京都の家が寒い理由と断熱リフォームの正しい始め方

中古リノベ
  1. 第1章|京都の家が寒い本当の理由
    1. ①「底冷え」とは、放射冷却と地表の冷気が室内に侵入すること
    2. ② 京都の住文化は“開け放つ”ことを前提にしていた
    3. ③ 現代の暖房機器だけでは“断熱設計の穴”を埋めきれない
  2. 第2章|断熱材は“何を使うか”より“どう納めるか”
    1. ① 高性能グラスウールを選ぶ理由は「ちょうどいいバランス」
    2. ② 断熱性能は「すき間」で失われる
    3. ③ 京都のリフォーム、リノベーション現場では「納まりとの戦い」がある
    4. ④ 「何を入れるか」より「どう丁寧に納めるか」
  3. 第3章|断熱と湿気はセットで考えるべき理由
    1. ① 壁の中で起きる“見えない結露”が家を壊す
    2. ② 調湿性のない断熱材は、適切な納まりが命
    3. ③ 自然素材は“調湿”でカバーできるが、万能ではない
    4. ④ 京都で断熱するなら「湿気との設計戦略」が不可欠
  4. 第4章|断熱は“未来の暮らしやすさ”を買う行為
    1. ① 暮らし方は変わる。断熱は変わりにくい
    2. ② 断熱性能は「あとで直す」のが最も難しい
    3. ③ 「将来の健康」と「資産価値」にも影響する
    4. ④ 断熱リノベは、「暮らし方に意思を持つこと」
  5. 第5章|まとめ:断熱は素材ではなく設計の哲学
    1. ① 設計思想の中に断熱はある
    2. ② 京都という特殊な土地では、断熱の哲学が問われる
    3. ③ 僕たちが届けたいのは、「深呼吸したくなる断熱設計」
    4. まとめ:断熱は「暮らしを整える根幹」であり、「未来を守る哲学」
    5. ▶ 京都で「空気を整える断熱」、始めませんか?

第1章|京都の家が寒い本当の理由

「エアコンをつけてるのに寒い」
「ストーブの前から動けない」
──京都に住んでいる人から、冬になるとよく聞く声です。

なぜ京都の家は、こんなにも寒いのでしょうか?

その答えは単純ではありません。
京都特有の気候条件・住文化・住宅構造が絡み合い、“底冷えする家”が生まれてしまっているのです。

①「底冷え」とは、放射冷却と地表の冷気が室内に侵入すること

京都の冬の寒さは、気温だけでは説明できません。
とくに朝晩の“底冷え”は、体の芯まで冷たく感じる感覚です。

これは、

  • 放射冷却によって夜間に外気温が急低下する
  • 断熱の弱い床下や開口部から冷気が侵入する
  • 室内の熱が奪われ続け、エアコンが効かなくなる

という、構造的な熱損失と湿度の滞留によって生じます。


② 京都の住文化は“開け放つ”ことを前提にしていた

町家や戦後の木造住宅は、「風が通る家」が美徳でした。
これは夏の蒸し暑さに対応するために理にかなっていましたが──

  • 壁が薄い、あるいは断熱材がそもそも入っていない
  • 開口部が多く、隙間風が生じやすい
  • 土壁や板張りが断熱よりも通気重視の構造

つまり、もともと“冬の快適性”が想定されていない家が多いのです。


③ 現代の暖房機器だけでは“断熱設計の穴”を埋めきれない

「最新のエアコンを入れたのに寒い」
「床暖房をつけても足元が冷たい」

これらは、暖房機器の問題ではなく、
“逃げる熱”と“入ってくる冷気”を止められていない断熱構造の限界です。

特に断熱リフォームでは:

  • 壁や天井を全部解体できない場合も多い
  • 既存構造との“納まり”に制限が出る
  • 古い家の基礎や屋根が“断熱しづらい”構造になっている

だからこそ、京都の断熱リフォームは、“理想”より“現実対応力”が求められるのです。

第2章|断熱材は“何を使うか”より“どう納めるか”

断熱材の話になると、よく出てくるのが「どれを使えばいいか?」という質問。
セルロースファイバー、羊毛、グラスウール、ウレタン…。

たしかに素材ごとの違いはあります。
でも実際に現場に立っていると、こう思うことが多いんです。

「性能差より、施工精度と納まりの方が断熱の良し悪しを決める」

つまり、“断熱材そのもの”よりも、“それをどう入れるか”のほうが本質的に重要なんです。


① 高性能グラスウールを選ぶ理由は「ちょうどいいバランス」

僕たちが基本にしているのは、高性能グラスウール(16K〜24K)+気密シート。
その理由は明快です。

  • 熱伝導率が低く、厚みで性能調整がしやすい
  • リフォーム現場の複雑な構造にも柔軟に対応できる
  • 一部交換や補修も比較的簡単
  • 自然素材に比べてコストパフォーマンスが高い

