自然素材の家、気になるけど、ちょっと不安。──そんな気持ちから始めて大丈夫です。
自然素材の家って、なんか良さそう。
無垢の床、珪藻土、漆喰。
SNSとか雑誌で見るたびに、
「こんな家、いいなあ」って思う。
でも、いざ本気で考えはじめると、
いろいろ不安が出てくる。
「無垢材ってお手入れが大変なんでしょ?」
「漆喰とか珪藻土って、実際どうなの?」
「なんとなく高そうだし、後悔したくないな……」
たぶん、多くの人が同じように感じてる。
自然素材の家って、憧れから始まることが多い。
だからこそ、ちょっとした不安があると、
「ちゃんと調べないと失敗するかも」って、慎重になる。
でもそれって、悪いことじゃない。
家は大きな買い物だし、簡単に決められるものじゃない。
この記事では、
そうした不安や疑問をひとつずつ整理しながら、
**自然素材の家づくりで「後悔しないための視点」**を
できるだけわかりやすく伝えていきます。
誰かのマネじゃなくて、
自分たちらしい家をつくりたい。
そう思うなら、まずはここから一緒に考えてみましょう。
自然素材の家づくりで、なぜ“失敗”が起きるのか?|よくある誤解とその構造
自然素材の家に、なんとなく「良さそう」という期待がある。
でも、そこに「ちょっとした不安」や「過去の失敗談」が入り込んでくると、
気持ちが揺れてしまう──そんな状態から始まる人が多いです。
「失敗の声」は、どこから生まれているのか?
よくある声を見てみましょう。
- 「無垢の床、冬になると冷たい」
- 「珪藻土の壁、カビが出た」
- 「漆喰の壁、割れてきた」
- 「自然素材にしたけど、空気がこもる感じがする」
- 「結局、普通の家と変わらない気がする」
こうした“ネガティブな声”は、素材そのものの問題ではないことが多いです。
むしろ、素材と構造がきちんと噛み合っていないだけ。
❶ 無垢材の床が「冷たい」と感じる理由
無垢フローリングが冷たいのは、木材のせいではありません。
原因の多くは、床下の断熱不足や暖房設計のズレにあります。
無垢材自体は熱伝導率が低く、実は体温が奪われにくい素材です。
でも、断熱が薄い床にそのまま貼れば、当然冷たく感じる。
素材と構造、どちらか片方だけでは成り立たないという、いい例です。
❷ 珪藻土の壁が「カビた」と言われる背景
「珪藻土は湿気を調整するからカビない」
──これは半分正解で、半分間違いです。
よくあるのが、石膏ボードの上に1〜2mmだけ薄く塗られた珪藻土。
この施工では、調湿効果はほとんど発揮されません。
結果として、湿気が滞留し、逆にカビの原因になることも。
本来の性能を発揮するには、3〜5mmの厚塗り+適切な下地が必要なんです。
❸ 空気がこもる家=自然素材のせい?
これは誤解の典型です。
空気が重く感じたり、湿度がうまく抜けないとき、
原因は換気・断熱・気密の設計にあることがほとんど。
自然素材は“呼吸する素材”ではあっても、換気装置ではありません。
空気の流れを考慮した家づくりがなければ、
「漆喰や珪藻土を使ったのに空気が悪い」ということになってしまう。
❹ 「自然素材にしたのに、なんか違った」の正体
「いい素材を使ったのに、思った暮らしと違う」
──この声の裏には、「期待値と現実のギャップ」があります。
素材への期待が高いぶん、
構造や設計のことを見落としがちになる。
つまり、“素材で家を選ぶ”という順番そのものに落とし穴がある。
✅ 3章まとめ
自然素材の家で失敗してしまう理由の多くは、
「素材そのものの性能不足」ではなく、
構造や設計との“ミスマッチ”です。
それは、あなたの判断ミスではなく、
情報の出され方や、施工者側の説明不足によるもの。
だからこそ、次の章では
**「どうすれば、そのズレを防げるか」**を
現実的に見ていきます。
