- カビっぽいのは家のつくりの問題?|結露しやすい家には、必ず“共通する構造的なミス”がある
- カビが出る家の“設計と施工の共通点”
- ✅1. 天井裏:断熱材が露出・気密ラインが切れている
- ✅2. ユニットバス背面・洗面所・トイレの壁裏
- ✅3. 北側の収納・押し入れ・階段下など“通気ゼロ空間”
- ✅4. 工事中に濡れた部材を乾かさずに塞いでいる
- カビが出ない家は、何が違うのか?
- ✅1. 押し入れがカビない家には「湿気の逃げ道」がある
- ✅2. 洗面所がジメジメしない家には「排湿のルート」がある
- ✅3. 天井裏にカビが出ない家には「風が通る道」がある
- ✅4. 壁の中が腐らない家には「湿気が抜ける通気層」がある
- 呼吸する構造”は、後からでもつくれる
- ✅1. 通気層の“後付け”はできる
- ✅2. 点検口と通気経路を「収納の奥」に設ける
- ✅3. 洗面脱衣室の“壁の中”に注意を向ける
- ✅4. グラスウールの“使い方”に注意する
- まとめ|湿気と空気を制す者が、素材を活かす
- 「設計」とは、“空気の未来”を描くこと
- そして素材は、その空気に育てられていく
カビっぽいのは家のつくりの問題?|結露しやすい家には、必ず“共通する構造的なミス”がある
カビが出る家には、共通点がある
「たまたまカビたんです」
「古いから仕方ないですよね?」
──そんなふうに言われることが、現場ではよくあります。
でも僕の感覚では、そうじゃない。
カビが出た家には、“起きるべくして起きた構造”がある。
それは偶然でも、経年劣化でもない。
設計と施工の初期段階で、すでに“カビへのルート”が仕込まれていた──そう言っても過言ではないと思っています。
「この家、きっとカビてる」と思えるポイントがある
僕たちプロが現地調査に入るとき、最初に注視するのは「見た目」じゃありません。
におい。空気感。微細な手触り。押し入れの奥。天井裏の静かな気配。
そこに、「あ、この家、構造のどこかで空気が止まってるな」と感じるヒントがあります。
そして実際に開けてみると──
- グラスウールが垂れている
- 石膏ボードの裏が黒ずんでいる
- 配管まわりから湿気が入り、壁の内側がぬるい
そうした「見えないダメージ」は、住まい手にはわからないレイヤーで、静かに蓄積しているんです。
カビが出る家の“設計と施工の共通点”
|現場でよく見る「空気が止まった場所」4つの症例
「カビの場所」は“設計の穴”を教えてくれる
カビはただの汚れではない。
それは、**空気が動いていない/湿気が逃げられない場所に起きる“結果”**です。
だから僕たちは、カビを見たとき、まず「なぜそこに出たのか?」を逆算して構造を見直します。
✅1. 天井裏:断熱材が露出・気密ラインが切れている
(ロングテール例:天井裏 結露 カビ/断熱材 グラスウール ズレ)
- グラスウールがむき出し+ホコリまみれ
- 気密シートが途中で切れていて、湿気が漏れている
- 排気ダクト周辺に断熱が施されておらず、冷却・結露の温床に
→ 湿気が断熱材に吸収され、重みで垂れて“湿気ポケット”になる
✅2. ユニットバス背面・洗面所・トイレの壁裏
(ロングテール例:ユニットバス カビ 原因/洗面所 壁裏 湿気)
- 高湿度+閉鎖空間で空気が滞留
- 配管貫通部の気密処理が甘い
- 防水シートの施工ミスで、外壁側から雨水が回り込む
→ 壁紙は無事でも、裏の石膏ボードや断熱材はズブズブにカビている
✅3. 北側の収納・押し入れ・階段下など“通気ゼロ空間”
(ロングテール例:押し入れ カビ 臭い/北側部屋 カビ)
- 空気が動かない場所に湿気が日常的に溜まる
- 外壁面の断熱が甘く、外気の影響を受けやすい
- 内装材が吸放湿性に乏しく、湿気がこもりやすい
→ 布団や衣類ににおいが移る、生活レベルでのダメージが出始める
✅4. 工事中に濡れた部材を乾かさずに塞いでいる
(ロングテール例:リフォーム 結露 原因/工事中 材料 濡れた)
- 雨の日に搬入された構造材や断熱材が濡れたまま
- 高気密ゆえに一度閉じると内部乾燥が困難
- 換気ルートがまだ未完成のまま密閉される
→ 内部の水分が逃げられず、数ヶ月後にカビ・腐朽が始まる
カビは、構造が崩れているという“設計の通知表”
設計・施工のどこかに、「空気の断絶」「湿気の袋」がある。
カビはその場所を、わかりやすく“浮かび上がらせてくれるサイン”なんです。
だから僕たちプロは、
「どこに出たか」で“構造の弱点”を読む。
カビが出ない家は、何が違うのか?
