- 第1章|朝、目覚めたときの“空気の重さ”。それは断熱だけの問題ではありませんでした
- 第2章|「結露やカビくらい、たいしたことない」——それ、本当に大丈夫ですか?
- 第3章|その断熱材、誰のためのものですか?──素材選びは“空気の性格”を決める
- 第4章|「断熱リフォームすれば快適」は幻想──“換気”で暮らしは変わる
- 補章|「快適性は“空気の哲学”でつくられる」──断熱・気密・換気の三位一体
- 第5章|空気をリノベーションするという発想
- 第6章|「“結露とカビ”の正体は、断熱不足じゃなく“換気経路の設計不足”だった」
- まずは“空気を動かす”ことから始めよう|サーキュレーター活用ガイド
- まとめ|断熱より“空気の整え方”が、暮らしを変える
- ▶ 次に読むべき記事
第1章|朝、目覚めたときの“空気の重さ”。それは断熱だけの問題ではありませんでした
京都の梅雨が近づくと、朝の空気に違和感を覚えることが増えてきます。
空気がまとわりつくように重く、サッシの下にはうっすらと水滴が浮かび、洗濯物は前日のまま。
「またこの季節が来たか」——そんなふうに感じてしまう朝が、毎年のように続いています。
僕の家も例外ではありませんでした。
ドライモードのエアコンを動かしても、部屋の空気はどこかよどんでいて、結露も完全には防げない。
ふと窓辺を見れば、結露と一緒にたまるホコリに、気づかないふりをしたくなることもあります。
そんな毎日の中で、僕はふと考えるようになりました。
「これは断熱の問題なのか?」と。
結露やカビは、“空気の流れ”が止まっているサイン
断熱材を入れれば暖かくなる。そう思っていた時期もあります。
でも実際には、暖房を入れても床は冷たいまま、空気は重く、窓は濡れる——。
この違和感の正体は、空気がうまく流れていないことでした。
湿気が逃げ場を失い、家の中に滞留している。
結露やカビは、暮らしの中の「空気の設計」が破綻しているサインだと、今では感じています。
京都の家に多い“空気の閉塞”。断熱リフォームだけでは変わりません
京都は、湿度が高く、冬は底冷えする地域です。
住宅密集地では通風や日射も限られ、どうしても空気の滞留が起きやすい環境にあります。
それに加えて、中古住宅の多くは断熱性能が不十分なまま。中途半端なんですね。
そこに高性能な断熱材だけを追加しても、空気の流れが設計されていなければ、逆に空気がこもってしまうのです。
第2章|「結露やカビくらい、たいしたことない」——それ、本当に大丈夫ですか?
結露は、冬や梅雨の風物詩のように見えます。
でも、毎朝サッシの下に広がる水たまりを見て「まあいいか」と思っているうちに、見えない影響がじわじわと積もっているかもしれません。
僕も以前は、そこまで深刻に考えていませんでした。
でも、ある時ふと気づいたんです。
「この空気の中で、僕たちは毎日呼吸してるんだよな」と。
結露やカビは、“空気の老化”の始まり
空気は目に見えません。
でも、そこに漂っているカビの胞子や、湿度に引き寄せられるダニ、ホコリ、化学物質——それらは、私たちの体に毎日少しずつ影響を与えています。
特に、小さなお子さんや高齢のご家族がいるご家庭では、
咳が続く、くしゃみが止まらない、朝起きたときに喉がイガイガする——そんな不調が、実は「空気の質」と関係していることも少なくありません。
なぜ、結露やカビに気づかないのか?|“予防”という発想が、暮らしの中に根づいていない?