【第3章】自然素材で“後悔しない”ために、考えておくべきこと|素材選びより先に見てほしい3つの視点
自然素材を使った家は、
たしかに見た目もやさしくて、空気感もやわらかい。
けれど、それだけで「理想の暮らし」が手に入るわけではありません。
失敗しないために、本当に考えておくべきことは、
素材選びの“前”にあるのです。
① 暮らしの「困りごと」を具体的に書き出してみる
素材のことを調べるよりも先に、
**今の暮らしのどこに不満があるのか?**を、しっかり言葉にしてみてください。
- 冬、足元が冷えてつらい
- 洗濯物が乾きにくい
- 湿気でカビが出やすい
- 風通しが悪い
- 子どもがアレルギー体質で心配
こうした「生活の困りごと」から逆算すれば、
どんな素材が合っていて、どんな設計が必要かが見えてくるはずです。
②「素材そのもの」ではなく「使い方と設計」が鍵になる
どんなにいい素材でも、
設計や施工の仕方を間違えれば、期待通りの効果は得られません。
- 無垢の床でも、断熱がなければ冷たい
- 珪藻土でも、厚みがなければ調湿しない
- 漆喰でも、空気の流れが悪ければこもる
素材は“魔法のアイテム”ではありません。
暮らしに合わせた“使い方”を考えることが、後悔を防ぐ最大のポイントです。
③ 「その素材で、どんな暮らしができるか?」を想像する
素材の“性能”だけでなく、
その素材がある空間で、**どんなふうに過ごしたいのか?**をイメージしてみてください。
たとえば──
- 冬の朝、無垢の床に素足で降りても冷たくない
- 調湿された室内で、洗濯物が気持ちよく乾く
- 塗り壁の空間に木の香りが広がる
- 子どもの咳が減って、安心して過ごせる
素材選びは、「心地よさの実感」に繋がってこそ意味がある。
性能より先に、“暮らしのシーン”を描いてみること。
✅4章まとめ
自然素材の家で後悔しないために必要なのは、
「素材選びの前」にちゃんと“暮らし”を見ること。
自分たちの生活をよく知って、
困りごとを解像度高くとらえる。
そこから逆算して素材と設計を考えれば、
選び方を間違えることは、ほとんどありません。
【第4章】自然素材の家づくりで「これは確認しておきたい」10のこと|見落としがちな“盲点チェックリスト”
自然素材の家をつくりたい──そう思ったとき、
どこから検討を始めればいいか迷う人はとても多いです。
素材の性能ばかりに目がいってしまい、
暮らしに直結する“盲点”が見落とされやすいのも、このジャンルの特徴です。
✅自然素材リノベの「盲点チェックリスト」10項目
- 床材だけでなく、床下の断熱も検討しているか?
└ 無垢材の心地よさは、断熱設計とセットで活きる。 - 塗り壁の厚みと下地の仕様を確認しているか?
└ 珪藻土や漆喰でも、1〜2mmの薄塗りでは調湿効果が出にくい。 - 換気・通風の設計が素材に合っているか?
└ 自然素材は“空気設計”とセットで考えることが基本。 - アレルギーや体調の不安にどう対応するか決めているか?
└ 材料の選び方、仕上げ方、施工方法がカギ。 - 素材のメンテナンス性について説明を受けているか?
└ 無垢材・漆喰・珪藻土は、扱い方にコツがある。 - 壁・床・天井で“何を自然素材にするか”明確になっているか?
└ 全面自然素材にしなくても、効果的な使い方はできる。 - 空気の流れや湿気対策の設計があるか?
└ カビ・結露の不安があるなら、断熱×換気のセット設計を。 - SNSや雑誌で見た“理想像”と、自分の暮らしのすり合わせができているか?
└ 憧れと現実を分けて考える視点が大切。 - 費用と効果のバランスを、数字で把握しているか?
└ 自然素材はコストが高くなりがちなので、優先順位が重要。 - 「この家でどんな時間を過ごしたいか」が描けているか?