|“湿気が逃げられる設計”には、目に見えない工夫がある
「結露しない家」は、素材ではなく“構造”でできている
自然素材の家にしたのに、なぜかカビが出る──
断熱リフォームをしたのに、結露が消えない──
それは素材や性能の問題ではなく、もっと根本的な
「湿気がどう動くか」への設計配慮がされていない家かもしれません。
この章では、僕が現場で実感してきた
**「カビが出ない家に共通する構造の工夫」**を、生活の視点から紹介します。
✅1. 押し入れがカビない家には「湿気の逃げ道」がある
(ロングテール:押し入れ カビ 通気/収納 湿気 抜き方)
- 押し入れの奥に、壁との間の“空気が動く空間”がある
- 外壁に接していても、その内側に通気層がある
- 天井裏や床下につながる、点検口や換気経路がある
カビが出る収納は、ほぼ例外なく“密閉されて空気が動かない空間”です。
✅2. 洗面所がジメジメしない家には「排湿のルート」がある
(ロングテール:洗面所 湿気 換気/脱衣所 カビ 原因)
- 換気扇が“閉じられた空間の奥”に取り付けられている
- 湿気が壁内に侵入しないよう、室内側の気密ラインが連続している
- 扉を開けたとき、湿気が逃げる動線がある
湿気を止めるのではなく、どこへ動かすか?が家づくりの鍵です。
✅3. 天井裏にカビが出ない家には「風が通る道」がある
(ロングテール:天井裏 結露 対策/小屋裏 換気 設計)
- 軒裏から棟換気口まで、屋根裏を通る空気の流れが確保されている
- グラスウールがホコリで覆われず、垂れていない
- 天井と壁の“取り合い部”で、気密が破綻していないか
小屋裏に空気がこもると、真夏でも真冬でも結露が発生しやすくなります。
✅4. 壁の中が腐らない家には「湿気が抜ける通気層」がある
(ロングテール:壁内 結露 対策/外壁 通気層 リフォーム)
- 外壁材と構造体の間に、15mm以上の通気層(胴縁)があるか?
- タイベックなど透湿防水シートが、湿気だけを外へ逃がす構成
- 軒裏や基礎に、その湿気の“出口”がちゃんとつながっているか
外壁自体ではなく、その“内側の空気層”が家の健康を守っています。
素材を活かす前に、「空気が動ける構造」をつくる
素材の良し悪しより、空気がどう通るか/湿気が逃げるか。
それを考えることが、カビが出ない家・長持ちする家の基本です。
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呼吸する構造”は、後からでもつくれる
|リノベーションでカビ・結露を防ぐためにできること
カビの原因は、素材じゃなく「湿気が逃げられない構造」
「自然素材の壁にしたのに、なぜかカビが…」
「断熱改修したのに、壁の中が湿っている気がする」
それ、素材が悪いのではなく、“空気が通れない構造”が原因かもしれません。
でも大丈夫です。
家の“外側”を変えずとも、リノベーションの中で湿気の逃げ道をつくることは可能です。
✅1. 通気層の“後付け”はできる
(ロングテール例:通気層 リノベ 後付け/外壁 通気層 作り方)
- 外壁を張り替えるタイミングで、構造体との間に15mm以上の通気層(胴縁)を設ける
- その外側に透湿防水シート(例:タイベック)を施工し、水は通さず湿気だけ逃す
- 軒天・基礎にかけて、通気の“出口”が確保できるように設計
「壁が呼吸する」ためには、素材ではなく“空間”を設けることが重要です。
✅2. 点検口と通気経路を「収納の奥」に設ける
(ロングテール例:押し入れ 通気口 付け方/収納 湿気 対策)
- 既存収納の壁・床に通気孔(換気口や小さな開口)を設置
- 床下や天井裏とつながる場合、風の抜け道を確保するだけで湿度が下がる
