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カビが出ない家は何かが違う?|湿気を逃す家とは?

カビっぽいのは家のつくりの問題?|結露しやすい家には、必ず“共通する構造的なミス”がある

カビが出る家には、共通点がある

「たまたまカビたんです」
「古いから仕方ないですよね?」

──そんなふうに言われることが、現場ではよくあります。
でも僕の感覚では、そうじゃない。

カビが出た家には、“起きるべくして起きた構造”がある。

それは偶然でも、経年劣化でもない。
設計と施工の初期段階で、すでに“カビへのルート”が仕込まれていた──そう言っても過言ではないと思っています。

「この家、きっとカビてる」と思えるポイントがある

僕たちプロが現地調査に入るとき、最初に注視するのは「見た目」じゃありません。
におい。空気感。微細な手触り。押し入れの奥。天井裏の静かな気配。

そこに、「あ、この家、構造のどこかで空気が止まってるな」と感じるヒントがあります。
そして実際に開けてみると──

  • グラスウールが垂れている
  • 石膏ボードの裏が黒ずんでいる
  • 配管まわりから湿気が入り、壁の内側がぬるい

そうした「見えないダメージ」は、住まい手にはわからないレイヤーで、静かに蓄積しているんです。

カビが出る家の“設計と施工の共通点”

|現場でよく見る「空気が止まった場所」4つの症例

「カビの場所」は“設計の穴”を教えてくれる

カビはただの汚れではない。
それは、**空気が動いていない/湿気が逃げられない場所に起きる“結果”**です。
だから僕たちは、カビを見たとき、まず「なぜそこに出たのか?」を逆算して構造を見直します。

1. 天井裏:断熱材が露出・気密ラインが切れている

  • グラスウールがむき出し+ホコリまみれ
  • 気密シートが途中で切れていて、湿気が漏れている
  • 排気ダクト周辺に断熱が施されておらず、冷却・結露の温床に

→ 湿気が断熱材に吸収され、重みで垂れて“湿気ポケット”になる

2. ユニットバス背面・洗面所・トイレの壁裏

  • 高湿度+閉鎖空間で空気が滞留
  • 配管貫通部の気密処理が甘い
  • 防水シートの施工ミスで、外壁側から雨水が回り込む

壁紙は無事でも、裏の石膏ボードや断熱材はズブズブにカビている

3. 北側の収納・押し入れ・階段下など“通気ゼロ空間”

  • 空気が動かない場所に湿気が日常的に溜まる
  • 外壁面の断熱が甘く、外気の影響を受けやすい
  • 内装材が吸放湿性に乏しく、湿気がこもりやすい

布団や衣類ににおいが移る、生活レベルでのダメージが出始める

4. 工事中に濡れた部材を乾かさずに塞いでいる

  • 雨の日に搬入された構造材や断熱材が濡れたまま
  • 高気密ゆえに一度閉じると内部乾燥が困難
  • 換気ルートがまだ未完成のまま密閉される

内部の水分が逃げられず、数ヶ月後にカビ・腐朽が始まる

カビは、構造が崩れているという“設計の通知表”

設計・施工のどこかに、「空気の断絶」「湿気の袋」がある。
カビはその場所を、わかりやすく“浮かび上がらせてくれるサイン”なんです。

だから僕たちプロは、
「どこに出たか」で“構造の弱点”を読む

カビが出ない家は、何が違うのか?

|“湿気が逃げられる設計”には、目に見えない工夫がある

「結露しない家」は、素材ではなく“構造”でできている

自然素材の家にしたのに、なぜかカビが出る──
断熱リフォームをしたのに、結露が消えない──

それは素材や性能の問題ではなく、もっと根本的な
「湿気がどう動くか」への設計配慮がされていない家かもしれません。

この章では、僕が現場で実感してきた
**「カビが出ない家に共通する構造の工夫」**を、生活の視点から紹介します。

1. 押し入れがカビない家には「湿気の逃げ道」がある

  • 押し入れの奥に、壁との間の“空気が動く空間”がある
  • 外壁に接していても、その内側に通気層がある
  • 天井裏や床下につながる、点検口や換気経路がある

カビが出る収納は、ほぼ例外なく“密閉されて空気が動かない空間”です。

2. 洗面所がジメジメしない家には「排湿のルート」がある

  • 換気扇が“閉じられた空間の奥”に取り付けられている
  • 湿気が壁内に侵入しないよう、室内側の気密ラインが連続している
  • 扉を開けたとき、湿気が逃げる動線がある

湿気を止めるのではなく、どこへ動かすか?が家づくりの鍵です。

3. 天井裏にカビが出ない家には「風が通る道」がある

  • 軒裏から棟換気口まで、屋根裏を通る空気の流れが確保されている
  • グラスウールがホコリで覆われず、垂れていない
  • 天井と壁の“取り合い部”で、気密が破綻していないか

小屋裏に空気がこもると、真夏でも真冬でも結露が発生しやすくなります

4. 壁の中が腐らない家には「湿気が抜ける通気層」がある

  • 外壁材と構造体の間に、15mm以上の通気層(胴縁)があるか?
  • タイベックなど透湿防水シートが、湿気だけを外へ逃がす構成
  • 軒裏や基礎に、その湿気の“出口”がちゃんとつながっているか

