間取りを変えずに快適に|自然素材で整える静かなリノベ

中古リノベ
  1. 第1章|リノベって間取りを変えるもの、と思っていませんか?
    1. 間取り変更=リノベの思い込み
    2. 実例|間取りを変えずに整えた家の話
    3. 静かなリノベこそ“感覚”を変える力がある
  2. 第2章|“変えない選択”の中にこそ、心地よさは宿る
    1. 暮らしが求めているのは「変化」よりも「安定」
    2. 間取り変更で失うものもある
    3. 素材と空気で整えた平屋の例
    4. 感覚に働きかける素材の力
  3. 第3章|自然素材が空気を変える。構造に触れなくても家は変わる
    1. 素材が空気に働きかけるという事実
    2. 壊さずとも“空間の質”は整えられる
    3. 変化は、目に見えなくても感じられる
  4. 第4章|暮らしの“静かなストレス”を素材で解消する方法
    1. ストレスって、音でも温度でもなく「違和感」でくる
    2. 足元の冷えは“素材の選び方”で変わる
    3. 空気がこもって感じるのは“壁の呼吸”が足りないからかもしれない
    4. 音の響きも“なんとなくしんどい”の原因になる
    5. ストレスは“がまん”でなく“素材”で緩める
  5. 第5章|「施工範囲をしぼる」という賢いリノベの考え方
    1. 「全部やらなきゃ」はリノベじゃなくて新築の発想
    2. 「しぼる」ことは「妥協」ではなく「戦略」
    3. 部分リノベでも、空間全体の印象は変えられる
    4. 残すことは、受け継ぐことでもある
  6. 第6章|間取りそのままで満足度が上がった事例紹介
    1. 築28年の戸建て。手を入れたのは床と窓だけ
    2. 「空気が柔らかい」と言われる空間に
    3. 変化のない間取りに、感覚の変化を重ねる
  7. まとめ|“大きく変えない”という豊かな選択
    1. 「変えない」という選択が、心の奥に届くことがある
    2. 変えることが目的じゃない。「暮らしの質」を上げるのが目的
    3. 素材は、ただのデザイン要素じゃない
    4. 最後に
    5. ▶「大きく変えずに、深く整える」そんな家づくりに興味があれば

第1章|リノベって間取りを変えるもの、と思っていませんか?

間取り変更=リノベの思い込み

「リノベーションって、大がかりな間取り変更をするものですよね?」

このイメージを持っている人は多いです。
キッチンを対面式にして、壁を抜いて、LDKをひとつながりにして——
確かにそういうリノベもありますし、それで暮らしが大きく変わることもあります。

でも僕は、こういう相談を受けたとき、少し立ち止まって考えてもらうようにしています。

「本当に“変える”必要、ありますか?」

というのも、暮らしの不満って、間取りそのものよりも“空気の質”や“素材の触れ心地”に起因していることが多いからです。
実際、「間取りをいじらずに快適になった」という事例は、僕の現場でもたくさんあります。

実例|間取りを変えずに整えた家の話

たとえば、こんなケースがあります。

築25年の戸建て住宅。間取りは昔ながらの独立型の部屋が並ぶスタイル。
「子どもも独立したし、そろそろ間取りを変えようかと思って」と奥さまが言いました。

でも、詳しく話を聞いていくと、
不満だったのは「キッチンが寒い」「なんとなく空気が重い」「床が冷たくて座りたくない」
つまり、動線や構造よりも、“空気と温熱”の問題だったんです。

そこで僕は、間取りはほぼそのまま、以下のような提案をしました。

  • 床を赤身の杉板に張り替え
  • 壁の一部を漆喰にして空気感を調整
  • 窓に内窓を加えて断熱と音環境を整える
  • キッチンまわりに照明と風の抜けを意識した開口をプラス

その結果、「部屋は同じなのに、空気がまるっきり違う」と言っていただきました。
特に朝起きたときの気温差や、足元の冷えがなくなったのが嬉しかったそうです。

静かなリノベこそ“感覚”を変える力がある

間取りを変えるリノベは確かにダイナミックで、図面の変化も大きい。
でも、自然素材を使った“静かなリノベ”は、見た目の変化以上に“感覚の変化”を生んでくれます。

僕が大切にしているのは、「変えないことで生まれる快適さ」の可能性です。

次章では、そうした“変えない選択”がどれだけ暮らしをラクにしてくれるのか、その考え方を掘り下げていきます。

第2章|“変えない選択”の中にこそ、心地よさは宿る

暮らしが求めているのは「変化」よりも「安定」

リノベーションというと、多くの人が「変えることで価値が生まれる」と考えます。
確かに、間取りを大胆に変えることで生まれるメリットもあります。

でも僕は、「変えずに整える」という選択こそ、住まい手にとって深く馴染むケースが多いと感じています。
理由はシンプルで、暮らしに必要なのは“刺激”より“安心感”だからです。

