第1章:京都の空き家って本当に住めるの?
― 寒そう、古そうという“感覚的不安”の正体
空き家を購入してリフォームしよう。
そう思ったとき、ほぼ例外なく出てくるのがこの言葉です。
「でも、寒そうですよね」
これは単なる“イメージ”ではありません。
多くの人が、過去の体験と記憶からその感覚を抱いています。
- 祖父母の家の廊下が、足がしびれるほど冷たかった
- 冬のトイレが地獄だった
- ストーブの前から離れられなかった
- どこからか風が入ってきて、朝まで眠れなかった
つまり、**「空き家は寒い」という印象は、実際に体で覚えた“記憶ベースの不信感”**なのです。
◉ 京都という地域が、その不安をさらに強める
京都は、見た目には穏やかそうな気候に見えます。
でも実際は、**底冷えと湿気の“ダブルパンチ”**という特徴があります。
- 夏は湿気でジメジメ
- 冬は空気が乾き、足元から冷える
- 盆地特有の気流で、外の空気がこもる
こうした**地域特性を知らずに空き家を購入すると、「冬が来てから後悔する」**というケースが非常に多いんです。
◉ ユーザーが不安に感じている“本当のポイント”とは?
表面上は「予算が不安」「古くて壊れてそう」などの声が多いですが、
本質はこうです:
「お金をかけても、住めなかったら意味がない」
「綺麗になっても、寒さに耐えられなかったら失敗になる」
実際、こんな事例があります。
キッチンや浴室をリフォームして、見た目は一新されたのに、
「冬になると朝起きられない」「脱衣所が寒すぎる」
そんな後悔が残る家を、僕は何軒も見てきました。
だから僕はいつも最初にこう言います。
「見た目の前に、“空気”の話をしましょう」
空き家の再生は、まず
「寒そう」という不安の正体を見極めてから設計に入るべきなんです。
第2章:「水回りは綺麗だけど寒い家」そのリフォームは本当に意味がある?
「キッチンも綺麗になったし、お風呂も快適。見た目も良くなって満足です」
リフォーム直後に、そう語る人は多いです。
確かに、見た目が大きく変わる場所は満足度が高い。
特に水回りは、家の中でも「使う頻度が高くてストレスを感じやすい場所」だから、
ここが新しくなると、心理的な安心感が得られるのは事実です。
でも——それは“最初の3ヶ月だけ”です。
リフォームから季節が変わり、冬が来たとき。
キッチンの床が冷たすぎて朝立てなくなる。
浴室はきれいでも、脱衣所で湯冷めする。
トイレに行くたびに震える。
そしてこう思うようになるんです。
「たしかに綺麗になったけど……やっぱり寒い家だったんだな」
◉ なぜ“満足”が“後悔”に変わるのか?
理由は明確です。
**「目に見える場所ばかり整えたから」**です。
- 見た目や機能はすぐに変えられる
- でも空気の質、温度、湿気は**“構造と設計の話”**
つまり、体感が整っていなければ、快適さは続かない。
僕のところにも、こういう声が届きます。
「見た目は理想どおり。でもこんなに寒いと思わなかった」
「やるなら断熱も一緒にやるべきだったと後悔しています」
「次は断熱からやります……」
◉ 目に見える快適さは、“表層の満足”に過ぎない
本当に暮らしが快適になるのは、家の中の空気が整っているときです。
- キッチンに長く立てる
- 脱衣所で凍えない
- 朝の動作がスムーズになる
- 暖房の効きが良くなるから光熱費も下がる
それらすべては、“断熱を整えたかどうか”にかかっています。
水回りのリフォームは確かに大切です。
でも、「暮らせる家かどうか」は断熱なしには語れない。
第3章:断熱リフォームとは“見えない快適さ”を整えるということ
「リフォームして快適になる」
そう聞くと、つい目に見える部分の話だと思いがちです。
キッチンが新しくなって、収納が増えた。
お風呂が広くなって、浴槽が保温タイプに変わった。
もちろん、それらも大切な快適性です。
でも、実はそれ以上に大きく暮らしを左右するのが、
“見えない快適さ”――つまり、空気の質です。
◉ 快適さの正体は、空気・温度・湿度のバランスにある
人は家の中で、何を感じているか?
