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冬の京町家が寒いのはなぜ?|断熱ゼロの底冷え問題を構造から解説

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この記事は約8分で読めます。

「京町家、寒すぎない?」と思っているあなたへ


「暖房つけてるのに、足元が全然あったまらない」
「布団に入るのが、毎晩つらい」
「床が冷たすぎて、朝起きるのが憂鬱になる」

——そんな冬の暮らし、あなただけではありません。
京町家に住んだ人の多くが、“底冷え”という独特の寒さに悩まされています。

それは、単に古いからではありません。
でも、単に断熱材が入ってないからでもありません。

京町家の寒さには、“理由”があります。
それは、昔ながらの構造・暮らし方・間取りが深く関わっているんです。

この記事では、
「なぜこんなに寒いのか?」という根本原因を構造から丁寧にひもとき、
今すぐできる断熱の工夫から、
壊さずに再編集する方法まで、解説していきます。


あなたの冬の暮らしが、ほんの少しでも
「過ごしやすく」「好きになれる」ものになりますように。


底冷えの正体|京町家に断熱が効かない“構造的な理由”


「暖房を入れても、足元が一向にあたたまらない」
「ストーブの前だけが唯一の避難所になっている」
——そんな体験をされている方、多いのではないでしょうか。

京町家の“底冷え”は、気のせいでも、古いからでもなく、
実は構造そのものが関係しています。


① 通り土間+床直結の冷気構造

京町家の特徴のひとつが「通り土間」。
その多くは地面と直結している床構造になっており、
床下が浅く、断熱材もほとんど入っていません。

その結果、地面からの冷気が直接室内に入り込んでしまうのです。
冬場の床が冷たいのは、そのせいなのです。


② 空気が“抜けていく”間取り

いわゆる“うなぎの寝床”のように、細長く奥に続く町家の間取り。
これは通風性を確保するために合理的な設計でしたが、
冬の暮らしでは暖めた空気が滞留せず、すぐに抜けていく構造でもあります。

特に廊下や階段などの開口部を通じて、室内に熱が留まりにくい傾向があります。


③ 襖・障子・引き戸|見た目は美しくても、気密性はゼロ

町家らしい趣を演出する襖や障子、引き戸。
けれども、これらは現代の断熱・気密性の基準とは大きくかけ離れた構造です。

  • 上下左右に隙間が生まれやすい
  • 冷気の通り道ができてしまう
  • 天井まで届かないことで、熱も逃げていく

こうした要素が、室内の暖かさを保てない原因になっているのです。


④ 壁の“中身が空っぽ”な場合も

そしてもうひとつ見落とされがちな点が、壁の中の空洞性
京町家では、土壁やベニヤの中に断熱材が一切入っていないことも多く、
外気がじわじわと伝わってくる構造になっているのです。

「壁が冷たい」と感じたことがある方は、
まさにその現象が起きている可能性が高いです。


このように、京町家が寒いのは、偶然ではありません。
元々の構造や暮らし方が、今の私たちの生活様式とずれているだけなのです。

でも、それは「すべて壊すべき」という話ではありません。
少しの工夫と視点の変化で、町家の魅力を活かしながら、今の暮らしに寄り添う方法もあるのです。

次の章では、
そんな「今すぐできる小さな断熱対策」について、いくつかご紹介していきます。

まずできる“小さな断熱”から始めませんか?


「町家って、どうしても寒いものだと思っていた」
「リフォームって大げさなことをしないと、改善できないと思っていた」

そう感じている方は、決して少なくありません。
でも、実は暮らしの中の“ちょっとした工夫”だけでも、体感温度は変えられます。

しかも、それは大掛かりな改修をしなくても、すぐにできることばかりです。


① 窓際に「段ボール」や「プラダン」を立てるだけ

意外と侮れないのが、窓際からの冷気です。
窓の前に段ボールを立てるだけでも、外からの冷気が直接入るのを防ぐことができます。

さらに、ホームセンターなどで手に入る**プラダン(プラスチック段ボール)**を使えば、見た目もスッキリ。
透明なものを選べば採光も確保できます。


② 障子の裏に“貼るだけ断熱シート”

