店舗リノベーション

店舗やブランドづくりで失敗するのは、コンセプトの空洞化?

  1. コンセプトって、ただ言いたいだけになってないか?
    1. 「主婦層を狙ってます」──その言葉、何を示してる?
  2. コンセプトは、曖昧にした瞬間に存在しないのと同じ
    1. 言葉が曖昧なら、空間もブレる
  3. 「コンセプト」という言葉が、深掘りを止めている
    1. みんな「コンセプトが大事」とは言うけれど…
    2. 言葉が先にあると、考えた気になってしまう
    3. SNS時代の「映えコンセプト」が、表面をなぞらせてしまった?
    4. 「コンセプト=雰囲気」という誤解
  4. 言葉が曖昧なら、空間もブレる。接客も、SNSも、全部がズレる。
    1. なぜ「ただのおしゃれ空間」になるのか?
    2. 「選べないコンセプト」は、選ばれないブランドになる
    3. 運営側にも迷いが生まれる?
  5. コンセプトとは、「選びきること」から始まる
    1. コンセプトとは、選ぶことであり、捨てること
    2. 「コンセプトらしい言葉」を疑うことから始める
  6. 本当に使えるコンセプトは、必ず言語化されている
    1. 実践すべき3つのステップ
  7. コンセプトが通った空間は、言葉ではなく気配で伝わる
    1. 言葉が思想として宿った空間は、空気感そのものが違う
    2. コンセプトがあるから、顧客が「自分ごと」にできる
    3. SNSや口コミで共感される世界として語られていく
  8. コンセプトを語る前に、自分に問うべき5つの問い
    1. 1. 誰の、どんな感情に応えたいのか?
    2. 2. なぜ自分は、この空間をつくりたいのか?
    3. 3. どんな写真で切り取られたいか?
    4. 4. 何を選ばないと決められるか?
    5. 5. 「ここで過ごす時間が、どう語られるか?」

コンセプトって、ただ言いたいだけになってないか?

「コンセプト重視です」

「しっかりコンセプトを設計してます」

いま、空間設計や出店計画の現場で、この言葉は当たり前のように飛び交っています。

でも、聞き返したくなるんです。

「そのコンセプト、ちゃんと言語化されてますか?」

「誰に、何を、どの時間帯に届けたいかまで、具体的に掘り下げていますか?」

ほとんどの場合、答えはNOです。

「主婦層を狙ってます」──その言葉、何を示してる?

たとえば、こんな会話があります。

「うちは主婦層がターゲットです」

「だから、ナチュラルでぬくもりのある空間にしたくて…」

でも主婦層って、一言で括れるほど単純でしょうか?

• 平日の朝に来る人と、土日に家族連れで来る人は、まったく違う顔を持っている

• 「ぬくもり」と言っても、それは木材のことか?照明か?接客トーンか?

• モーニング需要なのか、ランチ回転か、夕方の“自分時間”か?

こうした深堀りのないまま語られるコンセプトは、

ただのイメージにすぎません。

具体性も戦略性もないまま、「とりあえずコンセプトがある風」に振る舞ってしまっているのです。

コンセプトは、曖昧にした瞬間に存在しないのと同じ

「いいものを提供したい」

「温かみのある空間にしたい」

「非日常を感じられる場所を」

こうしたフレーズも、耳ざわりはいいけれど、

その背景や選定理由、顧客像まで深掘りされていなければ、何の価値も生まない。

空間設計やブランディングの言語は、常に誰かに向けた“明確な意図”とセットでなければならない。

言葉が曖昧なら、空間もブレる

「朝も夜も使えるように」

「高そうに見せたいけど、実は安い」

「和風でも洋風でもない、中間を狙って」

こうして「どっちつかず」の設計が量産されていきます。

でも、顧客の記憶に残るのは、誰にでも合う店ではなく、自分のためにあるように感じた空間です。

コンセプトとは、選ぶことと同時に、選ばなかったものを捨てる勇気があるかどうかです。

それがないコンセプトは、ただの願望の寄せ集めとなってしまいます。

「コンセプト」という言葉が、深掘りを止めている

みんな「コンセプトが大事」とは言うけれど…

空間の設計でも、店舗の立ち上げでも、ブランド開発でも・・・。

どの現場でも「コンセプトが大事です」という言葉は、もはや常識のように語られています。

でも、本当に大事にされているでしょうか?

