消防設備点検が終わり、点検結果報告書を見ると「不良」や「×」が記載されている。
建物や施設を管理する担当者にとって、本当に判断が必要になるのはここからです。
何を直せばいいのか。
どこまで工事すればいいのか。
いつまでに改修する必要があるのか。
点検をした会社へ、そのまま修理を依頼すればいいのか。
見積では何を確認すればいいのか。
消防設備点検で不良が見つかったからといって、点検で指摘された機器だけを交換すれば工事が完了するとは限りません。
点検結果報告書は、不良がある設備や場所を把握するための出発点です。
実際の改修工事では、不良設備だけでなく、既設機器、配線・配管、天井や壁、作業スペース、他設備との取り合い、設備を停止できる時間、工事後の復旧などを確認しなければ、工事範囲を決められないことがあります。
この記事では、消防設備点検で「不良」が出たあと、施設管理・建物管理の担当者が何を確認し、どのように改修工事へ進めればよいのかを整理します。
消防設備点検で「不良」が出たら、まず何をする?
最初に全体の流れを整理しておきます。
点検結果報告書を確認する
↓
不良になっている設備・場所・内容を確認する
↓
現地で既設設備と施工条件を確認する
↓
実際の改修範囲を決める
↓
設備停止や工事工程を決める
↓
見積を確認する
↓
改修工事を行う
↓
試験・確認・必要な記録を行う
消防庁では、消防用設備等点検結果報告書だけでなく、点検結果総括表や設備ごとの点検票の様式を定めています。屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備などについても、それぞれ点検基準や点検票が用意されています。
つまり、「不良あり」という結果だけを見るのではなく、
どの設備の、どの場所の、何が不良なのか
を確認するところから始めます。

まず点検結果報告書のどこを見るのか
点検結果報告書を受け取っても、担当者自身が消防設備に関するすべての専門用語を理解する必要はありません。
最初に確認したいのは、大きく3つです。
どの消防設備に不良があるのか
まず、どの設備で不良が出ているのかを確認します。
自動火災報知設備なのか、スプリンクラー設備なのか、屋内消火栓設備なのか、誘導灯なのか。
建物によっては、複数の消防設備に不良が記載されていることもあります。
この段階では、まだ「どう直すか」まで決める必要はありません。
まずは対象となる設備を整理します。
どの場所の、何が不良なのか
次に設備ごとの点検票を確認します。
例えば同じ自動火災報知設備でも、感知器の不良と、受信機や回路に関係する不良では、確認する内容も工事方法も変わります。
同じ建物の中で複数箇所に指摘がある場合は、
「何階の、どの場所の、どの設備なのか」
まで整理しておくと、その後の現地調査や見積が進めやすくなります。
すでに措置されているのか、これから改修するのか
点検時にその場で対応できたものと、別途改修工事が必要なものも分けて考えます。
京都市消防局では、点検結果に不良箇所があった場合について、不良箇所を早急に改修し、改修計画を立てて備考欄に改修時期を記載するよう案内しています。
したがって、報告書を受け取ったら、
「不良だった」という事実だけではなく、その不良が現在どの状態にあるのか
まで確認することが重要です。
点検で指摘された「不良箇所」と、実際の「工事範囲」は同じとは限らない
ここが消防設備改修を考えるうえで最も重要なポイントです。
点検結果報告書では、
どこに問題があるのか
が示されます。
一方、実際の工事では、
その問題をどう施工して直すのか
まで決めなければなりません。
この2つは必ずしも同じではありません。
例えば点検結果に、
「3階廊下・感知器1台不良」
と記載されていたとします。
点検上の不良箇所は感知器1台です。
しかし、実際に交換工事を行うのであれば、既設機器の種類や接続条件、配線、設置高さ、天井の状態、作業スペース、高所作業の必要性なども確認します。
場合によっては、天井を触ったあとに仕上げの復旧が必要になることもあります。
スプリンクラー設備でも同じです。
点検で指摘された部分だけを見れば小さな改修に見えても、実際の施工では接続している配管、周囲の設備、停止・排水方法、天井内の作業スペース、工事後の復旧などが施工条件になります。
つまり、
点検で見つかった不良箇所=そのまま工事範囲
ではありません。
重要なのは、
その不良を直すために、何を確認し、どこまで施工する必要があるのか