- 温度差がないこと
- 湿気がこもらないこと
- 冷気や隙間風がないこと
- 呼吸がしやすいこと
これらはすべて、「空気」によってもたらされる感覚です。
でも残念なことに、多くのリフォームプランには、
この“空気設計”が含まれていません。
◉ 京都の空き家には、空気を乱す条件がそろっている
- 床下がスカスカで断熱がない
- 壁の中に断熱材が入っていない(または劣化している)
- 窓が単板ガラスで熱が逃げる
- 換気が“自然まかせ”で湿気が抜けない
つまり、リフォーム以前に、「空気が整っていない」のが空き家の宿命なんです。
◉ 断熱リフォームは、“快適をつくる設計工事”である
断熱とは、ただ素材を入れるだけじゃありません。
- どの部位に
- どれくらいの厚みで
- どんな素材を
- どう気密と連動させて入れるのか
これらを家全体の“空気の流れ”と連動して考えないと、効果は出ない。
だから僕はこう言います。
「断熱リフォームとは、空気を設計しなおすこと」
温熱環境は、暮らしの質のベースです。
それが整っていないままでは、
どんなに見た目が変わっても、“根っこの不快”は取り除けない。
第4章:床が冷たい、隙間風が止まらない ― 空き家の構造的リスクとは
「床が冷たくて、靴下を履いていても足がしびれる」
「どこからともなく風が入ってきて、暖房が効かない」
そんな経験はありませんか?
実はこれ、京都の空き家で非常によくある話なんです。
その原因は、見た目ではわからない**“構造の内側”にあります。**
◉ 構造リスク①:床下断熱が“そもそもない”
昔の家は、床下が“吹き抜け状態”。
断熱材がまったく入っていないか、入っていても隙間だらけ。
冬になると、外の冷気がそのまま床に伝わり、
**「断熱どころか、屋外と同じ」**という状況になってしまう。
だから、どれだけ暖房をつけても足元は冷たい。
エネルギーだけが無駄に逃げていく。
◉ 構造リスク②:壁の中に断熱材がない/効いていない
築40年以上の空き家では、
壁の中に断熱材が入っていないことが珍しくありません。
また、入っていたとしても、長年の湿気・結露で機能を失っているケースも多い。
つまり、壁がただの“仕切り”になってしまっていて、
外の冷気や熱気をほぼそのまま通している状態。
◉ 構造リスク③:窓・建具の熱損失が大きすぎる
京都の空き家には、
・単板ガラス
・アルミサッシ
・すきま風が入る木製建具
といった、“外とつながった窓”が多く使われています。
ここから熱が逃げ、冷気が入り、
せっかくの断熱リフォーム効果を打ち消してしまう。
◉ 構造リスク④:気密がゼロに近い
隙間風の正体は、気密性の欠如です。
古い家は「自然に風が通るようにできている」と言われますが、
それは同時に、冷気・湿気・熱気も“素通し”ということ。
だから僕たちは、断熱と気密を**“同時に考える”ことを必須にしている。**
構造的に対処されていない空き家は、
「リフォームしても寒いまま」になるリスクが非常に高い。
それを防ぐには、見た目ではなく、構造の内側を先に整えることが必要なんです。
第5章:断熱リフォームは「快適さへの再投資」である
断熱にお金をかけるなんて、贅沢じゃない?
水回りや見た目の工事だけでも十分じゃないか?
そう感じる人がいるのも、正直よくわかります。
でも、僕は断熱リフォームを「贅沢」ではなく、
**“快適に生き直すための再投資”**だと伝えたい。
◉ 快適さとは、“空気が整っている”という体感の連続である
たとえば、断熱された家に住むと——
- 朝、起きた瞬間の空気が冷たくない
- キッチンに立っていても、足が冷えない
- 洗面所で震えることがない
- 子どもが床に座って遊んでいる
これらすべてが、“目に見えない快適さ”の恩恵です。
体の動き・気持ち・暮らしの余裕が変わる。
◉ 空き家リフォームにこそ、「空気を整える」価値がある
空き家は、単に古い家ではありません。
それは、新しい暮らしの器であり、未来の土台です。
だからこそ、
「見た目だけ整えて終わり」ではなく、
“中身から再設計する”リフォーム=断熱の再投資が意味を持つ。
◉ 健康・光熱費・家族の時間。すべてに繋がっていく
断熱がしっかり効いている家では、
ヒートショックリスクが減り、暖房効率が上がり、
家族が自然にリビングに集まるようになる。
それは単に「暖かい家」ではなく、
**“暮らしやすさの質が底上げされた家”**なんです。
ゴウさんのような設計者が見るのは、
素材や数値の性能だけじゃない。
**「この空間で、ちゃんと呼吸できるか」**という問いです。
だからこそ、断熱リフォームは未来の自分に対して贈る、