言い換えれば、「コンセプトがあるからこの色、この動線、この素材です」と言えるだけの選定理由が共有されているか?

多くの場合、それはありません。

言葉が先にあると、考えた気になってしまう

コンセプトという言葉を出した時点で、

思考が止まってしまうケースが非常に多いのです。

• コンセプトシートは作った

• ロゴはデザイナーに依頼した

• 世界観の参考資料もある

だから「整った気」になってしまう。

でも、その言葉やロゴの背景にあるはずの思想やターゲットへの理解、伝えたい感情は置き去りになっていることが少なくない。

つまり、言葉が表層の“手続き”になってしまった瞬間に、コンセプトは空洞化するんです。

SNS時代の「映えコンセプト」が、表面をなぞらせてしまった?

Instagram、Pinterest、TikTok──

どのプラットフォームでも「世界観」という言葉とセットで「映え」が消費されています。

• トレンドの内装

• 人気店の雰囲気

• ブランドっぽい配色

こうした要素をコラージュして、「うちもこんな感じで」というコンセプトが生まれてしまう。

でもそれは、他人の正解を借りただけで、自分の問いに答えていないんです。

「コンセプト=雰囲気」という誤解

特に設計現場では、「雰囲気を大事にしたい」「空気感のある空間にしたい」という意図でコンセプトが語られることが多いのが現状です。

でも本来、コンセプトとは空気感の説明ではなく、その空気を選ぶ理由や背景まで含めた思想です。

コンセプトとは、単なる方向性ではなく、「なぜその選択をしたのか」に対するすべての答えなんだと僕たちは考えます。

言葉が曖昧なら、空間もブレる。接客も、SNSも、全部がズレる。

なぜ「ただのおしゃれ空間」になるのか?

空間の中に確かに設計意図はある。

素材もいい。照明もこだわっている。

けれど、印象が薄い・・・。

それは、空間に「芯」がないからです。

その芯がコンセプトなのに、曖昧なままだとどうなるでしょか?

• デザインは整っているのに、誰にも刺さらない

• 高そうな内装なのに、安さが売りというギャップ

• SNSの発信と店舗体験がつながっていない

すべてが、メッセージがダイレクトになっていないことから始まっているのです。

「選べないコンセプト」は、選ばれないブランドになる

何がメインか、どこを軸に据えるか、何を手放すか。

そういった選択”がないままのコンセプトは、設計も運営も全部盛りになっていきます。

• ターゲットが広すぎて誰にも刺さらない

• 回転率も雰囲気もどちらも追いたくて設計が散漫になる

• ファサードは和風、内装は洋風、BGMは無国籍

選べなかった結果、顧客の記憶にも残らない無個性な店ができてしまう。

運営側にも迷いが生まれる?

コンセプトが言語化されていないと、現場のスタッフは「どう振る舞えばいいのか」が曖昧になります。

• どんな接客トーンが正解か?

• SNSの投稿で、どういう写真を載せるべきか?

• メニュー開発で、何を基準に選ぶべきか?

こうした問いに答える「軸」がないまま、現場判断にゆだねられ、チーム全体がブレていく。

言葉になっていないブランドメッセージは、誰にも共有できません。

共有されないブランドメッセージは、空間にもサービスにも影響を及ぼしません。

だから、空洞のままのコンセプトは、すべての判断を迷わせ続けるんです。

コンセプトとは、「選びきること」から始まる

コンセプトとは、選ぶことであり、捨てること

まず大前提として、コンセプトとは選び取る行為です。

• 朝ごはんか、夜ごはんか?

• 一人客か、家族利用か?

• 安さが売りか、世界観が売りか?

• 「映え」なのか、「落ち着き」なのか?

