この家、壊すしかないの?|空き家を前に立ちすくむあなたへ
実家を相続した。
けれど、誰も住まなくなって何年も経ったその家は、
寒くて、湿っていて、どこか“息をしていない”ように感じる。
住めるのか、壊すべきか、売れるのか──
何から手をつけたらいいのかも分からない。
そんなまま、時間だけが過ぎていく。
「空き家って、結局は壊すしかないんじゃないか?」
そんなふうに思ってしまうのは、あなただけではありません。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。
壊すことが“最善”ではないかもしれない、という選択肢を。
この記事の最後に空き家チェックリストがあります。ぜひ最後までおよみください。
相続した実家、手放すには惜しい。でもどうしたらいい?
- 祖父母の思い出が詰まっている
- 一度は家族で過ごした時間があった
- 自分や子どもが、いつか戻るかもしれない
そんな気持ちがあるからこそ、「簡単に壊せない」のです。
「壊すのが正解」に思えてしまう背景には何がある?
- 建物の傷みが激しい
- 固定資産税の負担が重い
- 近所からの目が気になる
- どう直せばいいか分からない不安
これらが重なると、「もう壊すしかない」と思ってしまうのも自然なことです。
でも、本当に壊すしかないのか?
それを見極める方法があることを、知ってほしいのです。
なぜ空き家は「もう住めない」と感じるのか
「この家にはもう住めないな」
そう感じたのは、傷んだ柱を見たときかもしれないし、床の冷たさを感じたときかもしれません。
でも本当は、「寒さ」や「暗さ」や「湿気のにおい」といった、
**目に見えない“空気の質”**が、住む気持ちを奪っていくのです。
空気が動かない家は、寒く、湿気に満ちていく
人が住まなくなった家は、風が通らず、空気がこもります。
湿度が高まり、やがてカビが生え、木が腐り、虫が入り、床が沈む。
これは老朽化ではなく、“空気の死”による崩壊です。
とくに京都の空き家では、間取りが細長く、風が抜けない構造のまま閉め切られていることも多く、
湿気がこもって劣化が加速しやすい傾向があります。
京都の空き家に多い“断熱ゼロ”と“構造不安”
昔の町家や木造住宅の多くは、断熱材が一切入っていないか、入っていても薄いグラスウール程度です。
しかも壁・床・天井がすべてスカスカに近いため、冬は冷えきり、夏は暑さが籠もる構造になっています。
「なんとなく寒い」「どこか不安」
この感覚は、構造上の問題によって生まれたもの。
つまり、「もう住めない」と感じるのは、気のせいではなく、身体が正しく危険信号を出している状態なのです。
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本当に「壊すしかない」家なのか?|再生の可能性を診る視点
「空き家 再生なんて、きっと高くつく」
「結局、全部壊して建て直した方が早いんじゃないか」
多くの人がそう思います。
でも実は、“全部直さなくても住めるようになる”方法があるのです。
「全部補強」ではなく「要所だけ」の耐震補強ができる
空き家を再生する際、多くの人が気にするのが「耐震性」。
ただ、ここで知っておいてほしいのは、家全体を補強しなくても、安全性は大きく高められるということです。
たとえば、地震時に崩れやすい“角”や“開口部まわり”に壁を増設したり、
構造的に弱い“片流れの壁”をピンポイントで補強するだけでも、
建物の揺れ方は大きく変わります。
むしろ全面補強よりも、「必要な場所に、最小限の補強を」という考え方の方が、
現実的な予算感で再生が可能になるケースも多いのです。
断熱と換気の設計で“住める空気”はつくれる
寒さ・湿気・におい──
これらは、断熱だけでなく、気密と換気の設計によって改善できる部分が大きいです。
京都の町家では、
- 外気がそのまま入り込む床下の断熱補強
- 壁の内側からの断熱材挿入
- 計画換気の導入で空気を“動かす”仕組みの再設計
これらをセットで行うことで、住み心地が見違えるほど変わります。
「古い家は全部直す」は思い込みかもしれない
家というのは、「全体を新しくする」ことが目的ではありません。
“暮らせる状態に再構成する”ことが本質です。
たとえば、LDK+水回り+寝室だけを快適にすれば、
残りは徐々に整えていくという選択肢も取れる。
つまり、再生は「壊す or 全面改修」の二択ではなく、
“最小で最大の快適をつくる”三つ目の道があるのです。
壊さなくてもできること|再生リノベの現実的な選択肢
「リノベーションって結局高いんでしょ」
「それなら解体した方が…」
多くの人がそう考えます。
でも本当は、“再生の方が安く済む”ケースもあるのです。
解体より再生が安く済むこともある
たとえば、空き家の解体費用は、延床30坪で150万〜300万円ほど。
場所や構造によっては、それ以上になることもあります。
一方で、最低限の断熱改修と水回りリノベ、
そして部分的な耐震補強に絞ることで、200万前後で再生できた事例もあります。
つまり、「壊す」が唯一の正解ではない。
“壊さず整える”という方法が、コスト的にも合理的な選択になることがあるのです。