を現場ごとに整理することです。

消防設備改修の現地調査では何を確認するのか
点検結果報告書から実際の改修工事へ進むには、現地の施工条件を確認します。
ここで見るのは、不良になった消防設備だけではありません。
まず、報告書に記載されている設備と現物を照合します。
メーカーや既設機器、設置状態、周囲の状況などを見ながら、何を交換・改修する必要があるのかを確認します。
次に見るのが、既設の配線や配管です。
消防設備は機器単体で成立しているわけではありません。既設設備へ接続されているため、機器交換だけに見える工事でも、配線や配管の状態によって施工方法が変わることがあります。
さらに、既存建物では建築側の条件も重要です。
例えば天井内へどう入るのか。点検口があるのか。壁や天井を開口する必要があるのか。高所作業になるのか。施工後にどこまで復旧するのか。
消防設備そのものだけを見て工事範囲を決めると、着工後に建築付帯工事が必要になることがあります。
また、天井内には消防設備だけが通っているわけではありません。
空調ダクト、空調配管、電気配線、給排水配管など、さまざまな設備が納まっています。
図面上では施工できそうでも、現地を見ると他設備と干渉していることもあります。
そのため、
「どこを直すか」だけではなく、「そこへどうやって施工するか」
まで確認します。
設備を止められる時間も、工事範囲を決める条件になる
消防設備や関連する配管を停止する必要がある工事では、
いつ、どの範囲を、どの程度の時間止められるのか
も重要な施工条件です。
例えば、営業中のテナントビルと、休日に設備を停止できる工場では、同じ内容の改修でも工程の組み方が変わります。
日中に施工できるのか。
営業時間終了後なのか。
休日工事にする必要があるのか。
工場であれば、生産設備の停止日や定期修繕に合わせる必要があるのか。
設備を交換できる技術があっても、その建物を運用しながら施工できなければ、実際の工事として成立しません。
そのため現地調査では、設備そのものだけでなく、
建物をどう使っているのか
まで確認する必要があります。
消防設備によって現地で確認する内容は変わる
例えば自動火災報知設備であれば、対象機器だけでなく、既設機器、配線、受信機との関係、設置位置、天井条件などを確認します。
スプリンクラー設備では、対象箇所に加えて接続配管、周囲設備、停止・排水方法、作業スペース、天井復旧などが確認対象になります。
屋内消火栓設備なら、指摘された部位だけでなく、配管系統やバルブ、停止範囲、既設設備との接続条件などが施工に影響することがあります。
誘導灯でも、単純な器具交換だけではなく、電源、設置位置、周囲のレイアウト、壁や天井の仕上げなどを確認する場合があります。
施設管理担当者自身が、これらをすべて技術的に判断する必要はありません。
発注側として重要なのは、
点検で不良になった設備だけではなく、実際に施工するための条件まで確認されているか
を見ることです。
不良箇所はいつまでに改修すればいい?
消防設備点検で不良が出たとき、
「何日以内に直さなければならないのか」
という疑問も出てきます。
ここは、不良が見つかったすべてのケースを全国一律の「○日以内」という数字だけで判断しない方がよい部分です。
京都市消防局は、点検結果に不良箇所があった場合、不良箇所を早急に改修する必要があると案内し、改修計画を立てて改修時期を記載するよう求めています。
したがって実務では、
不良内容がどのようなものなのか。
防火安全上どのような影響があるのか。
所轄消防署から別途指導を受けていないか。
査察結果通知書など、別の書類が届いていないか。
どのような改修計画を立てるのか。
といった条件を確認して進めます。
「一律の期限までは放置してよい」と考えるのではなく、
不良内容を確認した時点で、改修方法と実施時期を決めていく
ことが重要です。
消防署から査察結果通知書などが届いている場合は別に考える
消防設備点検で不良が見つかった場合と、消防署による立入検査で指摘を受けた場合は、分けて整理する必要があります。
点検結果報告書は、定期的に実施した消防用設備等の点検結果を報告するものです。
一方、消防署による立入検査等で指摘を受け、査察結果通知書や是正に関する書類が届いている場合には、その通知内容や提出期限などを確認して対応する必要があります。
そのため、手元に消防署からの通知書がある場合は、
点検結果報告書だけを見て改修計画を決めない