└ 素材選びより先に、“暮らしのイメージ”を。
この10項目を、一度すべてYesで埋められるかどうか。
それが「後悔しない自然素材リノベ」のひとつの指標になります。
【第5章】「自然素材にしたのに、なんで?」|よくある“後悔パターン”とその原因をひもとく
「自然素材にしたから大丈夫だと思ってたのに──」
そうした声には、よく似た背景と原因があります。
素材に過度な期待を寄せすぎていたり、構造との“ズレ”が起きていたり。
ここでは典型的な後悔パターンを3つ紹介しながら、
**なぜその失敗が起きたのか?**を読み解いていきます。
ケース①
「無垢フローリングにしたのに、冬が寒すぎる」
表面の素材だけに注目していたケースです。
無垢材が“あたたかそう”というイメージに対して、
実際には床下断熱が弱く、底冷えする暮らしになってしまった。
▶ 原因:
素材の断熱性能だけでは限界があり、
床下の断熱設計とセットで考えるべきだった。
▶ 防ぐには?:
「床材だけで考えず、構造と合わせて選ぶ」という視点が必要。
ケース②
「珪藻土の壁にしたのに、カビが出た」
施工方法に問題がある典型例。
「珪藻土=調湿してくれる」ことだけを信じて、
1〜2mmの薄塗り施工になっていたことで、期待した効果が得られなかった。
▶ 原因:
“珪藻土”という言葉だけを信用して、厚みや下地まで確認していなかった。
▶ 防ぐには?:
「仕上げの見た目」だけでなく、「厚み」「下地」「施工方法」を確認すること。
ケース③
「漆喰にしたのに空気がこもっている気がする」
これは、素材に「換気」の役割まで求めてしまったケース。
漆喰は確かに調湿性がありますが、換気性能そのものは持っていません。
結果として、空気が重く感じたり、夏場に湿度がこもったりする。
▶ 原因:
素材の特性と“空気の設計”を混同してしまったこと。
▶ 防ぐには?:
素材の役割と空気の流れ(換気・通風・気密)をセットで設計する必要がある。
✅5章まとめ
自然素材でよく起きる後悔には、
「素材に期待しすぎた」ことと、「構造を見落とした」ことがセットで存在しています。
だからこそ必要なのは、
素材と構造の“あいだ”にある関係性を、ちゃんと理解すること。
そこに、後悔しない選び方のヒントが詰まっています。
【第6章】自然素材の家は“特別な家”じゃない|毎日の暮らしとつなげて考える設計視点
自然素材の家というと、
どこか“特別な家”のように見えてしまうことがあります。
雑誌やSNSで見る、薪ストーブのある暮らし。
木の器、手作りの棚、丁寧な朝の光景──
確かに美しい。だけど、現実には「生活」がある。
自然素材を、暮らしの「ツール」として見る
無垢の床も、珪藻土の壁も、漆喰の塗り壁も、
それ自体が目的ではなく、
暮らしの快適さや安心感を支える“道具”でしかない。
だからこそ、こう問い直してみてほしいのです:
- 「その素材を選んだら、どんな“日常”が待っているか?」
- 「子どもと過ごす朝、冬の夜、夏の湿気……想像できるか?」
- 「掃除や手入れのとき、困ることはないか?」
- 「数年後の暮らしにも、その素材は合っているか?」
素材を使いこなすのは、設計者ではなく“暮らし手”である自分自身。
その目線で考えていくと、選ぶ基準も自然と変わっていきます。
自然素材の家に住むということは、「日常を味わうこと」
自然素材の良さは、
華やかな“見た目”よりも、静かに満たされる“体感”にあります。
- 朝、裸足で歩いたときのやさしい感触
- 湿気の多い梅雨でも、空気がベタつかない安心感
- 夏の日差しの中でも、やさしく光を返す塗り壁
- 夜、木の香りの中で、家族と過ごす落ち着いた時間
この体感こそが、素材の真価。
そしてこれは、設計図面や性能値では測れないものです。
✅6章まとめ
自然素材の家は、“特別な人だけの家”ではありません。
毎日の暮らしを、少しずつ丁寧に、気持ちよくしてくれる道具の集合体。
だからこそ、
雑誌の中の暮らしではなく、「自分の暮らし」を主語にして選ぶこと。
その視点が、自然素材リノベを“失敗しない選択”へと変えてくれます。
【第7章|まとめ】
自然素材の家に“失敗しない”という正解はない。だけど、“納得できる選択”はつくれる。
自然素材の家づくりに、
100点満点の正解があるわけではありません。
どれだけ調べても、どれだけ下調べをしても、
実際に暮らしてみるまではわからないことが、たくさんあります。
でもそれは、決して「怖いこと」ではないんです。
納得できる選択とは、「自分の目で考えた軌跡」のこと
たとえば──
- 家族の体調に合わせて素材を調べた
- 無垢の床が冷たい理由を知って、断熱まで考えた
- 珪藻土や漆喰の厚みやメンテナンス性も確認した
- 空気の流れや湿度の感じ方に敏感になった
こうした一つ一つの“選び直し”が、
あなたの家づくりに、深い納得感とリアリティを与えてくれます。
正解探しではなく、「失敗しない問いの立て方」を
「この素材でいいのかな?」
「この仕様で本当に快適に暮らせるかな?」
不安を完全にゼロにするのは難しい。
でも、問いを立てる力を持っている人は、“選び方”を間違えません。
素材ではなく、暮らしを主語にする。
数値ではなく、体感を想像する。
性能ではなく、日々の時間を思い描く。
最後に、あなたに伝えたいこと
この文章のどこかに、
あなたが「ほんの少しでも自分ごととして考えられた瞬間」があれば、
それはきっと、正解よりも価値のある“準備”だったはずです。
あなたが選ぶ家が、
あなたと、あなたの大切な人にとって、
心地よく、優しく、そして納得できるものになりますように。
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