間取り変更で失うものもある

たとえば、壁を壊して部屋をつなげると、確かに空間は広く見えます。
でも一方で、「音が響くようになった」「落ち着ける場所がなくなった」という声も少なくありません。

人には、それぞれに合った“ちょうどいい包まれ感”があります。
変えることだけが正解ではない。
むしろ、もともとの構成を活かして素材や光を整える方が、“自分の居場所”としての家になりやすいんです。

素材と空気で整えた平屋の例

僕が手がけたある平屋リノベでは、間取りはほぼそのまま。
でも、天井の素材と照明、床の無垢材、内窓の断熱だけで、暮らしの質は大きく変わりました。

住まい手からは、「いつもの景色なのに、落ち着く感じが全然違う」と言われました。
これはつまり、“配置”ではなく“質”を変えただけで、空間の印象が変わったということです。

感覚に働きかける素材の力

素材には、空間の「在り方」を変える力があります。
自然素材の持つ温度感、柔らかさ、湿度の調整力、音の響き方。
こうした“目に見えない情報”こそが、僕たちの感覚に与える影響はとても大きい。

だから、間取りをいじる前に、“そのまま”の中で整えられるものは何か?を探してみる価値は大いにあります。

次章では、「自然素材が空気を変える」というテーマで、構造をいじらずにどこまで空間の質を高められるか、僕の視点で掘り下げていきます。
構造をいじらずにどこまで空間の質を高められるか、僕の視点で掘り下げていきます。

第3章|自然素材が空気を変える。構造に触れなくても家は変わる

素材が空気に働きかけるという事実

「空気が変わった」と言われるとき、それはなにも比喩だけの話じゃないんです。
僕が手がける自然素材のリノベでは、間取りを変えていなくても、住まい手の多くが「空気が軽くなった」「呼吸がしやすくなった」と言います。

これは感覚の話ではなく、素材が実際に空気に働きかけている結果です。たとえば、漆喰の壁は呼吸しています。室内の湿度が高ければ水分を吸い、乾燥すれば吐き出す。だから、なんとなく息がしやすくなる。

杉の床もそうです。表面温度が高く、冬でも足元が冷えにくい。そのぬくもりはエアコンの設定温度では生まれない、人の身体が感じ取る“自然なあたたかさ”です。

壊さずとも“空間の質”は整えられる

こうした素材たちは、構造を壊さなくても、空間の質を底上げしてくれます。
つまり、リノベで空気を変えるというのは、なにも壁を抜いたり大掛かりな工事をしなくてもできるんです。

僕が大切にしているのは、「素材にちゃんと仕事をしてもらう設計」です。
ただ貼るだけ、敷くだけではなく、空気が通る場所、光が届く場所、人がよく触れる場所に素材を配置する。
そうすれば、見えないけれど確かに感じられる“空気の変化”が生まれます。

変化は、目に見えなくても感じられる

以前、間取りを一切変えずに、素材と照明と窓まわりだけを整えたリノベがありました。
お施主さんは完成した家に入った瞬間、「あれ?光が違う気がする」とぽつり。

空気の温度、湿度、光の反射、足裏の感覚——それら全部が重なって、“自分の家の空気”になっていたんです。

暮らしを整えるというのは、いつも目に見える変化ではありません。
構造に触れなくても、空間の印象も、心の落ち着きも、素材によって確かに変えることができる。
それが、僕が素材にこだわる理由のひとつです。

次は、そんな“目に見えないストレス”を素材でどうやって和らげるか。
その視点から、暮らしの中の静かな不快感をどう解消していくかについてお話しします。

第4章|暮らしの“静かなストレス”を素材で解消する方法

ストレスって、音でも温度でもなく「違和感」でくる

「なんか落ち着かない」「ここだけ寒い」「空気がよどんでる気がする」
こうした違和感って、暮らしの中で常に“背景音”のように存在しているストレスです。

でも、その違和感って原因が分かりづらい。だから後回しになる。
僕が大切にしているのは、こうした“静かなストレス”をちゃんと読み取って、素材で緩和していくという視点です。

家にいる時間が長くなるほど、この感覚の違いは生活の質を大きく左右します。

足元の冷えは“素材の選び方”で変わる

よくあるのが、足元が冷たくて、リビングにいてもリラックスできないという声。
エアコンの設定温度は高いのに、体が温まらない。そんなとき、原因は「床」そのものにあります。