京都のように、予算・施工条件・気候への対応が求められる地域には現実的な選択肢なんです。


② 断熱性能は「すき間」で失われる

たとえば、UA値が0.46という高性能を誇る断熱材を使っていても、
すき間ができればそこから冷気が流れ込み、実際の体感温度は大きく下がります

  • 柱と断熱材の間に2mmのすき間
  • 電気配線の周囲が手つかず
  • サッシまわりの施工が甘い

こうした“施工精度の乱れ”が、断熱材の能力を帳消しにしてしまうんです。


③ 京都のリフォーム、リノベーション現場では「納まりとの戦い」がある

とくに町家や築50年以上の木造住宅では、こんな問題がよくあります:

  • 柱が真っ直ぐじゃない
  • 壁の厚みが場所によって違う
  • 土壁や下地材がそのまま残っている

こうした現場では、“カタログスペックの断熱材”ではなく、
“現場で対応できる断熱材”を選ぶべきなんです。

その意味でも、カット性が高く、隙間充填しやすいグラスウールはリノベとの相性がいい。


④ 「何を入れるか」より「どう丁寧に納めるか」

結局、断熱材に求められるのは性能ではなく、空気の質をつくる力です。

そしてそれは、素材選びだけでなく、
現場での納め方・職人の技術・設計の気配りによって決まります。

僕たちは、「素材よりも納まりを信じろ」とチームでいつも言っています。
それは、性能が暮らしにちゃんと届くようにしたいから。

第3章|断熱と湿気はセットで考えるべき理由

断熱の話をしていると、多くの人が「熱を遮ること」に集中します。
でも、実は**“湿気”をどう扱うか**が断熱性能の持続性と健康性を左右する大きなカギになります。

とくに京都のように湿気が多く、冬も乾燥しきらない気候では、
「断熱×湿気」の相性が悪いと、暮らしやすさどころか構造に悪影響が出ることもあるのです。


① 壁の中で起きる“見えない結露”が家を壊す

「結露」と聞くと、窓ガラスの表面についた水滴を想像する人が多いですが、
実際に怖いのは、**壁の中や床下、天井裏で起きる“内部結露”**です。

これは、

  • 室内の暖かく湿った空気が
  • 断熱材のすき間や気密の甘い部分から壁体内に侵入し
  • 外気で冷やされて水分として現れる

という流れで発生します。

この水分がグラスウールなどの断熱材を濡らし、性能を下げたりカビや腐朽菌を呼び寄せたりするわけです。


② 調湿性のない断熱材は、適切な納まりが命

グラスウールやウレタンなど、いわゆる無機系・化学系断熱材は調湿性能がほぼゼロです。
そのため、湿気に対しては**“遮る”か“逃がす”かを設計段階で決める必要がある**。

具体的には:

  • 室内側に防湿層(気密シート)を設ける
  • 外壁側に通気層を確保する
  • 湿気が滞留しないように空気の抜け道を設計する

こうしたディテールを押さえていないと、どんな断熱材でも湿気で劣化する可能性があるんです。


③ 自然素材は“調湿”でカバーできるが、万能ではない

セルロースファイバーや羊毛断熱など、自然素材系の断熱材はある程度の吸放湿性を持ちます
そのため、結露リスクは軽減されることがある。

でも──

  • 湿気を吸っても完全に乾くとは限らない
  • 壁体内で湿度が高い状態が続けばカビや腐朽は起きる
  • 水濡れ後の乾燥・交換が難しく、復旧コストが高い

つまり、“調湿性があるから安心”とは言いきれないんです。


④ 京都で断熱するなら「湿気との設計戦略」が不可欠

とくに町家のように土壁・漆喰・無垢材などが残る家では、
“既存素材の湿気挙動”に配慮しながら断熱設計する必要がある

  • 土壁スタイロフォームを貼り付ける施工方法を取る施工会社もあるが、現実的に相性が合わない
  • 小屋裏や床下に湿気がこもる構造が多い
  • 通気を確保できない場所はあえて断熱しない判断もありうる