静かな再投資なんだと、僕は思います。
第6章:補助金で損をしないために ― 断熱が“後回し”になると起きること
「補助金が出るなら、今がチャンスだと思って…」
そう言ってリフォームを進めた人が、あとで寒さに悩まされるケースは本当に多いです。
補助金制度は確かに魅力的です。
・長期優良住宅化リフォーム補助金
・こどもエコすまい支援事業(※内容変更あり)
・自治体独自の空き家改修支援制度
など、一定条件を満たすことで数十万円〜百万円単位の支援が受けられることもあります。
でもここに大きな落とし穴があります。
「補助金ありき」で設計を進めると、
暮らしの本質からズレた選択になる。
◉ よくある失敗例:「設備は最新、でも寒い」
補助金要件のために、
・断熱等級をギリギリ満たす窓交換のみ
・給湯器の高効率化だけ
・断熱施工は「後から考える」でスルー
これでは、外側の数字だけ整えて、中身が空洞の家になってしまいます。
そして冬が来ると、こうなる。
- エコキュートは入ったけど、脱衣所は凍える
- 窓は新しくなったけど、床と壁から冷気が漏れている
- ヒートショック対策としては不十分
補助金が出た=正しい選択だった、ではない。
◉ 「制度の枠内で満足」するか、「暮らしにとって本当に必要な選択」をするか
もちろん、補助金は活用すべきです。
でもそのためには、まず自分たちの暮らしの基準を明確にしておくことが必要です。
僕が考える順番はこうです:
- 暮らしの課題を言語化する(寒さ/湿気/使いにくさ)
- 設計と断熱の優先順位を整理する
- そのうえで、補助金の条件に「寄せていく」
補助金に合わせて設計を“変える”のではなく、
**自分たちの暮らしの思想に、制度を“活用する”**という感覚が大切です。
第7章:僕がリフォーム工事で“空気設計”を最初に考える理由
「どこからリフォームすればいいですか?」
この質問をされたとき、
僕はいつもこう答えます。
「まず、“空気”から考えましょう」
これは、設計者としての経験でもあるし、
何より、人が“気持ちよく生きていける家”をつくるための原則でもあります。
◉ 空気は図面に描けない。でも、暮らしを決定づける
僕たちは断熱材や窓の性能、設備のグレードを数字で語れる。
でも、「深呼吸できるかどうか」は、数値では語れません。
—
・朝起きたときのひんやり感がない
・湿気がこもらず、気分も重くならない
・ストーブをつけっぱなしにしなくていい
・冬でも、靴下を脱いで床に座れる
こうした“何でもない日常”を叶えるのが、空気設計の力です。
◉ 空き家こそ、「中身から設計し直す」チャンス
古い家は、建物の味わいもあります。
でも“暮らしの質”は、味わいだけでは保てない。
だから僕は、古い家の中に新しい空気を設計するというアプローチをしています。
- 床下の冷気を断ち切る
- 壁と天井に断熱と気密を仕込む
- 窓を高性能にして熱の出入りを抑える
- 換気経路を明確にして湿気を逃す
◉ 僕の見積もりには、思想が入っている
僕は見積もりを「ただの金額表」だとは思っていません。
それは、**その人の暮らしに対して僕が書く“設計の手紙”**です。
だから僕は、「断熱一式:50万円」なんて表現では終わらせない。
どこに、なぜ、どういう順番で、何を入れるのかを、ちゃんと説明する。
なぜなら、それが信頼につながる設計だから。
空気を整えるということは、
ただ“家を良くする”ことじゃなくて、
**「この家で生きていく人の未来を整えること」**だと思っています。
それが、僕が“空気設計”を最初に考える理由です。
🌿 もっと深く、もっと自由に。暮らしの選択肢を広げたいあなたへ
家づくりに、正解なんてありません。
でも、「これなら、自分たちらしく暮らせそう」と思える選択肢は、ちゃんとあります。
そのために、僕たちは情報を届けています。
🟢 お問合せはこちら|あなたの想いを、直接聞かせてください
ご相談・ご質問など、小さなことでも大丈夫です。
👉 お問い合わせフォームへ
📚 Kindle書籍|深呼吸したくなる家を、設計する。
なぜ僕は“空気”にこだわるのか?暮らしと温熱の思想を綴った一冊。
👉 Amazonで読む
📥 無料PDF|京都で後悔しない断熱・リノベの教科書
見積もり・費用・空気設計を図解で解説。
👉 PDFを今すぐダウンロード
📝 note|現場の言葉と想いを、より深く綴っています
図面には載らない“暮らしの話”を、noteで語っています。
👉 noteを読む
🫧「知ってから選ぶ」が、いちばん後悔の少ない