自然素材の家=湿気に強い?|木の家に潜む“見えないリスク”
「自然素材の家なら、空気がきれいでカビなんて出ない」
「無垢材を使えば、湿気に強くて安心なんでしょう?」
そう思っている方は、とても多いです。
でも、木の性質を知り、京都で数多くの自然素材の家を設計・施工してきた僕から言わせてもらうと──
「自然素材の家こそ、湿気対策を真剣に考えるべき」です。
自然素材の家は本当に“湿気に強い”のか?
たしかに、無垢材や珪藻土、漆喰といった自然素材には調湿効果があります。
空気が湿っていれば水分を吸い、乾燥していれば放出する。いわば「呼吸する素材」です。
でも、これは素材の表面で起きているだけの話。
たとえば、洗濯物を室内に干した日。
空気がよどみ、風が流れない家では、どんなに調湿性のある素材を使っても部屋全体の湿度は下がりません。
結果、壁の中や家具の裏、天井の角などに湿気がたまり、
カビや結露が発生してしまうこともあるんです。
京都の気候は、湿気と冷えのダブルパンチ
京都は、夏は蒸し暑く、冬は底冷えするという独特の気候です。
この「高湿度」と「低温」が重なると、室内で結露が発生しやすくなります。
たとえば、冬の朝に窓ガラスに水滴がついていた経験、ありませんか?
これは、室内の暖かく湿った空気が、冷たい窓に触れて水になる現象。
同じことが、壁の中や床下でも起こる可能性があるんです。
しかも、自然素材でつくった家は湿気を吸いやすい分、長時間湿った状態が続くと劣化が早まるという特性も持っています。
木が好きなら「湿気対策」が必要です
僕は、これまで1000本以上の丸太を製材してきました。
木が湿気を嫌うこと、濡れたまま放置すると腐りやすくなること──そのすべてを、現場で見てきました。
だからこそ思うんです。
木の家を守るには、空気の流れ=湿気の動線を設計することが欠かせない。
自然素材の家は、湿気に強いのではなく、湿気に敏感な家です。
過信せず、きちんとした換気・断熱・気密の設計と組み合わせてこそ、
本当に長く快適に暮らせる「木の家」になると、僕は思っています。
無垢材や珪藻土もカビる?|自然素材のカビ対策で見落としがちな盲点
「自然素材=カビに強い」と思っていませんか?
これは、**木の家の“神話”**のように広がっている誤解のひとつです。
実は、無垢材や珪藻土の壁であっても、条件が揃えばカビは発生します。
「珪藻土の壁にもカビが…?」と思った人へ
たとえば、人気のある珪藻土(けいそうど)壁。
吸放湿性が高く、「これを塗れば湿気もニオイも自然に解消してくれる」と思われがちですが、
実際の施工現場では、カビが生えた事例も存在します。
原因の多くは、次のような設計や使用のミスです。
- 通風のない場所に使ってしまった
- 換気計画がなく、空気が滞留した
- 薄く塗りすぎて、吸湿力が足りなかった
- 隣接する断熱材や気密処理が不完全だった
つまり、どんなに優れた自然素材を使っても、“空気の流れ”とセットで考えなければ逆効果になることがあるんです。
無垢材の床や壁にカビ?よくある3つの例
無垢フローリングや羽目板などの木材も、適切な対策がなければカビのリスクを抱えます。
京都の気候をふまえて、実際にあった事例を紹介します。
- 北側の寝室に無垢床材 → 冬に結露してカビ発生
→ 断熱と通気設計が不足していた。 - 脱衣室の無垢羽目板 → 湿気が抜けずにカビ繁殖
→ 換気扇があっても、空気の「出口」がなかった。 - 漆喰+無垢の玄関ホール → 冬の湿気でカビ臭が充満
→ 扉の開閉で暖気が入り、急激な温度差が結露を誘発。
結露とカビはセットでやってくる
湿気が多い場所に冷たい空気が入り込むと、壁や床で結露が起きます。
それが乾かずに残ると、カビ菌の温床になってしまうんです。
木の家にとって、この「見えない水分」がもっとも怖い。
たとえば、断熱が不十分な外壁の内側で結露した場合、
長期間気づかず、柱や梁の腐食が進んでいたという事例もあります。
自然素材のカビ対策は“設計”から始まる
「自然素材の家=カビが生えない」は幻想です。
重要なのは、素材の力を活かせる設計をすること。
- 空気が停滞しないように、通気経路を確保する
- 換気設備の排気・吸気のバランスを取る
- 断熱と気密を整え、結露を防ぐ温度設計を行う
こうした空気設計の工夫があるからこそ、自然素材の本来の力が引き出されるのです。
自然素材の調湿作用に“頼りすぎる”と後悔する|設計と換気がなければ意味がない
「漆喰(しっくい)や無垢材って、湿気を吸ってくれるんでしょ?」
そんなふうに思っている方は多いと思います。たしかにそれは事実です。
でも──
「調湿してくれるから大丈夫」というのは、半分だけ合っていて、半分は間違いです。
調湿素材の“限界”って知っていますか?
