
木に恋をした日から、僕の家づくりは変わった。
正直に言えば、僕が最初から「木の家」に憧れていたわけじゃありません。
むしろ若い頃は、「無垢材は手間ばかりかかる、扱いにくい素材だ」と思い込んでいて、
住宅を考えるときはコストや効率、建売住宅の坪単価のことばかり考えていました。
“高性能住宅”なんて言葉も、ただの売り文句だと思っていたんです。
そんな僕の考えをひっくり返したのは、ある冬の日に訪れた奈良の小さな製材所でした。
それまで「木材」と呼んでいたものが、丸太の姿で目の前に積まれていて、
木口から香るヒノキの匂いに、思わず足が止まったのを今でも覚えています。
試しに、古いノコを借りて丸太を自分の手で挽いてみました。
刃が木に入ると同時に、木の内部からふわっと広がる香り。
切り口が光を受けて、しっとりと艶を放っていたんです。
「木って生き物だったんだ」と、その瞬間に思いました。
ただの建材じゃない。育った山の風や土の香り、冬にためた油分までもが息づいていたんです。
それから僕は、気がつけば毎日製材所へ通うようになりました。
片道1時間半、往復3時間をかけて通い、1,000本以上の丸太を自分の手で挽きました。
雪の朝も、大雨の日も、夏の蒸し暑い日も。
木の目を読むのが楽しくてたまらなかったんです。

木には一本一本、顔があります。
谷間の急斜面で踏ん張って育った木は、年輪が詰まって力強い。
風に煽られた木は、身を捻って曲がりながらもしなやかさを持っている。
嵐を耐えた木には、傷跡のような節が残っているけれど、その節さえも美しい。
そんな風に、木と過ごす時間が増えるほど、
「木の家」という言葉が単なる住宅の種類ではなく、
人の暮らしや思い出を包み込む生き物のように感じられるようになりました。
でも同時に、知れば知るほど怖さもわかってきました。
木は素直なだけに、扱いを間違えればすぐに牙をむきます。
湿気を含んで反る。乾燥して割れる。壁に隙間ができ、冬は寒く、夏は蒸し暑い。
無垢材の家が「後悔した」という話が絶えないのは、木が悪いのではなく、
木を活かす性能設計が足りないからだとわかりました。
僕は「木に恋をした建築士」として、
木の魅力だけではなく、その木を家として長く活かす方法まで伝えたい。
木と性能、そして空気の流れ。
この3つが揃ってこそ、「深呼吸したくなる木の家」になるんです。
だからこそ、これからも僕は木に恋をした日の気持ちを忘れずに、
“後悔しない木の家”を届けたいと思っています。
自然素材の家が後悔につながる理由を、僕は知った
木に恋をして、毎日製材所へ通っていたあの頃。
丸太を挽いているだけでは見えなかった現実を、僕は現場で知ることになります。
最初は、「無垢材さえ使えば、いい家になる」と信じ切っていました。
あの香り、あの艶、あの木目が家の中にあれば、誰だって幸せに暮らせる。
そう思い込んでいたんです。
でも実際にお客様の家をつくり、住んでもらうと、問題が起こりました。
床がきしむ。無垢フローリングが反る。
冬は足元が冷え、夏は湿気でベタベタする。
ひどい時は、カビが生えてしまったこともありました。
お客様は、「木の家に憧れて建てたのに…」と落胆してしまう。
あのヒノキの香りに心を奪われた僕と同じように、
木に恋をした人が、暮らしで苦労してしまう。
これは絶対にあってはいけないことだと思いました。

木は生き物です。
山に立っている間も、水分を吸って吐いて、季節を感じて生きています。
その性質は、柱や床板になっても変わらないんです。
だからこそ「断熱」「気密」「換気」という性能が欠かせません。
湿気を逃がさずにため込めば、木は動きます。
断熱が弱ければ、結露が発生して木が腐ります。
気密が甘ければ、冷たい空気が隙間から入り込み、室内が寒くなる。
これでは、いくら高級な無垢材を使っても、台無しです。
昔の日本の家は、すき間風が当たり前でした。
木の香りを楽しめる代わりに、冬は寒くて当たり前。
でも今の暮らし方では、それでは通用しません。
暖房も冷房も当たり前の時代です。
「木を守るための性能」なしには、快適さは生まれないんです。
僕は悩みました。
木の家をあきらめるか、性能をあきらめるか。
でもどちらもあきらめたくなかった。
僕が恋をした木を、後悔なく暮らせる形で届けるには、
木と性能と空気設計を一体で考えるしかない。
だから僕は、もう「木だけの家」はつくらないと決めました。
必ず、高性能住宅の知識と経験を組み合わせる。
それが、僕が「木の家の失敗」を繰り返さないための、約束です。

