自然素材の活かしかた

冬の底冷えに勝つ!無垢フローリング(杉20mm)を「暖かい床」にする断熱・気密設計5つの鉄則

無垢フローリングで後悔する理由|“杉20mm”は「設計」で選ぶ

「無垢フローリングに憧れていたのに、正直ちょっと後悔しています…」

リフォーム相談の現場で、僕たちはこの言葉を何度も耳にしてきました。

たしかに、僕たちが標準で採用している杉の20mm厚フローリングは、やわらかく、あたたかく、足触りも軽やかで、空気になじむ最高の素材です。

しかし、その裏側には、無垢材特有の「個性」があります。

  • 傷がつきやすい:特に杉はやわらかいため、モノを落とすとへこみます。
  • 伸縮する:湿気で反ったり、乾燥で隙間があくのは、木が生きている証拠です。
  • 冷たさの誤解:断熱材ではないため、冬場、床下の冷気が伝われば冷たく感じます。

これを知らずに「自然素材=いいもの」とだけ信じて選ぶと、「思ってたのと違う」という違和感が生まれます。

無垢のフローリングが悪いんじゃない。「設計」が足りないだけ

無垢材が扱いにくいのではありません。“暮らしに合わせた設計”がなかったから、後悔が生まれるのです。

杉のフローリングには、厚み・やわらかさ・経年変化という独特の個性があります。それが、日当たり・湿気・家族構成といった条件を無視して使われると、どんなに高価な素材でも、ただの扱いにくい床になってしまいます。

逆に、設計が調和すれば、傷や隙間は「味わい」や「人生の履歴」になっていく。

だからこそ、僕たちは杉を選ぶとき、「素材の良さ」ではなく「素材の個性を活かす設計」で決めてくださいとお伝えしています。本章では、杉の20mm厚無垢フローリングでよくある後悔の原因と、選ぶ前に知っておきたいリアルな付き合い方を解説します。

杉の20mm厚無垢フローリングが京都の底冷えに合う理由

京都の冬は、ただ寒いのではなく、「底冷えする寒さ」です。さらに、湿気がこもりやすい盆地特有の気候もあり、床材の選び方は、暮らしの快適さを左右します。

ここで、杉の20mm厚無垢フローリングの特性が、京都の家に最適である理由を解説します。

◉ 20mmの厚みが「やわらかい空気」を足元に生む

杉の特長は、熱伝導率の低さと「やわらかさ」です。オークや栗など他の木材に比べて足当たりがふわっと軽い。

この20mmという厚みが、床下からの冷気をやさしく緩衝する**「空気の層」を生み出します。冬の朝、素足で歩いたとき、合板フローリングが「ピリッ」とくる冷たさを感じやすいのに対し、杉の無垢材は温度よりも質感で、足元の冷えをやわらげてくれるのです。

◉ 湿気と乾燥、両方に強くしなやかに動く「木の性格」

京都は、冬は乾燥、夏は湿気がこもります。この大きな変化に対し、杉は素直に反応する素材です。

  • :空気中の湿気を吸って調湿をサポートし、サラッとした肌触りを保ちます。
  • :乾燥で収縮し、わずかな隙間があきますが、これが素材の「呼吸」です。

隙間や反りも「味わい」として設計に組み込むことができれば、杉材は“手がかかる素材”ではなく、暮らしに寄り添う素材になってくれます。

◉ 傷も変色も、すべてが“風景”になる

杉材は柔らかいぶん、傷がつきやすいのは事実です。しかし、この傷は「暮らしの履歴」になります。

  • 子どもが走り回った傷跡。
  • 陽がよく当たる窓際だけ、色が濃くなっていく変化。

こうした変化が「経年劣化」ではなく、「経年美化」になるのが、杉の20mmの持つ「許容力」です。冷えと湿気が混在する京都の家にとって、杉の厚みとやわらかさは、設計の“快適な調整材として機能します。

無垢フローリングで快適な足元をつくるには?断熱・下地・気流止めの設計が鍵

「杉の無垢フローリングにしたのに、冬は床が冷たくて…」「自然素材って暖かいって聞いていたのに、期待外れだった」—こうした声の多くは、素材の性能不足ではなく**“設計不備”**が原因です。

杉の20mm厚無垢フローリングは、それ単体では断熱材ではありません。

それでも、きちんと設計・施工すれば、足元からじんわりとしたぬくもり感を得ることができます。

◉ 無垢フローリングは「断熱材」との組み合わせが最重要

杉材は熱伝導率が低く、肌触りがいい。しかし、それは床下からの冷気を遮断できていることが大前提です。

【無垢フローリングでよくある失敗例】

  1. 断熱材の施工が甘い:床下からの冷気がそのまま伝わり、せっかくの無垢材の良さが活きない。
  2. 気流止めが未施工:床下の冷たい空気が壁の隙間を伝って床材を冷やし続ける。
  3. 湿気対策不足:杉材の調湿性能を活かせない構造になっている。

だからこそ、無垢フローリングを選ぶときは、「断熱性能が高い家にするには?」という設計視点が欠かせません。

◉ 杉材 × 断熱 × 気流止めの3点セット

僕たちGreener’s Houseでは、杉の20mm無垢フローリングを標準採用しつつ、その性能を最大化するために、以下の設計・施工ルールを徹底しています。

  • 床下の徹底対策:床下に高性能な断熱材を敷き詰め、気流止めを併用し、隙間風による冷気の侵入を完全に防ぎます。
  • 下地構造捨て貼り+根太レス構造を採用し、床のたわみを防止すると同時に、気密性をしっかり確保します。
  • 水回り対策:洗面・脱衣所などには局所断熱湿気制御設計を導入し、温度差やカビの原因を排除します。

この「3点セット」により、無垢材の断熱性・調湿性・感触が、設計的に最大限に引き出された空間になります。
断熱や気密に関する詳しい記事はこちらから👉「小さな高断熱の家」を京都で建てるなら、なぜ断熱素材はグラスウールがいいの?グリーナーズハウスから伝えたいこと

◉ 暮らしの“動線と足元の温度”が合っているか?

