「やるなら全部やらないと意味ない?」──その言葉で止まっていませんか
「全部やらなきゃ意味がないですよ」
「耐震補強は“中途半端”じゃ危ないですから」
──そう言われて、気持ちが止まってしまった。
そんな方にこそ、読んでほしい話があります。
確かに、耐震リフォームは家全体の安全を考える工事です。
でもそれは、**「一気に、全部を壊して直さなければいけない」**という意味ではありません。
むしろ、「今、必要なところから始める」
「予算や暮らしに合わせて、段階的に補強する」
という“現実的で、実行可能な”選択肢こそが、
多くの人にとっての最適解かもしれません。
この記事では、町家の耐震補強における「部分補強」という考え方を、
構造的な根拠と具体的な方法を交えて、わかりやすくお伝えします。
「全部は無理だけど、何もしないわけにはいかない」
そう思っている方へ。
まずは、“できるところからやる”という選択肢を知ってください。
なぜ耐震補強は「全部やらなきゃダメ」と言われがちなのか?
耐震補強の相談をすると、こんなふうに言われることがあるのではないでしょうか。
「全部やらなきゃ意味ないですよ」
「部分補強じゃ、効果は出ません」
「耐震等級を取るには、全面的な改修が必要です」
一見、専門的で正しそうに聞こえます。
でも、この言葉にはある前提が“抜け落ちて”いることが多いのです。
業者側の「責任と都合」が背景にあることも
- 「部分補強だけだと、将来何かあったときに責任を問われる」
→ だから“全部やる前提”で話す工務店も多い - 「商品化されたパッケージ補強(例:等級取得型)しか用意していない」
→ 現場対応の柔軟性がない場合、“全部前提”でしか提案できない
「耐震等級」という言葉に潜む誤解
耐震等級を取るためには、建物全体の性能を数値化し、
構造全体でバランスよく補強する必要があります。
つまり、「耐震等級〇〇を取りたい」なら、全体補強が必要というのは事実です。
でも・・・
“命を守る最低限の補強”がしたいだけなら、等級取得は必須ではありません。
この違いを知っているかどうかで、判断が大きく変わります。
「正論だけど、現実的ではない」提案に注意
もちろん、理論上は“全体を補強するほうが安全”です。
でも実際には、
- 予算に限りがある
- 仮住まいができない
といった現実的な制約が存在します。
そうした事情を無視して「全部やらなきゃダメ」とだけ言う提案は、
“正しいけれど、やさしくない”提案とも言えるかもしれません。
大切なことって地震が来た時にどう命を守れるのか。この部分をしっかりと考えることだと僕は考えます。
耐震リフォームの目的が外に逃げるための時間稼ぎなのかもしれません。明確な目的を持つことで守れるものも生まれます。
住みながらでも耐震リフォームできます。
耐震リフォーム“全部じゃなくても”意味はある|優先順位の考え方
結論から言えば、部分補強でも意味はあります。
なぜなら、耐震補強とは「家全体を一気に安全にする」ものではなく、
地震の揺れに耐えられる“最も弱い部分”を強くすることが、まず最優先だからです。
地震に弱い“ポイント”はある程度共通している
町家構造で特に弱点になりやすいのは、以下のような箇所です:
- 1階の角部屋や開口部が大きい壁(例:掃き出し窓、ガラス戸)
- 南側・西側の外壁(バランスが偏る面)
- 柱と柱の接合部/梁と柱の取り合い
- 基礎が途切れている、または無筋コンクリートの箇所
こうした“局所的な弱点”を補うだけでも、建物全体の耐力バランスは大きく改善されます。
「命を守るライン」=倒壊を防ぐ最低限補強
部分補強の目的は、すべてを完璧にすることではありません。
目指すのは、
「万が一のとき、命を守れるだけの構造的耐力を確保すること」
たとえば:
- 壁2面だけ補強することで、1階のねじれを防げる
- 柱と基礎の金物接合だけで、引き抜き強度が改善される
- 土台の腐食部位を根継ぎするだけで、倒壊リスクが大幅減少
こうした最小限で最大の効果を生む補強設計は確かに存在します。
町家だからこそ、「守る部分」「補う部分」を分けられる
歴史的な京町家は、すべてを壊してやり直すことが正解とは限りません。
むしろ、
「文化的価値のある部分は残し、構造的に危ない部分だけを補う」
という選択と集中の設計思想が重要になります。
必要なのは、家全体を壊す勇気ではなく、
必要な場所を見極める知恵なのです。
「逃げる時間をつくる」という、もうひとつの目的
大地震が起きたとき、
家がすべて無傷で残ることが理想かもしれません。
でも現実には、すべてを完璧にすることが難しいこともある。
