京都の再建築不可物件でも快適に|空気と素材の引き算リノベ術

中古リノベ

はじめに|壊せないなら、整えるしかない

「再建築不可だから、選択肢がないんです」

そう言って肩を落とす方に、僕はいつも伝えます。
「ない」のではなく、やり方が変わるだけ。
とくに京都のような密集した市街地では、
再建築不可=終わりではなく、空気を整えて“始め直す”ための物件になる可能性を持っています。

小さな土地。古い構造。制限だらけの法規。
でも、だからこそ設計の力が発揮されるんです。


第1章|京都の“壊せない家”が抱える空気の問題

再建築不可物件は、法的には「建て替えできない家」です。
でも実際は、それ以前に「空気がこもる家」であることが多い。

  • 三方を囲まれた袋地で、風が抜けない
  • 通風を意識していない間取りで、空気が滞留
  • 窓が開けにくく、湿気が溜まりやすい
  • 床下が閉じられていて、空気が死んでいる

京都のまちには、そういう家がたくさんあります。
でもそれは、“建て替えできない家”というより、
**「空気のリデザインを待っている家」**なんです。


第2章|風が抜ける道を“引き算”でつくる

狭くて建て増せないなら、“削って整える”しかない。
僕たちがよくやるのは、**「風のための間引き」**です。

  • 床を一部スノコ状にし、床下に風の流れを生む
  • 天井を部分的に抜いて、縦の空気の逃げ道を確保
  • 壁に欄間や室内窓を設け、空気と気配を通す

広げられないなら、空気が回るように隙間をあける。
それだけで、家の中の「息苦しさ」がぐっと軽くなります。


第3章|素材で空気を整える“静かな処方箋”

壊せない家では、“何を加えるか”より“何を選ぶか”が重要です。
僕が好んで使うのは、空気と調和する素材たち。

  • 杉の床材: 軽くて柔らかく、音も湿気も吸ってくれる
  • 漆喰の壁: 呼吸して、においも湿気も調整する
  • 和紙クロス: 光を柔らかく通し、空気に静けさをもたらす

これらは、「足す」よりも**“引いていく”ことで空気を整える素材**。
複雑な構造に新しい設備を詰め込むのではなく、
空気が自然に巡るような“素の状態”を取り戻すイメージです。


第4章|断熱・気密は“空気を逃がさず、腐らせない”ためにある

古い家では、断熱や気密を諦めがちです。
でもむしろ、空気の質を保つためにこそ必要なんです。

● 床下には高性能グラスウール

→ 湿気を含んだ冷気を遮断しつつ、通気層で空気を逃がす設計

● 可変透湿気密シートのあと施工

→ 冬は気密、夏は湿気抜け。町家のような家でも呼吸を続けられる

断熱・気密というと“新築のための装備”のように聞こえますが、
実は「古い家でこそ、空気の質をコントロールするために不可欠」なんです。


まとめ|京都の小さな土地で、空気が深呼吸できる家を

再建築不可という言葉の重さに、最初は誰もが不安になります。
でも家は、“壊せないからこそ、丁寧に整えられる”ことがある。

空気が巡るように、光が届くように、音が静かに響くように。
そんな住まいの“内側の質”こそが、暮らしを変えるんです。

京都の密集地でも、空気が巡れば、深呼吸したくなる家はつくれる。
僕たちは、それを信じて設計しています。

▶ 壊せなくても、整えることはできる。

京都の再建築不可物件でも、空気を設計し、素材を選び直せば、暮らしの質は大きく変わります。
住み継ぐという選択に、設計の力を。

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