1. 家づくりを考えたときに見落としがちな「空気」のこと
間取り、デザイン、価格、立地。家づくりを考えるとき、多くの人がそこを気にします。もちろん大事です。僕もそうでした。
でも、もうひとつ大事なものがあると、僕は思っています。それは、家の中の「空気」です。
目に見えないし、測れない。けれど確かに体に入り、心に影響を与えるもの。
僕が自然素材を使う理由のひとつは、この“空気の質”が、住む人の健康に直結していると感じているからです。
2. 僕が自然素材を選ぶ理由|家族の健康と素材の関係
正直、僕も最初は「自然素材=いいもの」くらいの感覚でした。でも、現場に立って、引き渡し後のお宅に何度も足を運んで、変わったんです。
「あの家、なんか落ち着くね」「子どもの咳が減った気がするんです」 そんな声を、自然素材の家からよく聞くようになった。
一方で、新築なのに空気が重い、頭が痛くなる気がするっていう話も、化学建材を多用した家からはよく聞きました。
「たかが素材、されど素材」 僕にとっては、それが自然素材との出会いでした。
3. 化学建材が与える身体への影響とは?
VOC(揮発性有機化合物)とシックハウス症候群
多くの建材には、接着剤や塗料、防腐剤が使われています。その中に含まれるのが「VOC(揮発性有機化合物)」です。
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン……こういった成分は、時間が経っても少しずつ室内に揮発し続け、頭痛、めまい、肌荒れ、喘息などの症状を引き起こすことがあります。
これが「シックハウス症候群」と呼ばれるものです。
換気だけじゃ不十分な理由
もちろん現代の家は「24時間換気」が義務付けられています。でも、それで全部解決するわけじゃありません。
“出さない”ことの方が大事。空気を汚すものを使わない。それが僕の基本姿勢です。
性能が整っていてこそ、自然素材は活きる
ただし、自然素材を使えばそれだけで健康に暮らせるかというと、そういうわけではありません。
僕が設計するうえで大切にしているのは、「素材だけでなく、家そのものの性能も整っていること」です。
たとえば、断熱性能が低ければ、いくら杉や漆喰を使っても、結露やカビは防げません。 また、気密が甘いと、外から花粉やPM2.5が入り込みやすくなることもあります。
自然素材の良さを最大限に発揮するためには、家の基本性能が整っていることが大前提です。 僕はその両方をしっかり設計することで、「空気まで設計された家」を目指しています。
4. 自然素材がもたらす5つの健康効果
1. 空気の質が違う
杉や桧、漆喰や珪藻土。自然素材の家に入った瞬間に感じる、空気の軽さ、澄み方は、施工している僕たちでも毎回驚きます。
実際、「空気環境がいい家は、体調を崩しにくい」という研究も出ています。
2. 湿度を調整してカビを抑える
自然素材は、湿気を吸って吐く。だから、結露が起きにくく、カビも出にくい。これは、喘息やアレルギーの原因を取り除く上でも、とても大事な性能です。
3. 香りが心を整える
桧や杉の香りは、「フィトンチッド」と呼ばれる成分を含み、副交感神経を刺激してリラックス効果をもたらすと言われています。
「なんか家にいると落ち着く」 それって、香りの力かもしれません。
4. 静電気を発生させにくい
ビニールクロスや合成フローリングと違って、自然素材は静電気を起こしにくいです。 これが何を意味するかというと、ホコリが溜まりにくい。つまり、掃除が楽で、空気がきれいな状態を保ちやすいということ。
5. 安心して素足で過ごせる
無垢材の床は熱伝導率が低く、冬でも冷たく感じにくい。さらに、接着剤などが入っていないので、子どもが直接触れても安心です。
僕がもし子育て中だったら、迷わず無垢の床を選びます。
5. 実際に住んでいるご家族の声
あるご家族は、引っ越してすぐに「長女のアトピーが軽くなった気がする」と言っていました。
また別のお宅では、「マンション時代よりも空気清浄機の使用頻度が減った」「ペットのにおいが気にならなくなった」そんな変化を感じているそうです。
僕は医者ではないし、因果関係を断言できるわけじゃない。でも、こういう声が集まってくること自体が、自然素材の力の証明なんじゃないかって、思っています。
6. 僕が思う、素材選びで後悔しないための考え方
人によって価値観は違う。デザイン、価格、性能、立地——どれも大切です。
でも、「素材」は後から変えられない部分です。見た目や表面の話じゃなくて、その家の空気や、身体に触れる部分すべてに関わってくる。
僕は、「いい家かどうか」を決めるのは、住んで3年後、10年後の家族の顔だと思っています。
自然素材は、決して完璧じゃありません。手もかかるし、癖もある。 でも、その分だけ、暮らしの中で味わえる“安心”と“心地よさ”は、他にはないものです。
「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思うことほど、僕は聞いてほしいと思っています。
▶ 経年変化のある家、見てみませんか?
経年変化の美しさって、写真じゃ伝わらないんですよね。
僕たちが建てた家の中には、「完成したときより、5年後のほうが好き」って言ってもらえる家がたくさんあります。
素材が育ったあと、家がどんなふうに味わい深くなるのか。
まずは実際の事例を、見て感じてみてください。
「自然素材に惹かれるけど、うちの暮らしに合うのかな?」
「汚れや傷が気になる性格なんだけど、大丈夫かな?」
僕は、そんな“まだ決めきれない段階の不安”こそ聞いてほしいと思っています。
正直なところ、向き不向きはあります。でも、それを一緒に考えるところから、家づくりって始まるんです。