音を吸わずに、反射を整える。
小さな部屋のための、
反射制御型アコースティックモジュール。
KAIROSは、6畳〜10畳のリスニングルーム、ニアフィールド環境、
自宅スタジオのために設計された音響モジュールです。
吸音材のように音を吸って部屋をデッドにするのではなく、近い壁から早く戻ってくる初期反射のピーク集中をやわらげ、反射の戻り方を時間方向に整えることを目的としています。
音像、奥行き、壁に張りつくような反射感、長時間聴いたときの疲れやすさに向き合うためのプロダクトです。
※PHANTOMとKAIROSは特許及び意匠登録申請中です。

小空間向けの反射制御モジュールです。
KAIROSは、部屋ごとに測定・設計・製作・施工までを行う個別設計システムです。
一方、PHANTOMは、その思想を標準化し、リスニングルームや個人スタジオに導入しやすいモジュールとして設計されています。
Acoustic Principle / 何を整えているのか

小さな部屋では、反射が“近すぎ、束になって早い時間”で戻ってくる。
リスニングルームの音は、スピーカーから耳へ届く直接音だけで決まりません。
壁、天井、床、机、背面から戻ってくる反射音も、音像や奥行き、聴き疲れに大きく関わります。
特に小さな部屋では、壁までの距離が近いため、反射音が直接音のすぐ後に戻ってきます。
この反射が強く集中すると、音の輪郭がにじみ、奥行きが浅くなり、音が耳元に張りつくように感じられることがあります。
KSAIROSは、この近すぎる反射を完全に消すのではなく、ピークが一点に集中しすぎないように整えるためのモジュールです。
Measurement / 測定で確認したこと
初期反射のピーク集中が、どのように変わるかを見る
KAIROSは、音を吸うための吸音パネルではありません。
そのため、測定でも「どれだけ音量が下がったか」だけを見るのではなく、初期反射がどのような時間構造で戻ってくるかを確認しています。
DIVERでは、KAIROSの設置前後でREWによるインパルス応答測定を行い、同じ部屋・同じ条件で、KAIROSなし / KAIROSありの反射挙動を比較しました。
検証では、近い壁や背面から戻ってくる初期反射が、短い時間に鋭く集中しているか、それとも時間方向に分散しているかを確認しています。
測定条件
測定は、小さな家具入りの部屋で行いました。
部屋の大きさは約W3.5m × L4.8m × H2.4mです。
測定ソフトにはREW、測定マイクにはminiDSP UMIK-1を使用しました。
KAIROSなし / KAIROSありを同一条件で比較し、フィルター処理したインパルス応答の重ね合わせから、初期反射の変化を確認しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 測定ソフト | REW |
| 測定マイク | miniDSP UMIK-1 |
| 部屋寸法 | 約3.5m × 4.8m × 2.4m |
| 部屋条件 | 家具入りの小空間 |
| 比較条件 | PHANTOMなし / PHANTOMあり |
| 測定方式 | フィルター処理したインパルス応答の比較 |
| 主な確認レンジ | 300〜5000Hz |
| 補助確認レンジ | 1000〜5000Hz |
| 測定日 | 2026年4月24日 |
なぜ300〜5000Hzを見るのか
KAIROSは、主に小空間の初期反射を扱うためのモジュールです。
300〜5000HzをKAIROSの主な反射制御レンジとして扱っています。
300Hz以下の変化が見える場合もありますが、低域は部屋の寸法、定在波、設置位置、スピーカー位置の影響を強く受けます。
そのため、KAIROSの主な説明レンジとしては300〜5000Hzを中心に扱います。
また、1000〜5000Hzの表示は、初期反射のピーク集中の変化を視覚的に確認しやすいため、補助的な確認レンジとして掲載しています。