合板フローリングやタイルは、熱を逃しやすい素材。
その上にラグを敷いたり、スリッパを履いたりしても、根本的な冷たさは残ります。

無垢の杉板に変えるだけで、床の表面温度はぐっと上がり、足元から伝わる冷たさが和らぎます。
「この床、なんか座れる気がする」と言ってもらえることが多いのは、素材の温度感が生活に与える安心感なんです。

空気がこもって感じるのは“壁の呼吸”が足りないからかもしれない

リモートワークや在宅時間の増加で、「部屋の空気がこもってしんどい」という相談も増えました。
このとき大切なのが、壁の素材です。

ビニールクロスの壁は空気を通さない。調湿もしない。
だから空間に“抜け”がなくなり、なんとなく息が詰まるような感覚になる。

ここで漆喰を使うと、空気の流れが少しずつ変わります。
目に見えないけれど、呼吸できる壁は、室内の湿度と空気の質を整えてくれる。

人は、理屈じゃなく「空気の変化」を感じる生き物だからこそ、素材の違いは暮らしにじわじわと効いてきます。

音の響きも“なんとなくしんどい”の原因になる

声が反響する、テレビの音が鋭く聞こえる、家族の足音が気になる——
そんな悩みのある家は、素材が“音を受け止めていない”状態になっていることが多いです。

無垢材や和紙、布系の素材は、音を柔らかく吸収してくれる性質を持っています。
全部を防音する必要はなくても、響きを抑えるポイントがあるだけで、空間が静かになる。

素材って、「見た目のため」だけじゃない。
心がゆるむような音の環境をつくるための、調律器みたいなものでもあるんです。

ストレスは“がまん”でなく“素材”で緩める

家で感じる違和感や疲れやすさって、気づかないうちに蓄積されていくものです。
でもそれは、大きなリフォームじゃなくても、素材を選ぶことで解消できることが多い。

僕はよく、「素材を使うというのは、感覚に投資すること」だと伝えます。

暮らしの不調を、がまんではなく“素材という解決策”で緩めていく。
それが僕たちの考える、穏やかで健やかな家づくりの第一歩です。

次章では、こうした“変えすぎないリノベ”を、実際にどう施工範囲をしぼって実現していくのか、設計の視点から具体的にお話しします。

第5章|「施工範囲をしぼる」という賢いリノベの考え方

「全部やらなきゃ」はリノベじゃなくて新築の発想

中古住宅のリノベ相談でよくあるのが、「全部変えないとダメですよね?」という声です。
でも僕は、むしろ「どこを変えないかを見極めることこそ、リノベの本質」だと思っています。

新築はゼロからつくるから、全体最適を目指します。
でもリノベは、すでにあるものを活かしながら組み替える作業。
全部を壊すことは、コストも手間も素材の意味も失わせてしまいます。

設計する側としても、残すべき部分と変えるべき部分の“線引き”が、もっとも知恵のいるところです。

「しぼる」ことは「妥協」ではなく「戦略」

たとえば、「床と窓だけ整える」「寝室だけ素材にこだわる」「キッチンまわりだけ断熱する」
これらは一見“限定的”に見えますが、実は最も満足度の高い改修方法のひとつです。

なぜなら、暮らしの中で“密度が高い場所”に手を入れることで、体感としては全体が良くなったように感じるから。

しかも、予算を集中できるので素材の質も上げやすい。
仕上がりの美しさや、触れたときの快適さも、ワンランク上の体験になります。

しぼるというのは、コストを削ることではなく、価値を最大化する設計のやり方なんです。

部分リノベでも、空間全体の印象は変えられる

あるお施主さんは、限られた予算の中で「床と天井だけ無垢材にしたい」と相談してくれました。
僕たちは、その空間に合わせて光の入り方や、既存の壁の見せ方を整えることで、結果的に家全体が落ち着いた印象に仕上がりました。

「何もかも新しくなったわけじゃないのに、家にいる時間がすごく好きになった」と言っていただけたとき、
あらためて“施工範囲の戦略”が家づくりの質を決めるんだと実感しました。