ことが重要です。
通知書の内容と所轄消防署からの指示を確認したうえで、是正内容と工事工程を組み立てます。
このケースについては、別記事の
「消防署から査察結果通知書が届いたら|是正計画から改修工事までの進め方」
で詳しく解説します。
見積を依頼する前に、資料を整理しておく
改修業者へ相談する際は、現時点で手元にある資料をまとめておくと、現地調査で確認する内容を整理しやすくなります。
準備できるものとしては、消防用設備等点検結果報告書、不良設備が分かる点検票、不良箇所の写真、消防設備図や系統図、過去の修繕・改修記録、建物やテナントの稼働時間、工事可能時間、設備を停止できる時間、消防署から通知書等を受け取っている場合はその書類などがあります。
すべてがそろっていなくても、現地調査はできます。
既存建物では図面が残っていなかったり、現在の設備と竣工当時の図面が一致していなかったりすることもあります。
その場合は現場を確認しながら、必要な情報を整理していきます。
消防設備改修の見積は「総額」だけで比較しない
複数の施工会社から見積を取得したとします。
A社が80万円。
B社が100万円。
金額だけを見ればA社の方が安く見えます。
しかし、A社は消防設備の機器交換だけで、B社には配線・配管、高所作業、天井開口、試験、復旧などが含まれているかもしれません。
この状態では、同じ工事を比較していることになりません。
消防設備改修の見積で重要なのは、
金額を比較する前に、工事範囲をそろえること
です。
改修対象となる設備と数量。
機器や材料。
施工費。
高所作業などの仮設。
配線・配管。
建築付帯工事。
試験や動作確認。
廃材処分。
天井や壁などの復旧。
必要となる申請・届出等。
こうした内容のうち、何が見積に含まれ、何が含まれていないのかを確認します。
「一式」という金額だけを比較するのではなく、
その金額で、どこまで工事が完了するのか
を見ることが大切です。
なお、消防設備の工事内容によっては申請・届出等が必要になる場合があります。京都市でも、消防用設備等の工事等に関する各種申請・届出を受け付けています。
改修工事は「交換する物」だけでなく「施工方法」を決める
既存建物の工事は、交換する機器が決まれば終わりではありません。
同じ消防設備の改修でも、建物、設置場所、既設設備、配管・配線、天井内の状況、営業時間、操業条件によって施工方法は変わります。
そこでHAGANEでは、
現場を動かす前に、施工方法を決める。
ことを基本にしています。
まず既設条件を確認する。
次に工事範囲を決める。
施工方法を検討する。
他設備との干渉を確認する。
必要な設備停止と工程を決める。
そのうえで施工を行い、試験・確認をして、最後に必要な部分を復旧する。
消防設備だけを見るのではなく、
既設設備、配管・配線、建築、工程、他工種との取り合い、復旧までを一つの現場として考える
ということです。
これによって、着工してから施工方法を考えるのではなく、できる限り工事前に条件を整理できます。

消防設備点検で「不良」が出たら、工事を発注する前に整理する
消防設備点検で不良が見つかったとき、最初から担当者自身が工事方法まで決める必要はありません。
ただし、
「点検で×が付いていたので交換してください」
だけで発注すると、本来必要な工事範囲と見積内容がずれる可能性があります。
まず点検結果報告書から、不良になっている設備、場所、不良内容を確認します。
次に現地で既設設備と施工条件を確認します。
そして、
何を直すのか。
どこまで工事するのか。
どう施工するのか。
いつ施工するのか。
何を止めるのか。
どこまで復旧するのか。
を整理します。
そこまで決まれば、初めて見積の内容を正しく比較しやすくなります。
消防設備点検で重要なのは、
不良を見つけることだけではありません。
点検で見つかった不良を、実際に安全に施工できる改修計画へ変えていくことです。
消防設備点検で「不良」が出た方へ
点検結果報告書は、不良になっている消防設備を把握するための重要な資料です。
ただし、報告書だけでは実際の工事範囲まで判断できない場合があります。
HAGANEでは、不良になった設備だけを見るのではなく、既設設備、配管・配線、建築条件、設備停止、他工種との取り合い、施工工程、試験、復旧まで確認し、一つの現場として改修方法を検討します。
点検結果報告書や不良箇所が分かる資料がある場合は、現地調査時の判断材料になります。