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「なぜ京町家は“住みにくい”と思われるのか?|5つの原因と再設計のヒント」

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「京町家って、やっぱり住みにくいんですか?」

「玄関を入った瞬間、土間が冷たい」
「洗面所が寒すぎて、朝がつらい」
「お風呂やトイレが家の奥すぎて、動線が面倒」
「来客があると、生活空間を全部通られる感じがして落ち着かない」

こういった“なんとなくの暮らしにくさ”を感じたことがある方、少なくないと思います。
そしてそれは、実際に京町家に住んでみて初めて気づく体感的な違和感でもあります。

僕も、子どもの頃に通っていた親戚の町家で、
「寒いな」「ここ、なんで通らなきゃいけないんやろう」って思っていました。
ただの“古い家”というよりも、
「現代の暮らしと、家の構造とが、どこか噛み合っていない」
そんな感覚です。

町家にはたしかに、

  • 木の香り
  • 光の透け方
  • 季節の風が通り抜ける心地よさ
    があります。
    でもその一方で、
  • 寒さ
  • 動線の煩雑さ
  • プライバシーの取りにくさ
    といった、“暮らしのストレス”が重なっていくこともある。

本当に町家は「住みにくい家」なのでしょうか?
それとも、“住みにくくなってしまった構造”があるだけなのでしょうか?

このあと一緒に、
「なぜ、そう感じてしまうのか?」を5つの視点から見ていきましょう。

なぜ町家は「今の暮らし」に合わなくなってきたのか?

町家が“住みにくい”と感じられる理由は、
けっして「設計ミス」や「古さ」のせいではありません。
むしろその逆で、町家は“当時の暮らしにぴったり”合わせてつくられた、極めて合理的な建物でした。

例えば──

  • 町の中心部、商いの場であった京都では、土地の間口(幅)で税金が決まっていたため、
     → 間口を狭く、奥へ奥へと伸ばす「うなぎの寝床」型が主流に。
  • 商家が多かった町家では、**玄関・土間が「接客と作業場」**で、
     → 家族の生活空間は奥に追いやられた。結果、生活動線は“縦長”に伸びる。
  • 家全体が“ひとつながり”になっていたのは、
     → 昔の家族構成(大家族)や、生活スタイル(共同調理・共寝)に合っていたから。

つまり、今「住みにくい」と感じている多くのことは、
当時の暮らしにはむしろ“住みやすかった”証拠なんです。

でも、現代ではどうでしょうか?

  • 核家族化、共働き
  • プライバシーの確保
  • 家事動線の効率化
  • 夏冬の快適さ(冷暖房効率)

そうした「今の暮らし」と町家の構造が少しずつズレてきている
それが、“住みにくい”と感じられる最大の原因なのです。

第3章:5つの“住みにくさ”を構造から読み解く

町家に暮らしてみて、多くの人が感じる「なんとなくの違和感」。
それは、感覚的な話だけではありません。
町家の構造や設計思想が、現代の生活様式とズレてしまっている
それが、“住みにくさ”の正体です。

ここでは、その代表的なズレを5つの視点から見ていきます。

① 冷えやすさ(断熱構造)

京町家は、基本的に断熱材が入っていません
土間や床下からの冷気がそのまま家中に広がり、冬場は足元から冷え込む構造です。

また、隙間風の入りやすい建具(格子戸・障子)や、屋根裏・天井からの放熱も大きな要因。
現代の住宅と比べると“底冷え”するのは当然とも言えます。

② 複雑な動線(長い間取りと通過型の配置)

“うなぎの寝床”という間取り上、

  • トイレや風呂などの水回りが一番奥にある
  • 客間や居間を「通過」しないと生活空間にたどり着けない

というように、動線が非常に長く、交差しやすいのが特徴です。

来客があるとリビングを抜けて風呂へ行く、
洗濯動線が2〜3部屋またがる……など、
日常的に“気を遣う動き”が多くなる家なんです。

③ 光と風の入りにくさ(採光・通風)

奥に向かって細長い町家では、
採光や風の通りが“通り土間”頼みになりがちです。
中庭がある町家ならまだしも、敷地の余裕がない場合は奥の部屋が暗く、風も滞留しやすい

これが、湿気やカビの原因にもなりますし、
朝昼の“自然な明るさ”が得られず、暮らしのリズムにも影響します。

④ 音が響きやすい(空間の連なり)

町家は、空間を襖(ふすま)や障子で仕切る設計のため、
壁が薄く、音が家中に伝わりやすい構造になっています。

例えば、リビングでの会話やテレビの音が、寝室やキッチンまで届く。
子どもの声や生活音が家中に響き、
“静けさ”が保ちにくい空間だと感じることもあるでしょう。

⑤ プライバシーの薄さ(空間の重なり)

