1章「寒くて不安な空き家」は断熱と耐震リフォームで変えられる
「京都の空き家は、寒くて住めないんじゃないか?」
「地震が来たら崩れるのでは…?」
そんな不安を口にする人は多いです。
でもそれは、空き家が悪いのではなく、“整える設計”がされていないからなんです。
たとえば僕が見た京町家の耐震補強工事。
別の建築士が主導し、金物で補強はされていたものの──
断熱も気密も無視された設計だった。
施工要領には従っていた。でも結果は:
「冬になると顔だけ暑くて、足元が冷える家」
老夫婦は感謝してくれた。
でも僕の中には、「この家で本当に“快適に暮らせている”のか?」という疑念が残りました。
◉ 耐震リフォームと断熱リフォームを“セットで考えない”リスク
特に京都のような気候で、
断熱が中途半端なまま耐震だけ補強してしまうと──
- 壁の中にグラスウールが乱雑に詰められる
- 気密シートなし、隙間だらけで空気が漏れる
- 結露・カビ・温度ムラが発生しやすくなる
「構造が強くなったけど、結局寒い」──これでは意味がない。
断熱気密の知識がない業者が、
“とりあえず詰めておく”という発想で断熱材を入れる現場もまだ多いです。
だからこそ、施主側も勉強が必要だと僕は思っています。
◉ 空き家に住む最大のメリットは「場所が選べる自由」
不安のある空き家ですが、
一方で、“暮らし方”を自分で選べるチャンスでもあります。
京都の街中には、ポツンと良い立地に残る空き家が多い。
新築やマンションでは不可能な、“住みたい場所に住める”という自由がそこにはある。
だからこそ、投資目的ではなく「暮らすための空き家再生」なら、
見た目や価格より、“住み続けられる性能”を優先すべきなんです。
耐震と断熱は、バラバラに考えた瞬間に「寒くて不安な空き家」になる。
セットで設計してこそ、「安心して暮らせる住まい」になる。
H2:断熱されていない空き家の特徴とリスクとは?京都で後悔しないために知るべきこと
「外観はきれいにリフォームされているし、水回りも最新設備」
──それでも、冬になると寒くて暮らせない空き家は後を絶ちません。
なぜか?
それは、断熱がされていない、あるいは“機能していない”からです。
京都の空き家は、築50年以上の木造住宅が多く、
断熱材が入っていない、もしくは入っていても劣化しているケースがほとんど。
以下のような特徴がある場合、断熱リフォームなしでは住めないレベルの寒さになります。
◉ 特徴①:床が極端に冷たい
昔の家は床下が吹き抜け構造になっていて、
断熱材が一切入っていない、もしくは隙間だらけのグラスウールが入っているだけ。
冬になると、外気が床からダイレクトに室内へ侵入し、
暖房をつけても足元だけ冷たいままという状態に。
◉ 特徴②:壁の中がスカスカ(もしくは結露で崩壊)
壁を開けてみると──
- 断熱材が入っていない
- 湿気で崩れている
- 材が黒カビだらけで使い物にならない
京都の湿気と通気のない構造が重なると、
壁の中で結露が起き、断熱材が役目を果たしていないことも多いです。
◉ 特徴③:窓からの熱損失が大きすぎる
シングルガラス+アルミサッシがまだ多く残っている京都の空き家。
断熱性能としては、窓から70%近く熱が逃げる構造になっています。
どれだけ床・壁・天井を断熱しても、
窓から冷気が降りてきて“冷たい空気のカーテン”が発生する状態になります。
◉ 特徴④:隙間風と気密ゼロで空気がコントロールできない
断熱材を入れても、気密が取れていなければ、
その効果は半減どころか、逆効果になることも。
・室内の暖気が隙間から逃げる
・外の冷気がどこからともなく入り込む
・計画換気が機能しない
これはまさに「断熱しないでリフォームした失敗例」の典型です。
◉ 京都で断熱リフォームを後回しにすると、こんな後悔が起きる
- 暖房しても寒くて電気代が跳ね上がる
- 家族が風邪を引きやすくなる
- 水回りは快適でも、“家全体が不快”になる
- 光熱費が増えて、「思ったよりコスパ悪い」と感じる
「見た目は新しいのに、なんでこんなに寒いんだろう?」
その“なんで”の答えは、断熱の基本が設計から抜けているからです。
H2:古い家は寒い?住める空き家と住めない空き家の違いとは
「古い家って、どこも寒いでしょ?」
そんなふうに思っている人は多いです。
でも実は、すべての古い家が“寒くて住めない家”なわけではありません。
寒いのは、「古いから」じゃない。
“断熱も気密も整っていないまま使われているから”寒いんです。
僕が関わってきた空き家の中にも、
築年数は古いけれど、しっかり断熱・気密・空気設計を整えたことで「快適に暮らせる家」に生まれ変わった事例はたくさんあります。
たとえば、こんなエピソードがありました。