正直な話、多くの人が「自分には関係ない」と思っています。
家のことも、健康のことも、「何か起こってから考える」スタイルが主流なんですよね。
でも、家づくりやリノベーションにおいては、“気づいたときにはもう遅い”という事態が本当にあるんです。
・壁の中がカビだらけになっていた
・柱が腐食してシロアリ被害が出ていた
・家族の健康がなんとなくずっと優れなかった
これらはすべて、空気の質に無関心だったことから始まっているケースです。
断熱リフォームしたから暮らしやすいはNG
すでにある程度、断熱された住宅に住んでいる人でも、
「なぜか体が冷える」「湿気がとれない」「空気が重い」と感じることはあります。
それは、断熱性だけでは解決できない“空気のバランスの不均衡”があるからです。
たとえば、
・換気計画がうまく働いていない
・素材が湿気を吸わず、逃げ場がない
・気密が不完全で、汚れた空気が循環している
——こんな状態の中で、どれだけ断熱性能を上げても、快適性は生まれません。
第3章|その断熱材、誰のためのものですか?──素材選びは“空気の性格”を決める
「断熱材って、たくさん種類があるけど、何が違うの?」
「高い素材を選べば、きっと快適になるよね?」
そう思って調べ始めた方が、たどり着くのが“断熱材の比較サイト”だったりします。
でも、本当に大切なのは「性能」より「性格」。
つまり、**あなたの家の空気に合った断熱材は、どれなのか?**という視点なんです。
素材は“空気のパートナー”。暮らしのクセと噛み合わないと意味がない
京都の中古住宅、とくに町家や狭小住宅では、家の形が複雑で、まっすぐな壁なんてほとんどありません。
曲がった柱、傾いた床、断面がバラバラな壁…。
こういう家に、ただ“高性能な断熱材”を入れても、その性能は十分に発揮されません。
僕たちはいつも、こう考えます。
「性能より、“現場でちゃんと機能するか”が大事」
だからこそ、僕たちは高性能グラスウール+気密シート施工を選んでいます。
理由はシンプルです。
- 変形に対応できる柔軟性
- コストと供給の安定性
- 施工技術があれば性能を再現しやすい
- そして、空気の動きを制御しやすいから
「断熱材=空気を守るフィルター」という考え方
断熱材は、単なる“熱を防ぐ壁”ではありません。
実は、
- 音を吸収する
- 熱の移動を緩やかにする
- 空気のスピードを調整する
といった、“空気の性格”に直接関わる役割を担っています。
素材は“空気の翻訳者”になる
断熱材を選ぶとき、よく「どれが高性能か?」が語られます。
でも僕たちはこう伝えたい。
「どんな空気をつくりたいですか?」
- 静かで、しっとりとした空気
- 朝、目が覚めたときに鼻がムズムズしない空気
- 帰宅して、ホッとする“やわらかい温度”の空気
それを実現する素材と施工方法が、家づくりの要なんです。
第4章|「断熱リフォームすれば快適」は幻想──“換気”で暮らしは変わる
高性能な断熱リフォームをしても、こう感じた人は少なくありません。
- 「なんか、まだ寒い気がする」
- 「夏はやっぱりムワッと暑い」
- 「窓まわりに結露がつづいてる」
こうした声は、実際に施工された方から届く“リアルな後悔”です。
原因は一つ。「断熱すればすべて解決する」という誤解です。
京都という土地は、“断熱リフォームだけ”では快適にならない
京都は全国でも屈指の断熱難所です。
- 冬は底冷え。体感は東北並み
- 夏は高湿度。夜間でも熱がこもる
- 家が密集し、通風が成立しない
- 狭小敷地で日射が取れない
このような環境では、“閉じ込める”だけの断熱では逆に不快になることがあります。
熱や湿気が逃げない → カビや結露が発生する
空気が動かない → におい、埃、湿気がこもる
気密だけ高い → 窓を開けるしかない暮らしになる
空気が動くことでしか、快適性は手に入らない?
僕たちが京都で大切にしているのは、“断熱だけじゃなく、空気の循環設計”を行うこと。
そのために意識していること:
- 気流止めと通気層で、熱と湿気に“逃げ道”をつくる
- 素材で呼吸させる(漆喰・無垢材・和紙など)
- 換気経路を先に設計し、空気を“動かす仕組み”をデザインする
つまり、**断熱は“守る”手段であって、それだけでは“整わない”**ということ。
快適とは、「空気の整い方」で感じるもの
気温が22℃あっても、冷たい床に立てば「寒い」と感じます。
一方で、18℃でも空気が軽く、湿度が整っていれば「心地いい」と感じられる。
僕たちはいつも、こう問いかけます。
あなたがほしいのは、“数値の家”ですか?
それとも、“深呼吸したくなる家”ですか?
