第1章|「珪藻土の壁って、効果あるの?」──その疑問、もっともです。
きっかけは「なんとなく良さそう」から
「珪藻土って、調湿とか脱臭にいいって聞いたけど……本当に効果あるんでしょうか?」
これは、相談に来てくださる方からよく聞く言葉のひとつです。
自然素材に興味を持つ多くの方が、壁材として珪藻土を検討しています。
特に、小さなお子さんがいるご家庭や、空気に敏感な方にとっては、
シックハウスのリスクが低く、見た目にも優しい塗り壁というだけで魅力的ですよね。
「聞いた話」と「現実」のあいだにあるギャップ
けれど、その一方で——
「思ったより効果が感じられない」
「塗りムラが出て後悔した」
「業者に任せたら、実は薄塗りだった…」
というような後悔の声も、僕たちのところには届きます。
どれも決して珍しい話ではありません。
素材自体のせいではなく、選び方や施工法によって効果が左右されるからです。
情報が多い時代だからこそ、「本当の話」を
今はSNSでも「自然素材が良い」と謳われ、
どの工務店やハウスメーカーも「自然派住宅」をアピールしています。
でも、実際に暮らし始めたあとで「こんなはずじゃなかった」となるのは、
表面的な情報だけで判断してしまったときに起こるのです。
だからこそ、この記事では——
- 珪藻土の“本来の性能”
- よくある失敗の原因
- そして、効果を引き出すための施工のポイント
を、正直に、わかりやすくお伝えしていきます。
あなたの「迷い」に寄り添いたい
あなたが今このページにたどり着いたのは、
「自然素材の家に惹かれているけど、後悔したくない」と思っているからではないでしょうか?
この文章は、そうした迷いを持つあなたのために書いています。
珪藻土を選ぶかどうかは、この記事を読んだあとにゆっくり考えてもらえれば大丈夫です。
ただ一つだけ、伝えておきたいのは——
知ることで、後悔は減らせるということ。
次章では、「なぜ珪藻土の効果を実感できない人がいるのか?」
その“施工の落とし穴”を深掘りしていきます。
第2章|「珪藻土なのに効果がない?」──その理由は“施工の常識”にあった
よくある施工パターン:ボードの上に薄塗り
今、住宅業界で一般的に行われている珪藻土の施工方法は、
石膏ボードの上に1mm程度、うすく珪藻土を塗るというものです。
一見、見た目は「塗り壁」ですが、この方法では本来の性能をほとんど引き出せません。
なぜなら、調湿や脱臭といった効果は“厚み”によって支えられているからです。
薄塗りでは、調湿効果がほぼ働かない
珪藻土の力の源は、表面に空いた無数の微細な孔(あな)です。
これが空気中の水分を吸ったり吐いたりして、湿度を調整してくれるのですが——
薄く塗っただけでは、その孔が機能するほどの面積・体積が確保できません。
とくに石膏ボードは自体が調湿しない素材なので、下地との相乗効果も見込めません。
「結局、調湿のためにエアコンや除湿機を使っている」
「“自然素材の家”って聞いていたのに、カビが出てしまった」
こうした声の背景には、「薄塗り施工」の問題があります。
本来は、3〜5mmの“厚塗り”が前提
本来、珪藻土を活かすには最低でも3〜5mm程度の厚塗りが必要です。
さらに理想的なのは、下地に「土壁」など、
自らも調湿性を持つ素材を使うこと。
これによって、壁全体が“呼吸する層”となり、効果が段違いに高まります。
でも実際には、施工側が「塗りムラを怖れて薄塗りにする」ケースも多い。
丁寧な下地処理や、手間のかかる二度塗りを避けたがる現場も、少なくありません。
「一度塗りで仕上げ」は、むしろ不自然
珪藻土は本来、下塗り→中塗り→仕上げ塗りの“最低3回塗り”が基本です。※2回でも厚みさえつけられたら大丈夫です。
これは、左官の世界では当たり前の話。
しかし、量産系の住宅では時間や手間を省くために「一発仕上げ」が横行しています。
結果として、
- 塗りの厚みが足りず、機能しない
- 仕上がりが荒れて美しくない
- 早期に剥がれやひび割れが起こる
といった問題が、住み始めたあとに浮上してくるのです。
ちゃんと塗れば、“空気の質が変わる”
珪藻土の力を本当に感じられる家は、施工に手間をかけています。
ちゃんと乾燥させ、丁寧に塗り重ねる。
すると、湿度が自然と調い、空気がサラッと、軽く感じられる家になるんです。
もしあなたが本気で「珪藻土の家」にしたいと願っているなら——
その想いに応えてくれる施工者を選ぶことが、なにより大切です。
次章では、よくある「誤解」や「後悔ポイント」を取り上げながら、
本当に後悔しない珪藻土の選び方をお伝えしていきます。
第3章|「珪藻土の家、後悔した?」──よくある誤解とリアルな声