KAIROSの測定で重要なのは、単純な音量差ではありません。
見るべきポイントは、初期反射がどれだけ鋭いピークとして集中しているかです。
その指標のひとつとして、ここでは尖度を使っています。
尖度は、測定した時間窓の中で、反射がどれだけ鋭く一点に集中しているかを見るための指標です。
高いほど、特定の時間に鋭いピークが立っている状態を示します。
低い場合、その時間窓内でピーク集中がやわらいでいる可能性があります。
つまり、ここで見ているのは、
反射が小さくなったかだけではなく、
反射の戻り方が鋭く集中しているか、時間方向に分散しているかです。
測定結果
KAIROSの設置前後で、1000〜5000Hzにフィルター処理したインパルス応答を比較しました。
この表では、各時間窓におけるエネルギー量、最大振幅、尖度、ピーク数を比較しています。
ここで重要なのは、単純に数値が小さくなることではありません。
KAIROSは吸音材ではないため、反射エネルギーを一律に減らすことを目的としていません。
見るべきポイントは、初期反射が鋭いピークとして集中しているか、それとも時間方向に分散しているかです。
測定指標の意味
| 指標 | 見ていること | 読み方 |
|---|---|---|
| Energy | 各時間窓内の反射エネルギー量 | 高いほど、その時間窓に含まれる反射成分が大きい |
| Kurtosis / 尖度 | ピーク集中の鋭さ | 高いほど、特定時間に鋭く集中している |
| Peaks | 検出されたピーク数 | 多いほど、反射成分が細かく分かれている可能性がある |
検証結果
| 時間窓 | Energy Kあり | Energy Kなし | 差 | 尖度 Kあり | 尖度 K なし | 差 | Peaks Kあり | Peaks Kなし | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0–15ms | 7.7652 | 6.7089 | -13.60% | 38.2758 | 49.7801 | +30.06% | 17 | 15 | -11.76% |
| 1–15ms | 2.5253 | 1.4739 | -41.64% | 23.2582 | 24.3302 | +4.61% | 49 | 54 | +10.20% |
| 1–20ms | 2.5814 | 1.5490 | -39.99% | 29.8802 | 29.5251 | -1.19% | 49 | 59 | +20.41% |
| 2–5ms | 1.8735 | 0.8080 | -56.87% | 6.6636 | 11.1319 | +67.06% | 14 | 14 | 0.00% |
| 6–9ms | 0.2266 | 0.2957 | +30.53% | 2.6198 | 4.6463 | +77.35% | 19 | 24 | +26.32% |
| 7–9ms | 0.1596 | 0.2014 | +26.19% | 2.6301 | 4.5375 | +72.52% | 15 | 17 | +13.33% |
| 20–30ms | 0.2226 | 0.2768 | +24.37% | 4.7334 | 4.5235 | -4.44% | 71 | 69 | -2.82% |
※差分は「KAIROSあり →KAIROSなし」の変化率です。
プラスはKAIROSなしの方が高いこと、マイナスはKAIROSなしの方が低いことを示します。
この表から分かるのは、KAIROSが反射を一律に小さくしているわけではない、ということです。
たとえば、2–5msの時間窓では、KAIROSありの方がEnergyは大きく出ています。
一方で、尖度はKAIROSなしの方が約67%高くなっています。
これは、KAIROSなしの状態では、反射成分がより鋭いピークとして集中していた可能性を示します。
KAIROSありでは、同じ時間窓の中で反射のエネルギーが残りながらも、ピークの鋭さがやわらいでいると読むことができます。
つまり、ここで見えているのは、吸音による単純な減衰ではなく、反射の時間構造の変化です。
特に重要な時間窓
2–5ms
2–5msでは、KAIROSありの方がEnergyは高く出ています。
しかし、尖度はKAIROSなしの方が大きく、KAIROSなしでは反射がより鋭く集中している傾向が見られます。
| 指標 | KAIROSあり | KAIROSなし | 読み取り |
|---|---|---|---|
| Energy | 1.8735 | 0.8080 | ありの方が高い |
| 尖度 | 6.6636 | 11.1319 | なしの方が約67%高い |
| Peaks | 14 | 14 | ピーク数は同じ |
この時間窓では、KAIROSが反射を単純に減らしているとは言えません。
むしろ、反射エネルギーを残しながら、鋭いピーク集中をやわらげている可能性があります。
6–9ms
6–9msでは、KAIROSなしの方がEnergy、尖度、ピーク数のすべてで高い値を示しています。
| KAIROSあり | KAIROSなし | 読み取り |
|---|---|---|
| 0.2266 | 0.2957 | なしの方が約31%高い |
| 0.1042 | 0.1304 | なしの方が約25%高い |
| 2.6198 | 4.6463 | なしの方が約77%高い |
| 19 | 24 | なしの方が多い |
この時間窓では、KAIROSなしの状態で、より強く、より鋭い初期反射ピークが残っていると読めます。
KAIROSありでは、反射エネルギー、尖度がいずれも低くなっており、初期反射のピーク集中がやわらいでいる傾向が見られます。
7–9ms
7–9msでも、6–9msと同じ傾向が見られます。
| KAIROSあり | KAIROSなし | 読み取り |
|---|---|---|
| 0.1596 | 0.2014 | なしの方が約26%高い |
| 0.1042 | 0.1304 | なしの方が約25%高い |
| 2.6301 | 4.5375 | なしの方が約73%高い |
| 15 | 17 | なしの方が多い |
この結果は、7–9ms付近の初期反射において、KAIROSなしではピーク集中が強く残り、KAIROSありではその集中がやわらぐ傾向を示しています。
測定セクションまとめ
測定結果では、KAIROSあり / なしの比較において、初期反射の時間窓ごとに異なる変化が確認されました。
特に6–9ms、7–9msの時間窓では、KAIROSなしの方がEnergy、尖度、Peaksのすべてで高い値を示しました。これは、KAIROSなしの状態では、この時間帯により強く、鋭い反射ピークが残っていたことを示しています。
一方、2–5msではKAIROSありの方がEnergyは高くなっていますが、尖度はKAIROSなしの方が大きく上がっています。これは、KAIROS反射を単純に吸音して減らすのではなく、音のエネルギーを無くさずに、反射の鋭さを細かく砕いていることが予想されます。
DIVERでは、この変化を、反射エネルギーの単純な減衰ではなく、初期反射の時間方向への再配分として捉えています。

