「高気密の家って、なんとなく息苦しくないですか?」
「機密性が高いと空気がこもって、体に悪そうな気がする」
「24時間換気がついてるけど、効いてる気がしない」
こうした声を、僕はこれまで何度も耳にしてきました。
実際、「高性能住宅に住んでから不調を感じるようになった」というケースも少なくありません。
でも、その原因は気密性そのものではないんです。
問題は、空気が“通る道”が整っていないこと。
今日は、「高気密=息苦しい」の誤解を解きながら、
快適な空気を生み出すために大切な“通り道の設計”についてお話しします。
気密が高い=空気がこもる、は誤解
まず整理しておきたいのが、「高気密=こもる空気」という思い込み。
気密性能が高い家は、“隙間から空気が漏れない構造”になっています。
これは本来、外気の影響を受けにくく、計画換気がしっかり効くための土台です。
つまり、本来の高気密住宅は──
- 外からのホコリや花粉が入りにくい
- 冷暖房効率が高く、省エネ
- 換気量がコントロールできるため、空気が澄む
という“呼吸しやすい家”であるはずなんです。
では、なぜ「息苦しい」と感じる家があるのか?
僕が見てきた「空気の通り道がない家」
原因のほとんどは、空気の流れが設計されていないことにあります。
- 吸気口のフィルターが目詰まりしている
- 換気の排気口が浴室とトイレに偏っている
- 室内のドア下にスリットがない(空気が部屋を通れない)
- 家の中に“空気の出口”がない
これでは、せっかくの高気密もただの“閉じた箱”になってしまいます。
僕が設計で一番重視しているのは、
「この空気は、どこから入り、どこを通って、どこに抜けるか?」
という“空気の旅路”を描くことです。
空気の通り道を整える3つの視点
① 空気は“対角線”で動く
基本的に、空気は“入ったら出る”のが原則。
そのためには、吸気と排気が対角線上にあることが理想です。
たとえば──
- 北側に吸気口、南側のリビング奥に排気ファン
- 子ども部屋のドア下にスリットを入れてリビングの空気が流れる設計
- 廊下・階段を通して空気の道をつなげる
こうした“ルート設計”があると、空気は家全体を巡りはじめます。
② 機械換気に任せきらない「動線設計」
24時間換気の装置に頼り切るのではなく、建物全体に“空気の動線”を作ることが大切です。
- 家族がよく通る廊下が“空気の動脈”になるよう設計
- 窓を開けたとき、2点以上で風が抜ける通風ライン
- キッチンの換気扇や浴室ファンを活かした“動く空気”の仕組み
僕の設計では、家族の暮らしの“動線”と空気の“流れ”を重ねるようにしています。
③ 空気を“感じる”工夫も設計に入れる
空気は見えません。でも、感じることはできます。
- リビングに立ったとき、どこかの窓からわずかに風が流れてくる
- サーキュレーターの風が天井をなでて、空気が動いていると感じられる
- トイレや玄関で“こもり感”がない
そうした“小さな感覚”が、
「この家、なんか空気がいいね」
につながっていくのです。
僕が考える「空気をデザインする家」
空気の流れを設計するというのは、単に設備を増やすことではありません。
- 家の中心に吹き抜けをつくる
- 動線を風と重ねる
- 空気が1周して戻ってくる循環設計をする
空気が“動いている”家は、健康で、快適で、空気が澄んでいる。
そしてそれは、住む人にとって“理由のない心地よさ”として伝わる。
僕は、そんな家を「深呼吸したくなる家」と呼んでいます。
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