補章|「快適性は“空気の哲学”でつくられる」──断熱・気密・換気の三位一体
「断熱は入れています」「気密はやってません」「換気は第3種です」
──これはよく見かける“施工内容の会話”ですが、正直、それだけでは何も見えてきません。
なぜなら、快適性とは“性能値”の話ではなく、“空気の質”の話だからです。
僕たちが現場で肌で感じてきたこと。
それは、断熱・気密・換気の3点セットが“思想としてつながっているかどうか”が、暮らしを決定づけるということです。
「断熱だけしても寒い」という現象
「断熱材をしっかり入れたのに、なんでこんなに寒いんですか?」
──それは、空気が動いていないからです。
断熱はあくまで“温度の逃げを防ぐ壁”。
でもその内側で湿気がこもり、熱が滞り、空気がよどむと、不快感が残る。
それを“整える膜”が、気密であり、
空気を入れ替える仕組みが、換気なんです。
暮らしを支える“空気の仕組み”とは
- 断熱で外からの影響を遮断する
- 気密で空気の逃げ・侵入をコントロールする
- 換気で呼吸するように空気を入れ替える
この三つは、単なる技術ではなく、**「空気を設計するための前提条件」**です。
京都のように湿度が高く、通風が確保しにくい土地では、
この3点セットが機能してはじめて、結露やカビの抑制、湿度の安定、温度差の緩和が実現できます。
「気温」ではなく「空気」で測る快適性
例えば──
- 室温は22℃あるのに、足元が冷たい
- 湿度は50%なのに、空気が重く感じる
- 外より静かなのに、なぜか頭がぼーっとする
これらは、数字では測れない“不快の正体”。
だから僕たちは、数値ではなく「深呼吸したくなるかどうか」で家の質を測ります。
第5章|空気をリノベーションするという発想
「リノベーションで何を変えるか?」
多くの人は、間取り・内装・設備機器、そして断熱性能を挙げるかもしれません。
でも、僕がいま伝えたいのは──
空気をリノベするという視点です。
目に見えないものを整える。それが、いちばん暮らしを変える。
空気は、感じるもの
家に帰った瞬間に「なんか空気が重いな」と思うことはありませんか?
- 洗濯物が乾かない
- サッシの結露に目をつぶる毎日
- 湿気が抜けず、ジメジメとまとわりつくような感覚
これは、素材や間取りのせいではなく、
空気の“流れ”と“抜け”が設計されていないから起きる現象です。
快適な空気は、設計できる
家の中の空気は、以下の要素でつくられます:
- 温度(断熱)
- 湿度(素材と気密性)
- 流れ(換気と通気)
- 浄化(自然素材や換気設備)
これらをひとつの“空気設計”として再構成することで、
たとえば朝起きたときの「湿気で不快」がなくなったり、
エアコンを使っても「足元が冷える」が解消されたりする。
断熱だけでは足りない。気密だけでも足りない。
空気の全体設計こそが、リノベーションの中核にあるべきなのです。
空気を変えると、暮らしが変わる
室内の空気が入れ替わると、気持ちがすーっと楽になる感じがします。
身体が動きやすくなり、呼吸が深くなる。眠りの質も変わる。
それは“温度”だけで語れない、体と心への作用です。
だからこそ、僕たちは「空気リノベ」という言葉を使います。
空気を変えることは、暮らしの“質”を根本から変えること。
第6章|「“結露とカビ”の正体は、断熱不足じゃなく“換気経路の設計不足”だった」
「サッシの下に水がたまるんです」
「押し入れの壁にカビが出てきてて……」
「朝起きると、なんとなく部屋がジメジメしてる気がする」
──これは、実際に相談された声たちです。
多くの方が、「それは断熱が弱いからかな?」と考えます。
でも僕たちは、それだけでは説明がつかないことを、現場で何度も目にしてきました。
1|“湿気の正体”は「暮らしの中」にある
湿気や結露、カビの問題。
これは、気候のせいでも、素材のせいでもなく、「空気の動線」と「暮らし方の癖」の蓄積で起きていることがほとんどです。
- 冬の朝、起きた時のジメジメ感
- 洗濯物が乾かない部屋の“重たい空気”
- 部屋干し+ドライ運転で出る窓の結露
- サッシ下に溜まるホコリと水
これらはすべて、断熱・気密・換気の設計がうまく連動していないことから始まっています。
2|「結露やカビは大したことない」は大きな誤解
結露・カビが起きると──
- ダニが繁殖しやすくなる
- 壁体内に湿気が入り、柱が腐朽する
- アレルギー・喘息など健康リスクが増す
けれど、多くの人がこう思っています:
「ちょっと拭けば済むし」「うちだけじゃないし」「そこまで深刻じゃないよね」
でも、“日々吸っている空気”の中に微細な菌やアレルゲンが含まれているとしたら──
それは、知らないうちに毎日、健康にダメージを与えているということなんです。
3|なぜ中古住宅で“湿気問題”が起きやすいのか?