外壁自体ではなく、その“内側の空気層”が家の健康を守っています。

素材を活かす前に、「空気が動ける構造」をつくる

素材の良し悪しより、空気がどう通るか/湿気が逃げるか
それを考えることが、カビが出ない家・長持ちする家の基本です。

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呼吸する構造”は、後からでもつくれる

|リノベーションでカビ・結露を防ぐためにできること

カビの原因は、素材じゃなく「湿気が逃げられない構造」

「自然素材の壁にしたのに、なぜかカビが…」
「断熱改修したのに、壁の中が湿っている気がする」

それ、素材が悪いのではなく、“空気が通れない構造”が原因かもしれません。

でも大丈夫です。
家の“外側”を変えずとも、リノベーションの中で湿気の逃げ道をつくることは可能です。

1. 通気層の“後付け”はできる

  • 外壁を張り替えるタイミングで、構造体との間に15mm以上の通気層(胴縁)を設ける
  • その外側に透湿防水シート(例:タイベック)を施工し、水は通さず湿気だけ逃す
  • 軒天・基礎にかけて、通気の“出口”が確保できるように設計

「壁が呼吸する」ためには、素材ではなく“空間”を設けることが重要です。

2. 点検口と通気経路を「収納の奥」に設ける

  • 既存収納の壁・床に通気孔(換気口や小さな開口)を設置
  • 床下や天井裏とつながる場合、風の抜け道を確保するだけで湿度が下がる
  • 空気が“止まっている場所”を見つけたら、そこに道をつくる

暮らしの中で“空気を動かす”ための小さな工夫が、カビ予防に直結します。

3. 洗面脱衣室の“壁の中”に注意を向ける

  • 換気扇の位置を“湿気がこもる奥の壁側”に変更する
  • 必要に応じて壁内に通気層 or 排湿ルートを設計(特にユニットバス背面)
  • 内装材に自然素材を使う場合は、必ず空気の抜け道とセットで

高湿度ゾーンは「見える場所」より**“壁の中”の設計が肝心**です。

4. グラスウールの“使い方”に注意する

  • 垂れている/湿っているグラスウールは、結露が止まらないサイン
  • リノベ時には、既存の断熱材を撤去し、必要に応じてウレタン併用で補強
  • 可変透湿気密シートで、湿気の動きをコントロールする層を内側に持たせる

「断熱材は入ってるから安心」ではなく、その状態と密着精度が問われる時代です。

湿気を“出す構造”に変えることで、素材が活きる

自然素材は、“空気がきれいであること”が前提の素材です。
カビを防ぎ、空気を整えることで、素材の魅力も寿命も変わってくる。

だからこそ僕たちは、リノベの段階で“空気の通り道”をつくっておく。
それが、素材に頼らない、本当の意味での“快適さ”だと思うんです。

湿気と空気を制す者が、素材を活かす “快適な空気”は、設計の思想でしかつくれない

自然素材は、“貼るだけ”では働かない

無垢の床、漆喰の壁、和紙の天井──
それだけを見れば、美しく、気持ちが良い家かもしれません。

でも僕たちは、その素材の奥にある“空気の質”を見ています。

素材が持つ力は、空気が整って初めて発揮される。
湿気が滞り、空気がよどむ家では、
どんなに良い素材でも、呼吸はできず、やがて“腐って”いく。

僕たちが最も大切にする原則

それは、「断熱・気密・換気」の三位一体。

断熱だけでは、湿気が抜けない

断熱材を入れることで“熱”は止められても、“湿気”の流れは止められない。
素材が湿気にやられる家は、断熱だけでつくられている。

気密だけでは、空気が澱む

気密を高めることは必要です。
でも、気密だけで空気の質を守ることはできない。
それは“密閉”になりかねない。

換気だけでは、逃げられない

換気設備を入れるだけでは不十分。
空気の“通り道”が設計されていなければ、換気は動かない。
それどころか、湿気が同じ場所に留まり、逆に結露を招く。

だから、僕たちはいつもこう考えています。

「断熱・気密・換気は、“素材の命を守る空気の基盤”だ」

そしてそれは、**リフォームでも、新築でも、地域を問わず必要な“思想”**です。

「設計」って、“空気の未来”を描くこと

設計とは、間取りを引くことでも、図面を描くことでもない。
僕はそう思っています。

設計とは、
その家に住む人の未来の空気を、どう整えるかを描くこと。

・子どもが深呼吸できる空気
・朝起きたときに乾いた喉で咳き込まない空気
・10年後も漆喰がきれいなままでいられる空気

それを守るために、
素材ではなく、空気を設計すること。
それが僕たちの原則です。

そして素材は、その空気に育てられていく

自然素材は、主役ではありません。
むしろ、**良質な空気があってこそ「素材が活きる」**と僕たちは考えます。

だからこそ──

湿気と空気を制す者が、素材を活かす。

それが、僕たちがこの仕事を通じて伝えたいことです。

ぜひこの記事を読んでみてください。

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