自然素材が湿気を吸う力は、実はごく限られた範囲でしか働きません。
たとえば、無垢の床材。
1枚の板が吸える湿気の量は、**空気中のわずか数%**にすぎません。
つまり、「自然素材=空気清浄機」ではないんです。
しかも、吸ったあとは、きちんと“吐き出す場所”がないと機能しなくなる。
自然素材の家でよくある“失敗例”
自然素材をふんだんに使った家で、実際に起こるトラブルがあります。
- 室内干しの湿気が抜けず、無垢材がベタつく
- 結露が起きて、珪藻土の壁に黒カビ
- 調湿が間に合わず、寝室が常にジメジメしている
これらの原因は、すべて共通しています。
それは──
**「自然素材に頼りすぎて、“空気の流れ”が考えられていないこと」**です。
調湿素材を“活かす”には設計が必要
自然素材は“空気のデザイン”があってこそ、真価を発揮します。
たとえば、京都のような湿度の高い地域では、
ただ無垢材を貼るだけでは意味がない。
空気がしっかりと流れ、風が抜けていく設計が必要です。
- 断熱と気密によって、温度と湿度をコントロールする
- 換気経路を設け、湿気を効率よく逃がす
- 風の抜け道を設計して、自然な空気の循環を生み出す
この3つの要素があって初めて、無垢材や漆喰は「調湿材」として役割を果たしてくれます。
僕が見てきた「自然素材を活かせなかった家」
過去に見学したあるモデルハウス。
ふんだんに漆喰と杉材が使われていて、デザインは素晴らしかった。
でも室内に入ると、空気が重たく、わずかにカビ臭がしました。
原因はすぐにわかりました。
換気計画がなく、風がまったく通らない構造だったのです。
せっかくの素材が「湿気を溜め込むだけの箱」になってしまっていた。
僕は、その空間がとてももったいなく思えました。
●「自然素材×設計」で、本物の快適が生まれる
自然素材を使った家は素敵です。僕も木が大好きだから、そういう家を応援したい。
でも、素材だけに頼ってはいけない。
素材が“働ける環境”を設計することが、建築の本質だと僕は思っています。
自然素材の家でもカビる?|換気・断熱・気密の基本を見直す
「自然素材の家に住んでいるのに、カビが出るんです」
そんな相談を受けることがあります。
「漆喰だし、無垢材だし、調湿性も高いはずなのに…」
そう感じて、なおさら不安になってしまう方も多いんです。
でも、答えはとてもシンプルです。
“空気の流れが足りていない”だけ。
カビは「湿度 × 温度 × 栄養」で育つ
カビが発生するには、以下の3つの条件が揃う必要があります。
- 湿度:60%を超える環境
- 温度:20〜30℃が最も活発
- 栄養:ホコリ、皮脂、建材、自然素材など
自然素材の家は、この「栄養」と「温度」が揃いやすいです。
あとは“湿度”が加われば、たとえ自然素材の家でもカビは出ます。
「換気扇を回してるのに」は落とし穴
「ちゃんと換気扇もついているし、回してます」
それでもカビが出る理由は、換気の“量”と“位置”が合っていないから。
- 吸気がないまま排気している → 空気が流れない
- 部屋の空気が入れ替わる前に湿度が滞留している → 湿気が溜まる
- 排気口が高すぎる → 部屋の下部に湿気が残る
つまり、換気は「ついているだけ」では意味がないんです。
京都の気候では“壁の中”も要注意
京都のような湿潤気候では、壁の中で結露が起きることも少なくありません。
外は冷え込み、室内はあたたかい。
その温度差によって、断熱材の内部で湿気が凝縮されます。
断熱と気密が不十分だと、
室内の湿気が壁の中に侵入し、逃げ道を失ってカビが生まれる。
気密があるからこそ、換気が「活きる」
「気密って、空気がこもるからイヤだな」
そう思っている方もいるかもしれません。
でも実は、気密性があるからこそ、換気計画が効率よく働くんです。
スカスカな家では、空気が“どこから来て、どこへ抜けていくか”がわかりません。
これでは、換気計画を立てようがない。
しっかりと密閉されているからこそ、
「吸気と排気をセットで設計する」ことができる。
そして、その空気の流れが、カビや湿気から家を守ってくれます。
僕が大切にしている換気の“3原則”
- 吸気と排気の位置をセットで考える
- 空気が“部屋全体”を通過するルートを描く
- 湿気が“溜まる場所”をつくらない
この3つを意識しておくだけで、
カビの出にくい、呼吸しやすい空間がつくれます。
自然素材+設計で「深呼吸したくなる家」を
素材はすばらしい。でも、それを活かすには「流れ」が必要です。
空気が動くから、素材が呼吸する。
素材が呼吸するから、暮らしが軽くなる。
それが、僕の考える「自然素材の家」の本当の意味です。
自然素材の家って実は高性能な家じゃないと成立しないんです。
高気密で高断熱で計画的な換気がされている機械的な家。それが本当の意味で自然素材の家を成立させることができます。
僕の情熱がこの記事を書かせました。読んでください。
自然素材を活かす「空気の導線設計」|僕が現場で考えていること