町家は「すべてがつながっている家」です。

  • 廊下を通らず、部屋を抜けて奥へ行く
  • 家族全員がひとつながりの空間で過ごす

という設計は、昔の家族像には合っていました
でも今は、個室やプライバシーが重視される時代

「誰かに見られながら料理をするキッチン」
「家族の誰かが通るたびに気を遣う廊下がわりの部屋」
そうしたストレスが、“なんか住みにくい”の正体です。

こうした5つの“構造的ズレ”が、
町家を「情緒的には素敵だけど、実際は住みにくい」と感じさせている要因なんです。

次の章では、このズレをどう受け止め、どう活かすか──
「壊さずに再編集する」ための対策視点をご紹介します。

住みにくさを「再編集」するという視点

京町家は、壊すべき“古い家”ではありません。
ただ、「今の暮らし方」に合わせて再編集していく必要がある。
それが、僕たちが提案したい考え方です。

✔︎ 断熱は“ゼロ→一歩”で十分

断熱工事と聞くと、
「大規模なリノベーションが必要」と思われる方も多いかもしれません。
でも、最初の一歩はもっと小さくていい。

  • 冬、冷気のたまりやすい窓前に断熱パネルを置く
  • 畳の下に敷く断熱シートを入れる
  • 床下からの冷気対策に通気口をコントロールする

たったこれだけでも、体感温度は驚くほど変わります。

✔︎ 導線は“分けて考える”

町家の通過動線の煩わしさは、
「空間がつながっていること」が原因ではなく、
“誰が、どこを、どう通るのか”が整理されていないからです。

  • 来客用の動線と、生活者の動線を分ける
  • 客間を“通過される場所”にしない
  • 水回りへのアクセスに“ワンクッション”空間を置く

導線を“誰視点で考えるか”がカギになります。

✔︎ 暗さは“陰影”に変えられる

町家の奥が暗いのは事実です。
でも、それは悪いことではない。

  • 間接照明で落ち着いた空間を演出する
  • 中庭や坪庭の反射光をうまく活かす
  • 奥の部屋に「夜のための用途」をもたせる

光の強さを求めるのではなく、陰影をデザインする発想が町家には似合います。

✔︎ 音と視線の“抜け”をつくる

障子や襖の開放感を損なわずに、

  • 一部だけ吸音性のある素材を取り入れる
  • 天井や鴨居上部に視線を逃がすスリットを設ける
  • 扉を“斜めに開ける”設計で視線の交差を避ける

ほんの少しの設計工夫で、
空間の「気まずさ」は劇的に軽減されます。

✔︎「全部を変えない」ことも、大事

大改修をするのではなく、
今の町家の“よさ”を活かしながら、少しずつ整えていく。
それが、僕たちが提案する「住みにくさの再編集」です。

次の章では、
この町家に“もう一度、愛着をもって住んでいく”という未来に向けて、
一緒に考えていける希望を描いていきます。

この家と、もう一度“暮らしていく”という選択肢

「住みにくい」という言葉の裏には、
もしかしたら、「もっと、この家と仲良くなりたい」という思いがあるのかもしれません。

町家には、今の家にはないものがあります。

  • 湿度を呼吸する土壁
  • 風を通す格子戸
  • 時間の流れが染み込んだ床や梁

それらは、僕らがいま忘れかけている「住まいとの関係性」を、もう一度思い出させてくれる存在です。

大きく壊すことじゃなくていい。
まずは、「自分の暮らし」を見つめ直すことから始めてみる。
この家に、どう暮らしたいか。
どこがしんどいのか。
どんな時間をここで過ごしたいのか。

そうやって、ひとつずつ“自分ごと”として考えていけば、
京町家は**「不便な家」から「育てられる家」へ**と、少しずつ変わっていきます。

僕らはそのプロセスを、一緒に考えていくパートナーでありたいと思っています。
あなたがこの家と、これからをどう歩むか。
そのヒントを、少しずつでも届けていけたら。

次の一歩を、あなたと一緒に。

町家は「難しい家」じゃない。
ちょっとした工夫で、住みやすくもなるし、もっと好きにもなれる家です。

でも、
「何から手をつけたらいいのか分からない」
「誰に相談していいのか分からない」
そんな声を、たくさん聞いてきました。

そこで、僕たちはこんなものを用意しました。

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そんな方は、LINEやメールでお気軽にご相談ください。

  • 今の町家で困っていること
  • どこまで手を入れるべきか迷っている
  • 自分でできる対策って何かある?

あなたの「最初の一歩」に、僕たちが寄り添います。

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🌱 最後に

“住みにくさ”を言葉にできたら、
それはもう“暮らしやすさ”への第一歩です。

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