木と性能と空気でつくる、深呼吸したくなる家
僕は、「木を好きになった人に後悔させない家をつくる」と決めました。
そのために辿り着いた答えが、「木と性能と空気を一体で設計する」という考え方です。
無垢材の家を快適に保つために、一番大切なのは“空気”です。
人は空気を目で見れないからこそ、家の心地よさをつい「素材」だけで判断してしまう。
けれど、いくら良い無垢フローリングを使っても、
家全体の空気がうまく流れていなければ、木は湿気を吸って暴れます。
逆に、空気が滞らず、温度と湿度が一定に保たれていれば、
木は落ち着き、年を重ねるほどに味わいを増していくんです。
その空気を整えるのが、「断熱」「気密」「換気」という住宅性能です。
例えば、高断熱の家にすれば、外の冷気や熱気をしっかり遮断できる。
高気密にすることで、隙間風が入り込まないから、冷暖房の効率が上がる。
そして計画換気を適切に設計することで、湿気やにおいがこもらず、
新鮮な空気を取り込みながら、木にとっても快適な環境を保てるんです。

僕が理想とする「深呼吸したくなる木の家」は、
木の香りを感じながら、足元までほんのり暖かく、
梅雨の湿気も冬の乾燥も、家全体が優しく受け止めてくれる。
子どもが裸足で駆け回り、木の床に寝転んでも心地よい。
そんな当たり前を、設計と性能で支えています。
もちろん、性能だけでも不十分です。
素材選びも大切です。
同じヒノキでも、産地や木取り、乾燥方法で性質は変わる。
僕はこれまでに1,000本以上の丸太を挽き、木目を見極めてきました。
その経験を活かして、木材一本一本の特性を理解し、
どの部位にどの木を使えば長持ちするかを考え抜いています。
さらに、性能と木の魅力を両立させるには、職人さんの腕も欠かせません。
隙間なく施工する気密の技術、木を暴れさせない収まりの工夫──
どれが欠けても、木の家は長持ちしない。
だから僕は設計だけで終わらず、現場に立ち、職人さんと一緒に細部まで確認します。
こうして「木と性能と空気設計」を丁寧に積み上げることで、
ようやく“後悔しない木の家”が生まれる。
僕は自分の手で丸太を挽いたときの感動を、そのまま家に込めたいんです。
香り、手触り、味わい。
そして空気の透明感。
時間が経つほどに家族の思い出が木に染み込み、
何十年後も深呼吸したくなる木の家。
それが、僕が届けたい「木と性能の家」です。

一緒に後悔しない木の家をつくりませんか
僕は今、「木に恋をした建築士」として、
木の香りと肌触りを楽しみながら、性能で後悔を防ぐ家づくりをしています。
この考え方を選んでから、多くのお客様に「冬でも足元が冷えない」
「梅雨でもジメジメしない」「木の香りがずっと続く」と喜んでもらえるようになりました。
でも、この考え方はまだ多くの人に知られていないのが現実です。
SNSや雑誌には「無垢材の家」「自然素材の家」という響きだけが先に伝わって、
性能設計の大切さまで届かない。
結果、「木の家=後悔する」という誤解が生まれてしまうんです。
僕はそんな誤解をひとつずつ解きたい。
木の家を好きになった人に、失敗してほしくない。
その想いで、こうして「木と性能の家」の考え方を言葉にして届けています。
もし今、あなたが
「木の家に憧れるけど、寒いんじゃないか」
「無垢材の手入れが大変そう」
「建売住宅とどちらがいいんだろう」
そんな不安を少しでも感じているなら、まずは僕に話を聞かせてください。
家づくりは、人生で一番大きな買い物です。
だからこそ、後悔しないためには「誰とつくるか」がとても大切だと僕は思っています。
家を売るのではなく、暮らしを一緒にデザインするパートナーでありたい。
ヒノキの香りが漂う打ち合わせ室で、あなたの理想をとことん語り合いましょう。

相談は、どんな小さなことでも大丈夫です。
土地選びのこと、間取りのこと、予算のこと、無垢材のこと、断熱・気密のこと。
どんなことでも遠慮なく、あなたのペースで聞いてください。
僕は「木に恋をした建築士」として、
木と性能と空気設計のすべてを惜しみなくお伝えします。
そして、完成した家で、思い切り深呼吸してください。
家族みんなが心地よく、木のぬくもりに包まれる暮らしを、ずっと続けてください。
時間とともに味わいが増し、家族の思い出が木に染み込む。
その姿を思い描きながら、僕はこれからも木の家をつくり続けます。
さあ、一緒に一歩を踏み出しましょう。
後悔しない木の家を、あなたと一緒につくりたい。
その最初の一歩は、ちいさな相談から始まります。
株式会社HAGANE キノスミカ代表
青川 剛気
キンドルで本を出してます。