空き家=安いは間違い?京都でコストを抑えるリノベの考え方

  1. 第1章|「空き家は安いからお得」は本当か?──表面的な価格に潜む落とし穴
    1. 本体価格だけを見ていると、思わぬ落とし穴にハマる
    2. コストの正体は「壊す量」×「整える労力」
    3. 「買う前にリノベ会社と一緒に見る」が最も合理的
  2. 第2章|費用を左右するのは“どこを壊し、何を残すか”という設計判断
    1. 解体範囲が広がると、予算も工期も雪だるま式に膨らむ
      1. よくある“壊しすぎ”の例:
    2. 整えながら残すことで、コストにも空気にも優しい設計になる
    3. 解体前提ではなく、“読み直す設計”こそが賢さ
  3. 第3章|“素材に頼る”のではなく“空気を設計する”という本質的なコスト対策
    1. 高級素材を使っても、“空気が滞る家”は快適じゃない
    2. 空気が巡ることで、“素材が育つ家”になる
    3. コストを抑える=高い素材を減らす、ではない
  4. 第4章|「整える視点」があると、予算配分も暮らしの質も変わる
    1. リノベの失敗例は「優先順位の迷子」
    2. 「整える視点」があると、コスト配分が戦略的になる
      1. 01. 優先すべきは「空気の入口と出口」
      2. 02. 外壁や屋根は“予防整備”でOK
      3. 03. 設備は“暮らしのリズム”に合わせて最小限
      4. 04. デザインよりも「光と風の動線」
    3. 整える=“全部を変える”のではなく、“活かせる状態に戻す”こと
  5. まとめ|「安く買う」より「整えて活かす」が本当のコストコントロール
    1. コストを下げるカギは、壊さない・読み直す・活かす
    2. 整えられる空き家は、「安く」ではなく「豊かに」暮らせる
    3. 「整える前提」で見ると、空き家は未来に開かれてくる
    4. ▶ 空き家は安さで選ばない。整えられるかで選ぼう。

第1章|「空き家は安いからお得」は本当か?──表面的な価格に潜む落とし穴

「空き家って安く買えるんですよね?」
初回相談で必ずといっていいほど出てくる言葉です。

確かに、不動産ポータルサイトで検索すれば、
数百万円の空き家がたくさん出てきます。
中には「土地・建物込みで300万円以下」という物件も。

でも、その金額だけで“お得”と判断するのは、実はとても危うい。

本体価格だけを見ていると、思わぬ落とし穴にハマる

例えば、300万円の空き家を購入し、
あとからフルリノベ費用に1500万円がかかったとします。
合計で1800万円。ローコストかもしれませんが、果たして本当に“安く済んだ”のでしょうか?

  • 構造補強が必要だった
  • 雨漏り修繕に追加費用がかかった
  • 断熱・気密がほぼゼロからの再構築だった
  • 配管/電気/基礎にまで手を入れた

これらの費用は、物件価格が安ければ安いほど跳ね上がりやすい。
なぜなら「安い=状態が悪い」可能性が高いからです。

コストの正体は「壊す量」×「整える労力」

僕たちキノスミカでは、価格ではなく**“整えやすさ”を基準に家を見ています。**

  • 既存の構造や素材が活かせるか
  • 間取り変更が必要最小限で済むか
  • 床下や屋根裏の状態が健全か
  • 空気と断熱を整える“余白”があるか

この「壊す量」と「整える労力」が少なければ、
工事コストも工期も抑えることができます。

一見高く見える物件でも、“整えるだけで済む家”なら
最終的な総額は抑えられるんです。

「買う前にリノベ会社と一緒に見る」が最も合理的

ここがとても重要なのですが、
空き家は「買ってから相談」では遅すぎます。

  • 見えない不具合があっても気づけない
  • 壊すか活かせるかの判断ができない
  • 法規制(再建築不可など)を読み解けない
  • リノベ前提の資金計画が立てられない