単に「暖かそう」で終わらせないために、リフォームの段階で「断熱計画と空気設計」をセットで考えるべきです。

  • キッチンで長時間立つ場所は、冷たさを感じていないか?
  • 洗面・廊下・リビング間の足元温度差が、快適さを阻害していないか?
  • 子どもやペットが素足で過ごす床の**「傷の受け止め」と「空気の流れ」**は整っているか?

断熱材・気密処理・下地設計、そして杉材の特性。これらすべてが重なって、はじめて**“心地よい床”**ができあがるのです。

傷や変化は暮らしの履歴|杉のフローリングを“風景”にする生き方

「無垢フローリングって、すぐ傷つきますよね?」「水をこぼしたらシミになるし、掃除も面倒そう」—その通りです。杉材は完璧な素材ではありません。

しかし、僕は思うんです。

“完璧”じゃないからこそ、愛せる床になる、と。

◉ 杉材の「不完全さ」こそが魅力

杉の20mm厚フローリングは、足を踏んだときにわかる「たわみのなさ」と「やさしさ」があります。

ですが、家具を引きずればすぐに跡がつき、おもちゃや鍋を落とせばへこみ、日当たりの差で色ムラや濃淡が生まれます。

これらはすべて、「経年変化」ではなく、暮らした証です。

◉ 僕たちが見てきた“傷ついた床”は、どれも美しかった

カタログには載らない、「人生の履歴」が刻まれた床を見てきました。

  • 子どもが初めて歩いた跡が、玄関近くに残る家。
  • 鍋を落としてできたへこみが、家族の話題になっているリビング。
  • 陽の当たる窓辺だけが色濃くなった、穏やかな寝室。

無垢の杉材は、そんな暮らしの風景を、足元からそっと受け止めてくれる「許容力のある素材」なのです。

◉ 無垢フローリングを後悔しない選び方とは?

大切なのは、素材そのものよりも、「その素材と、どんな暮らしをしたいか?」という視点です。

傷がつかない床」がいいなら、合板のフローリングを選べばいい。でも、「暮らしがにじむ床」がいいなら、杉の無垢材が向いています。

杉材は、完璧ではありません。でも、それを「不完全さの美しさ」として迎え入れられるかどうかが、後悔と愛着の分かれ道になります。

暮らしを支える床としての“木”をどう迎えるか?杉材とともに生きる設計の哲学

「木の床、いいですよね」そう言われるたびに、僕はこう思います。“いい”かどうかは、設計次第なんです。

無垢の杉フローリングは、手がかかる素材ですが、そのぶん空気と調和し、人の動きに寄り添い、暮らしに風景を生む素材です。だからこそ、僕は杉材を**“ただの床材”**として扱いません。

**設計という言葉で、杉の声を聞き、その個性を活かす。**それが私たちキノスミカの仕事です。

◉ 暮らしの哲学がある人にこそ、無垢の床は似合う

  • 傷を味として見つめられる人。
  • 完璧よりも時間の重なりを愛せる人。
  • 自然素材を、インテリアではなく人生の一部として迎えたい人。

そんな方にとって、杉の20mm厚フローリングは、ただの床ではなく「暮らしの根っこ」になります。

無垢材で後悔する人がいるのは、素材ではなく**“付き合い方の準備”が足りなかっただけ**です。

木の声を聞くこと。空気の設計を丁寧に描くこと。暮らし方と足元を、静かに整えること。それが、私たちが考える床のデザインす。

まとめ|杉の20mm無垢フローリングで後悔しないために|設計と素材と暮らしの調和を考える

無垢フローリングに対する「憧れ」だけでは、京都の厳しい気候では快適に暮らせません。リフォームで杉の無垢材を選ぶなら、「設計と素材の整合性」が何よりも重要です。

よくある無垢フローリングの後悔後悔しないために必要な設計と心得
冬に床が冷たく感じる断熱・気密・換気をセットで設計すること。床下断熱や気流止めを計画段階で明確にする。
傷がつきやすい、隙間があく杉の20mm厚という特性を理解し、柔らかさ・経年変化を**“素材の味”として受け入れる暮らし方**を描く。
メンテナンスが必要**傷や変色も「履歴」**として楽しめる価値観を持つこと。
素材選びで満足してしまった素足で歩く暮らしを設計で支えること。暖かさややわらかさを床材に求めること。

杉の無垢フローリングは「設計と使い方次第で、人生の一部になる」素材です。

無垢材を選ぶということは、単なる床材選びではなく、「自分たちはどんな空気の中で暮らしたいか?」を決めるということ。

素材の良さではなく、暮らしへの設計力が、後悔を防ぎ、愛着に変えていくのです。

🌿 もっと深く、もっと自由に。暮らしの選択肢を広げたいあなたへ

家づくりに、正解なんてありません。でも、「これなら、自分たちらしく暮らせそう」と思える選択肢は、ちゃんとあります。そのために、僕たちは情報を届けています。

あなたも、京都の厳しい気候に負けない、愛着の持てる無垢の床を設計しませんか?

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