後悔①「思ったより効果を感じない…」
「調湿効果に期待していたけど、カビが出た」
「梅雨時は結局エアコンを使ってる」
こうした声の多くは、施工方法に原因があります。
前章でお伝えしたように、珪藻土の効果は厚みと下地によって決まる。
見た目だけを整えた“薄塗り仕上げ”では、調湿や消臭といった機能はほぼ働きません。
素材のせいではなく、施工の問題。
この違いを知らずに「珪藻土は意味がなかった」と感じてしまう人も多いのが実情です。
後悔②「塗りムラが目立って気になる」
手仕事の塗り壁には、必ず“表情”が出ます。
この味わいを「個性」と感じられれば素敵ですが、
想像以上のムラ感に驚いてしまう方もいます。
特に、施工者によって仕上がりの差が大きいのが珪藻土の特徴です。
「照明の角度でムラが浮いて見える」
「思ったよりラフな印象で、スタイリッシュさに欠ける」
こうしたギャップを減らすには、事前に塗りサンプルを確認することが非常に有効です。
模様の出方、質感、色味。すべて実物を見てから判断するのが安心です。
後悔③「肌荒れしてしまった」
珪藻土には強いアルカリ性を持つものがあります。
特に小さなお子さんや敏感肌の方は、
「手が荒れた」「かゆみが出た」といった報告も少なくありません。
もちろん全ての人に起きるわけではありませんが、
肌が直接触れる場所(寝室・子ども部屋・階段手すり近くなど)では、慎重な判断が必要です。
素材選定の段階で「配合成分の確認」「アルカリ度の事前テスト」などができる施工者を選びましょう。
後悔④「補修ができないと思っていた」
意外と知られていないのが、補修の手軽さです。
漆喰とは異なり、珪藻土はチョークでの簡易補修は不向きですが、
実際には以下のような対処が可能です:
- 細かい傷や欠けは、同系色の補修材で埋められる
- 見た目にはわかるが塗り直しはできる
- 汚れはヤスリがけで目立たなくすることも可能
- 割り切って自分で補修(一番重要)
つまり、「汚れたら終わり」「割れたら張り替え」ではないんです。
手をかければ長く使えるという点こそ、自然素材の魅力でもあります。
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第4章|「失敗しないために、知っておくべき選び方のポイント」
ポイント①|「厚み」と「下地」で効果は決まる
珪藻土の性能は、どれだけ“厚く”“適切な下地に”塗られているかで大きく変わります。
- 石膏ボードの上に1mmだけ薄く塗った場合 → 調湿効果はほとんど期待できない
- 土壁など、調湿性のある下地に3〜5mmの厚塗り → 効果が発揮されやすい
- 石膏ボードの上に塗る場合は厚みを必ず5mm以上つける意識を持つ。
見た目の“それっぽさ”に惑わされず、施工内容の中身を聞くことが重要です。
ポイント②|「一回塗りでは終わらない」素材であることを理解する
本来、珪藻土は 下塗り→中塗り→仕上げ塗り の工程が必要な素材です。
「1回で仕上げますよ」と言われたら、むしろ要注意。
丁寧な施工を行う職人であれば、下地処理・養生・乾燥時間まで計算に入れて工期を組みます。
この手間があるからこそ、後悔のない質感と空気感が得られるのです。
ポイント③|「触って、嗅いで、感じて」選ぶこと
素材の良し悪しは、スペックやカタログではわかりません。
とくに珪藻土は、手触り・におい・光の反射まで個性が出る素材です。
実際の施工事例やサンプルを前にして、
「これを毎日見ることになる」「これを空気として吸うことになる」
という実感を持って決めることが、後悔を防ぐいちばんの方法です。
ポイント④|「信頼できる職人かどうか」で結果が変わる
素材そのもの以上に大切なのが、誰が塗るかという点です。
- 空気の流れや湿度を考えて素材提案できる施工者
- アフター補修の相談にも親身な関係性
珪藻土は素材選びで6割、職人選びで4割が決まると言っても過言ではありません。
第5章|それでも「珪藻土の壁」にこだわる理由
自然素材は“万能”じゃない。だけど“愛せる”存在
珪藻土は、誰にでも完璧にフィットする素材ではありません。
厚塗り施工の手間もかかるし、ひび割れや汚れもゼロにはできない。
それでもなお、**「この空間、なんか呼吸しやすい」**と感じる家には、
たいてい珪藻土や漆喰のような素材が選ばれている。
それは、素材がただ“存在している”のではなく、
空気と調和しているからです。
呼吸する壁が生み出す“なんでもない快適さ”
「冷暖房は効いてるはずなのに、なんだかムワッとする」
「夜になると、壁の湿気っぽさを感じる」
そんな経験はありませんか?