「水回りだけ」「北側だけ」など部分リノベの可能性
全面リフォームではなく、生活に直結する部分だけに絞った
“部分リノベ”という方法も、空き家再生では非常に有効です。
たとえば──
- 寒さの原因になりやすい北側の壁と床下のみ断熱施工
- 湿気がこもりやすい浴室と洗面を断熱+換気再設計
- 最も長く滞在するLDKだけを“快適ゾーン”に設定
これらのように、使い方に応じて手を入れる“局所最適”の発想で、
無理のない再生が可能になります。
「住む」「親が戻る」「貸す」──目的に応じた再生設計
空き家の再生において重要なのは、「目的から考える」ことです。
- 両親が戻ってくるなら、段差と温度差をなくすバリアフリーリノベ
- 自分たちの週末用なら、部分断熱+最低限の居住性能確保
- 貸す予定があるなら、キッチン・トイレ・浴室の更新と耐震改修
目的によって“必要なこと”は変わるのです。
だからこそ、「全部直す」よりも、「何のために直すのか」を先に考える。
こんな家でも再生できた|“壊さず済んだ”実例たち
誰もが口をそろえて言います。
「こんなに傷んでいた家が、また“家”になったのが信じられない」と。
でも実際に、壊さずに整えて、今も心地よく暮らしている人たちがいるのです。
「空き家=負債」だった家が、帰ってくる場所になった話
築50年の実家。床が沈み、雨漏りもしていた。
相続したときは、「負債」とすら思ったその家を、
部分的に直しながら、自分たちの週末拠点に変えた夫婦がいます。
断熱を入れ、風が通る動線を確保し、
使う部屋だけを丁寧に整えることで、
たった350万円で、“呼吸できる家”に変わったそうです。
構造も気持ちも、リノベで“再接続”できたという声
空き家を「直す」ことは、単なる建築行為ではありません。
思い出と、家族との“関係性”をもう一度つなぐ行為でもあります。
「この場所に帰ってこれて、ようやく家族に会えた気がした」
そんなふうに話す人もいます。
実例:一部耐震+断熱で月2万の暖房費が不要に
京都のある町家では、寝室とLDKだけに
断熱材と計画換気を導入したところ、
冬の暖房費が約2万円→3,000円以下に。
「家の中でコートを脱げるようになった」
「朝起きても顔が冷たくない」
そんな“小さな幸せ”が、暮らしの質を大きく変えています。
壊す前に、診る・測る・話すという選択
壊すか、壊さないか。
その判断を「思い込み」で決めてしまうには、空き家はあまりにも大きな存在です。
私たちはこれまで、
「壊すしかないと思っていた空き家が、まだ住めると分かった」
そんな声を何度も聞いてきました。
まずは“今の状態”を正しく知ることから
- 建物の傾きはあるか?
- 基礎にクラックは?
- 床下の湿気は?
- シロアリ被害は?
- 構造は補強可能か?
こうした構造診断や劣化チェックを行えば、
「本当に壊すべきか」「どこまで直せばよいか」が、数字と事実で判断できます。
壊す・売る・貸す・住む…すべての選択肢を“比較”する
空き家再生には、必ず「向き・不向き」があります。
でも大切なのは、“全部知ったうえで選ぶ”こと。
- 解体費用はいくらかかる?
- 部分リノベはどこまでできる?
- 補助金は使える?
- 将来貸すにはどう整えるべきか?
不動産+建築+断熱+耐震+空気のことまで、ワンストップで相談できる場所が必要です。
「なんとなく壊す前」に、話してみませんか?
私たちは、「再生できるかもしれない空き家」が壊されることを、何度も見てきました。
でもそのたびに、「ああ、診断さえしていれば…」という後悔の声も聞いてきました。
だからこそ、「壊す前に一度話してみること」こそが、最大の節約であり、選択肢の確保なのです。
空き家再生チェックリスト|「住める家」かどうかを5分で見極める10の視点
※1〜5が【構造・劣化の視点】、6〜10が【再生可能性の視点】です。
【構造・劣化の視点】
- 床がブカブカ沈む箇所がある
→ 床下の湿気・腐食・シロアリの疑い - 雨漏りや天井のシミがある
→ 屋根・躯体の劣化進行度を示すサイン - 冬場は吐く息が白くなるほど寒い
→ 断熱・気密性能がゼロの可能性あり - 長く使われていない浴室・トイレがある
→ 給排水まわりの腐食や配管劣化の懸念 - 地震が起きたら倒れそうで怖いと感じる
→ 耐震補強が未対応/構造不安の直感信号
【再生可能性の視点】
- 家のどこか一部には日が差し、風が通る
→ 快適ゾーンの再設計が可能な兆し - 基礎や柱に明らかな傾きや亀裂がない
→ 基本構造は保持されている可能性が高い - 使われていないが、水道・電気は通っている
→ 再利用可能なインフラが残っている - 親族や自身に思い入れ・使い道がある
→ “壊すには惜しい家”=再生の価値がある家 - 「壊す前に一度誰かに相談したい」と思っている
→ まだ“再生できる可能性”を感じている証拠
✅ チェックの目安
- 1〜3項目のみ該当 → 再生の可能性高
- 4〜6項目該当 → 診断を推奨(要専門判断)
- 7項目以上該当 → 解体も含めた比較検討を推奨
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