「自然素材の家って、どうやって空気を整えているんですか?」
僕がよく聞かれる質問のひとつです。
でも、答えはいつもこうです。
「空気は、設計で“流れ”をつくるんですよ」
● 空気は“動かしてあげないと”流れてくれない
自然素材の家といえど、放っておいて空気が勝手にいい感じに流れるわけではありません。
そこには、設計者の意図が必要なんです。
- どこから吸気するか
- どこで排気するか
- 空気が部屋のどこを通るか
これを考えずに家をつくると、
「空気が動かない=湿気がこもる」家になってしまいます。
● 僕が現場でまず見るのは「風の通り道」
京都のように四季のある場所では、風の向きも質も季節で変わります。
だから僕は、まず敷地の風の流れを読みます。
夏は南風が強いか、冬は北風が厳しいか。
周囲の建物の影響はどうか。高低差はあるか。
こうして、「風の導線」を頭の中に描くことから家づくりが始まります。
● 換気ライン=「見えない設計図」
空気の導線設計は、間取りや動線よりも先に考えることが多いです。
それは、空気がすべての“基盤”になるからです。
たとえば──
- 寝室には新鮮な空気が入ってくるように
- 洗濯物を干す場所には、排気が確保できるように
- キッチンの湿気やニオイは短い経路で抜けるように
こうした**設計上の“呼吸計画”**が、快適さの土台になります。
● 空気の流れと素材の力は“セット”で考える
どれだけ調湿性に優れた自然素材を使っても、
空気が動かない家では素材の力は半減します。
逆に言えば、
空気が自然に動く家は、素材が呼吸しやすく、性能を発揮できる。
僕たちはよく、「空気の層を扱っているんだ」と話します。
建材や設備ではなく、空気そのものをデザインしているんです。
● 「自然と片づく家」は、実は「自然と空気が動く家」
最近、僕たちが提案している「自然と片づく家」。
実はこれも、空気の導線設計と深くつながっています。
空気が流れるところには、人の動きも重なる。
風が抜ける場所は、物もたまりにくくなる。
そう考えていくと、「空気の流れ」が暮らしの流れを決めていることがわかります。
● 自然素材の家こそ「空気の通り道を設計する」
僕が伝えたいのは、こういうことです。
- 自然素材の家だから、換気や断熱は不要だと思っていませんか?
- 無垢材を使った家だから、湿気に強いと思っていませんか?
それ、逆です。
自然素材の家こそ、空気の導線と換気ラインが命。
それが整っていなければ、素材の力は生きてきません。
まとめ ― 自然素材の家を長持ちさせるために、「空気の設計」を忘れない
「自然素材の家に住みたいんです」
「無垢材を使ったあたたかい家が理想です」
そう言ってくれる方は、とても多いです。
僕も同じ気持ちです。木が大好きで、丸太を挽き続けてきたからこそ、その魅力はよくわかる。
でも、だからこそ伝えたいんです。
素材だけでは“心地よさ”は生まれない。
● 自然素材の家=空気がきれい? それは半分正解で、半分間違い
自然素材の家は、たしかに化学物質の放散が少なく、空気環境には良い影響を与えます。
でもそれは、空気がちゃんと流れていればの話。
換気が足りない
湿気が抜けない
断熱が不十分で温度差がある
──こうした要因が揃うと、素材の調湿性は機能しなくなります。
● 家を守るのは、設計された「空気の流れ」
- 湿気がたまりにくい
- 結露が起きにくい
- カビが生えにくい
- 素材が長持ちする
これらすべては、空気の流れを設計することで守られる暮らしの質です。
しかもこれは、見た目ではわかりません。
だからこそ、“設計の思想”として最初に入れておく必要がある。
● 「木が好き」という気持ちを、暮らしの中で後悔させないために
僕は、木が好きな人が後悔するのを見たくありません。
「こんなにこだわったのに、カビが出てきてしまった」
「せっかくの無垢材が、湿気で変色してしまった」
そうならないために、
“自然素材の力を発揮させるための空気設計”を最初から仕込んでおくことが大切です。
● 僕たちが考える「自然素材 × 空気の家づくり」
キノスミカでは、家をつくるときにこの3つをセットで考えます。
- 自然素材の力を活かす「設計」
- 暮らしに合わせた「空気の導線」
- 見えない部分も透明に説明する「施工の信頼性」
素材を信じるなら、設計も信じてほしい。
そう思って、僕たちは一つ一つの家を丁寧につくっています。
● 次の一歩へ ― 設計相談も、空気の話から始めてみませんか?
「自然素材の家にしたいけれど、湿気やカビが心配」
「空気の流れってどう考えればいいの?」
そう思った方は、一度“空気設計の視点”から家づくりを見直してみることをおすすめします。
あなたの家の図面に、空気の流れを書き込んでみるだけでも、全然違って見えてくるはずです。
そして、そんなお手伝いをするのが、僕たちの役目です。
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