木の家は空気がきれい。そう言われることが多いです。
でも、僕はこう思います。**「素材だけで空気は変わらない」**と。
空気は目に見えないからこそ、住む人にとっていちばん重要で、
設計者や施工者の“考え方”がもっとも試される部分なんです。
この記事では、
- 室内空気の「質」とは何か?
- 木の調湿性と香りの正体
- 換気と断熱が空気を決める理由
この3つを、暮らしと技術の両面からお話しします。
「空気と湿度の関係に興味がある方は、
木と湿度のリアル をあわせて読むのがおすすめです。」
木の家=空気がいい、は本当か?
「木の香りがするから空気がきれい」
それは半分正解で、半分は幻想です。
木には確かに**揮発成分(フィトンチッド)**があり、リラックス効果も認められています。
でも、それだけで空気がきれいになるわけではありません。
むしろ、湿気がこもっていたり、VOCが多く発生する建材と混在すれば、
「自然素材の家」でも空気が濁ることがあります。
空気の質=素材×換気×湿度×設計。
これが僕の考える“本当の空気設計”です。
木は空気を整える素材。でも、万能じゃない
木には調湿性があります。
空気中の湿気を吸って、乾燥してくると吐く。
これが“呼吸する素材”と言われるゆえんです。
でも、この機能は木の表面だけで起こる現象であり、
塗装方法(ウレタン or オイル)や木材の厚みによって大きく変わります。
また、調湿の限界を超えるとカビや結露につながることもある。
だからこそ、木を使うなら“性能設計とセット”で考えるべきなんです。
空気を決めるのは「換気」と「断熱」です
どれだけ良い素材を使っても、
換気ができていなければ、空気はこもる。
僕はいつも、「取り入れた空気は必ず汚れる」と伝えています。
だからこそ、“どう排気するか”が空気の質を左右するんです。
さらに、断熱・気密が不十分だと、
空気が冷えすぎたり結露したりして、“不快な湿気”を生みます。
つまり空気を快適にするには:
- 第1種 or 第3種の計画換気を設計段階でしっかりと
- 断熱ラインを崩さない施工精度
- 素材は「補助的役割」だと理解して活かすこと
この3つを押さえる必要があります。
僕が“深呼吸したくなる家”にこだわる理由
空気は目に見えない。
だからこそ、「なんとなく気分がいい」「いつも静かに落ち着く」
そういう感覚でしか判断できないことが多いんです。
でもね、実は“空気の質”って、身体でちゃんとわかるんです。
昔、あるリフォーム現場に入ったときのことです。
玄関を開けた瞬間、なんだか空気が重たい。湿気っぽくて、息がこもる感じがする。
特別なにかがあるわけじゃない。でも確実に「この家、息がしづらい」と感じた。
解体してみて分かったのは、
壁内の断熱が途中で途切れていて、さらに換気の設計がなされていなかったこと。
「空気の質って、こんなに身体で感じられるんだ」と強く思ったのを覚えています。
だから僕は、空気まで設計する家をつくりたい。
木の力と設計の力で、
そこに住む人の体調や気分まで整うような、
“深呼吸したくなる家”を届けたい。
まとめ:空気も、設計するものです
木を使えば空気がきれいになる。
そう思われがちですが、実は設計次第で空気は良くも悪くもなります。
- 換気設計
- 断熱気密の精度
- 木材の扱いと配置
これらが組み合わさって、ようやく「深呼吸できる家」が完成する。
僕は、空気の設計まで含めて、“木と暮らす”をつくっていきたいと思っています。
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