これらに「どちらでもいいです」と答えた時点で、コンセプトは成立していません。

なぜなら、それは誰にも届かない中立のままの場所だからです。

「コンセプトらしい言葉」を疑うことから始める

多くの現場で語られる以下のような言葉があります。

• ぬくもり

• 自然体

• 地域とのつながり

• 心地よさ

• 非日常

これらは一見コンセプトっぽく見えるけれど、思考の中身がないまま使われていることが多いのです。

大切なのは、それを「なぜ、誰に、どうやって届けるのか」まで掘り下げることです。

本当に使えるコンセプトは、必ず言語化されている

実践すべき3つのステップ

1. 誰に届けたいのかを「時間帯」「感情」レベルまで言語化する

 →「主婦層」ではなく、「平日10時、子育てに追われながらひと息つける瞬間」など

2. 届けたい価値をひとことで言うなら?

 →「気取らない、でもちゃんと整った場所」

 →「忙しい人のための、余白のある空間」

3. “それ以外”を潔く捨てる覚悟を持つ

 → 迷いのない選択こそが、ブランドの輪郭になる

コンセプトを考えるとは、世界を狭くすることではなく、あなたに届けたいという意思を、研ぎ澄ますことなんです。

コンセプトが通った空間は、言葉ではなく気配で伝わる

言葉が思想として宿った空間は、空気感そのものが違う

しっかりとしたコンセプトが設計に反映されていると、空間に「語りすぎていないのに伝わる何か」が生まれます。

• 看板が大声で説明しなくてもいい

• 内装がナチュラルでも安っぽくない

• 静かな店なのに、人が惹きつけられる理由がある

これは、空間が語るストーリーが明確に存在している証拠です。

人は言葉ではなく、整合性のある気配に反応しています。

コンセプトがあるから、顧客が「自分ごと」にできる

例えば、

「ここに来ると、時間がゆっくり流れる感じがする」

「この店の雰囲気って、あの人に教えたくなる」

そう思わせる店は、必ず誰かの感情を射抜くようにデザインされています。

そしてその起点が、コンセプトで選びきった届けたい体験の具体性にあるのです。

SNSや口コミで共感される世界として語られていく

しっかりと設計されたコンセプトは、SNSでこう広がります。

• 「ここ、○○な人にぴったりの場所だと思う」

• 「○○な気分のときに来たくなる店」

• 「この照明、インスタで見てずっと来たかった」

つまり、“自分にとって意味がある場所”として認識されている。

これは偶然ではなく、コンセプトが「人の時間や感情」と結びついている結果です。

コンセプトは、空間の設計図ではなく、人の記憶の中に残る起点です。

コンセプトを語る前に、自分に問うべき5つの問い

1. 誰の、どんな感情に応えたいのか?

「主婦層」「ビジネスマン」「インバウンド」──

そういう括り方ではなく、その人の1日のどこに寄り添うのかまで描いてみてください。

• 朝のひと息

• 午後のご褒美

• 夜、思考を整える場所

時間と感情をセットで想像すること。

そこにだけ、本物のコンセプトは強くなります。

2. なぜ自分は、この空間をつくりたいのか?

利便性、立地、流行──それだけじゃないはずです。

「この価値を届けたい」「こんな経験がほしかった」

自分の中にある原体験こそが、最強のブランド起点になります。

3. どんな写真で切り取られたいか?

SNSで紹介されるとき、Googleでレビューされるとき、

その空間はどんなワンシーンで語られてほしいか?

• 窓辺に光が射す一枚

• カウンター越しの笑顔

• ベンチに置かれたブランケット

そのひとコマをイメージすることが、空間の設計をブレさせません。

4. 何を選ばないと決められるか?

朝も夜も対応、全員に好かれる内装、和洋ミックス──

それでは誰の記憶にも残りません。

誰にとっての場所かを定めるために、誰のためではないかも決めてください。

選ばないという決断が、店に芯を与えます。

5. 「ここで過ごす時間が、どう語られるか?」

この店、この空間に訪れた人が、

誰かに紹介するとき、どんな言葉で語るでしょうか?

「ここ、ちょっといいんだよ」

「落ち着くっていうか、なんかわかってる感がある」

その言葉こそが、あなたのブランドの実体になります。

コンセプトは、言葉遊びじゃありません。

店から顧客へのメッセージであり、誰かの時間を有意義なものに変えます。

だからこそ今、「コンセプトがある」と言う前に、自分自身に問い直してください。

その問いの深さが、空間の強度を決めます。