築50年の平屋の空き家をフル改修し、
床・壁・屋根すべてに断熱を施工。付加断熱まで丁寧に入れました。
仕上げには、杉の無垢フローリングを20mm厚で採用。
少し傷つきやすい素材だけど、足に伝わる柔らかさと温かみは格別で、
施工後に訪れたとき、飼っている犬が気持ちよさそうに床に寝転んでいたのが忘れられません。
つまり、「古い家=寒い」は誤解であり、
「整っていない家が寒い」だけなんです。
◉ 住める空き家に共通する3つの要素
1. 構造補強と断熱がバランスよく設計されている
→ 耐震だけ、断熱だけ、では快適さも安心感も得られない。
2. 空気が“循環”する設計になっている
→ 隙間風ではなく「計画的に風が通る」仕組みを整えている。
3. 快適さの感覚が「足元→空間全体」に伝わる
→ 床・壁・天井がバランスよく断熱されていて、空気が澄んでいる家。
逆に言えば、住めない空き家の多くは、
構造だけ直した or 水回りだけ交換したという“部分リフォーム”で止まっているケースです。
本当に「暮らせる空き家」にするには、
見えるところよりも、“感じるところ”を整えることが大切なんです。
H2:京都の気候に適した断熱リフォームとは?設計の優先順位と考え方
京都の冬は、ただ寒いだけではありません。
足元から底冷えする寒さと、建物の中にこもる湿気が同時に存在するという、独特の気候があります。
さらに、京都の空き家は間口が狭く、建物が密集しているため、
「断熱したくても外から付加断熱ができない」という構造的な制約もあります。
だからこそ、断熱リフォームは“順番”がすごく大事なんです。
◉ 優先順位①:まずは床断熱から
底冷え対策の最重要ポイントです。
京都の空き家では、床下が吹き抜け状態のものも多く、
冬場は床から体温を奪われる冷えが最大のストレスになります。
高性能グラスウールやスタイロフォームをしっかり入れ、
気密層も一体化させることが必要です。
◉ 優先順位②:次に窓まわりの断熱・気密
空き家で意外と見落とされるのが**「窓の性能不足」。
単板ガラス+アルミサッシでは、暖房しても熱の7割が逃げていきます。**
- 樹脂サッシへの交換
- 内窓(二重窓)の設置
- カーテンボックスの工夫 などで、
窓まわりの断熱を整えるだけで、体感温度はかなり変わります。
◉ 優先順位③:屋根断熱と壁断熱は“施工性と予算”を見ながら
屋根と壁の断熱も大切ですが、
空き家リフォームでは構造上の制約が多く、施工の難易度とコストのバランスを取る判断が必要です。
壁を壊さず断熱を補うには:
- 吹付けウレタン断熱
- 内側からの断熱ボード設置
- 屋根裏へのセルロースファイバー吹込み
など、構造に合った柔軟な対応が求められます。
「全部やるのは現実的じゃない」──そのときに、
“寒さの原因がどこにあるか”を見極めて優先順位をつけることが、設計の力なんです。
H2:空き家再生は「快適さ」に投資するという考え方へ ― 暮らしの質と設計の役割
「空き家を安く買って、見た目だけ整えて、それで終わり」
そんな再生では、結局また数年後に手放されることになる。
僕が関わってきた空き家の中で、
「長く暮らされている家」には、ある共通点がありました。
それは、**“快適さに対して丁寧に投資されている”**ということ。
◉ 「快適」とは、贅沢ではない
寒くないこと。
足元が冷えないこと。
湿気で不快にならないこと。
空気が動いていて呼吸しやすいこと。
これらは、すべて**暮らしを支える“基本性能”**です。
だからこそ、断熱リフォームは“暮らし直しへの再投資”だと、僕は思っています。
◉ 設計の役割は、“感じない不快”を先回りして消しておくこと
空き家は、住んでみて初めて問題が表面化する。
でも本当は、住む前に「感じそうな違和感」を先回りして解消しておくのが、設計の仕事。
—
たとえば…
- 無垢のフローリングを選んだら、足触りは柔らかく、犬も気持ちよく眠れる空間に
- 床・壁・屋根の断熱バランスを取ったら、体温のムラが消えて動作が軽くなる
- 吹き抜けと空気の通り道を設けたら、家の中の空気が澄んだ
「お金をかける」とは違う。
「暮らしにフィットさせていく」ために設計する。
それが、空き家再生の本質だと思っています。
空き家を整えることは、家族のこれからの時間に対する設計であり、
“安心して深呼吸できる家”をつくるという選択なんです。
深く、もっと自由に。暮らしの選択肢を広げたいあなたへ
家づくりに、正解なんてありません。
でも、「これなら、自分たちらしく暮らせそう」と思える選択肢は、ちゃんとあります。
そのために、僕たちは情報を届けています。
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