「木って、やっぱりいいですね」
打ち合わせのとき、体験会のとき、引き渡しのとき──
お客様からそんな言葉をいただくことがあります。
でも、“木がいい”という感覚は、
数字では語れない感覚的なものであり、
言葉にしにくいけれど、確かに存在する「効能」です。
この記事では、僕自身が暮らしの中で実感している
“木の効能”を感じる瞬間たちを、五感の視点からご紹介します。
木の効能①|香りが“呼吸の質”を変える
朝、玄関を開けた瞬間の木の香り。
雨の日にしっとりと立ちのぼる杉の香気。
押し入れを開けたときにふわっと香る桧の清涼感。
こうした香りは、ただのアロマではありません。
木の香り成分には、
- 抗菌作用(フィトンチッド)
- 自律神経を整える効果
- ストレスを軽減する働き
があることが研究でも示されています。
でも僕は、数字よりも「感覚」で伝えたい。
木の香りに包まれたとき、人は“深い呼吸”ができるようになる。
それは、香りの効能というよりも、
空間に漂う“安心感”が呼吸の質を変えるのだと思います。
木の効能②|肌ざわりが“緊張”をほどく
フローリングの上に素足で立ったとき、
杉の床が少し沈み込むように足裏を受け止めてくれる。
これは、無垢材の“弾力性”によるものです。
コンクリートや合板にはない、「柔らかさ」「温もり」が、
身体の力を抜かせてくれる感覚があります。
僕の家では、子どもが床に寝転がって本を読んでいます。
その姿を見るたびに、「木の床ってすごいな」と思うのです。
木の床は、ただ歩く場所ではなく、“くつろぐ場所”になる。
こうした肌ざわりの効能は、
暮らしの中でじわじわと効いてきます。
木の効能③|視覚が“心のリズム”を整える
無垢材には、年輪があります。
木目のゆらぎには、“1/fゆらぎ”と呼ばれる心地よいリズムが含まれています。
これは小川のせせらぎや焚き火の揺らぎと同じ、
人の心拍や脳波と調和しやすい自然のリズムだとされています。
僕自身、忙しさで心がざわついているとき、
木目をぼんやり眺めていると、不思議と呼吸が整っていきます。
木の視覚的な効能は、デザイン性ではなく、
“無意識の安心”を与えてくれるものだと思います。
木の効能④|音が“静けさ”を生む
木の床・天井・壁に囲まれた空間には、
コンクリートやクロス貼りにはない“静けさ”があります。
これは、木が音を吸収し、反響を柔らかくする特性があるからです。
- 足音がコツコツ響かない
- 声が反射しすぎない
- 音の“残響”が穏やかになる
この“静けさ”は、
ただ音がしないということではなく、「音が優しくなる」ということ。
木の家に入った瞬間に、「あ、落ち着く」と感じる人が多いのは、
この音の感触によるものかもしれません。
木の効能⑤|経年変化が“心の余白”をつくる
無垢材は、時間と共に変化します。
日焼け、傷、へこみ、ツヤ──
それは「劣化」ではなく、「記憶の蓄積」です。
- おもちゃを落とした跡
- 生活で擦れて丸くなった角
- 10年経って色が深まった床板
こうした変化は、“人が生きてきた証”として、空間に刻まれていきます。
僕が木を使い続ける理由のひとつは、
木は、暮らしの“跡”を美しさに変えてくれるから。
“完璧な美しさ”ではなく、“不完全さを許す余白”。
それが、心にとってもやさしいのだと思います。
木の家で深呼吸できるのは、五感が整うから
ここまで紹介してきた木の効能は、どれも数値で測りにくいものです。
でもそれが、暮らしの本質に近い部分だと僕は思っています。
- 呼吸が深くなる
- 身体が緩む
- 心が穏やかになる
- 音が柔らかくなる
- 時間の経過が嬉しくなる
これらが合わさったとき、
人は「ここが自分の居場所だ」と感じられるのではないでしょうか。
僕が届けたいのは、“木の見た目”ではなく“木の感覚”
最後に、僕の想いを少し。
「木を使えば見た目がおしゃれになる」
そんな表面的な理由だけで木を選んでほしくはないんです。
僕が伝えたいのは、
“木を使った家は、暮らしの感覚そのものを変える”ということ。
だからこそ、キノスミカでは
「空気の設計」と「素材の対話」を常にセットで考えています。
木の力を正しく活かせば、
数値や流行では測れない“生きた家”が生まれる。
僕は、そんな家づくりを続けていきたいと思っています。
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