注意事項
この測定結果は、今回の検証環境における結果です。
すべての部屋で同じ数値変化を保証するものではありません。
KAIROSの効果は、部屋の寸法、スピーカー位置、リスニング位置、家具、壁面条件、設置位置によって変わります。
Product Details / 製品仕様
建築的な存在感を持つ、手仕事の音響モジュール。
KAIROSは、大量生産の装飾パネルではありません。
DIVERの小空間音響研究をもとに、京都で一つずつ製作する受注生産の音響プロダクトです。
音響的な目的を持ちながら、空間の中で家具や建築部材のように自然に存在すること。
そのために、形状、陰影、素材感、壁面での佇まいまで含めて設計しています。




仕様表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | KAIROS |
| カテゴリー | 初期反射制御型アコースティックモジュール |
| 原理 | 反射制御構造 |
| 吸音層 | なし |
| 主な用途 | 一次反射点 / リスニング位置後方 /スピーカー間/ 6畳-10畳のリスニングルーム、個人スタジオ、音響を必要とする部屋 |
| 主な対象レンジ | 約300〜5000Hz |
| サイズ | W450mm× H450mm × D90mm〜 |
| 重量 | 約5kg |
| 素材 | 構造用合板 / シナ合板など(特別素材になるので価格はご相談ください) |
| 標準仕上げ | 無塗装 / ナチュラル合板 |
| オプション仕上げ | クリア水性ニス / ウォルナット色 / チーク色 / ブラック/ オイルフィニッシュ(ウォルナット色) |
| 設置方法 | 壁掛け |
| 製作場所 | 京都市 |
| 販売形態 | 受注生産 |
| 納期 | 約1か月程度 |
| 価格 | お問合せください |
| オプション仕上げ | 別途見積 |
Material Character / 素材について
素材の表情も、音響性能の一部として考えています。
KAIROSは、構造用合板、シナ合板、またはそれに準じる音響的・構造的に適した合板を用いて製作します。
標準仕様には、構造用合板を使用しています。
KAIROSは、音響モジュールであると同時に、空間に置かれる建築的なプロダクトです。
標準仕様では、積層の表情や木目の個体差を持つ構造用合板を採用しています。
均一に整った家具材とは異なり、構造用合板にはラフさ、強さ、素材そのものの表情があります。
その建築的な存在感も、KAIROSのデザインを構成する要素のひとつです。
木材は一枚ごとに表情が異なります。
木目、積層の見え方、密度、色味、表面の状態には個体差があります。



11. Finish Options / 仕上げ
部屋の雰囲気に合わせて、仕上げを選べます。
KAIROSは、標準では無塗装での提供です。
必要に応じて、追加費用にて仕上げを選ぶことができます。
クリア水性ニス
合板の自然な色味と積層の表情を残した、素直な仕上げです。
ウォルナット色
落ち着いた濃色の仕上げです。クラシックなオーディオルームや、暗めの家具と相性が良い色味です。
チーク色
中間的で温かみのある仕上げです。家具のような柔らかい存在感を持たせたい場合に向いています。
ブラック
スタジオ、シアタールーム、機材の多い部屋など、視覚的な存在感を抑えたい空間に向いています。
オイルフィニッシュ(ウォールナット)
オイルフィニッシュ特有の艶のある仕上がりになります。落ち着いた雰囲気をもたらしてくれます。


左からクリア・ウォルナット・チーム・オイルフィニッシュ・ブラック
注意書き
ウォルナット、チークは色名であり、無垢のウォルナット材・チーク材を使用するという意味ではありません。
KAIROSは合板を用いた手仕事の製品です。
木目、積層、色味、仕上がりには個体差があります。
