頼できますか
はい。設計のみのご相談にも対応しています。
施工は関西・東海を中心に、設計については全国からご相談いただけます。
厨房業者は別に依頼する必要がありますか
計画内容に応じて厨房機器業者と連携します。
厨房機器だけを先に決めるのではなく、客席や配膳動線との関係を確認しながら配置を検討します。
音響設備を必ず導入する必要がありますか
すべての店舗に特別な音響設備が必要なわけではありません。
店の規模、業態、客単価、BGMの役割に応じて、必要な内容を判断します。
改装やリニューアルも相談できますか
はい。新規出店だけでなく、既存店舗の改装、客席構成の変更、ファサードの更新、音環境の改善などにも対応しています。
対応エリア
飲食店の設計・施工は、関西エリアと東海エリアを中心に対応しています。
関西エリア
京都・大阪・滋賀・兵庫・奈良・和歌山
東海エリア
三重・岐阜・愛知・静岡
設計のみのご依頼については、全国からご相談いただけます。
物件が決まる前のご相談、候補物件の確認、既存店舗の改装やリニューアルにも対応しています。
飲食店の設計について相談する
まだ物件が決まっていない段階でも、店舗の面積や業態が固まっていない段階でもご相談いただけます。
現在決まっている内容をもとに、どのような条件を確認する必要があるのかを整理し、設計へつなげます。
- 出店予定地域
- 業態
- 店舗予定面積
- 物件の有無
- 希望する席数
- 想定する客単価
- 開業予定時期
- 工事予算
- 設計のみ、または設計施工
店の事業条件とブランド体験をつなぎ、ファサード、客席、厨房、照明、素材、音まで一体で設計します。