手を入れすぎないことで、素材も、家の記憶も、住まい手の感性もちゃんと残る。
それが、自然素材リノベの真価だと思っています。

残すことは、受け継ぐことでもある

僕たちがあえて壊さなかった壁や柱、天井の色味は、その家がこれまで過ごしてきた時間そのものです。

そこに無垢の床を合わせたり、漆喰の壁を重ねたりすると、
まるで「新しい時間が、古い時間を受け入れてくれている」ような空気が生まれることがあります。

これは、新築では味わえない。
リノベだからこそできる、静かな継承のようなものです。

次章では、実際に間取りをほとんど変えずに満足度の高い暮らしを実現した事例をご紹介します。
現場の声から、素材と空間がどう“働いたか”を感じてもらえるはずです。

第6章|間取りそのままで満足度が上がった事例紹介

築28年の戸建て。手を入れたのは床と窓だけ

今回ご紹介するのは、築28年の木造住宅をリノベーションしたご家族。
ご夫婦と小学生のお子さん2人の4人家族で、住まいに対しての要望はこうでした。

「寒さをなんとかしたい。でも大きな間取り変更や水まわりの工事までは考えていない」
「自然素材には憧れがあるけど、正直どう使っていいかわからない」

予算にも限りがある中で、僕たちが提案したのはとてもシンプルなものでした。

  • リビングとダイニングの床を赤身の杉板に張り替え
  • 南側の掃き出し窓に内窓を追加して断熱性をアップ
  • 壁と天井はそのまま、ただし既存のクロスに馴染む照明を選定して空気感を整える

間取りはいっさい変更なし。
でも、その結果、住まい手の暮らしは確かに変わりました。

「空気が柔らかい」と言われる空間に

工事が終わって引き渡した直後、お子さんが素足で杉の床を走り回っていたのが印象的でした。
奥さまからは、「リビングに入った瞬間、空気が柔らかくなった気がする」と言われました。

実際、断熱改修と床材の交換だけで室温は冬場で約2度上昇。
ストーブの使用頻度も減り、朝起きたときの「寒っ!」という感覚がなくなったそうです。

何より「何も変わってないように見えるけど、居心地がすごく良くなった」という言葉が、僕にとっては一番嬉しかった。

素材が“ただの材料”ではなく、“空気をつくる存在”として働いてくれた証拠だと思っています。

変化のない間取りに、感覚の変化を重ねる

間取りを変えていない。でも、「暮らしに余白ができた気がする」とも言われました。
これは、素材や光、温熱環境の変化が“心理的なスペース”を生んだということ。

床に座れるようになったから、ソファに依存しなくなった
朝の準備中、足元が冷えないから余裕ができた
音の反響がやわらいだから、テレビの音量を下げられた

こういう細かな“変化の連鎖”が、暮らしの質を大きく底上げしてくれる。
それが、素材の力を信じる設計の魅力です。

次章ではこの流れを締めくくり、「大きく変えない」という選択が生む豊かさについてまとめていきます。
変えないからこそ得られる、静かで本質的な満足感に目を向けていきます。

まとめ|“大きく変えない”という豊かな選択

「変えない」という選択が、心の奥に届くことがある

家を整えるとき、多くの人が「何を変えるか」を考えます。
でも僕は、「何を残すか」「何を整えるか」の方が、本質的な問いだと思っています。

構造をいじらなくても、間取りを崩さなくても、
素材と空気、光と温熱の調整だけで、家は驚くほど変わる。

しかもその変化は、見た目だけでは測れない。
「気持ちが落ち着いた」「この空気が好きになった」
そんな、感覚と感情の変化こそが、リノベの核心です。

変えることが目的じゃない。「暮らしの質」を上げるのが目的

リノベは、“新しくすること”がゴールじゃありません。
暮らしがラクになる、安心できる、好きになる。
その結果をつくる手段として、設計や素材があるんです。

だから僕は、あえて“変えすぎない設計”を提案することがあります。
しぼる勇気。残す選択。そこにこそ、住まい手の暮らしへのリスペクトが宿るからです。

素材は、ただのデザイン要素じゃない

杉の床、漆喰の壁、和紙の天井。
それらは単に「自然素材だから体に良い」という理由で選ぶものではありません。

僕にとって素材は、“空気を整える設計ツール”であり、
“住まい手の感覚に働きかける仕掛け”でもあります。

素材を使って変えるのは、見た目ではなく空間の在り方と、そこで過ごす人の気持ちなんです。

最後に

大きく変えないという選択は、とても静かで、でもとても深い変化をもたらしてくれます。

「全部変えようと思っていたけれど、床だけでこんなに違うとは思わなかった」
「家の中に、呼吸できる場所ができた気がする」
そんな声に出会うたび、僕は設計の役割をあらためて感じます。

変えすぎない。整えすぎない。
でも確かに“暮らしの芯”を支えるような、そんなリノベを僕はこれからも提案していきたいと思っています。

▶「大きく変えずに、深く整える」そんな家づくりに興味があれば

大がかりな間取り変更をしなくても、
暮らしの質を根本から変えるリノベーションは可能です。

素材や空気から暮らしを整える
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