- 空気が“止まっている場所”を見つけたら、そこに道をつくる
暮らしの中で“空気を動かす”ための小さな工夫が、カビ予防に直結します。
✅3. 洗面脱衣室の“壁の中”に注意を向ける
(ロングテール例:洗面所 結露 リフォーム/脱衣所 カビ 対策)
- 換気扇の位置を“湿気がこもる奥の壁側”に変更する
- 必要に応じて壁内に通気層 or 排湿ルートを設計(特にユニットバス背面)
- 内装材に自然素材を使う場合は、必ず空気の抜け道とセットで
高湿度ゾーンは「見える場所」より**“壁の中”の設計が肝心**です。
✅4. グラスウールの“使い方”に注意する
(ロングテール例:グラスウール 結露 対策/断熱材 湿気 吸う)
- 垂れている/湿っているグラスウールは、結露が止まらないサイン
- リノベ時には、既存の断熱材を撤去し、必要に応じてウレタン併用で補強
- 可変透湿気密シートで、湿気の動きをコントロールする層を内側に持たせる
「断熱材は入ってるから安心」ではなく、その状態と密着精度が問われる時代です。
湿気を“出す構造”に変えることで、素材が活きる
自然素材は、“空気がきれいであること”が前提の素材です。
カビを防ぎ、空気を整えることで、素材の魅力も寿命も変わってくる。
だからこそ僕たちは、リノベの段階で“空気の通り道”をつくっておく。
それが、素材に頼らない、本当の意味での“快適さ”だと思うんです。
まとめ|湿気と空気を制す者が、素材を活かす
|“快適な空気”は、設計の思想でしかつくれない
自然素材は、“貼るだけ”では働かない
無垢の床、漆喰の壁、和紙の天井──
それだけを見れば、美しく、気持ちが良い家かもしれません。
でも僕たちは、その素材の奥にある“空気の質”を見ています。
素材が持つ力は、空気が整って初めて発揮される。
湿気が滞り、空気がよどむ家では、
どんなに良い素材でも、呼吸はできず、やがて“腐って”いく。
僕たちが最も大切にする原則
それは、「断熱・気密・換気」の三位一体。
■ 断熱だけでは、湿気が抜けない
断熱材を入れることで“熱”は止められても、“湿気”の流れは止められない。
素材が湿気にやられる家は、断熱だけでつくられている。
■ 気密だけでは、空気が澱む
気密を高めることは必要です。
でも、気密だけで空気の質を守ることはできない。
それは“密閉”になりかねない。
■ 換気だけでは、逃げられない
換気設備を入れるだけでは不十分。
空気の“通り道”が設計されていなければ、換気は動かない。
それどころか、湿気が同じ場所に留まり、逆に結露を招く。
だから、僕たちはいつもこう考えています。
「断熱・気密・換気は、“素材の命を守る空気の基盤”だ」
そしてそれは、**リフォームでも、新築でも、地域を問わず必要な“思想”**です。
「設計」とは、“空気の未来”を描くこと
設計とは、間取りを引くことでも、図面を描くことでもない。
僕はそう思っています。
設計とは、
その家に住む人の未来の空気を、どう整えるかを描くこと。
・子どもが深呼吸できる空気
・朝起きたときに乾いた喉で咳き込まない空気
・10年後も漆喰がきれいなままでいられる空気
それを守るために、
素材ではなく、空気を設計すること。
それが僕たちの原則です。
そして素材は、その空気に育てられていく
自然素材は、主役ではありません。
むしろ、**良質な空気があってこそ「素材が活きる」**と僕たちは考えます。
だからこそ──
湿気と空気を制す者が、素材を活かす。
それが、僕たちがこの仕事を通じて伝えたいことです。
ぜひこの記事を読んでみてください。
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