だからこそ、物件選びの段階で、
設計者や施工者の視点を入れておくことが、“本当の意味で安く抑える”方法なんです。

第2章|費用を左右するのは“どこを壊し、何を残すか”という設計判断

リノベーションのコストを左右する最大の要因は、
実は「使う素材」でも「施工エリア」でもありません。
それは、**“壊す部分の量”と“活かせる部分の判断”**に尽きます。

解体範囲が広がると、予算も工期も雪だるま式に膨らむ

よくあるケースで、
「この壁を取ったら、構造補強が必要になって…」
「水回りを移動したら、床を全面開け直すことになって…」
というような想定外の工事追加が起きます。

つまり、壊す=費用増。

よくある“壊しすぎ”の例:

  • 下地まで全撤去した床材
  • 壁の配置を大きく変えた間取り変更
  • サッシすべて交換+開口部の再施工
  • 設備配管の引き直しにともなう土間はつり

これらは、計画の初期段階で**「残せる可能性」に目を向けていれば、回避できることも多い。**

整えながら残すことで、コストにも空気にも優しい設計になる

たとえば…

  • 床板を剥がさず、上から無垢フローリングを直張り
     → 解体費・処分費・手間が削減。床下通気も温存できる
  • 押入れや納戸を“余白”として再利用
     → 壁を壊さず、空間に変化をつくれる
  • 既存サッシに内窓だけを追加
     → 開口部断熱と遮音が一気に改善。外壁を壊さずに済む

こうしたアプローチは、「お金をかけて作る」から「整えて残す」へ価値観を切り替えることなんです。

解体前提ではなく、“読み直す設計”こそが賢さ

僕たちは現地調査のとき、
“何を壊すか”ではなく、“何を残せるか”から考えます。

  • この柱、構造的に意味がある?それとも抜ける?
  • この床、下地が健全ならそのまま使えない?
  • この壁、収納や飾り棚に再利用できない?
  • この天井、剥がさず断熱材を上から補える?

こうした「読み直す設計」ができると、家全体が“再編集可能な素材”に変わっていく
それが、リノベの醍醐味でもあるんです。

第3章|“素材に頼る”のではなく“空気を設計する”という本質的なコスト対策

リノベの現場でよくあるのが、
「せっかくなら自然素材で」「無垢材にこだわりたい」
といったご要望。

もちろん僕たちキノスミカでも、自然素材を重視しています。
でも、その前に**「空気の設計がなされているか」**がなにより重要です。

高級素材を使っても、“空気が滞る家”は快適じゃない

例えば、杉の無垢床、珪藻土の塗り壁、天然木の造作棚。
どれも素晴らしい素材ですが、空気が循環しない家では真価を発揮しません。

  • 結露で杉床が反ってしまう
  • 塗り壁にカビが浮く
  • 漆喰が吸いきれないほど湿気が溜まる

これでは、素材にお金をかけた意味が薄れてしまう。
だからこそ僕たちは、「素材を活かすための空気の流れ」をまず整えるんです。

空気が巡ることで、“素材が育つ家”になる

空気がゆっくりと流れ、呼吸できる環境では、
素材も経年変化によって美しく育っていきます。

  • 杉の床が艶を増し、傷が味になる
  • 漆喰がにおいや湿気を吸って“家のフィルター”になる
  • 木製建具の開閉音が、だんだん柔らかくなる

それは、素材が“呼吸している”証拠。
そして、その素材のポテンシャルを引き出しているのが、空気設計なんです。

コストを抑える=高い素材を減らす、ではない

「予算が限られているので、自然素材を減らします」
という声も多く聞きます。

でも、僕たちはこう答えます。
「素材は最小限でいい。そのぶん空気を整えましょう」と。

たとえば…

  • 一部屋だけ無垢材にして、残りは構造用合板でもよい
  • メイン空間にだけ漆喰を塗って、他は和紙や紙クロスでもよい
  • 天井は塗装のままでも、通気層と断熱が整っていれば快適