珪藻土の壁は、湿度を吸って吐く、空気のフィルターになります。
それに気づくのは、たいてい住み始めてから。
- 冬に窓の結露が減った
- 夏の蒸し暑さが軽減された
- エアコンの風が直接当たらないのに快適になった
こうした「なんでもない日常」の変化が、暮らしの質そのものを底上げしてくれるのです。
僕たちが伝えたいのは、「素材で選ぶのではなく、空気で選ぶ」ということ
素材に惹かれて選ぶ家づくりは素敵です。
でも、その素材が本来の力を発揮できるかどうかは、空気の設計次第。
珪藻土を塗ることがゴールではありません。
大切なのは、「この空間に、どんな呼吸を流したいか」。
- 呼吸できる素材を選ぶこと
- その素材が呼吸できる空気環境をつくること
- 空気の流れに沿って暮らしを整えること
この3つが揃って、ようやく「素材が生きる家」になります。
「自分で塗ってみたい」——その気持ち、すごくわかります
最近では、ホームセンターやネットで珪藻土のDIYキットも手に入ります。
「子ども部屋の一面だけ塗ってみようかな」なんて声も、よく聞きます。
実際、珪藻土はコテさえあれば塗ることができますし、
少しずつ乾いていく壁の表情を見ながら作業するのは、とても楽しいものです。
下地の処理さえ丁寧に行えば、自分で塗ることは充分に可能です。
僕たちとしても、自分で手を加えた家には、何倍も愛着が湧くということを、実感として知っています。
塗り方は簡単です。1回目は薄く壁に膜を作るようなイメージで薄く薄く塗り広げて行きます。
2回目、3回目は思い切って厚みをつけていきましょう。各工程は乾く前に次の工程へ進む必要があります。1つの壁をしっかりと終わらせてから次の壁へ行くようにしましょう。
小さな一歩から、“暮らしを整える”楽しさを
最初はトイレや洗面室の一面からでもいいと思います。
たった一枚の壁が変わるだけで、空間の空気が柔らかくなったように感じられる。
そしてその経験が、「自分の家を、自分で整えるっていいな」という感覚に繋がっていく。
無理をせず、楽しみながら。
“暮らしを育てる”第一歩として、自然素材との付き合いを始めてみてください。
まとめ|珪藻土を選ぶ前に、“ほんとうに知っておきたいこと”
珪藻土は、たしかに万能な素材ではありません。
「調湿に強い」と言われながら、実は施工の厚みや下地によって性能が変わるという現実もある。
「自分で塗れる」と言われても、塗りムラや仕上がりには工夫がいる。
でも、それらを知ったうえで、「それでも珪藻土にしたい」と思える人は、きっと後悔しない。
なぜならそれは、素材のことを理解した上で“納得して選んだ人”だから。
自然素材は「完璧」ではないけれど、「深く暮らしに馴染む」
珪藻土は、見た目の柔らかさだけでなく、
時間とともに“空気を整え”、
空間に“静けさ”と“呼吸”をもたらす素材です。
そしてなにより——
**「自分で整える余地がある」**というのが、この素材の魅力だと思っています。
最後に。
珪藻土に興味があるあなたが、
この文章を読んだあとに「少しだけ塗ってみようかな」と感じたなら、
それは、素材と暮らしの“最初の会話”が始まったということ。
僕たちは、そんな“はじめの一歩”を、
少し後ろから見守っていたいと思っています。
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