中古住宅の多くが、断熱も気密も換気も中途半端です。
- 壁の中に断熱材がない
- サッシの隙間から空気が漏れている
- 換気口がない/機能していない
でも、それを一気にすべて改修するのは現実的ではありません。
4|“快適さ”は、断熱スペックではなく「暮らし方とのバランス」で決まる
現代の家には、ある程度の断熱は確保されていることが多い。
でも、なぜか寒い。重い。結露が出る。眠りが浅い。
それは、家そのものの性能と、暮らし方とのバランスが崩れているからです。
- 水回りにお金をかけたが、床下が断熱されていない
- 気密を重視せず、換気だけ機械で補おうとしている
- リビングは快適でも、脱衣室やトイレが極端に寒い
このバランスのズレが、快適性を奪っていくのです。
まずは“空気を動かす”ことから始めよう|サーキュレーター活用ガイド
「いま、この家で、何ができるだろう?」
そう考えたとき、最も現実的で、最も即効性のある方法があります。
それが──サーキュレーターで空気を動かすということ。
なぜ、空気を“動かす”ことが大切なのか?
結露やカビ、湿気、におい──
それらはすべて、「空気がそこに滞っている」ことで起きる問題です。
- 洗濯物を部屋干ししても、空気が動かなければ湿気はこもる
- 換気扇を回していても、空気の通り道がなければ入れ替わらない
- 家の中に“空気が動かない場所”があると、そこから結露やカビが始まる
サーキュレーターは、それを最も手軽に、確実に改善する装置です。
具体的に、どこで・どう使えばいい?
▶ 1|朝の湿気がこもる寝室に
起床後、窓を開けてサーキュレーターを外へ向けて回す。
これだけで、室内の湿気と空気のよどみが一気に外へ抜けます。
▶ 2|洗濯物の部屋干しスペースに
サーキュレーターを「対角線方向」から当てるように設置。
風を当て続けることで湿気が偏らず、乾きが早くなる&結露が出にくくなる。
▶ 3|北側の壁や押し入れ、カビが出やすい場所に
空気が滞りやすい場所に、ゆるく風を当てるだけでも効果があります。
直接風を当てるより、空気全体が「循環する」イメージで設置しましょう。
ポイント:エアコンとの“併用”がカギ
サーキュレーターは単独でも効果がありますが、
エアコンと併用することでその効果は倍増します。
- 冷暖房の効率アップ
- 室内の温度ムラを解消
- エアコンの設定温度を下げられる(=電気代の節約)
特に「冷房が効きにくい」「足元が冷えない」などの悩みは、サーキュレーター1台で大きく改善されます。
最後に:小さな1台が、暮らしを変えるきっかけになる
断熱リノベは、確かに大きな投資です。
でもその前に、まずは「空気を動かす」ことから始めてみてください。
サーキュレーターは数千円で手に入る、暮らしの“体感温度”を変える第一歩。
「リノベするべきなのかな?」
「どこから改善すればいいの?」
そんな迷いを感じたら、まずは1台、空気を巡らせてみてください。
あなたの“感覚”が、答えを教えてくれるはずです。
まとめ|断熱より“空気の整え方”が、暮らしを変える
僕たちは、断熱や気密、換気といった「性能」の話をしてきました。
でも、本当に伝えたかったのは──“空気の感じ方”が暮らしを決めるということです。
たとえば、朝の湿気。
洗濯物の乾かないもどかしさ。
サッシの下に溜まる埃と結露の跡。
それらを「仕方ないこと」として見過ごしてきた人も多いかもしれません。
でもそれは、空気がうまく流れていないという、小さなサインかもしれません。
そして、それは断熱リノベではなく、**“空気のリノベ”**から始まるのかもしれません。
まずは、たった一つの行動から
「リノベなんて、まだ先の話」
「お金も時間もかけられない」
それでも──空気を変える第一歩は、誰にでも踏み出せます。
サーキュレーターを置く。
寝室の風を動かす。
部屋干しの湿気を循環させる。
そんな小さな行動が、
やがてあなたの「感覚」を変えてくれる。
快適性は、数値では測れない。体が教えてくれる
家が変わると、人の呼吸も変わる。
呼吸が変わると、思考や感情にも変化が起きる。
僕たちが目指すのは、「高性能住宅」ではありません。
**“深呼吸したくなる家”**です。
快適さとは、数値ではなく“体の実感”から生まれる。
だからこそ、あなた自身の感覚を信じて、動いてほしい。
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この空気の重さに、あなたはもう気づいているはずです。
だったら、あとは──動くだけです。
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