京町家は本当に住みにくいの?|そう思われる理由と“暮らしやすさ”へのヒント
「寒い・暗い・不便」——京町家へのイメージはなぜ生まれた?
「京町家って、やっぱり住みにくいのかな……」
そんなふうに検索しているあなたは、きっとどこかで町家に触れた経験があるか、あるいは町家での暮らしを少しでも想像している方かもしれません。
実は、僕自身も子どものころ、京町家によく出入りしていました。
親戚の家が“うなぎの寝床”と呼ばれる細長い町家で、通り庭を抜けて、奥にある台所や風呂場まで歩いた記憶が今でも残っています。
たしかに冬は寒い。底冷えします。
でも、不思議と夏は涼しいんですよ。
通り庭を風が抜けて、土間の冷気が家全体を包み込んでくれる。
障子戸を開け放てば、自然の風がゆったりと流れていく。
“住みにくさ”の正体は、構造と時代のズレにある
子どもだった僕は、その構造の不便さにはあまり気づいていませんでした。
でも、大人になって建築士として暮らしを考えるようになった今、はっきりとわかります。
京町家が“住みにくい”と言われる理由は、単なる古さや劣化ではありません。
「当時の暮らしに合わせてつくられた構造」が、いまの暮らしとズレてきているから。
たとえば——
・客間を通らないとトイレに行けない
・家族の部屋を横切らないと風呂にたどり着けない
・生活導線が一本の細い直線上に並び、避けようがない
昔はそれが当たり前で、むしろ“つながっている”ことが豊かさでした。
でも現代は、プライバシーや生活効率を求める時代。
だから、「住みにくい」と感じるのは当然のことなんです。
でも、だからといって京町家が“ダメな家”なわけではありません。
むしろ、構造を知り、暮らしに合わせて“再編集”することで、
京町家はとても心地よい空間に生まれ変わることができるんです。
京町家が“住みにくい”と感じる理由|間取りと暮らしのズレを読み解く
江戸時代の税制度が生んだ「うなぎの寝床」構造
「間口が狭く、奥に長い」——
これが、いわゆる“うなぎの寝床”と呼ばれる京町家の特徴です。
なぜそんな形になったのか?
実はそこには、江戸時代の税制度が深く関係しています。
当時の町割りでは、家の間口(通りに面した幅)によって課税される仕組みがありました。
そのため町人たちは、できるだけ間口を狭く・奥へ長く家を伸ばすことで、税負担を軽くしようと工夫したのです。
その結果、
・間口2〜4間(3.6〜7.2m)ほど
・奥行き20〜30mにもなる敷地
・細長い土間、通り庭、中庭、裏庭で空間を分節
といった、現在の「うなぎの寝床」構造が生まれました。
動線のズレが“生活のストレス”になる時代へ
この構造は、当時の生活には理にかなっていました。
水回りや台所は奥に、来客は通りに近い部屋へ。
家族も来客も“すれ違いながら”暮らす家。それが町家の当たり前だったのです。
でも、現代ではそうはいきません。
たとえば——
- お風呂やトイレが家の一番奥にある
- キッチンが通り土間にあって、玄関から丸見え
- 客間を通らないと寝室に行けない
- 子どもの遊び場を通過しないと洗濯動線が成り立たない
これらはすべて、生活動線が“1本の直線”に固定されていることによるストレスです。
昔は「家族全員が共有する空間」が当たり前だった。
でも今は、「プライベートな空間」と「共用の空間」をしっかり分ける時代。
そのズレこそが、“住みにくさ”の正体です。
現代の暮らしに“構造が追いついていない”だけ
京町家がダメなんじゃない。
ただ、今の暮らしに構造が追いついていないだけ。
でも、それは「壊す」ことではなく、
“再編集”することで、解決できます。
僕はリノベーションを考えると真っ先に価格のことが気になります。どれくらいの予算感でいけばこの家は暮らしやすくなるんだろう?そんなことを考えながら図面を引くことが日課になっています。
京町家の“住みにくさ”を解消するために|今すぐできる見直しポイントと工夫
まずは、あなたの生活導線を“棚卸し”してみませんか?
「住みにくい」と感じるのは、家が悪いからではありません。
多くの場合、“動きにくい”生活導線が原因です。
そこで、まずはご自身の家の中の“動線”に意識を向けてみてください。
たとえば——
- お風呂までに何部屋通過していますか?