つまり、“空気が整っていれば、素材は引き立つ”
予算の中で最も賢い選択は、空気の道筋と素材の呼吸を両立させることです。

第4章|「整える視点」があると、予算配分も暮らしの質も変わる

空き家リノベでコストを抑えるうえで大切なのは、
「削る」でも「妥協する」でもありません。
それは、“整える視点”を持つこと。

この視点があると、限られた予算の中でも、
住まい全体のバランスがよくなるんです。

リノベの失敗例は「優先順位の迷子」

例えば…

  • お風呂を最新設備にしたのに、冬場は寒い
  • オープンキッチンにこだわったのに、においがこもる
  • 無垢の床を入れたのに、湿気で反ってしまった

これらの背景には、暮らし全体の設計より“個別スペック”を優先してしまったことがあります。

「整える視点」があると、コスト配分が戦略的になる

たとえば、こんな判断ができるようになります。

01. 優先すべきは「空気の入口と出口」

→ 窓の配置と換気設計は、間取り変更より先に検討

02. 外壁や屋根は“予防整備”でOK

→ 見た目より、雨仕舞いと通気層の健全性を優先

03. 設備は“暮らしのリズム”に合わせて最小限

→ 最新の給湯器より、断熱と気密を整える方が快適性に直結

04. デザインよりも「光と風の動線」

→ 空気が動けば、自然と住まいの表情も美しくなる

このように、“美しく整った暮らし”を起点に予算を組めると、
結果として満足度の高い家に仕上がります。

整える=“全部を変える”のではなく、“活かせる状態に戻す”こと

「整える」とは、何かを削ることでも、新しくすることでもありません。
“素材と空間の力をもう一度引き出す”行為です。

  • 湿気の抜け道を整える
  • 空気の流れを設計する
  • 素材が呼吸できる環境をつくる

これができれば、お金をかけずに“暮らしの質”を上げることができる。
リノベーションの価値とは、まさにそこにあると思っています。

まとめ|「安く買う」より「整えて活かす」が本当のコストコントロール

空き家はたしかに、購入価格だけを見れば「安い物件」が多いです。
でも本当に大切なのは、**その家が“整えられる家かどうか”**です。

コストを下げるカギは、壊さない・読み直す・活かす

僕たちが多くの現場で見てきたのは、
「壊すこと」が前提になると、あっという間にコストが跳ね上がるという現実です。

でも、“整える視点”で見ると、予算配分はまったく変わります。

  • 壁を抜くより、空気を抜く
  • 設備を増やすより、素材を活かす
  • 新しくするより、風を読み直す

そうすると、必要な場所にだけ予算を集中できるんです。

整えられる空き家は、「安く」ではなく「豊かに」暮らせる

単に“安い家”を買うのではなく、
“整えやすく、呼吸できる家”を選ぶことが、本当の意味で暮らしを豊かにする近道です。

そこにはこんな価値が生まれます:

  • 素材が育ち、家に愛着が湧く
  • 空気が巡り、深呼吸できる空間になる
  • 「直すべきこと」が明確なので不安が少ない
  • 設計に自由度があり、自分らしい暮らしが実現できる

「整える前提」で見ると、空き家は未来に開かれてくる

これからの時代、住宅選びの基準は「新しいか古いか」ではありません。
それは、“活かせるかどうか”

空き家には、時間の痕跡があり、余白があり、
設計次第でどこまでも深呼吸できる空間になります。

キノスミカでは、壊さずに活かし、
素材と空気の力で暮らしを整えるお手伝いをしています。

▶ 空き家は安さで選ばない。整えられるかで選ぼう。

壊すのではなく、活かす。
空気が通る家、素材が呼吸する家。
本当の意味でコストを抑える空き家リノベを、一緒に考えませんか?

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