断熱は、“素材の性能”を活かす技術というより、家全体の“空気の動きと湿度の設計”の一部なんです。

第4章|断熱は“未来の暮らしやすさ”を買う行為

断熱というと、「今この寒さをどうにかしたい」という想いから始まることが多いです。
でも、僕たちは断熱を「今の快適性を買うもの」ではなく、
“未来の暮らし方を整えるための投資”だと考えています。

とくにリノベーションでは、「今さえ良ければ」ではなく、
10年後・20年後にどう感じるか、どう住み継がれていくかまで視野に入れておく必要があるのです。


① 暮らし方は変わる。断熱は変わりにくい

  • 子どもが巣立つ
  • 在宅ワークが増える
  • 親と同居するかもしれない
  • 売却や賃貸化を考える日がくるかもしれない

暮らしは変わります。でも、壁の中に入っている断熱材は簡単に変えられない

だからこそ、“今の快適さ”ではなく、“変化に対応できる性能と構造”を選ぶことが大事なんです。


② 断熱性能は「あとで直す」のが最も難しい

設備機器や内装は、後から交換・リニューアルができます。
でも断熱は──

  • 壁を壊さないと手が届かない
  • 施工時の気密処理が残っていないと再現できない
  • 交換コストが大きく、家全体の工事になりやすい

つまり、**リノベの最初にやっておくべき“最重要の工事”**なんです。


③ 「将来の健康」と「資産価値」にも影響する

断熱性能が高いと、冷暖房効率が良くなり、

  • 家の中の温度差が減る→ヒートショックの予防
  • 結露・カビの抑制→喘息やアレルギーの改善
  • CO₂やPM2.5の滞留も少ない→空気の質が良くなる

さらに将来、家を売る・貸すとなった時にも、

  • 断熱等級や省エネ性能が資産価値の判断基準になる時代が来ています。

つまり断熱は、“暮らしの質”と“将来の価値”の両方を高める行為なんです。


④ 断熱リノベは、「暮らし方に意思を持つこと」

断熱材は、単なる材料じゃありません。
それは**「自分たちがどんな空気で暮らしたいか」「家族にどんな快適さを与えたいか」**という、
住まい手の“暮らし方の意思表示”です。

京都という気候の中で、断熱を考えることは、
“なんとなく暮らす”をやめて、“整えて住む”という選択をすることでもあります。

第5章|まとめ:断熱は素材ではなく設計の哲学

断熱について考えるとき、多くの人が「何を使えばいいか」「どれが高性能か」といった比較に目を向けます。
でも、僕たちはあえてこう言いたいんです。

「断熱は、性能の話ではなく、設計の哲学だ」と。

それは、“どんな空気をつくりたいか”からすべてが始まる設計行為だからです。


① 設計思想の中に断熱はある

断熱材の種類、厚み、納まり方、気密処理、通気層の設計、換気との関係性…。
それらはすべて一貫した設計思想があるかどうかで変わってきます。

素材を単品で選んでも、効果は限定的です。
「この断熱材をどう扱うか」こそが、設計力であり哲学なんです。


② 京都という特殊な土地では、断熱の哲学が問われる

夏は蒸し暑く、冬は底冷え。
通風が取りにくく、町家のように開けられない構造が多い。
景観や構造に制限があり、自由な設計ができないこともある。

こうした京都の条件下では、
カタログ通りの設計ではうまくいかない。

だからこそ、**「その家の空気に、どう断熱が寄り添えるか」**という視点が必要です。


③ 僕たちが届けたいのは、「深呼吸したくなる断熱設計」

性能値の高さだけでなく、

  • 空気が軽い
  • 湿気がこもらない
  • 体感温度が自然に近い
  • メンテナンスしやすい
  • 子どもが元気に走り回れる

そんな空間をつくるための断熱。
それが、“深呼吸したくなる家”の根っこにある考え方です。


まとめ:断熱は「暮らしを整える根幹」であり、「未来を守る哲学」

素材選びで迷うなら、まずは暮らしを描いてみること。
施工方法で迷うなら、現場の納まりを信じられる職人に出会うこと。

そして、自分たちがどんな空気で、どんな季節をどう過ごしたいかを言葉にしてみること。

断熱は、ただの工事じゃない。
それは「これからの暮らし」に、芯を一本通す行為なんです。

▶ 京都で「空気を整える断熱」、始めませんか?

断熱は、家のためではなく、家族の空気のためにある。
まずは“軽くてあたたかい空気”がある暮らしを、体験してみてください。

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