- キッチンへ買い物袋を運ぶとき、どこが一番“面倒”ですか?
- 洗濯物を干しに行くまでに“気持ちが重くなる瞬間”はありませんか?
こうした**日々の「小さな引っかかり」**こそ、快適さを損なう一番の原因です。
構造を変えずに快適にする「小さな工夫」
町家は、ちょっとした工夫でぐっと暮らしやすくなります。
- 間仕切り家具やロールスクリーンで空間をゆるやかに仕切る
- パーテーションや格子で“見せたくない空間”に柔らかい目隠しを
- 視線の抜け感を意識して、圧迫感のある動線を改善
- 床敷きマットや断熱パネルで足元の冷えを軽減
- キッチンタイルの張り替えで、通り土間を「見せたい空間」に変える
「そんな小さなことで?」と思われるかもしれません。
でも、こうした小さな違和感を整えることが、毎日の快適さを大きく左右します。
本の小さな悩みでも紐解くことで大きく改善されることがあります。
「なんか、ちょっと好きになったかも」と思えたら
家というのは、「完璧」である必要はありません。
むしろ、「ちょっと好き」になれる場所が一つでもあれば、
そこが“帰りたい家”になるんです。
今ある家を、“好きになるための視点”を持って見てみてください。
そして、「ここ、もっとこうなったらいいのに」と思う場所をひとつ見つけてみてください。
そのとき、もしよければ——
僕たちに、その場所を教えてください。
あなたの「ちょっと好き」を、暮らし全体に広げていくお手伝いができるかもしれません。
「間取りを変えずに暮らしを変える」|京町家リノベーションの本質的な考え方
再編集の起点は、“生活導線”から始めよう
京町家の暮らしにくさは、構造そのものよりも**「導線のズレ」に起因することが多い。
つまり、「壁を壊さないとダメ」と思いがちだけれど、実は“暮らしの流れ”を見直すことが鍵**になるんです。
- 水回りの位置に合わせて収納動線を引き直す
- 家族の動きを“交差”させない工夫をする
- 共有空間を“通過点”から“目的地”に変える
町家の間取りは“直線的”であるぶん、動線を整えると驚くほど機能的になります。
通り土間を“見せたくなるキッチン”に再解釈する
多くの町家では、キッチンが通り土間に設けられています。
昔は火を使う場所=土間だったため、その名残ですが、
現代ではそこが**“ネガティブな場所”として捉えられがち**です。
でも、考え方を少し変えるだけで、
この場所は“暮らしの象徴”として生まれ変わります。
たとえば——
- タイルを貼り替えるだけでカフェのような雰囲気に
- 照明を温かくするだけで“見せたくなる空間”に
- 一段下がる土間の段差も、フラットにすれば“キッチンへの導入路”になる
通り土間にあるキッチンを“どう見せるか”は、
町家リノベにおける最大のクリエイティビティかもしれません。
家に手を入れることで「暮らし」そのものが変わる
リノベーションとは、単なる修繕ではなく、
暮らしの考え方をアップデートすること。
町家の構造を無理に変えなくても、
“視点を変える”“導線を整える”“空間を再編集する”ことで、
「住みにくい家」が「帰りたくなる家」に変わっていく。
もしあなたが、
「今の家を、少しだけ好きになってみたい」と思えたなら、
それが本質的なリノベーションの始まりです。
「ちょっと好きかも」から始まる京町家との新しい関係
すぐに全部は変えられなくても、「小さなひと工夫」ならできるかもしれない
町家を丸ごと変えなくてもいい。
まずは、「ちょっとだけ」快適にしてみる。
それだけで、家との関係が変わり始めます。
たとえば——
- 通り土間にマットを敷いてみる
- キッチンの照明を柔らかい光に変えてみる
- パーテーションを立てて“抜け感”を整えてみる
家は、すこしずつ好きになっていける存在です。
「全部」を変えなくても、「一部」から始めていいんです。
京町家の暮らしを、あなたと一緒につくっていく
もしあなたが——
「この町家、住みにくいけど嫌いじゃない」
そう思える瞬間があったなら、それはもう立派な第一歩です。
僕たちは、そんなあなたの「ちょっと好き」を大切にしたい。
建築士としてではなく、暮らしの伴走者として、
あなたと一緒に、町家の未来を考えていきたいと思っています。
もっと「住みやすい町家」を考えてみたくなったら——
あなたの家の「ここ、ちょっと困ってて……」を、ぜひ聞かせてください。
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