古い障子のままだと、紙一枚で外気とつながってしまいます。
市販の貼るタイプの断熱シートを障子の裏に貼るだけで、空気の層ができて冷気を遮断できます。

ほんの1mmの差でも、体感温度は大きく変わるものです。


③ 廊下や階段に「暖簾(のれん)」や「カーテン」を

室内の冷気は、家の中でも“動線”を通じて巡ります。
とくに階段や廊下を通じて冷気が流れてくるケースが多くあります。

そこで、間仕切りのように突っ張り棒+布1枚でカーテンを設置するだけでも、
「暖かいエリア」と「冷たいエリア」を仕切ることができます。


④ ラグやジョイントマットで“床の冷たさ”を遮断

町家の床は、構造的にどうしても冷えが伝わりやすい場所。
その上にラグやジョイントマットを重ねることで、断熱層を1枚プラスすることができます。

特に、アルミシート入りのタイプや、裏面に空気層があるものは断熱効果が高く、
足元の冷たさをかなり和らげてくれます。


こうした小さな工夫の積み重ねで、
「町家でも、冬が少しラクになる」体感を得られるはずです。

そしてその実感は、
「もっと住みやすくしたい」と思えるきっかけになるかもしれません。

次章では、町家の構造を活かしながら、
壊さずに断熱性を高める“本質的な設計の考え方”をご紹介します。

壊さなくてもできる|町家の断熱を“再編集”するという考え方


「でも、結局は壁や床を壊して、断熱材を入れるしかないんでしょ?」
そう思って、断熱改修をあきらめていませんか?

実は、町家の構造を活かしながら、暮らしに合わせて断熱性を高める方法もあるんです。
しかもそれは、住みながら少しずつ整えていくことができる方法です。


① 通り土間を“空気の切り替え地点”として活かす

通り土間は「寒さの原因」と思われがちですが、
視点を変えれば**空間を分ける“断熱の境界線”**として使うこともできます。

たとえば、

  • 土間とリビングの間に気密性のある扉を設ける
  • 土間の床に断熱マット+タイルを重ねて冷気の伝導を緩和する

こうした設計で、「寒さを分断する」工夫ができるようになります。


② 空気の流れをデザインする“ゾーニング”という発想

町家の間取りは“抜け”を活かした美しさがありますが、
断熱の観点では「どこに暖かさを閉じ込めるか」を設計することが重要です。

そこで、**ゾーニング(空間の区切り)**を丁寧に設計することで、

  • 家族が長く過ごす場所を“断熱ゾーン”に
  • 移動や収納スペースは“通気ゾーン”として整理
    するようなアプローチが効果的です。

③ “見せる断熱”ではなく“隠す断熱”へ

町家の美しさを壊さずに断熱性能を上げるには、
建具の裏、床下、天井裏など“見えない部分”に工夫を施すのがポイントです。

  • 天井裏にセルロースファイバーを吹き込む
  • 床下に断熱材と調湿材を組み合わせて敷設する
  • 建具裏に極薄の断熱層を内貼りする

見た目はそのままに、“中身”を今の暮らしに合わせて整えていく発想が大切です。


④ 「断熱=性能」ではなく「断熱=暮らし方」として再設計する

断熱というのは、ただ数値を上げる技術ではありません。
**どんな暮らしをしたいか?**という問いに対する“空間からの応答”でもあります。

「冬、足元が暖かいだけで気持ちが変わる」
「暖かい場所があることで、家族が自然と集まる」

そうした**“暮らしの中心”を設計することが、町家における断熱の本質**だと、僕は思っています。


次の章では、
「小さな一歩から、町家を“好き”になっていく」ためのヒントと、
一緒に考えていけるパートナーとしての提案をお届けします。

もう、寒さに我慢しない暮らし方へ


町家に住んでいると、
「冬は寒いものだ」と、どこかで諦めてしまっていませんか?

でもそれは、本来の暮らしのあり方ではありません。
ほんの少し工夫を重ねるだけでも、町家の底冷えは確実にやわらいでいきます。


僕はこれまで、
「どうにかしたいけど、どうしたらいいのか分からない」
そんな声を、何度も聞いてきました。

でも、実際に一緒に考え始めた方たちからは、
「自分にもできることがあるんですね」
「少しずつ家が変わっていくのが楽しい」
そんな言葉が返ってくるようになりました。


町家は、“我慢の住まい”ではなくて、
知恵と工夫で、心地よく育てていける住まいなんだと思います。


🔗 今すぐできること・次の一歩

  • ご自身の町家の「寒さの原因」を一緒に診断してみる
  • 他の記事を読んで「できること」を探してみる

どんなに小さなことでも構いません。
まずは、ひとつだけアクションを起こしてみてください。

その一歩が、
「町家が好きになる暮らし方」へのはじまりになるはずです。

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