だからこそ、
「逃げるための時間をつくる」という考え方が、とても大切になります。
倒壊が始まるまでの数十秒──
そのわずかな差が、生死を分けることは、これまでの地震でも繰り返されてきました。
部分補強にも、その命を守る時間をつくる力があります。
- 家がその場で崩れずに持ちこたえる
- 出入口がつぶれず、家族が外に出られる
- 梁や屋根が落ちる前に、逃げられる
「完璧でなければ意味がない」のではなく、
意味のある補強を正しく選ぶことが、命を守る選択です。
いまできることからでいい|補強を分割して進めるという選択
耐震補強は、なにも“一度にすべてやらなければいけない”わけではありません。
むしろ多くのご家庭では、
- 今は時間がない
- 予算に限りがある
- 家族の事情で一気には動けない
といった現実的な制約があるのが当たり前です。
だからこそ大切なのは、
「いまできることから始めて、段階的に家を強くしていく」
という、分割的な補強戦略です。
フェーズで考える「補強の進め方」
フェーズ1:命を守る“最低限”の補強(〜100万円目安)
- 倒壊リスクの高い壁面(特に1階の角や南面)を重点補強
- 柱の根継ぎ/金物補強など局所対処
- 耐震診断で“危険度が高い部位”だけを施工対象にする
フェーズ2:家全体の“バランス”を整える補強(〜300万円目安)
- 壁のバランス改善(壁量計算に基づいた補強設計)
- 基礎や土台の一部補強
- 耐震設計+補助金申請もこの段階で可能に
フェーズ3:“快適性”を含めた総合的な改修(500万円〜)
- 耐震+断熱の一体化リノベーション
- 動線や使い勝手を改善しながら構造再設計
- 町家全体を「次世代につなぐ空間」へ
設計とお金を“セットで最適化”することが大切
すべてをやるか、なにもやらないか、ではなく──
「どこを、どの順番で、どの予算でやるか」を考えることが、
住まいの安全を現実的に手に入れる唯一の方法です。補強は、“段階的に家族を守っていく”という考え方。
いまできることからで、まったく問題ありません。
完璧じゃなくていい。“納得して進める”ことが、なにより大切
耐震リフォームというと、どこかでこう思ってしまいませんか?
「中途半端にやっても意味ないんじゃないか」
「全部やらなきゃ、家族を守れない気がする」
でもそれは、あなたが「家族を本当に守りたい」と思っている証拠です。
その気持ちがある限り、耐震リフォームで部分的に補強することの意味は大きいです。
安心とは、「納得の積み重ね」の中にある
家の補強は、“不安をゼロにする”ための作業ではありません。
現実的な制約の中で、「どこまでやるか」「どういう順番で進めるか」を選びながら、
不安を“自分でコントロールできる状態”にする──それが本当の安心です。
「100%安全じゃなきゃ意味がない」ではなく、
「自分の家にとって、今、必要なことは何か?」
その問いに自分で答えていける状態こそが、何よりも大事なのです。
選べる状態が、家族にとっての安心にもなる
- 「今できる範囲で、まず1箇所だけやっておこう」
- 「ここだけ補強しておけば、倒壊の可能性は大きく下がる」
- 「本格的にやるなら3年後、予算を準備しておこう」
そんなふうに、焦らず、でも止まらずに選んでいけることが、
家族にとっての最大の安心につながります。
100点満点じゃなくていい。
今の自分にとって「納得できる」選択こそが、意味のある補強です。ただし、耐震リフォームを実施する前に必ず僕は住宅のインスペクション(調査)をすることを進めています。しっかりとした調査をしてからでないと成果はでません。
もし時間がゆるすなら下の記事も読んでみてください。下の画像をクリックすると記事が読めます。しっかりとあなたのために書いてます。
今、全部できなくてもいい|“小さく動く”ところから始めよう
「全部はできない」
「でも、なにかはしておきたい」
そう思ってこの記事を最後まで読んでくださったあなたは、
すでに一歩、家族や住まいに向き合いはじめています。
耐震補強は、“気合い”でやるものではありません。
予算や暮らしに合わせて、小さく・納得しながら・段階的に進めるものです。
今できる、小さなアクション
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未来のために「いまできること」を選ぶこと。
その一歩は、きっともうあなたの中に生まれています。

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